クララクルル 〜 加減を知らない妖精 ~

土井和人

第11話 『通勤ラッシュ』(脚本)

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〇線路沿いの道
  平日・午前。
  街中を走る電車が、ゆっくりと速度を落として停車した。

〇電車の中
車内アナウンス「停止信号です。お急ぎのところ、ご迷惑をおかけいたしますが、しばらくお待ちください」
  混雑した車内で、そこかしこから聞こえてくる乗客たちのため息や舌打ち。
  そんな中──。
赤ちゃん「ふえ〜ん」
若い母「ほら、静かにしようね」
赤ちゃん「うえ〜ん」
若い母「いい子いい子。ね?」
中年の男「うるさいよ!」
若い母「え・・・?」
中年の男「通勤ラッシュの時間に、そんな小さいガキ連れて乗るなよ!」
若い母「でも、どうしてもこの時間に乗らなきゃいけなくて・・・」
中年の男「だったらタクシー使えばいいだろ!」
赤ちゃん「うわ〜〜〜ん!」
中年の男「早く泣き止ませろよ! こっちは主婦と違って、毎日の仕事で疲れてんだよ!」
赤ちゃん「ぎゃ〜〜〜!」
若い母「すいません・・・!」

〇空
  そして、その上空では──クララとクルルが車内の様子を伺っていた。
クルル「クララお姉ちゃん。 あの女の人、すっごく困ってるよ!」
クララ「だね! 赤ちゃんは泣くのが当たり前なのに!」
クルル「そうだよ、あのおじさんヒドいよ!」
クララ「よし! 私が魔法で解決する!」
クララ「クララクララクラクララクラ〜! 赤ちゃんよ、泣き止め〜!」
クルル「え!? そんなんじゃダメだよ! おじさんを懲らしめないと!」
クルル「クルルクルルクルクルルクル〜! おじさんが赤ちゃんみたいに泣き続けろ〜!」

〇電車の中
赤ちゃん「うぅ・・・へへへ」
若い母「よかった。泣き止んでくれた・・・!」
中年の男「う、うぅ・・・!」
若い母「え、何?」
中年の男「ふえ〜〜〜ん」
若い母「な、何泣いているんですか!?」
中年の男「だって〜! うえ〜〜〜ん!」
乗客A「おい、あんたその人に何したの」
若い母「え? いや、わ、私は何もしてません・・・!」
乗客A「じゃあ何でその人泣いてるんだよ」
若い母「勝手に泣き出したんです・・・!」
中年の男「うわ〜〜〜ん!!」
乗客B「ちょっと、うるさいから黙らせてよ」
若い母(どうして? どうして私が悪いみたいな目で見られてるの・・・!?)

〇空
クララ「ちょっと! 何、余計なことしてるのよ!」
クルル「こうすればおじさんも赤ちゃんの気持ちがわかるでしょ!」
クララ「いやいや! 結局、女の人が周りの人に怒られて困ってるじゃない!」
クルル「でもこれってヘンだよね?」
クララ「何が!?」
クルル「今はおじさんが泣いてうるさいんだから、周りの人はおじさんのこと怒ればいいのに」
クララ「いやおじさんに変な魔法かけたのあんたでしょ!? とにかく早く女の人を助けなきゃ!」
クルル「でもおかしいよ。 みんなで女の人に文句言ってさ」
クルル「こんなの弱い者いじめじゃん! よし、こうなったら魔法で──」
クララ「あんたは何もしなくていい! ややこしくなるから!」
クララ「クララクララクラクララクラ〜! おじさんよ、大人に戻って泣き止め〜!」
クルル「そんなんじゃダメだよっ!」
クルル「クルルクルルクルクルルクル〜! あの女の人よ、怒ってみんなをギャフンと言わせてやれ〜!」

〇電車の中
中年の男「・・・うぅ。あれ? なんで俺、泣いてたんだ?」
乗客A「はぁ。やっと静かになったよ」
乗客B「フン、よかったよかった」
若い母「よかったよかったじゃないでしょ!?」
若い母「こっちが大人しくしてたら。何で子どもと電車乗ったくらいで、こんな目に合わなきゃいけないんですか!?」
乗客A「おいおい、まだ騒いでるのかよ」
若い母「こっちだってこんな満員電車なんかに乗りたくないんです! でも、保育園に連れてかなきゃだから仕方ないんです!」
乗客B「おい、お前いい加減にしろよ!」
若い母「なんでさっきから私にしか文句言わないんですか!?」
若い母「そもそも、この人が怒鳴ってこなければ、うちの子はあんなに泣いてません!」
中年の男「はあ? 何、人のせいにしてるんだよ!?」
若い母「それに! 子連れは朝、電車に乗っちゃいけないんですか!? じゃあどうやって保育園に連れて行けって言うんですか!?」
中年の男「だからタクシーで──」
若い母「そんなお金があったら保育園に入れてません!」
若い母「ていうか! 金が必要だから働いてるんです! 働いてるから、保育園に入れてるんです!」
中年の男「そ、そんなの知らねえよ」
若い母「あなたがタクシーで行けって言うから、電車に乗る理由を説明したんです!」

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