エピソード3 確かに大事!でも、本当に守るのは?(脚本)
〇豪華な社長室
“労働局”の調査によって、完全に黒だと確信したルルとハヤ
2人は“名無し事務局”のメンバーを引き連れて、遂に“レイマーシーズ社”に乗り込むことにしたのだった。
ルル「半公的組織“名無し事務局”です」
ルル「強制捜査に参りました」
レイマーシーズ社の社長「な!噂の“名無し事務局”だと?」
レイマーシーズ社の社長「落ち着け 相手は若い」
レイマーシーズ社の社長「上手く言いくるめられるだろう」
レイマーシーズ社の社長「“名無し事務局”の方が我が社にどのような調査を?」
ルル「はい 3ヶ月前から貴方の会社の方が自死している件についてお話を伺いたいと思っています」
ルル「ご存じですよね」
レイマーシーズ社の社長「ええ、もちろん」
レイマーシーズ社の社長「彼らの死は大変悲しいことです」
レイマーシーズ社の社長「亡くなった彼らの為にも、私たちは社会に大きな利益を出し、会社を存続させていきたいと思っております」
ルル「なるほど」
ルル「その心持ちは否定できませんね」
ルル「しかし、なぜ6人もの自死者を出してしまっているのか、という問題について、貴方は社内調査はしたのでしょうか?」
レイマーシーズ社の社長「調査をするまではありません。 おそらく、彼らの自己精神の回復が遅かったのが原因なのですよ」
ルル「はぁ、自己精神の回復の遅さ、ですか・・・・・・」
ルル「全くないとは言いきれない見解ですね」
ルル「ですが、社内調査をせず、全員が自己精神の回復によるものと断定して良かったのでしょうか?」
ルルの投げ掛けに丁度良くハヤが入って来た。
ハヤ「失礼いたします」
ハヤ「社長、貴方に関して少し調べさせて頂きました」
レイマーシーズ社の社長「なんだね?」
ハヤ「この“レイマーシズ社”の創業者は貴方のお祖父様だそうですね」
ハヤ「それが貴方のお父様に継がれ、今は貴方が社長になった」
レイマーシーズ社の社長「ああ、そうだ」
レイマーシーズ社の社長「父から経営のいろはを学び、この会社の舵取りを私が今は担っているんだ」
ハヤ「創業当時からの歴史と社内聞き取りの結果、貴方は現在勤めている社員の方を軽視していますよね」
レイマーシーズ社の社長「なんだと! そんなことしている筈ないだろ」
ルル「貴方のお祖父様が社長をしていた頃は自死者が0人だったという記載を当時の“企業情報ファイル”で確認しました」
“企業情報ファイル”は労働局が担っている業務の1つである。
年ごとに全地域にある公的機関、企業の自死者を調査し、後の世で社会に残しておいても良いものかを判断する材料にする。
ハヤ「貴方のお父様の時代も危ない時期があったそうですが、自死者は0人でした」
ハヤ「つまり、貴方の代になってからなんですよ」
ハヤ「自死者が多いのは」
ルル「今回自死した6人ですが、全員が同期だったそうですね」
ルル「そして、問題はこの年に入った人たちを毛嫌いしている上司世代がいたことです」
ルル「なんでも、この年に入社した人たちは不幸を呼び込む世代だとか」
ハヤ「くだらない妄言ですよね」
ハヤ「だから、今回自死した方々には他の社員の方の倍の仕事量が割り当てられていたそうで、他の社員が気にして上へ訴えたようですよ」
ハヤ「休みたくても仕事が回らないと脅されて来なくてはならなかった」
ハヤ「上司が怖い、こんな量出来るわけないのに押し付けられる」
ハヤ「これ、現在残っている自死者6名と同期の方々からの証言です」
ルル「貴方、これでもまださっきのことを言えますか?」
レイマーシーズ社の社長「じゃあ聞くが、我が社は大手の会社であり、業界を引っ張っていく存在なんだ」
レイマーシーズ社の社長「我々の仕事は機緻密かつ正確でなければならない」
レイマーシーズ社の社長「欠陥品など世間に出せない」
レイマーシーズ社の社長「そんなものを出せば信用問題に関わる」
レイマーシーズ社の社長「信用を失えば、仕事がなくなり、給料の支払いができなくなり、社員の生活が立ち行かなくなる」
レイマーシーズ社の社長「だからこそ、我々は誰もが誇りを持って仕事に当たるんだ」
レイマーシーズ社の社長「多少、仕事量の多さなど、仕事の重要性を理解していれば些細なこと」
レイマーシーズ社の社長「それなのに、自死に走ってしまうのは、自己精神の回復が遅いとしか言いようがないんだ!」
ルル「はぁ・・・・・・」
ルル「社員のことを考えるのは当然のこと なので、そこは良い社長だと言えましょう」
ルル「しかし、意味不明な動機で一部の社員のみに過度な負担が掛かっていたという事実を無視したことは重罪です」
ルル「彼らが自死する場所を駅に選んでしまったことは、彼らの勝手です」
ルル「しかし、そのせいでこの会社外の人に多大なる迷惑を被りました」
ルル「社長なら“企業創立規定”は読んでいますよね?」
ルル「“社員と会社に揉め事により、命の危険が予測された場合、会社が一丸となってそれを必ず解決させる”という文言があります」
ルル「今回のケースでは、明らかなパワハラによる過重な労働が一部の人間に掛かっていたこと」
ルル「社内で訴えがあったが無視し、自死者が出ても調査を一切していなかったこと」
ルル「規定違反です」
ルル「よって、“レイマーシズ社”の社長及び幹部は現在の位置を解任」
ルル「パワハラに加担した社員はヒラへ降格の命令を下します」
ルル「“レイマーシズ社”の株主たちにもこの件の報告、同意を得ていますので、この決定は覆りません」
レイマーシーズ社の社長「そ、そんな・・・・・・」
ルル「会社に利益があるからこそ、そこで働く社員にその労働の対価が支払われる」
ルル「ただ、社員の健康を害し、その危険を訴える声を無視した挙げ句、自死者を出して社外へも影響を出した」
ルル「そんな会社、社会的に要るんですか?」
レイマーシーズ社の社長「そ、それは・・・・・・」
ルル「“レイマーシズ社”の今後を追って通達しますので、それまでは変わりなく業務を行ってください」
ルル「貴方と幹部たち、パワハラをした社員には“労働局”からの取り調べがありますので、悪しからず」
ルル「それでは、私たちはこれで」
ルルとハヤが外へ出るのと入れ替わりに、“労働局”の者が中へ入っていった。
これから社長をはじめとした幹部、パワハラをしてしまった社員への厳しい取り調べが始まる。
彼らは人1人が亡くなることで、別の社員に仕事の負荷が掛かる可能性を指摘されるのである。
〇大企業のオフィスビル
“レイマーシズ社”の行方末について、ハヤがルルに訊ねた。
ハヤ「先輩、さっきは“この会社在る意味ある?”みたいな発言していましたが、潰す気はないんですよね?」
ルル「まーね」
ルル「社員の人数が5桁代だし、この会社を潰して、他の企業への再就職の世話をすることをできないから、潰すことはしない」
ルル「見せしめに潰すことはしてきたけど、ここは歴史もあるし、社会に良い利益をもたらしてもくれた」
ルル「だから、人事改革を外から促すことが一番良い方法だと思ったんだ」
ルル「しばらくは、“労働局”の人が運営の一端を担うんだと思う」
ルル「で、社員の中から会社を良い方向へ導いてくれそうな人を選出して、その人たちに会社を任せていくことになるんじゃないかな?」
ルル「1度間違ったなら、外からの介入を受け入れ、変わっていかなきゃね」
ルル「それが社会に存在しても良いライン」
ハヤ「まー、介入する側も潔白じゃないといけませんけど・・・・・・」
ルル「難しいよね、それ」
ルル「でも、今回の件はこれでお仕舞い」
ルル「私たちの管轄外になるから、とりあえず、解決祝いしよ!」
ハヤ「ですね」
~~~♪
と、そこでハヤの携帯が鳴った。
ハヤ「あっ、先輩。 少し待っていてください」
ハヤが電話に出ると、仲間から衝撃の一言が告げられた。
ハヤ「はぁっ!?」
ルル「ハヤちゃん、どうしたの?」
ハヤは電話を切って、暗い顔で聞いた内容を報告してきた。
ハヤ「先輩、“神秘局”からの連絡で、局で収容していた“無の妖精”を逃がしてしまったそうです」
“神秘局”は魔物や妖精、竜など人ではない存在の研究や保護・捕獲を目的とした公的機関である。
“無の妖精”は、神秘局が定める危険存在レベル5段階中5に指定されている妖精の総称である。
名前の通り全ての存在を“無”にする力を持っている。
それも過去から未来まで干渉でき、妖精によって“無”になったものは人々の記憶から抹消されてしまう。
故に危険レベルが高いのである。
ルル「ええー、なんで!」
ハヤ「詳しいことは何も・・・・・・」
ハヤ「とにかく、先輩に来てほしいそうです」
ハヤ「以前、“無の妖精”を捕獲できたのは先輩の力があってこそだったそうなので」
ルル「あー、まぁ・・・・・・」
ハヤ「とにかく、話を聞きに行きましょう」
ルル「うん」
ルル「美味しいご飯食べる予定だったのに・・・・・・」
ハヤ「行ったら先に逃がした奴をビリビリさせましょう!」
ルル「程々に、ね」
次回に続く・・・・・・