第10話『告白する旅人』(脚本)
〇モヤモヤ
「・・・・・・」
「本当に何もない」
「ここなら、嫌なことからも 目を背けられる」
「・・・・・・」
「もう悩まなくて良いんだ」
「一貴に会わなくても済む」
〇おしゃれなリビングダイニング
相馬貴行「カズタカ、お前のいとこのルル奈ちゃんだ」
相馬貴行「優しくするんだぞ」
一貴「よろしく」
ルル奈「こんにちは」
一貴「一緒に遊ぼう」
ルル奈「うん!」
〇おしゃれなリビングダイニング
一貴「父さんも母さんも ルルのパパもママもいなくなっちゃったけど」
一貴「俺がルルを守ってやるから」
ルル奈「本当!?」
一貴「ああ!」
一貴「ルルの処女は俺が守る!」
ルル奈「わーい」
相馬由美「君たち、意味分かってる?」
〇おしゃれなリビングダイニング
吉良ルル奈「今日ね」
相馬一貴「おう」
吉良ルル奈「同級生の男子に告白されたの」
相馬一貴「・・・・・・」
吉良ルル奈「どうしたの?」
相馬一貴「そいつ、絞めるか」
吉良ルル奈「お願い、やめて!」
吉良ルル奈「大丈夫、ちゃんと断ったから」
相馬一貴「なら、良かった」
相馬一貴「何があっても」
相馬一貴「ルルの処女は俺が守る!」
吉良ルル奈「うるせえ!」
〇通学路
吉良ルル奈「一貴、今日の晩ご飯何が良い?」
相馬一貴「肉じゃが、ビーフシチュー、カレー」
吉良ルル奈「なんで、似たような食材使った料理ばかり」
相馬一貴「食べたいから」
吉良ルル奈「じゃあ、間とってオムライスね」
相馬一貴「間? 全然掠ってもないぞ」
相馬一貴「頭大丈夫?」
吉良ルル奈「お前だけには言われたくないわ!」
吉良ルル奈「ほらほら、そんなことより早く来い! 荷物待ち!」
相馬一貴「待てよ!」
〇おしゃれなリビングダイニング
吉良ルル奈「一貴、帰り遅いな」
相馬由美「ルルちゃん、どうしたの?」
吉良ルル奈「一貴、遅いなって」
相馬由美「まだ7時だし、今日飲み会って 言ってなかったっけ」
相馬由美「まあ、カズ君はまだ未成年だから お酒はまだ飲めないけど」
相馬由美「飲み会なら深夜になるんじゃない?」
吉良ルル奈「一貴が変な女に引っかかってないかな」
吉良ルル奈「一貴、頭おかしいから」
相馬由美「ルルちゃん、カズ君のこと心配なんだ」
吉良ルル奈「違うし!」
吉良ルル奈「全然心配してないし」
相馬一貴「ただいま」
吉良ルル奈「一貴」
吉良ルル奈「もっと遅くなるんじゃなかったの?」
相馬一貴「ルルの料理食べたくて一次会で抜けてきた」
相馬一貴「お腹空いたからご飯」
吉良ルル奈「うん!」
相馬由美「良かったね、ルルちゃん」
〇可愛い部屋
吉良ルル奈「一貴って好きな女の子とかいるのかな」
吉良ルル奈「一貴だって男の子だし 好きな女の子ぐらいいるよね」
吉良ルル奈「もしも、一貴に彼女が出来たらどうしよう」
吉良ルル奈「・・・・・・」
吉良ルル奈「もしかして・・・・・・」
吉良ルル奈「私、一貴のことが・・・・・・」
〇モヤモヤ
「一貴」
「一貴」
「何でこんなときに 一貴のことばかり考えるんだろ」
「ごめん、嘘ついた」
「・・・・・・」
「私は一貴に会いたい」
「助けて、一貴」
〇病室
相馬由美「カズ君、信じてるわよ」
〇綺麗な一戸建て
吉良明「一貴君、ルル奈を頼んだよ」
吉良朱里「カズ君だったら大丈夫」
〇広い河川敷
りゅーさん「あの青年の眼、若い時のわしにそっくりじゃ」
ショーカ「陛下は晩年がアレでしたけどね」
りゅーさん「うっさいわ!」
ミソノ「お姫様を助けに行く王子様みたいで素敵」
相馬貴宗「ルル奈を助けられるのはお前だけだ」
菅原杏子「一貴君、ルル奈ちゃんをお願いします」
〇広い河川敷
相馬貴行「ルル奈ちゃんを守ってやれるのは お前だけだ」
相馬遙「こういうとき どうするか分かってるはずよね」
〇モヤモヤ
「また、わがまま言ってごめんなさい」
「一貴」
「ルル!」
「えっ?」
吉良ルル奈「一貴の声」
相馬一貴「見つけた」
吉良ルル奈「来ないで」
相馬一貴「お前が会いたいって言ったんだろ?」
吉良ルル奈「私に会う資格はない」
吉良ルル奈「あなたを殺そうとした」
相馬一貴「そんなことはどうだっていいさ」
相馬一貴「勝手に俺が会いにきたんだ」
吉良ルル奈「私は一貴からお父さんやお母さんを奪った」
吉良ルル奈「恨んでるんでしょ?」
相馬一貴「なんで? 恨むの?」
吉良ルル奈「私が『遊園地行きたい』って言わなければ 事故に巻き込まれなかったんだよ」
相馬一貴「ルルは悪くないって決まってるだろ」
相馬一貴「事故なんて誰にも分かるわけない」
相馬一貴「父さんや母さんだって ルルを恨んだりしてないはずだ」
吉良ルル奈「まだあるよ」
吉良ルル奈「一貴は燃える車から私を先に出すために 大きな火傷を負ったじゃない」
吉良ルル奈「背中には火傷の跡が残ってる」
吉良ルル奈「プールとかでみんなから奇異な目で 見られてるの知ってるよ」
相馬一貴「これ勲章みたいなんもんだろ?」
相馬一貴「俺は『ルル奈を守った』って 大きな声で自慢してる」
相馬一貴「ルルが大きな火傷を負わなくて 良かったって今でも思ってるよ」
相馬一貴「ルルは可愛いから傷残らなくて 本当に嬉しいよ」
相馬一貴「女の子にとっては一生の問題だろ?」
相馬一貴「今までルルが苦しんでいることに 気づいてやれなくてごめん」
吉良ルル奈「どうして、どうして、そんなこと言えるの」
相馬一貴「俺はルルの処女を守るって決めたから」
吉良ルル奈「私の処女を守るとか言って」
吉良ルル奈「そんなこと言って ずっと負担だと思って来たんでしょ?」
吉良ルル奈「そうなんでしょ!」
吉良ルル奈「いつもいつもそうやって 私の気持ちも考えないで!」
吉良ルル奈(何で、こんなこと言っちゃうの?)
吉良ルル奈(本当は一貴が来てくれて嬉しいはずでしょ?)
吉良ルル奈(私のバカ)
吉良ルル奈「・・・・・・」
相馬一貴「ルルの処女は俺が”貰う”」
吉良ルル奈「また、適当ことを言ってさ!」
吉良ルル奈「そういうところが・・・・・・」
〇幻想空間
吉良ルル奈「えっ?」
相馬一貴「ルルの処女は俺が貰う!」
吉良ルル奈「ちょ、ちょ」
吉良ルル奈「意味分かって言ってんの?」
相馬一貴「ああ」
相馬一貴「好きでもない女の子に 処女を守るなんて言うわけないだろ?」
相馬一貴「その責任は取るつもりだ」
相馬一貴「そして・・・・・・」
吉良ルル奈「そして?」
相馬一貴「ルル奈にバージンロードを歩いてもらいたい」
吉良ルル奈「・・・・・・」
相馬一貴「悪魔だろうが何だろうが 俺が守ってやる」
相馬一貴「またルルがいなくなったら どこまでも探しに行ってやる」
相馬一貴「俺と結婚してくれ」
吉良ルル奈「えっ?」
吉良ルル奈「本当?」
相馬一貴「ルルのことが好きだ」
相馬一貴「小さい時から一緒にいて ルルがいてくれたから 俺はここまでなれたんだ」
相馬一貴「ルルを守るっていう生き甲斐だけじゃない」
相馬一貴「吉良ルル奈と死ぬまで一緒にいたい」
相馬一貴「だから、ルルの処女は俺が貰う」
相馬一貴「どうなんだ?」
吉良ルル奈「えっと」
吉良ルル奈「よろしくお願いします」
〇広い河川敷
相馬一貴「戻って来れた」
相馬貴宗「解決できたみたいだな」
吉良ルル奈「はい」
吉良ルル奈「初めましてじゃないんですよね」
吉良ルル奈「ご先祖様」
相馬貴宗「ルル奈は覚えていたか」
吉良ルル奈「朧げにですけど」
相馬貴宗「いや、こんな悠長なことをしている 場合じゃない」
相馬貴宗「早く門を潜らなければ ルル奈の身体が死んでしまう」
吉良ルル奈「本当ですか!?」
相馬一貴「急がないと」
相馬一貴「でも、あそこまで急いでも かなり時間かかるよ」
りゅーさん「安心せい」
相馬一貴「この前の人」
吉良ルル奈「馬車?」
相馬一貴「どうして、都合よくこんなものが?」
りゅーさん「これでお主の両親も探したからな」
相馬一貴「両親?」
相馬一貴「父さん! 母さん!」
相馬遙「しばらく見ない間に大きくなったわね」
相馬貴行「身長が同じぐらいだな」
相馬遙「ちゃんと約束を守って ルルちゃんを救い出して偉いわ」
相馬貴行「さすが、父さんの息子だ」
相馬一貴「もちろんだよ」
相馬一貴「だけど、どうしてここに?」
相馬遙「ご先祖様が、そこのミソノちゃんに頼んで 探しに来てくれたのよ」
相馬貴行「あと、りゅーさんとショーカさんが 父さん達の住んでるところまで 馬車で来てくれたんだ」
ミソノ「酒場から出たら偶然会って一緒に カズタカのお父さんとお母さんを探したの」
りゅーさん「まあ、詳しいことは 今更どうでもいいわ」
ショーカ「急がないといけませんからね」
相馬一貴「本当はもっとゆっくり話したいけど」
相馬一貴「時間がないね」
相馬遙「ええ」
相馬貴行「二人の大きくなった姿を この目で見れただけで十分だ」
相馬一貴「でも、父さんと母さんは この辺りに住んでなかったんだね」
相馬遙「私たちはもっと奥に住んでるわ」
相馬貴行「カズタカなら1人でも 大丈夫だと思ったからな」
相馬一貴「そっか」
相馬一貴「アレイオワで 父さんと母さんと会えなかったのは そうだったからなんだね」
相馬遙「ええ、もちろん、会いたかったけど 今、私たちは必要と思わなかったからね」
相馬一貴「最後に質問いいかな」
相馬貴行「もちろん」
相馬一貴「最後に死ぬときに、何考えてた?」
相馬遙「あなたなら、きっと大丈夫」
相馬貴行「カズタカなら、1人でもきっとやっていける」
相馬遙「だから、安心してこっちに来れたわ」
相馬遙「まあ、ご先祖様には迷惑かけちゃったけど」
相馬遙「じゃあ、行きなさい」
相馬貴行「元気でな」
相馬一貴「うん!」
吉良朱里「ルルちゃんも元気でね」
吉良明「一貴君と仲良くな」
吉良ルル奈「うん!」
相馬貴宗「急ぐぞ!」
菅原杏子「・・・・・・」
相馬一貴「何やってるんですか 杏子さんも行きましょう」
吉良ルル奈「そうですよ」
菅原杏子「私はここに残ります」
菅原杏子「ここまで迷惑かけて 元の世界に戻る資格はない」
相馬一貴「何言ってんですか 杏子さんのおかげで父さんや母さんに 会えたんだ」
吉良ルル奈「そうですよ! 杏子お姉ちゃんのお陰で パパとママにも会えたし 一貴に本音言えたし」
相馬一貴「だから、帰りましょう」
菅原杏子「でも、兄は」
りゅーさん「その辺は安心せい そこでずっと伸びておるお主の愚兄は ワシが性根を叩き直してやる」
菅原杏子「わかりました」
相馬一貴「みんな一緒に帰ろう」
〇河川敷
〇谷
〇荷馬車の中
吉良ルル奈「間に合うかな」
相馬貴宗「大丈夫」
相馬一貴「こういうときも楽しまないとな」
りゅーさん「遅っ! もっと早くならんのか!」
りゅーさん「娘の命が間に合わんぞ」
ショーカ「人数が多すぎます」
りゅーさん「仕方ない、軽くするか」
ショーカ「まさか、陛下 過去のあやまちを繰り返すおつもりですか!?」
りゅーさん「そんなつもりあるか」
りゅーさん「エイフの娘よ」
ショーカ「エルフでございます」
ミソノ「なに?」
りゅーさん「御者を任せたぞ」
ミソノ「えっ?」
りゅーさん「いくぞ、ショーカ」
ショーカ「どこまでも」
相馬貴宗「お二人とも大変お世話になりました」
りゅーさん「気にするな、酒の礼じゃ ワシも家族に会いたくなった」
ショーカ「またどこかで」
りゅーさん「とお!」
ショーカ「失礼」
相馬一貴「せっかくお礼をしようと思ったのに」
吉良ルル奈「結局誰だったの?」
相馬貴宗「自分で調べてみるといい」
〇病室
医師「非常に危険な状態です」
相馬由美「信じてるわよ、みんな」
〇荷馬車の中
ミソノ「あと少しで冥界の入り口」
ミソノ「間に合えええ」
相馬貴宗「一貴、ここでお別れだ」
相馬一貴「えっ?」
吉良ルル奈「そんな」
相馬貴宗「先住人である彼女であれば 入り口の出入りは許されている」
相馬一貴「そんなご先祖様!」
吉良ルル奈「もっとお話ししたかったのに」
相馬貴宗「なんだか、お前達が子供の頃を思い出すな」
相馬貴宗「立派によく育ったぞ」
相馬一貴「うん」
相馬一貴「ご先祖様、本当にありがとう」
吉良ルル奈「ありがとうございました」
相馬一貴「楽しかったよ」
相馬貴宗「ああ、俺も楽しかったぞ」
相馬貴宗「達者でな」
相馬一貴「行っちゃった」
吉良ルル奈「うん」
〇山道
相馬貴宗「そのまま突き進め」
相馬貴宗「お前たちを邪魔するものは何もない」
〇結婚式場前の広場
〇荷馬車の中
「いっけえええ」
〇巨大な城門
黄泉の住人「そういえば、あの侍と子孫の二人組 どうなったかな」
黄泉の住人「今時珍しく義理堅い連中だったなぁ」
黄泉の住人「ん? なんだ!?」
〇病室
吉良ルル奈「・・・・・・」
医師「心肺が正常に戻った!」
相馬由美「おかえり、ルルちゃん」
〇おしゃれなリビングダイニング
相馬一貴「すぐに退院できて良かったな」
吉良ルル奈「うん」
相馬由美「本当、大変な旅だったみたいだね」
相馬由美「2人には色々と迷惑かけたわね」
相馬一貴「すごい楽しかったからいいよ」
吉良ルル奈「うんうん」
相馬由美「そういえば、杏子ちゃんが アレイオワを修正して 冥界との繋がりを断ち切るって」
吉良ルル奈「そっか、仕方ないよね」
相馬由美「一応、AIは残すみたいだから 普通の人からしたら あまり変わらないけどね」
相馬一貴「冥界との繋がりが切れる前に 杏子さんにお願いがあるんだけど 聞いてもらえないかな?」
相馬由美「何かしら?」
わーい!!!!!!わーい!!!!!☺️💓
嬉しい嬉しい伏線回収ですね!!!???
わーい!!!!!!!!!✨(大喜び)
やっぱりそうこなくちゃですよねっ!!!!!一貴!!!!!信じてましたよ!!!!!!(一体どうした)
この過去と現在の細密な描写があるからこそ、“未来“を強く意識させられます✨ 一貴くんとルルちゃんは、駆ける馬車のごとく2人で未来へ突き進んでいくのでしょうね😊 緊張感と躍動感、幸福感などが溢れ、ラス前の回にピッタリですね🥰
りゅーさん、「ワシも家族に会いたくなった」と言いながらも、アンタその家族を馬車から(以下略)してるでしょ…とツッコミたくなったのは内緒です😂