第9話『光を手にする旅人』(脚本)
〇モヤモヤ
「寒くもない 暑くもない 何も聞こえない」
「俺はどうしてここに?」
「ちょっと油断すると何もかも忘れちゃいそう」
「そっか」
「俺は確か覆面のやつにハメられたんだ」
「もういいか」
「疲れたよ」
「姉さん、ごめん」
「2人とも帰れそうにない」
「父さん、母さん」
「俺もこっちの世界の住人になるよ」
「ご先祖様、ごめん」
「ルル奈を守るって約束破っちゃうな」
「でも、これからは、みんな一緒だね」
「カズ」
「えっ?」
「カズタカ」
「もしかして、その声は?」
「何て心地の良い気分だ」
「カズ、しっかりしなさい」
相馬一貴「何だ!?」
「カズ、こういうときはどうするんだっけ?」
「寝てる場合じゃないだろ」
相馬一貴「えっ!?」
「行きなさい」
「お前を待っている人たちのために」
相馬一貴「ああ!」
相馬一貴「そうだ!」
相馬一貴「ルルの処女は俺が守るんだ!」
〇荒れた公園
相馬一貴「あれ? ここは?」
相馬貴宗「戻ってきたか」
相馬一貴「今懐かしい声に呼ばれた気がしたんだ」
相馬貴宗「あそこから良くぞ、戻ってきた」
相馬貴宗「だが、そんな悠長なことを 言ってる時間はない!」
相馬貴宗「ルル奈の元に急ぐぞ!」
相馬一貴「ああ!」
相馬貴宗「かたじけぬ」
ミソノ「良かった」
ミソノ「間に合ったみたいだね」
りゅーさん「ギリギリだったな」
ショーカ「ええ」
相馬遙「行ってきなさい、一貴」
相馬貴行「お前なら出来る」
〇綺麗な一戸建て
相馬一貴「ルル!」
相馬一貴「顔を出してくれ!」
吉良朱里「カズくん!?」
相馬一貴「朱里おばさん!」
相馬一貴「お久しぶりです! お元気ですか!?」
吉良朱里「お久しぶり」
相馬貴宗「一貴、今は挨拶してる場合じゃないぞ」
相馬一貴「そうだった!」
相馬一貴「ルルを知りませんか!?」
吉良朱里「えっと、菅原杏子さんって方と一緒に 出ていったわ」
相馬一貴「どこか分かりますか!?」
吉良朱里「確か、川を見に行くって」
相馬一貴「分かりました! ありがとうございます!」
吉良朱里「カズ君、お願い」
相馬一貴「は、はい! 何でしょう!?」
吉良朱里「ルル奈を助けて」
相馬一貴「もちろんです!」
〇広い河川敷
吉良ルル奈「もう私の体なんて、どうでもいいです」
吉良ルル奈「パパとママと会えましたし 現世の方も見れたし 思い残すことはありません」
吉良ルル奈「好きに使ってください」
吉良ルル奈「じゃあ、これで」
菅原杏子「ルルちゃん」
菅原杏子「本当にいいの?」
吉良ルル奈「はい、お願いします」
吉良ルル奈「どこからも消え去りたいんてす」
吉良ルル奈(さよなら、一貴)
菅原杏子「ルルちゃん」
菅原杏子「私は本当にこれで良かったの?」
菅原杏子「あの子の寂しそうな顔」
相馬一貴「あんたが、菅原杏子だな?」
相馬一貴「というか、この前病院ですれ違った人か」
菅原杏子「そうよ」
菅原杏子「ルルちゃんなら、現世、冥界 どちらの世界にもいないわ」
相馬貴宗「何だと?」
相馬貴宗「まさか、”狭間”に消えたのか」
菅原杏子「ええ」
菅原杏子「ルルちゃんが自ら望んで ”狭間”に行ったわ」
相馬一貴「そんな何で!?」
菅原杏子「現世、冥界、全てから消え去りたい」
菅原杏子「それが彼女の望みなの」
相馬一貴「どうして、何だ? ルル」
菅原杏子「あなたへの負い目で かなり思い詰めていたわ」
菅原杏子「私がそう仕向けた」
相馬一貴「ふざけるな」
菅原杏子「でも、彼女の心はそれ以上に荒んでいたわ」
相馬一貴「ルル」
相馬貴宗「あの覆面がしようとしていることと 関係しているのか!?」
相馬一貴「俺の体を奪い取って 現世に蘇るとか言ってたけど」
菅原杏子「兄は未練を残したまま死んだわ」
菅原杏子「だから、肉体を手に入れて 現世に蘇るつもりなのよ」
相馬一貴「じゃあ、ルルの体も!?」
菅原杏子「私が貰う」
菅原杏子「ルルちゃんに両親と会わせ あなたへの負い目を煽って 肉体への執着を断とうとしたの」
菅原杏子「そして、ルルちゃんも同意してくれたわ」
相馬一貴「そんな!?」
菅原杏子「だから、自ら望んで”狭間”に消えたの」
相馬貴宗「貴様、何て邪道な真似を」
菅原杏子「でも、ルルちゃんの顔を見て これが正しいか分からなくなったわ」
菅原杏子「私は確かにルルちゃんになりたいと 10年前の事故以来思い続けていた」
菅原杏子「ルルちゃんを両親に会わせたい そして、私は吉良ルル奈になる」
菅原杏子「そのために、アレイオワを作ったの」
菅原杏子「でも、今、私がルルちゃんの肉体に 入ったところで」
菅原杏子「ルルちゃんにはなれない」
相馬一貴「そんなの当たり前だろ」
相馬一貴「肉体が変わったって 杏子さんはルルになれない」
相馬貴宗「そうだ」
相馬貴宗「お主はルル奈自身になりたいのではなく ルル奈のようになりたいと憧れたのであろう」
相馬貴宗「そのために、研鑽を積み アレイオワを創り出した」
相馬貴宗「それはルル奈の笑顔を見たいという 紛うことなき優しさ」
相馬貴宗「誰しも簡単に真似できるものではない」
相馬一貴「その通り」
菅原杏子「そうですね」
菅原杏子「私は憧れていたんですね」
菅原杏子「家族を失ったことに光を失い そこに現れたルルちゃんの存在に」
菅原杏子「その光も失うわけにはいかない」
菅原杏子「ルルちゃんの天使のような笑顔を また見たい」
菅原杏子「一貴君、そのためには あなたの力が必要です」
菅原杏子「ルルちゃんの元に行く前に 兄の野望を止めてください」
菅原杏子「兄の本当の目的は・・・・・・」
〇病室
吉良ルル奈?「・・・・・・」
菅原翔馬「杏子?」
菅原翔馬「もう入れたか?」
菅原翔馬「目が覚めたか」
菅原翔馬「さあ、一つになろう」
菅原翔馬「この肉体同士なら兄妹なんて関係ない」
菅原翔馬「さあ、今から服を脱がせるからね」
菅原翔馬「えっ!?」
吉良ルル奈?「ルルに指一本触れさせねえ!」
菅原翔馬「お前、杏子じゃないのか!?」
吉良ルル奈?「ルルの処女は俺が守る!」
菅原翔馬「その訳わからないセリフは!?」
菅原翔馬「まさか、お前、相馬一貴!?」
吉良ルル奈?「正解だ」
菅原翔馬「どうやって狭間から脱出したんだ」
菅原翔馬「杏子はどうした!」
吉良ルル奈?「杏子さんなら 俺にこの体を譲ってくれたぜ」
菅原翔馬「あいつ、裏切ったのか!?」
吉良ルル奈?「裏切るも何も、裏切ったのは あんたの方だろ?」
吉良ルル奈?「愛を勘違いし妹に欲情したんだろ?」
菅原翔馬「ふざけるな!」
菅原翔馬「こうなったら無理矢理にでも!」
吉良ルル奈?「俺は杏子さんじゃねえぞ!」
菅原翔馬「くっ!」
吉良ルル奈?「あんた、喧嘩慣れしてないな」
吉良ルル奈?「ルルの体のパンチでも効いてやがる」
菅原翔馬「こうなったら、杏子の身体を無理矢理!」
菅原杏子「兄さん、もうやめて」
菅原翔馬「杏子?」
菅原翔馬「お前、俺を裏切ったのか」
菅原杏子「兄さん、私達の負けよ」
菅原杏子「アレイオワと冥界の接続を解消するわ」
菅原翔馬「お前、俺に黙って!」
菅原杏子「私、知ってたの」
菅原杏子「兄さんが私に対して抱いてる感情が いびつだったことをね」
菅原杏子「兄さんは学校でも、それ以外でも 友達がいなくて、いつも近くにいた 私を好きだと勘違いしてたのよ」
菅原翔馬「違う! 俺は本当にお前のことを愛してる!」
菅原杏子「正直に言います」
菅原杏子「私はあなたのことが」
菅原杏子「大嫌いです!」
菅原翔馬「嘘つくな! 俺のAIを作って 蘇らせようとしたじゃないか」
菅原杏子「あれは、事故のとき すがりつくあなたを見て 置いていったことを後悔してたの」
菅原杏子「今回の一件もそうよ」
菅原杏子「あなたが新しい体を得れば もっと生きることを楽しんでくれると 信じていた」
菅原杏子「だけど、何よ!」
菅原杏子「あなたは私の体に 執着していただけじゃない!」
菅原杏子「いつもいつも 人の洗濯物の匂いを嗅いで 気持ち悪かったのよ!」
菅原杏子「いつまで、あのときのままでいるつもり!?」
菅原翔馬「くそ! くそ! くそ!」
菅原翔馬「こうなったら殺してやる!」
吉良ルル奈?「そうはさせない!」
菅原翔馬「離せ!」
菅原杏子「さよなら」
菅原杏子「にいさん」
吉良ルル奈?「哀れなやつ」
菅原杏子「これで良かったのよ」
菅原杏子「それよりも、一貴君! 早くルルちゃんのところへ!」
吉良ルル奈?「はい!」
菅原杏子「ごめんなさいね あなたに負担ばかりかけて」
〇広い河川敷
相馬貴宗「・・・・・・」
相馬貴宗「戻ってきたか」
相馬一貴「うん」
相馬一貴「あとはルル奈だけだ!」
菅原翔馬「行かせるか!」
相馬一貴「お前!」
菅原翔馬「良くも邪魔をしてくれたな」
相馬貴宗「どこまでも性根の腐ったやつだな!」
菅原翔馬「うるさい!」
相馬貴宗「罰を受けても構わぬ 子孫を侮辱した代償を払わそう」
相馬一貴「ご先祖様」
相馬一貴「ここは俺に任せてくれ」
相馬貴宗「そうか 頼んだぞ」
菅原翔馬「余裕そうな顔してんじゃねえ!」
菅原翔馬「現世ではお前の方が強いかもしれないが」
菅原翔馬「こっちの世界なら俺の方が有利だ」
相馬一貴「2度と同じ手は食わない!」
菅原翔馬「これでも食らえ」
菅原翔馬「どうだ、動けまい」
相馬一貴「うるせえ!」
菅原翔馬「何だと!?」
菅原翔馬「もう一回!」
相馬一貴「どりゃああ!」
菅原翔馬「なぜだ! なぜ効かない!?」
菅原翔馬「精神攻撃すら上回る強い意志を 持っているということなのか!?」
ルルの処女は俺が守るルルの処女は俺が守るルルの処女は俺が守るルルの処女は俺が守るルルの処女は俺が守るルルの処女は俺が守る
ルルの処女は俺が守るルルの処女は俺が守るルルの処女は俺が守るルルの処女は俺が守るルルの処女は俺が守るルルの処女は俺が守る
菅原翔馬「どんな思考をしていたら 精神攻撃を拒むことできると言うんだ」
菅原翔馬「あのとき、始末できていれば!」
菅原翔馬「あのときと同じ輝き」
ルルの処女は俺が守るルルの処女は俺が守るルルの処女は俺が守るルルの処女は俺が守るルルの処女は俺が守るルルの処女は俺が守る
相馬一貴「ルルの処女は俺が守る!」
菅原翔馬「バカな」
菅原翔馬「この世界で生者に負けるなんて」
相馬一貴「あんたの負けだ」
相馬一貴「邪魔するのはもうやめてもらおうか」
菅原翔馬「くっ」
菅原翔馬「仕方ない、分かったよ」
相馬一貴「分かってくれて良かった」
菅原翔馬「・・・・・・」
菅原翔馬「なんて言うとでも思ったか!?」
相馬一貴「こ、これは!」
菅原翔馬「最後に勝つのは俺だ」
菅原翔馬「残念だったな 狭間で彷徨い続けるが良い」
相馬貴宗「一貴の攻撃で伸びよったか」
相馬貴宗「所詮偽りの力などそんなものだ」
相馬貴宗「だが、予想通り、”狭間”に送ってくれたな」
相馬貴宗「一貴、ルルを頼んだぞ」
「一体どんな思考をしていたら精神攻撃を防げるんだ!」
(ルルの処女は俺が守るルルの処女は俺が守るルルの処女は俺が守る!!!!!!!)
にやられました😇
一貴…強い精神力の男っ!!!!!✨👍
クライマックスに近づいてますね!!✨☺️続きも楽しみに読ませていただきます✨☺️
躍動的な急展開、これは見ていて高揚しますね😊 王道的胸アツ展開、これぞバトル要素ありのファンタジーですね✨
その一方で、精神攻撃が効かない一貴くんの思考内容が……😱 敵方が翔馬さんということで、一瞬「へんたいさんどうしのたたかい」と脳裏に過ってしまったことを懺悔いたします🙇♀️