第13話 本能寺さんの気持ち(脚本)
〇駅前ロータリー(駅名無し)
本能寺令「好きです! 私と付き合って下さい!」
玉宮守「!! !?」
本能寺と遊びに出かけたら、いきなり帰り際に告白されてしまった。
玉宮守「ちょ、ちょっと待て! それって俺に告白してる!?」
本能寺令「う、うんっ!」
しどろもどろになりつつ問うと、本能寺は真っ赤な顔で力強く頷いた。
玉宮守「いやいやいや! 」
玉宮守「昨日、友達になろうって言ったばかりだよな!?」
玉宮守「段取りすっ飛ばしすぎだろ!?」
本能寺令「だって、すごく我慢してたんだもん!」
本能寺令「小学生の頃から、ずっとずーっと玉宮くんに憧れてて、目標で、好きだったの!」
本能寺令「だ、だから、えーと、大好き!」
玉宮守「なんかヤケクソ!? 何度も言うなよ恥ずかしい!」
本能寺令「仕方ないじゃん!」
本能寺令「急すぎるのは分かってるけど、育美ちゃんと相談して、今日のデートで告白するって決めたの!」
玉宮守「デートじゃないって! 」
玉宮守「くそ、小柴の入れ知恵だったか」
本能寺令「玉宮くん鈍感だから、これぐらいハッキリ言わないと私の気持ち分かってくれないよね!」
すっと息を整えてから、本能寺は聞いた。
本能寺令「それで、玉宮くんはどうかな?」
玉宮守「うっ!?」
何と言ったらいいか分からず言葉に詰まってしまった。
俺は戸惑いながら口を開いた。
玉宮守「ええと。お前、俺のことを好きだったのか?」
本能寺令「う、うん、好きだったよ。ずっと前から」
玉宮守「そ、そっか。そうだったのか」
改めて確認して、かゆくなってしまう。
玉宮守(たしかに、友達になりたいっていうのも違和感あったんだよな)
玉宮守(普通の友達だったら、ここまで執着しないだろ)
玉宮守(執拗な嫌がらせは、俺のことが好きだったから・・・)
玉宮守(なるほど、そういうことか)
玉宮守(どう応えるべきなんだコレは? 心の整理が追い付かない!)
ウンウン考え込む俺を見て、本能寺は困ったような表情を浮かべていた。
本能寺令「ゴメン! やっぱり、いきなりで驚かせちゃったね!」
本能寺令「返事はいつでもいいから、また今度聞かせてよ!」
玉宮守「あ、ああ」
本能寺令「それじゃあまた、学校でね! 今日は楽しかったよ!」
本能寺は、はにかみながら手を振って離れていった。
玉宮守(今のはもしかして、俺に気を遣ったのか? 本能寺が?)
身勝手の極みのような人間の本能寺が、俺に気を遣った。
そのくらいこの告白は、大事なものなのかもしれない。
玉宮守(ずっと前から好きだった、か)
小学生の頃から憧れてたと言われても、当時の記憶に本能寺なんて欠片も登場しない。
まともに会話したのは、テストで勝負しようと仕掛けられたあの日が初めてだ。
玉宮守(だが、アイツが俺にウソの告白をするとは思えない)
なぜなら本能寺は、色仕掛けができるような高度で繊細なコミュ力を持ちあわせてはいないからだ。
玉宮守(ということは、本能寺は本気で俺に惚れてるってこと・・・なのか)
改めて思い返して赤面してしまう。
小学生の頃、俺は本能寺級のクソ野郎で、他人を見下しまくっていた。
今もひたすら勉強漬けの毎日を送っている、面白みのないガリ勉だ。
玉宮守(もし俺が女だったら、こんなヤツは絶対に好きにならないぞ)
玉宮守(やっぱりアイツ、何考えてんのかサッパリ分かんねえ)
とはいえ、本能寺への返事は真剣に考えなきゃいけないだろう。
どれだけ本能寺がクソ野郎だとしても、俺を好きだと言ってくれた言葉に、嘘はないと思うから。
〇教室
そして週明け──
俺が教室に入ると、席に座っていた本能寺がビシッと姿勢を正した。
本能寺令「オ、オハヨウ! 玉宮クン!」
玉宮守「お、おう」
渾身の告白以来の顔合わせに、本能寺はガッチガチに硬くなっていた。
そして、緊張しているのは俺も同じだった。
玉宮守「本能寺、こないだの返事だけどさ」
本能寺令「う、うん!」
玉宮守「もう少しだけ考えさせてもらっていいか? 」
玉宮守「来週から期末テストだろ」
玉宮守「今はそっちに集中して、終わってから改めて話したい」
本能寺令「あっ、そ、そうだよね! うん、それがいいと思うな!」
玉宮守「ああ。悪いな」
本能寺令「いいよいいよ、全然平気!」
元気よく返事をしたものの、本能寺は残念そうに肩を落とすのだった。
〇物置のある屋上
玉宮守「今はテストに集中したい。 これが俺の純然たる本音だ」
昼休み、俺は小柴に呼び出され、屋上に来ていた。
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