本能寺さんはクソ野郎

和久津とど

第12話 本能寺さんとお出かけ(脚本)

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〇駅前ロータリー(駅名無し)
玉宮守(本能寺は、まだ来てないみたいだな)
  昼時の駅前──
  今日は本能寺と遊ぶため、俺は待ち合わせ場所にいた。
玉宮守(5分ぐらいは待ってやるか)
  わっ!
玉宮守「うおおお!?」
  急に背後から声を掛けられ、俺は思わず飛び跳ねる。
  後ろで、本能寺がニッコニコと笑顔でピースサインを振っていた。
本能寺令「イェイ! ビックリした~?」
玉宮守「お前な、あれだけ嫌がらせはナシだって言ったろ!」
本能寺令「このぐらいは嫌がらせとは言わないって!  ちょっとしたスキンシップだよ♪」
玉宮守「くっ、まあそうかもな」
玉宮守「いつから来てたんだよ?」
本能寺令「ん~、1時間前ぐらいかな?」
玉宮守「そんなに前から?」
本能寺令「うん!  だって、すごい楽しみにしてたからね!」
玉宮守「そ、そうか」
玉宮守(なんか調子狂うな。すごいニコニコしてるし)
  嫌がらせばかりされて悪魔にしか見えていなかったが、こう純粋に楽しそうにしていると普通の女の子みたいに思えてくる。
玉宮守「だが、本能寺は本能寺。 いつか本性を出すはずだ」
玉宮守「警戒は怠らずに行こう」
本能寺令「それで玉宮くん、今日はどうするの?」
玉宮守「ああ、映画見て、あとは軽く食事だな。 そんなもんでいいだろ」
  映画なら顔もあまり見ないし、会話も最小限で済む。
  そう思って選んだプランだったが、本能寺の目はキラキラと輝いていた。
本能寺令「わぁ、わぁっ! なんだかデートみたいだね!」
玉宮守「ブッ!? やめろ!  そんなつもりで考えてないからな!」
本能寺令「そう~? ホントは嬉しいんじゃないの?  私ってカワイイし!」
玉宮守「いや、マジでそんなつもりはないぞ。 自惚れんな」
本能寺令「急にスッと真顔になった!?  冗談だから、怒らないでよ~!」
玉宮守「はいはい。いいから行くぞ」

〇映画館の入場口

〇映画館の座席
本能寺令「見て見て!  あの人、きっと殺人鬼に狙われるよ!」
玉宮守「うるさい! 映画館では静かにしろ!」
  上映中は会話せずにすむと思っていたが、本能寺は事あるごとにヒソヒソと耳打ちをして来た。
本能寺令「え~、全然お客さんいないから、平気だと思うけど」
玉宮守「そういう問題じゃないだろ。 マナーだマナー!」
本能寺令「あっ、ホラ! やっぱり殺人鬼来た~!  大正解~♪」
玉宮守「だから静かに見ろって!」
  なるべくテンションの下がりそうな映画という理由で、俺はホラー映画を選んだ。
  鑑賞後は会話が盛り上がらないまま、サクッと帰りたい。
本能寺令「玉宮くんは、最後に生き残るのは何人だと思う? 」
本能寺令「予想し合って楽しもうよ」
玉宮守「それでもう静かにしろよ。俺は3人」
本能寺令「じゃあ、私は0人にするね。 行け行け、殺人鬼!」
本能寺令「人間みんなやっつけろー♪」
玉宮守「それ、かなりのバッドエンディングだな」
  なんだかんだ言いつつ、本能寺も俺もずっと小声で喋り続ける。
  映画はありきたりな内容でつまらなかったが、なぜかちょっとだけ楽しかった気がするのだった。

〇レトロ喫茶
本能寺令「映画、楽しかったね!」
本能寺令「特に殺人鬼が急に出てきた時、玉宮くんがビクンっ! って驚いてた所が!」
玉宮守「どこ見てるんだお前は!  内容はつまんなかったろ」
  映画を見終えて、俺と本能寺は喫茶店に入った。
本能寺令「私は楽しかったよ。 玉宮くんとの予想勝負がアツかったしね!」
玉宮守「あー、そうだな。 結局、生き残ったのは1人だったか」
本能寺令「ふふっ、どっちかというと0人予想だった私の勝ちかな!」
玉宮守「そーだな。もうそれでいいよ」
本能寺令「やったー!」
玉宮守「さっきから楽しそうだなあ、お前」
本能寺令「うん、玉宮くんと一緒だからね!」
玉宮守「そーかい。そりゃよかった」
  我ながら薄いリアクションだと思うが、それにも関わらず、本能寺はニコニコと楽しそうにしている。
玉宮守(・・・コイツ、よく笑うよな)
  以前は不快にしか思わなかった本能寺の笑顔だが、それが純粋な好意の現れだと解れば、泣いたり怒ったりされるよりはマシだ。
玉宮守(そう言えば、本能寺は笑顔がいいって小柴が褒めてたっけ)
  キラキラとした笑顔を振りまきながら、映画の感想を語り続ける本能寺を眺めながら、そんなことを考えていると。
店員「お待たせしました。 ご注文のパンケーキになります」
本能寺令「わぁ、かわいい! いただきまーす!」
  ウェイターが二種類のパンケーキを持ってきた。
  本能寺は、早速それをパクっと一口。
本能寺令「マズ・・・っ」
  さっきまで何でも楽しいと言っていた本能寺の顔が、いきなり曇った。
本能寺令「マズい! これ全然おいしくない!」
玉宮守「おい、飲食店でマズいとか言うな!  失礼だろ!」
本能寺令「だって本当においしくないもん!  玉宮くんのは?」
玉宮守「普通に美味いぞ」
本能寺令「じゃあ交換しようよー!」

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