魔法少女 あおはる×あいろにぃ!

筒ヶ奈久

#7 ホケンはキケン(脚本)

魔法少女 あおはる×あいろにぃ!

筒ヶ奈久

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〇保健室
月輪ひつみ「ひぃっ、ふぅっ・・・! 杜さん・・・着いだよ・・・!」
ハンティン「す、すげえ汗だな・・・! 大丈夫か?」
  体育館からみさおを背負い、なんとか運ぶ事に成功したひつみ。
  しかし途中で変身が解けてしまったようで・・・
月輪ひつみ「変身してないと、人1人おぶんのもしんでぇなぁ・・・ うあ、いででで・・・っ、腰が、背中が・・・」
ハンティン(おばあちゃんかよ・・・)
  みさおに言われた通り、彼女を保健室のベッドへ寝かせる。
  幸い、状態は悪くない様で、すやすやと寝息を立てている。
ハンティン「すっげー幸せそうな寝顔だなぁオイ」
月輪ひつみ「あのー、保健室の先生・・・いっぺか? ちょっと具合悪い人いでさ、寝せっけども?」
  律儀にひつみが声を掛けた、その時・・・

〇保健室
  保健室内の雰囲気が、変わった。
  なんとも形容しがたい、どこか熱を帯びたような、妖しいものに──
ハンティン「な、なんだぁ・・・この感じ・・・?」
月輪ひつみ(なんか、どっかムズムズする感じだなぁ・・・?)
  と、2人の前にふいに人影が姿を現した!
メロリア☆ウィッチ「ふふ、よく来たわね。 ようこそ、私の保健室(マイ・パラディソ)へ──❤︎」
月輪ひつみ「ええっ!?保健室の先生!?」
ハンティン「いや違うだろ絶対!! ──さては、お前も魔法少女だな! ってか何人いるんだよこの学校に!?」
メロリア☆ウィッチ「このルックスで"絶対違うだろ"・・・って思った? ところがどっこい、私は正真正銘、保健室の先生よ」
月輪ひつみ「あ、勘が珍しく当たったあ・・・」
ハンティン「いやそこでほっとするなよ!?」
メロリア☆ウィッチ「保険医と同時に、私は魔法少女メロリア☆ウィッチ。 この部屋の主でもある。 初めましての名刺がわりに、"これ"をあげるわ」
  魅惑的な笑みを浮かべる新たな魔法少女。
  そして大きく息を吸い込むと・・・・・・
メロリア☆ウィッチ「保健室。それは生徒たちの心のオアシス。 そしてきな臭く殺伐とした俗世から隔たれし、この地上に現れた最後の楽園(エデン)♪」
メロリア☆ウィッチ「どうも・・・私は天の国(ヘヴンズドア)への道先案内人。貴方を、極上の純白シーツで楽園へとご案内して差し上げましょう」
メロリア☆ウィッチ「いざ、ベッドメイク・・・❤︎」
「うわわわわわわぁ・・・っ/////」
  メロリア☆ウィッチの発した、囁き声。
  それはひつみとハンティンの耳もとに増幅されて届き、
  むず痒い感覚を覚えさせた。
月輪ひつみ「うわああああああ、あっ、やっ、やぁっ///みみ、あっ、ちょっ///あの、まだ・・・///・・・昼///」
ハンティン「うーわっ///なんじゃこりゃ///みみ、こそばゆ・・・///勝手にぃ・・・///台詞に斜線いっぱいついちゃうって///」
メロリア☆ウィッチ「ふふ、どう? 私の魔法で、声をASMRにしてみたの。 初めての試みだったけど、上手く行ったみたいね❤︎」
「あああ/// これ以上しゃべんないで〜・・・/// 腰が砕けるから〜・・・///」
メロリア☆ウィッチ「はい、体験版はここまで〜♪」
  その声と共に、ASMR化の魔法は瞬時に解かれた。
  ひつみとハンティンはそれでもなお、背筋をぷるぷる震わせている。
月輪ひつみ「うぅっ、なんかぞわわっとしたなぁ・・・っ」
ハンティン「ま、全くだよ! くっそー、変な魔法使いやがって〜・・・!」
メロリア☆ウィッチ「あ、完全版はこれで聴けるわよ〜♪ 宜しければどうぞ?」
  そう言って、メロリア☆ウィッチは備品が入っているであろうスチール机から、おもむろに"何か"を取り出した。
月輪ひつみ「えっ、これって・・・?」
メロリア☆ウィッチ「そうっ、私の作った音声作品の最新作! 買うなら今よ♪」
メロリア☆ウィッチ「今なら初回生産限定の豪華版が手に入るわ♪ えーと、本編ディスクのみならず〜・・・」
メロリア☆ウィッチ「なんと、アフターストーリー付きファンディスクとアクスタ5個セット、書き下ろしの外伝小説がも・れ・な・く!付いてくるのよ♪」
ハンティン「いやそれよく見る商売だなぁ! 初回生産のだけに色々オマケつけてレア度上げてくるやつだよな!? 皆こぞって予約する感じの!」
メロリア☆ウィッチ「それだけじゃない! 【某虎の有名アニメグッズチェーン店】で買うと〜、クリアファイルが貰える! これもしっかり書き下ろし♪」
メロリア☆ウィッチ「さらに〜・・・ 【welcome的に展開中の某ゲームショップ】の特典の、ラフスケッチとか設定画が載ってる小冊子もある〜♪」
メロリア☆ウィッチ「さあ、どこで予約する〜? ま、私としては店をハシゴして2つとも手に入れて欲しいんだけど♪」
ハンティン「あぁ〜もういいですいいです! お腹いっぱいだよ! ・・・ったく特典商法えげつなさすぎだろ・・・」
  すると、ひつみが音声作品の表紙にキラキラとしたシールが貼ってある事に気づいた。
  そのシールは太陽光を反射し、ひつみの目には燦然と輝いているように見える。
  シールにはこう書かれていた。
  ───"R-18"と。
月輪ひつみ「あー!!これ!! エッチなやつだっちゃ!!」
ハンティン「なんだってえ!?」
メロリア☆ウィッチ「あはは、そうよ、そう。 で?何か問題でも?」
  未成年者に対して、成年向け商品を購入させる行為は青少年育成条例違反となります。
  絶対にマネしないでください。
ハンティン「いや問題大アリだろ! 生徒に売ろうとするなよ学校で! こんな保健室イヤだよ! オアシスはどこ行ったんだよオアシスは!」
ハンティン「とにかくしまえ、そのエッチなの! もうアウトかもしれんけど! しっかり注意テロップ出ちゃったし!」
メロリア☆ウィッチ「──ちぇっ、しょーがないな」
  ハンティンに捲し立てられ、ウィッチはいそいそと音声作品をスチール机の中に隠した。
月輪ひつみ(中身、どんなだったんだべか・・・? ちょっと気になるような、ならないような・・・?)
メロリア☆ウィッチ「私の魔法は、声を自在に操る事ができる。 すなわち、老若男女、あらゆる動植物も演じられるって事・・・」
メロリア☆ウィッチ「そこで私は台本を書いて、自ら演じた作品を【某有名同人ダウンロードサイト】にあげた訳。 そしたらもう、ウッハウハ♪」
ハンティン「また拝金主義者の魔法少女か!」
メロリア☆ウィッチ「なんとでも言えよスズメくん。 私はただ、魔法少女の力で稼いでるだけさ」
月輪ひつみ「へー、そういうのもアリなんだな〜」
ハンティン「だから変なトコで納得するなよ!?」
メロリア☆ウィッチ「──あ、そろそろ・・・ベッドで寝てる「暴れ姫」を起こしにいかないと、ね?」
ハンティン「いや待てよ話聞けって! あいつまだ10分しか寝てないぞ、そっとしといてやれって、おい!?」

〇保健室
  ベッドに寝ているみさおを起こそうと、ウィッチはカーテンを開けた。
  ──と、次の瞬間!!
メロリア☆ウィッチ「っがぁぁぁぁっ!?」
  高速で飛び出してきた"何か"が、頭に衝突してしまったのだ。
メロリア☆ウィッチ「いだだだ・・・っ、一体なんだってのよ、もう・・・! ん?この匂いは・・・?」
  飛んできた謎の物体は、そのままウィッチの顔面に張り付いていたが、軽い力で剥がす事ができた。
  その物体とは・・・
メロリア☆ウィッチ「──ああっ、コレって・・・!」
  そう、アジの干物だ。
  寒空の下で凝縮された素材本来の海の香りを、ウィッチは鼻いっぱいに吸い込んだ。
メロリア☆ウィッチ(この本能の奥底に、直接訴えかけてくる匂い・・・! 間違いない、このアジは上の上物。 粗塩もしっかりと使われている・・・)
  アジの干物の出来に歓喜するウィッチ。
  こういった料理は彼女の大好物なのだ。
  プライベートではよく酒のアテにしている。
杜 みさお「よしっ、心身ともに復ッ活! ありがとなウィッチ! その干物は、ほんのお礼だ!」
  ベッドからむくりと起き出したみさおは元気を取り戻していた。
  彼女は10分ほどの睡眠で、自らの疲労を回復したのである。
メロリア☆ウィッチ「──お礼か。 まあ、運び込んだのは彼女さ。私は何もしてない。 まあそれはそれとして、干物は頂くが」
メロリア☆ウィッチ「私はちょっと外で一服してくるよ。 外の空気で食べる干物こそ至高だからね〜」
メロリア☆ウィッチ「あ、君のおばちゃんに伝言。 「干物ありがと、今度店くるね」って!よろしく♪」
杜 みさお「分かった、伝えとく〜!」
  まるで野良猫のように、干物を口に咥えると、ウィッチは軽やかに保健室を出ていった。
  意識をすっかり取り戻したみさおに、ひつみとハンティンが駆け寄った。
月輪ひつみ「よがったぁ!杜さん目が覚めたんだあ!」
ハンティン「お前、ホント大丈夫なのか? 10分ぐらいしか寝てないだろ・・・」
杜 みさお「10分かぁ・・・ 10分はオレにとっちゃ8時間だ! だから問題なーし!」
月輪ひつみ「──え、はちじかんが、10・・・? なしてそーなるのかな?」
ハンティン「いや、意味わかんねーよ・・・」
  *あくまで杜みさおは魔法少女なので、10分睡眠でもOKです。
  良い子はマネせず、ちゃんと8時間ぐっすり寝ましょう!
ハンティン「ほら、やっぱりツッコまれてんじゃんか!」
杜 みさお「あ、ホントだ! だははは!」
ハンティン「いやダハハじゃねえよ、ちゃんと寝ろよ! 労われよ身体をもうちょっと〜! ってかさ、さっきの魔法少女って知り合いか?」
杜 みさお「そうそ、おばちゃんの店の常連さんなんだよ〜! 凄いんだぜあの人〜!!」
ハンティン「まあ、凄かったな。 色んな意味でな、ホントにね、もう」
月輪ひつみ(魔法少女とか、色々なんかよくわかんない事だらけだけども、 なんか、楽しい感じだな〜・・・)
  学校の片隅の保健室は、明るい雰囲気で包まれていた。
  
  ──待てよ、キミたち。
  何か大事な事を忘れちゃいないか?
「──へ、何を?」
  ────授業。
ハンティン「────あ」
「──あ、やっばぁ・・・っ・・・!」
  脱兎の勢いで、みさおとひつみは保健室から出て行く。
  いつの間にか2人は、手を繋いでいた。
  窓から降り注ぐ傾き始めた日の光を浴びながら、教室めがけて全力で走っていく2人。
  その姿はまるで、尊い友情で結ばれ──
ハンティン「──でも、結局先生に怒られたんだろ? いい感じに終わったけど」
  うん、そりゃまあ、こっぴどく。
ハンティン「・・・・・・・・・だろうな!!」

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