〈何でも美味しく調理できる〉フライパン(脚本)
〇時計台の中
鑑定士「この世には〈いわく〉を抱えた呪いの品が存在します」
鑑定士「私はそんな〈いわく〉付きの品専門の鑑定士」
鑑定士「さて、本日の〈いわく〉は、 一体おいくらになるのでしょうか・・・」
〇時計台の中
蓮池 守「これは、ユメさんという女性が 愛用していたものです」
蓮池 守「彼女はこのフライパンで」
蓮池 守「僕のために、色んな手料理をふるまってくれました」
鑑定士「2人のご関係は?」
蓮池 守「恋人、でした」
蓮池 守「たった数ヶ月ですが・・・」
鑑定士「では、お聞かせ下さい」
鑑定士「その品にまつわる〈いわく〉を──」
〇川に架かる橋
永井 ユメ「えっ? 私の得意料理ですか!?」
蓮池 守「うん、何かなぁって」
蓮池 守「ほらユメちゃん、趣味は『料理』って プロフに書いてあったから」
蓮池 守「僕とマッチングしたのも、そこがポイントだったし」
永井 ユメ「で、ですよね! 一応、何でも作れますよ!」
永井 ユメ「(ボソッ) コックパッド見れば💦」
蓮池 守「イイよね、料理が得意な子って。 一緒にいたいって思える」
永井 ユメ「え、一生? フォーエバー!?」
蓮池 守「じゃあ早速、今夜ご馳走してもらえる?」
永井 ユメ「あ、でも~」
永井 ユメ「『たまたま』『今日に限って』 冷蔵庫が空っぽで・・・」
蓮池 守「じゃ、ユメちゃん家にお邪魔する前に、 スーパーに寄って行こうか」
永井 ユメ「2人で仲良く手をつないで? 新婚さん気分で!?」
蓮池 守「料理、リクエストしてもいい?」
永井 ユメ「はい、何でもお任せ下さい♥️」
蓮池 守「じゃあ、僕が1番好きな──」
〇女性の部屋
蓮池 守「これは何?」
永井 ユメ「蓮池さんリクエストのハンバーグです」
永井 ユメ「ちょっと焦げちゃったんですけど、 味はきっと」
蓮池 守「真っ黒なのに、中は生焼け・・・」
蓮池 守「ユメちゃん、料理が得意って本当?」
永井 ユメ「も、もちろん! 普段はレンチンですけど、本気になれば・・・」
蓮池 守「今日はもう帰るよ」
永井 ユメ「やっぱ、ダメ?」
永井 ユメ「あ~ん! このままじゃ念願のプロポーズが・・・」
永井 ユメ「よしっ!」
〇おしゃれなキッチン
料理の先生「テキスト4ページを開いて下さい。 今日はハンバーグを作りましょう」
「は~い」
永井 ユメ「わ~、キレイな焼き色。 肉汁もあふれてふっくら美味しそう!」
永井 ユメ「先生、コツを教えて下さい。 彼に「美味しい」って言わせたいんです」
料理の先生「大切なのは道具です。 私が監修の、こちらはいかがかしら?」
料理の先生「焼く、炒める、煮る、揚げる、蒸すが 1台で失敗なし」
永井 ユメ「すごい! 彼の胃袋もガッツリつかめますね」
料理の先生「ええ、もちろん。 13,900円でお求め頂ければ」
永井 ユメ「あの・・・」
永井 ユメ「タプノベPayは、使えますか?」
〇女性の部屋
永井 ユメ「──というわけで」
永井 ユメ「料理教室で、とっても使いやすいフライパンを手に入れたの♥️」
永井 ユメ「だから手料理、期待してて下さいね」
蓮池 守「でも、まだ通って1日でしょ? 無理して作ってくれなくても・・・」
永井 ユメ「はい、どうぞ♥️」
蓮池 守「おぉ、美味しそう!」
蓮池 守「焼き加減も最高! プロの味! これなら毎日でも食べられるよ」
永井 ユメ「私、蓮池さんの為にお料理ガンバるから、 何でもリクエストして下さいね♥️」
蓮池 守「あれ? 今フライパンが光らなかった?」
永井 ユメ「毎日ピカピカになるまで洗ってるからかな。 だってお気に入りなんだもん」
永井 ユメ「ねえ、次のリクエストは何ですか? 和食? パスタ?」
蓮池 守「うーん、迷うなぁ」
〇中規模マンション
〇女性の部屋
蓮池 守「今日はみぞれ煮を作ってくれたんだね」
永井 ユメ「蓮池さんのリクエスト、頑張ってみました!」
蓮池 守「うん、出汁が最高! ユメちゃんの料理は本当に美味しいな」
永井 ユメ「それと、ね。 こっちも」
蓮池 守「え!? パスタも?」
永井 ユメ「だって迷うって言ってたから、 どっちも食べて欲しくて」
蓮池 守「う~ん、嬉しいけどさ。 ・・・ちょっと作り過ぎかな?」
蓮池 守「さすがに食べきれないよ」
永井 ユメ「えー!! 私の料理、お口に合いませんか!?」
蓮池 守「いや、そうじゃなくて。 また別の日がいいなって」
永井 ユメ「だったら明日も、 私の手料理を食べに来ませんか?」
蓮池 守「残念だけど、土日は出張でさ」
永井 ユメ「じゃあ戻ってすぐ、食べられるように 私が蓮池さんのお家へ行きますよ」
永井 ユメ「このフライパンで、美味しいものを作って待ってます♥️」
蓮池 守「いや、何時になるか分からないし。 また来週、ここに来るよ」
永井 ユメ「じゃあ、次のリクエストをして下さい!」
永井 ユメ「お魚は? 玉子料理だったら? 蓮池さんは、何が1番好きですか?」
〇新橋駅前
蓮池 守「ねえ、今日は居酒屋に行かない? 話題の店が近くにあってさ」
永井 ユメ「ダメよ!!️ 蓮池さんには 私の手料理を食べて欲しいんです!」
蓮池 守「でもここんとこ、ちょっと続いてるし」
永井 ユメ「何で!? 毎日でも食べたいって、 言ったじゃないですか?」
永井 ユメ「それともやっぱり、 私の料理って美味しくないの!?」
蓮池 守「そんなことないよ。 ただビールと枝豆で、1杯やるのもいいかなって」
永井 ユメ「任せて下さい。 フライパンでささっと茹でますね」
〇女性の部屋
永井 ユメ「はい、どうぞ♥️」
蓮池 守「ありがとう・・・」
蓮池 守「ねえ。 まだ、何か作ってるの?」
永井 ユメ「ふふん フン~🎵」
蓮池 守「料理ばかりじゃなく、 せっかくだからこっちに来て──」
永井 ユメ「よし、完璧!!️」
蓮池 守「もう11時過ぎだよ。 今からこの量はキツイって!」
永井 ユメ「でも蓮池さんのために作ったんです♥️ ぜんぶ美味しそうでしょ?」
蓮池 守「さすがに無理。一口も入らない」
永井 ユメ「じゃあ、お弁当にしましょう。 職場に持っていって下さい」
永井 ユメ「これで明日も蓮池さんに、 私の手料理を食べてもらえますね」
永井 ユメ「カバンに入れておきま~す♥️」
蓮池 守「ちょっと、待って!! 勝手に・・・」
永井 ユメ「あれ? 空のお弁当箱が入ってる」
蓮池 守「そ、それは・・・」
永井 ユメ「手作り・・・ですか?」
蓮池 守「う、うん。 そうなんだ! たまには自分で用意してみようかと」
永井 ユメ「私の手料理に飽きたから!?」
蓮池 守「そういうワケじゃ・・・」
永井 ユメ「もっと上手になりますから、蓮池さんは 私の作るものだけを食べて下さい!」
蓮池 守「・・・・・・」
〇中規模マンション
〇中規模マンション
〇一戸建て
〇シックな玄関
蓮池 守「ユメちゃんか」
蓮池 守「しょっかく? ウニョウニョ!? 何だこの料理は・・・」
???「守くん、お帰りなさ~い。 今日は早いんだね」
蓮池 守「香織!! う、うん! やっと仕事の目処がついたからさ」
蓮池の妻「じゃあ、買い物に付き合ってよ。 新生児用の肌着が、あと2,3枚欲しくて」
蓮池 守「いいよ。すぐ家を出る?」
蓮池の妻「洗い物の途中だから、それだけ終わらせてくるね」
蓮池の妻「守くんのお弁当箱も出しておいて」
蓮池 守「了解。 僕も1本、仕事のメールを入れてから」
ゴメン。忙しくて、
しばらく会えそうにない。
蓮池 守「これで察してくれよ」
蓮池 守「来た!」
蓮池 守「ユメちゃん? この時間に電話はちょっと──」
ユメ「何で? 何で会えないの!? 私の手料理、食べたいでしょ!?」
ユメ「私、蓮池さんの気持ち分かってるから! 今日もいっぱい作ったから!」
蓮池 守「・・・仕事中だから、切るよ」
蓮池 守「ったく。潮時だな」
〇一戸建て
蓮池 守「香織、足もと気をつけて。 荷物はぜんぶ持つよ」
蓮池の妻「大丈夫よこれくらい」
蓮池 守「無理すんなって。体辛いだろ? もうだいぶ大きいんだから」
蓮池の妻「ふふ。 守くんは、子供にも甘くなりそうね」
蓮池 守「ん?」
蓮池 守「ユメ・・・」
蓮池の妻「守くん、どうかした?」
蓮池 守「な、何でもない! 香織、早く家に入ろう!」
〇シックな玄関
蓮池 守「うわ、マジかよ・・・」
蓮池の妻「やだ、乱暴な人ね。 誰かな?」
蓮池 守「ぼ、僕が出る! 香織は奥の部屋で休んでて」
蓮池の妻「うん・・・」
〇一戸建て
蓮池 守「ユメちゃん、どうやってここに?」
永井 ユメ「愛の力でお家を探しちゃいました♥️」
永井 ユメ「蓮池さんが、私の手料理を食べたいんじゃないかと思って」
蓮池 守「・・・家にまで押しかけて来るなんて」
永井 ユメ「それよりあの妊婦さん、誰ですか!? まさか、蓮池さんの・・・」
蓮池 守「そう、妻だよ」
蓮池 守「今が大切な時期だから、大声出さないでね」
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プロジェクトお疲れ様でした!
ユメちゃんの明るくお茶目な表情から狂気の表情まで、すごくお話にマッチしていました!
初のホラーとのことでしたが、めちゃくちゃ怖かったです😱
公開おめでとうございます🎊
ユメが段々と狂気じみていく様子がとても印象的でした😱
フライパンが一瞬光る演出を斬撃エフェクトで表現されていて勉強になりました✨
それにしても、そんないわく付きフライパンを売っていた料理教室の先生は何者なのでしょう🤔
守は自業自得ですが、奥さんとお腹の子供が不憫でしかないです😢
330万円は奥さんの御両親に渡しにいってほしいです😔
公開おめでとうございます!
ユメちゃんの可愛い立ち絵に頑張る健気な姿…からの狂気がもう鳥肌でした😱見事なヤンデレぶり。
いつもの椎名さんの作風からは思いも寄らないホラーで、愛というものの重さをひしひしと感じてしまいました…
しかしあの旦那は許せないです😠