渋谷という街(脚本)
〇ハチ公前
2027年12月15日 14時42分
渋谷駅前 ハチ公広場
ハク(ちょっと早かったかな? まあ、いいか、とりあえず到着をラインで報せて・・・)
ハク(えっ? アカも、今、着いた・・・?)
アカ「もしかして・・・ハク?」
ハク「えっ、もしかして・・・アカ?」
アカ「そう、アカ」
アカ「ハクってば若かったんだ」
ハク「う、うん。そーゆうアカは・・・」
アカ「オヤジで驚いた?」
ハク「えーと、うん・・・驚いた」
アカ「だよな」
ハク「あ、ホントに敬語なしでいいの?」
アカ「もちろん。ゲームの中と一緒って約束だったでしょ」
ハク「うん。分かった」
アカ「常に冷静で頼りになるタンクのハクが、こんなに若かったとはね」
ハク「それを言うなら、どんなピンチでも攻め続けるアタッカーのアカが、こんなに・・・」
アカ「オヤジで驚くよね」
ハク「うん・・・あっ、でも、物知りだとは思ってた」
アカ「そう? ハクってば何歳?」
ハク「16歳」
アカ「そりゃすごい・・・出会ったときは13歳だったわけだ・・・」
ハク「う、うん。アカは?」
アカ「ちょうど50歳」
ハク「両親より年上だ・・・」
アカ「まじか・・・だよなあ」
ハク「でも、50には見えないね」
アカ「そう?」
ハク「うん。オレが思う50歳とは違うかも」
アカ「50なんてさ、なってみたら大して成熟してないもんだよ」
ハク「ふーん・・・そんなもんなのかな」
アカ「こりゃあアヲが楽しみだな」
ハク「だね。リアルで会うまで素性を明かさないって、言い出したのはアヲだし」
アカ「待ち合わせを、この場所にしたのもアヲだしな」
ハク「すっごい年上か年下か?」
アカ「うーん。それはないかな、俺たちがテルスオンラインで出会ったのは、3年以上前な訳だし」
ハク「あの時、13歳だったオレが最年少だろうね」
アカ「だと思うよ。年齢層ちょっと高めだしね、テルスオンラインって」
ハク「じゃあ・・・」
アカ「上ってのも俺が最年長に近いと思うけど」
ハク「となると・・・インの時間を考えても、フツーに若い社会人とか大学生とか」
アカ「そうじゃないかな。フツーのお兄さんじゃない?」
アヲ「ざっんねーん! お姉さんでしたっ!」
ハク「え・・・?」
アカ「・・・もしかして・・・アヲ?」
アヲ「うん。アヲだよ」
ハク「ホントに?」
アヲ「うんっ! 驚いた?」
ハク「う、うん。まさか女性とは・・・」
アカ「そっかあ・・・我らがギルマスは女性だったかあ・・・」
アヲ「そう。トリコロール騎士団のギルドマスターは女だったのっ」
ハク「えーと・・・聞いていいかな?」
アヲ「なに?」
ハク「どうして男キャラでプレイしてるの?」
アヲ「ネトゲで女だと色々と面倒でしょ? わたしは・・・ううん、ボクは純粋にゲームを楽しみたいの」
アカ「たしかに・・・いまだに女性キャラは面倒かもな・・・」
アヲ「そそ。ゲームの中で求愛されるのとかマジ勘弁」
ハク「なるほど・・・でも、オレたちに明かして良かったの?」
アヲ「うん。アカとハクは本当の仲間だもん。でしょ?」
アカ「そうだな。驚きはしたけど、アヲはアヲだ」
ハク「だね。中身が女性でも、オレたちが頼りにしてるヒーラーのアヲはアヲだもね」
アヲ「そう言ってくれると思った」
〇渋谷ヒカリエ
アカ「さて、と。それじゃお互いの顔も見たことだし、さっそく店に移ろうか」
アヲ「うん、そうしよ。予約してあるよ。きょうはトリコロール騎士団3周年だもん。奮発してお寿司屋さんだよっ!」
ハク「・・・・・・」
アヲ「ハク、どうかした?」
ハク「いや・・・この3人って、周りからはどう見えるのかなって、ちょっと思ったり・・・」
アカ「ハハッたしかに。共通点なさそうだもな」
アヲ「そんなの気にしなくていいように、渋谷にしたんだよ」
ハク「え?」
アヲ「渋谷ってさ、多様なものを包み込んでくれるでしょ」
アカ「ああ・・・それはあるかも」
ハク「オレにとっては、大人でキレイな街だけど・・・」
アカ「俺が若い頃は、怖い街って側面もあったな」
ハク「え? 怖い?」
アカ「そんな時代もあったのさ。でも、どの時代も色んなカルチャーを、育んできた街でもあった」
アヲ「そそ。いつでも多様なものを否定しない街」
ハク「そうなんだ・・・オレはてっきり3人とも田園都市線沿いに住んでるからって理由だけだと・・・」
アヲ「それも、あるけどね。渋谷にしたのは、リアルがどんな年齢や性別でも、3人の初対面にぴったりだと思ったからだよ」
アカ「どんなに新しくキレイになっても、渋谷は渋谷ってことか。アヲがアヲなのと同じように」
アヲ「そうそう。ボクたちの個性や組み合わせなんて、余裕で受け入れる街だよ」
ハク「へえ・・・渋谷って面白いんだ・・・」
アヲ「面白いよ。再開発が終わって、これからもっと面白くなるんじゃない?」
アカ「そうだなあ・・・立派な容れ物が出来上がったから、これから中身が追いつくのかもしれない」
アカ「渋谷らしく色んなものを飲み込んで・・・」
アヲ「うん。ビックリするようなものが生まれるよ、きっと」
ハク「オレの居場所もあったりするかな・・・」
アカ「居場所?」
ハク「あ、うん・・・オレの居場所って今は、トリコロール騎士団だけなんだ・・・」
アヲ「あるよ、居場所。無ければ作ればいい」
アカ「そうだな。3人でギルドを作ったみたいに、渋谷に3人で居場所を作るのも面白いかもな」
アヲ「それ名案! うん。ゼッタイ面白いよ! 作ろう新しい居場所!」
アカ「よっしゃ。じゃあ寿司を食いながら作戦会議だ!」
アヲ「いいね。作戦会議。ワクワクしてきたよ。さっ行こ行こ」
ハク「そうだね・・・」
ハク「うんっ。行こうかっ!」
ハクの目に映る渋谷の街は輝いていた
大都会・渋谷ならではの「多様性を受け入れてくれる街」というテーマが温かく活かされている、素敵なお話でした!
確かに、素性も外見もバラバラの人達が初対面するのにピッタリな場所かもですね
軽快な会話で、最後までサクサク読めました
しっかりバックボーンがありそうな三人なので、これからどうなっていくのか気になりますね!😆
“多様性の街”だからこそ渋谷にした、というアヲの提案。彼らの言葉の節々からそれぞれの抱えるものを感じ、それを全て包み込んでくれる場所としての渋谷なのですね。
3人が渋谷で自分たちらしく生きられるといいなぁと思いました!
オンラインで知り合った人でも、絆を深めることができるんだなぁと感慨深くなりました……!
そして物語の着眼点も珍しくておもしろかったです🥰💓