読切(脚本)
〇男の子の一人部屋
一伊和虎(かずと)「どうせこの世なんてのは 腐りきってるんだ 全てめちゃくちゃになっちまえばいい」
野崎結美「なーに キレ散らかしてんのー?」
一伊和虎(かずと)「誰だ!」
野崎結美「えー? 小さい頃一緒に遊んだのに 覚えてくれてないんだ」
一伊和虎(かずと)「だから誰だよ」
野崎結美「結美だよー 思い出してよー」
結美・・・
そういえば幼い頃遊んだ
女性の親戚にそんな
女がいたな
一伊和虎(かずと)「で、何の用だ」
野崎結美「ズバリー 愛であなたを救いにきました」
一伊和虎(かずと)「は?」
野崎結美「かずとくんー そんなとこに引きこもってないで 外出よ?」
一伊和虎(かずと)「おい、どうするつもりだ」
彼女はオレの腕をグイグイ引っ張って
立たせると
どこかに連れていこうとする
〇街中の道路
野崎結美「いい天気だねー」
一伊和虎(かずと)「どうするつもりだ」
野崎結美「和虎くん、何があったか 知らないけどさー 家にいても何も始まらないよー」
一伊和虎(かずと)「しょうがねえじゃねえか 仕事見つからないんだからよ」
野崎結美「私が一生懸命 一緒に仕事探してあげるよ」
野崎結美「でも今は一緒にトキメキ体験しよっか」
一伊和虎(かずと)「何だ?」
結美が手を繋いでくる
野崎結美「あはー? 女の子とデートしてる感じ出てきた?」
一伊和虎(かずと)「んっ 何が目的だ」
野崎結美「ふふー 私もさ ドン底から這い上がってきたんだ」
一伊和虎(かずと)「どういうことだ」
そこから結美が
シリアスな表情を初めて
浮かべて語り出した内容は衝撃的だった
帰宅途中に何者かに性的に襲われ
半年以上は休職して
ずっと前を向けない状態だったと
野崎結美「そんな時に 君に関連する人物に 助けられたし 恩返ししたいってこと」
一伊和虎(かずと)「なあ 結美さんは何で今は 元気になれたんだ?」
野崎結美「そうだね・・・ 時間が解決してくれたとしか、 言いようがないな」
一伊和虎(かずと)「何度も面接落とされて 生きるのがイヤになりかけてたけど 自分が甘かったよ」
野崎結美「和虎くんは 一生懸命がんばってると 思うよ」
一伊和虎(かずと)「ありがとう」
野崎結美「私、応援してるから 和虎くんのことしゅき! だいしゅき!」
その言葉のあと、
結美はオレの唇を奪った
一伊和虎(かずと)「な、ななななな」
野崎結美「好きだから、 しちゃった」
野崎結美「これから水族館行こっか」
一伊和虎(かずと)「ああ・・・」
〇水中トンネル
野崎結美「うひゃー! 海の生き物勢揃い大博覧会だー!」
一伊和虎(かずと)「いやにテンションたけーな オイ」
野崎結美「私、水族館好きだからさー ねっ、私も水族館も 好きになって」
一伊和虎(かずと)「そう言われると好きになりそうだ」
野崎結美「生きるってことは 愛を育むことなんだよ 1人じゃ見つからないことも 2人だと見えてくるよ」
一伊和虎(かずと)「そうか」
野崎結美「抱きしめて ずっとそばにいて」
一伊和虎(かずと)「そ、そう言われても」
おずおずと彼女を抱きしめると
満面の笑みを浮かべた
野崎結美「あなたの夢を 後押ししてあげるから 私を愛して」
野崎結美「今まで1人で辛かったよね でも私がいるから」
一伊和虎(かずと)「ああ」
野崎結美「一緒に手を繋げば 繋いだ分の体温が 生きた証として残るの」
野崎結美「平凡な毎日が 幸せに変わる感じ 一緒に味わおうよ」
一伊和虎(かずと)「結美は明るい子なんだな」
野崎結美「そうだよー 生きるからには 前向きじゃなきゃ」
野崎結美「想定外なトラブルには 巻き込まれたけど 私くじけない」
一伊和虎(かずと)「普通はそうはいかないんだよ」
野崎結美「私も休職中は 全く前を向けなかった」
野崎結美「でもねー 色んな歌を聴くうちに 生きるってことが 1つの壮大な詩だと 思ったんだ」
彼女とオレとでは
人生に対する考え方や
経験値が違いすぎる
そう思わされた
〇線路沿いの道
野崎結美「それじゃ 明日も いつもいつでもどこでも 私とデートしようよ」
野崎結美「じゃねー!」
結美と出会ってから
異様に胸が高なってた
自分に気付かされた