第13話 アイゼイヤの虚実(脚本)
〇島の家
アドルフ・フォスター大佐「坊主は?」
霧生華清(きりゅうかせい)「ぐっすりと眠っています」
霧生華清(きりゅうかせい)「昨晩から動きっぱなしでしたから」
アドルフ・フォスター大佐「Mr.キリューは平気そうだね」
霧生華清(きりゅうかせい)「鍛錬の賜物です」
アドルフ・フォスター大佐「そうかい」
アドルフ・フォスター大佐「坊主のこと、任せても問題なさそうだね」
霧生華清(きりゅうかせい)「何と?」
アドルフ・フォスター大佐「なぁ、俺と『取引』しないか?」
霧生華清(きりゅうかせい)「『取引』?」
アドルフ・フォスター大佐「君たちの身の安全を約束する代わりに」
アドルフ・フォスター大佐「これまでに得た情報を渡してほしい」
アドルフ・フォスター大佐「今後得る情報も」
霧生華清(きりゅうかせい)「自分に情報を流せ、と?」
アドルフ・フォスター大佐「平たく言えばそうなるな」
霧生華清(きりゅうかせい)「パラディス国軍は祖父を殺しました」
霧生華清(きりゅうかせい)「信用できません」
アドルフ・フォスター大佐「そいつはケイレブの独断だ」
アドルフ・フォスター大佐「俺とは関係ない」
霧生華清(きりゅうかせい)「ですが──」
部下「大佐、もうじきスペンサー中将が到着します」
霧生華清(きりゅうかせい)「スペンサー・・・!?」
アドルフ・フォスター大佐「了解、下がれ」
部下「はっ」
霧生華清(きりゅうかせい)「騙したんですか?」
アドルフ・フォスター大佐「違うな、助けたるためだよ」
霧生華清(きりゅうかせい)「助けるため?」
〇大会議室
俺はケイレブを中心とした軍の思想が
気に入らない
パラディス国を絶対とする軍事思想が、ね
〇島の家
霧生華清(きりゅうかせい)「ならば何故自ら軍に?」
アドルフ・フォスター大佐「そのほうが動きやすいからさァ」
アドルフ・フォスター大佐「俺はケイレブを出し抜き、遺物を確保したい」
アドルフ・フォスター大佐「悪用させず、活用してェのさ」
アドルフ・フォスター大佐「世界平和のために」
霧生華清(きりゅうかせい)「あくまでもアドルフさんは軍と無関係だと?」
アドルフ・フォスター大佐「ああ、軍は・・・嫌いだよ」
アドルフ・フォスター大佐「潰したいとさえ思っている」
アドルフ・フォスター大佐「悪は滅びるべきだからね」
霧生華清(きりゅうかせい)「悪は滅びるべき・・・」
アドルフ・フォスター大佐「情報戦で優位に立てれば、俺は目的にまた一歩近づける」
アドルフ・フォスター大佐「ご協力いただけるかい?」
霧生華清(きりゅうかせい)「ですが──」
アドルフ・フォスター大佐「信用できなくても、この提案には乗るべきだよ」
アドルフ・フォスター大佐「坊主の身を案じるなら、状況的にさ」
アドルフ・フォスター大佐「わかった?」
霧生華清(きりゅうかせい)「はい」
キース・フォスター「何の用だ──」
〇田舎の病院の病室
霧生華清(きりゅうかせい)「う・・・」
キース・フォスター「おはよう、先生」
霧生華清(きりゅうかせい)「キースさん」
霧生華清(きりゅうかせい)「ここは?」
〇西洋の街並み
ここはブートゥスリオ
【メイナード】の件で医者も逃げちまってね
ナゥサからこの街まで移動してきたんだ
〇田舎の病院の病室
霧生華清(きりゅうかせい)「無事、だったんですね」
キース・フォスター「先生以外はね」
霧生華清(きりゅうかせい)「自分は大丈夫です」
霧生華清(きりゅうかせい)「いっ・・・!」
キース・フォスター「絶対安静だ」
キース・フォスター「いいね?」
霧生華清(きりゅうかせい)「はい」
霧生華清(きりゅうかせい)「・・・あの人たちは?」
キース・フォスター「逃げていったよ」
キース・フォスター「あの女も、ケイレブも」
霧生華清(きりゅうかせい)「指輪は?」
キース・フォスター「美味いもんじゃなかったね」
霧生華清(きりゅうかせい)「体調は?」
キース・フォスター「絶好調だよ」
霧生華清(きりゅうかせい)「そうですか」
霧生華清(きりゅうかせい)「追っ手が来る前にここを離れなければ なりませんね」
キース・フォスター「ああ」
キース・フォスター「だが、指輪が無くなっちまった以上」
キース・フォスター「遺物を先に見つけ出すのは──」
〇雪洞
父親「私にはもう、耐えられない」
父親「頼む──Mr.キース」
〇田舎の病院の病室
キース・フォスター(今のは・・・ダッド?)
キース・フォスター(だが、あんな場所、俺の記憶にはない)
キース・フォスター(『Mr.キース』ということは──)
霧生華清(きりゅうかせい)「キースさん?」
キース・フォスター「ん?」
霧生華清(きりゅうかせい)「顔が青いですよ?」
霧生華清(きりゅうかせい)「やはり指輪を呑み込んだ影響で体調が 優れないのでは?」
キース・フォスター「あ、いや、問題ない」
キース・フォスター「少し冷えたみたいだ」
キース・フォスター「温かいものを用意しよう」
キース・フォスター「少し待っていてくれ」
〇田舎の病院の廊下
キース・フォスター(つい誤魔化しちまった)
キース・フォスター「何か隠してるって、きっとバレてるよな」
ルディ・メイヤーズ医師「おや、Mr.フォスター」
ルディ・メイヤーズ医師「Mr.キリューは目覚めましたか?」
キース・フォスター「ああ、ルディ先生」
キース・フォスター「おかげさまでね」
ルディ・メイヤーズ医師「では、診察に伺いましょう」
ルディ・メイヤーズ医師「む?」
キース・フォスター「な、何だい? ジロジロ見て」
ルディ・メイヤーズ医師「顔色が悪いですな」
キース・フォスター「な、何だい? ぺたぺた触って」
ルディ・メイヤーズ医師「触診です」
キース・フォスター「触診?」
キース・フォスター「結構痛いんだが・・・」
ルディ・メイヤーズ医師「頭部と腹部に発熱あり」
ルディ・メイヤーズ医師「口を開けてください」
キース・フォスター「何を──」
キース・フォスター「うげっ!」
ルディ・メイヤーズ医師「微熱」
ルディ・メイヤーズ医師「うむ、精密検査が必要ですな」
キース・フォスター「ぐええっ!」
キース・フォスター「引っ張らないでくれ!」
キース・フォスター「なんて馬鹿力だ!」
ルディ・メイヤーズ医師「体格のわりに非力、と」
キース・フォスター「クソッ!」
キース・フォスター「こんなおっさんにまで言われるなんて!」
キース・フォスター「俺の身体がどうしたって言うんだ!」
ルディ・メイヤーズ医師「それを今から検査するのです」
ルディ・メイヤーズ医師「この症状は何か重大な病気に違いありません」
〇病院の診察室
ルディ・メイヤーズ医師「知恵熱でした」
キース・フォスター「ち、知恵熱ゥ!?」
ルディ・メイヤーズ医師「頭を使い過ぎて脳の処理容量を超えたのでしょう」
キース・フォスター「おいおい!」
キース・フォスター「俺はもう29だぜ!?」
キース・フォスター「考え過ぎで熱が出るワケないだろう!?」
ルディ・メイヤーズ医師「正確には『ストレス性高体温症』」
ルディ・メイヤーズ医師「ストレスが原因の心因性発熱症状です」
ルディ・メイヤーズ医師「ここ最近、慢性的なストレスに苛まれていませんか?」
キース・フォスター「ストレス、ね」
キース・フォスター「ついさっき首根っこを掴まれて、ここまで連行されたことかな」
ルディ・メイヤーズ医師「該当なし、と」
キース・フォスター「あんたなぁ!」
ルディ・メイヤーズ医師「発熱はありませんな」
ルディ・メイヤーズ医師「では、何か外的要因が・・・?」
キース・フォスター「もう気は済んだかい?」
キース・フォスター「そろそろ先生が痺れを切らして探しに来る 頃だと思うんだが」
ルディ・メイヤーズ医師「では、最後に一つだけ」
ルディ・メイヤーズ医師「最近、何か身体に変化はありましたか?」
キース・フォスター「変化?」
ルディ・メイヤーズ医師「例えば──何か飲み込んだ、など」
ルディ・メイヤーズ医師「あるのですね」
キース・フォスター「ああ、ワケあって指輪をね」
ルディ・メイヤーズ医師「既婚バレ防止ですな」
キース・フォスター「誓って違う!」
ルディ・メイヤーズ医師「ですが、それはおかしい」
キース・フォスター「おかしくな──!」
ルディ・メイヤーズ医師「レントゲンを撮りましたが」
ルディ・メイヤーズ医師「貴方の腹部には──何もありませんでした」
キース・フォスター「な、何だって・・・!?」
〇田舎の病院の病室
何か身体に異変を感じましたら
すぐに仰ってください
手遅れになる前に──
霧生華清(きりゅうかせい)「キースさん?」
キース・フォスター「ん、ああ」
キース・フォスター「眠いのかね、少しぼーっとしていた」
霧生華清(きりゅうかせい)「これからのこと、話しおきたいのですが」
キース・フォスター「そうだね」
キース・フォスター「指輪が無い以上、遺物探しは困難になった」
霧生華清(きりゅうかせい)「ですが、諦めるつもりもない・・・ですよね?」
キース・フォスター「当然だ」
キース・フォスター「だが、時間が無いのもまた事実」
キース・フォスター「そこで提案なんだが」
キース・フォスター「先生が回復するまで一人で探してもいいかい?」
霧生華清(きりゅうかせい)「な・・・!」
キース・フォスター「言いたいことがあるのはわかる」
キース・フォスター「だが──」
霧生華清(きりゅうかせい)「いえ」
霧生華清(きりゅうかせい)「それが最善だと思います」
キース・フォスター「先生」
霧生華清(きりゅうかせい)「よろしくお願いします」
霧生華清(きりゅうかせい)「どうか無理はなさらず」
キース・フォスター「ああ」
キース・フォスター「イイ結果を持ってくるよ」
〇雪洞
ヒュプノス雪洞
キース・フォスター(ここだ)
キース・フォスター(さっき頭に過った場所で間違いない)
〇暗い洞窟
騙す形になってすまない、先生
こんなふうにあんたの腕を利用するなんて
俺はケイレブと同じだね
だが、俺はあの映像の真偽を確かめたい
脳裏を過る、知らない記憶の──
〇研究装置
父親「記憶改竄端末【アイゼイヤ】」
父親「記憶の改ざん、そして抹消を実現する」
父親「これを使えば──」
〇研究装置
【アイゼイヤ】「メニュー ヲ 選ンデクダサイ」
▶改竄
抹消
履歴
キース・フォスター「カイ・・・マツ・・・レキ・・・?」
キース・フォスター「習ってない文字ばかりだ」
キース・フォスター「困ったね」
???「改ざん、抹消、履歴ですね」
改竄
抹消
▶履歴
【アイゼイヤ】「過去ノ 使用履歴ヲ 表示シマス」
キース・フォスター「せ、先生!?」
キース・フォスター「何故ここに!?」
霧生華清(きりゅうかせい)「追ってきました」
霧生華清(きりゅうかせい)「いつ引き返してくるのかと思っていましたが」
霧生華清(きりゅうかせい)「結局、最深部まで来てしまいました」
キース・フォスター「こ、こいつはだね──」
霧生華清(きりゅうかせい)「自分も無理を押して来ました」
霧生華清(きりゅうかせい)「約束を違えたのはお互い様です」
キース・フォスター「・・・ああ」
霧生華清(きりゅうかせい)「キースさん、やはり何か身体に異常が あるんじゃないですか?」
キース・フォスター「・・・実は──」
【アイゼイヤ】「1960年9月1日」
【アイゼイヤ】「キーワード 抹消」
【アイゼイヤ】「──気象干渉装置【オズワルド】──」
霧生華清(きりゅうかせい)「その日は・・・!」
キース・フォスター「パラディス条約の締結日」
〇研究装置
父親「軽蔑してくれ」
父親「貴方にはその権利がある」
然様な真似をするものか
確かに我々は浅慮だったかもしれない
だが、どれだけ思い悩んだとしても
同じ決断を下しただろう
私たちは、為すべきことを為したのだよ
父親「Mr.キース・・・」
父親「貴方の友であったこと、誇りに思う」
父親「貴方は──最高のパートナーだ」
さらば、戦友(とも)よ
君たちに幸あらんことを
【アイゼイヤ】「記憶ノ 抹消ヲ 開始シマス──」
〇研究装置
キース・フォスター「ぐあっ!」
霧生華清(きりゅうかせい)「キースさん!」
霧生華清(きりゅうかせい)「今すぐに戻りましょう」
キース・フォスター「あ、ああ・・・」
キース・フォスター「その前に、こいつを止めないと──」
【アイゼイヤ】「記憶抹消 対象者名」
【アイゼイヤ】「ゲイル・カーター」
キース・フォスター(やはり──)
キース・フォスター(やはりダッドの記憶を──!)
霧生華清(きりゅうかせい)「カーター氏・・・!?」
キース・フォスター「何・・・!?」
キース・フォスター「何故──!」
【アイゼイヤ】「認証ユーザー キイス・ツグヨシ」
霧生華清(きりゅうかせい)「キイス、ツグヨシ・・・」
霧生華清(きりゅうかせい)「やはり遺物を使用していたんですね」
霧生華清(きりゅうかせい)「──お祖父さん」
キース・フォスター「何!?」
キース・フォスター「Mr.キースが、爺さんだと・・・!?」
霧生華清(きりゅうかせい)「お祖父さんを、ご存知なんですか・・・!?」
キース・フォスター「先生こそ、何故ダッドのことを・・・!?」
キース・フォスター「まさか──!」
〇草原
ダリル・カーター「兄ちゃん、今日は何するの?」
アイザック・カーター「そうだな」
アイザック・カーター「今日はマムの農園を手伝ってからビーチだ」
ダリル・カーター「やったー!」
アイザック・カーター「よし、ついてこい! ダリル!」
アイザック・カーター「──ジュニア!」
霧生華清(きりゅうかせい)「オーケー、アイク」
医者とのやりとりが面白いなー😂なんて思ってたら…!
キリューとキースの縁が今回だけのものではないとは思いませんでした
指輪の見せる映像が物語にどう影響するのか楽しみです