エピソード00 母(脚本)
〇病室のベッド
あれは、まだ私が幼かった頃の・・・母との思い出
授業参観の下準備で自分の名前の意味を作文にして書いてくる宿題をもらった時のこと
私は、母に会えるのが楽しみなのと、どんな話が聞けるかでワクワクしながら病室に入ったっけ──
その頃の母は、双子を産んだことにより持病が悪化して入院を余儀なくされていたんだよね
桜蕾(幼少期)「お母さん!お母さん!お母さん!!!!」
紅葉「さくら!?どうしたのそんなに急いで入ってきて」
桜蕾(幼少期)「あのねあのね!今度の授業参観でね。自分の名前の意味を発表するの!!」
紅葉「そうなんだね」
桜蕾(幼少期)「それでね・・・お母さん。自分の名前の意味ってなに?」
紅葉「うーん。そうだな・・・」
紅葉「さくらの名前って、桜の蕾って書くの」
桜蕾(幼少期)「桜の蕾?」
紅葉「そう。じゃあ、お母さんの好きなお花なんだと思う?」
桜蕾(幼少期)「さくら!!」
紅葉「そう!お母さんの好きなお花は桜。三人目は自分の好きな花である桜という漢字を使いたかったの」
桜蕾(幼少期)「そうなんだ」
紅葉「うん。じゃあ次は蕾の方だね」
桜蕾(幼少期)「つぼみってどんな意味があるの?」
紅葉「じゃあ、1つ物語を聞かせてあげる」
桜蕾(幼少期)「物語!!聞きたい聞きたい」
紅葉「いい、さくら。人はね皆んな蕾を持って生まれてくるの」
桜蕾(幼少期)「つぼみを?」
紅葉「そう。その蕾はね、大人になるにつれて成長して、やがて綺麗な花を咲かせるの」
桜蕾(幼少期)「花を?」
紅葉「そう、大人になって咲き乱れたその花を今度は色んな人に分け与えていくの」
桜蕾(幼少期)「わけ、あた、える?」
紅葉「うーん。そうだな、その花を色んな人にそれぞれ渡していくの」
桜蕾(幼少期)「渡す?」
紅葉「そう、それをね優しさだったり愛情だったりするの」
紅葉「うん、そう。だから桜蕾の名前に込めた願いは・・・」
紅葉「桜の蕾のような綺麗で立派な花が咲かせられますようにかな」
桜蕾(幼少期)「わぁ!!!すごく可愛い!」
紅葉「うん、でしょ?さくらは、お母さんみたいな病気にはならず、すくすく成長してくれたらお母さん嬉しいな」
桜蕾(幼少期)「うん!お母さん、安心して。今はピンピンしてるから」
桜蕾(幼少期)「逆上がりだってできるんだから」
紅葉「ふふ、そうね。でもあまりはしゃぎすぎて、お父さんを心配させたらダメだからね」
桜蕾(幼少期)「はーい!」
紅葉「あと、よつばと、とうまのこともよろしくね。さくら、お姉ちゃんだもんね」
桜蕾(幼少期)「うん! お父さん大変そうだから、お手伝いしてるよ。お兄ちゃんとお姉ちゃんと一緒に」
〇おしゃれなリビングダイニング
四椿「おぎゃーおぎゃーーー」
未来翔(父親)「よつば、ミルクかな?それともオムツかな?」
四椿「ぎゃー、ぎゃーー、」
柊真「おぎゃーー、おぎゃーーーー」
未来翔(父親)「と、とうまも、どうしたの?オムツかな?ミルクかな?」
紫莉(中学生)「お父さん、ダメすぎ!!ちょっと、とうま借りるね」
未来翔(父親)「うぅ・・・面目ない」
紫莉(中学生)「よーしよし。よーしよし」
柊真「すーすー」
未来翔(父親)「すげー、すぐ寝た」
紫莉(中学生)「お父さん、ダメダメすぎ!ミルクはさっき飲んだし、オムツだってさっき変えた」
未来翔(父親)「あぁー、そうだったっけ」
紫莉(中学生)「そうだよ!あと、顔怖い。どんなに大変でも笑顔でいないと、とうまとよつばも、もっと泣いちゃう」
未来翔(父親)「うぅ・・・分かってるんだけど、思ってた以上に大変で、双子育てるの」
紫莉(中学生)「確かに大変だけど、よつばと、とうまも成長するんだから、赤ちゃんなんて、一瞬だよ」
紫莉(中学生)「寝返りをうって、ハイハイして、掴まり立ちをして歩いて、そしてパパって喋るようになる」
紫莉(中学生)「だから、この大変さも楽しまないと損じゃない?パパ」
未来翔(父親)「そうだな。よつばと、とうまがパパっていったら、感動のあまり泣くかも」
紫莉(中学生)「さくらの時だって号泣してたもんね」
桜蕾(幼少期)「なんの話してるの?」
紫莉(中学生)「あ、さくら。しーっ!今よつばと、とうま寝てるから静かにね」
桜蕾(幼少期)「ヒソ わかった」
桜蕾(幼少期)「ヒソ 撫でていい?」
紫莉(中学生)「起こさないようにね」
桜蕾(幼少期)「ヒソ わかった」
桜蕾(幼少期)「ヒソ 可愛い」
未来翔(父親)「だろ?さくらも可愛かったんだぞ」
桜蕾(幼少期)「ヒソ そうなの?」
紫莉(中学生)「うん、そうだよ。お父さん、さくらが初めてパパって言った時号泣したんだから」
未来翔(父親)「そ、それはあまり言わないでくれ・・・恥ずかしい」
桜蕾(幼少期)「ヒソ お父さん照れてる」
紫莉(中学生)「ふふふ、可愛い」
お父さん大好き!
未来翔(父親)「2人して・・・もぅ。パパも大好きだ!」
〇教室
生葵(いつき)先生「はい!皆さん。今日は授業参観です。普段の授業を親御さんに見せましょうね」
全員 はーい!
生葵(いつき)先生「今日は、自分の名前の意味について作文で発表していただきます。では、最初読みたい人手を挙げて」
剛「先生!はい!!」
生葵(いつき)先生「おっ!では剛君」
剛「はい!」
剛「僕の名前に込められた意味は」
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
剛「です!」
生葵(いつき)先生「よく出来ました。いい名前ですね。たくましく強い男の子に育って欲しい」
生葵(いつき)先生「それは、お母さんやお父さんが剛君に託した願いですよ」
生葵(いつき)先生「では、再度剛君に拍手を」
生葵(いつき)先生「では、次に発表してくれる方!」
桜蕾(幼少期)「はーい!」
生葵(いつき)先生「では、さくらさんどうぞ!」
桜蕾(幼少期)「はい!」
桜蕾(幼少期)「私のお母さんは、今入院しています。そして自分の名前の意味について聞いてきました」
桜蕾(幼少期)「私は、5人兄妹の3番目です。お母さんは3番目の子には自分の好きな花を使った名前をつけたかったそうです」
桜蕾(幼少期)「お母さんの好きな花は桜。なので私の名前には桜がついてます」
桜蕾(幼少期)「蕾に込めた意味は、人はそれぞれ蕾を持って生まれてくる。大人になるとその蕾はやがて綺麗な花を咲かせる」
桜蕾(幼少期)「そして、お母さんが私に込めた願いは、桜の蕾のように綺麗で立派な花が咲かせられますようにです!」
桜蕾(幼少期)「そして、お母さんみたいな病気にならずすくすくと成長していって欲しいとも言ってました。以上です!」
生葵(いつき)先生「よく出来ました。素晴らしい願いですね。お母さんの思いがしっかり込められた良い名前だと思います」
未来翔(父親)(紅葉、そんな願いを・・・)
未来翔(父親)(さくら、大きくなったな)
未来翔(父親)(これからは俺が守らないと、紅葉にも示しがつかないからな)
とても感動的なお話でした!! 名前に込められた意味が素敵ですね。ジーンときました。お母さんが、早く良くなってくれれば良いなと思います。優しいお父さんやしっかり者の姉、家族が団結して頑張って欲しいですね!!😭