Ep.22 / THE ELUSIVE NIGHT WATCH #14(脚本)
VILLPAIN/ORIGINE
THE ELUSIVE NIGHT WATCH #14
〇入り組んだ路地裏
僕は思うように動かない身体を引きずりながら、繁華街のはずれまでやってきた。
横にいるちーちゃんは、心配そうだ。
根須戸智是「しゅーちゃん、さっき撃たれたところは大丈夫? 痛みは?」
ナイトウォッチ「平気。無理しなければ」
ちーちゃんは僕のバイタルを確認して、ほっとした。
根須戸智是「・・・診断アプリでも軽傷、と。 よかった。いま、安全な逃走ルート探すね」
目の前にウインドウを次々に展開させ、真剣な表情で睨む。
根須戸智是「包囲網に穴は・・・ダメ。 不確定要素が多すぎる」
根須戸智是「もっと確実なルートは・・・?」
ちーちゃんは鬼気迫る表情でウィンドウを表示させては消し、操作し続けている。
僕はなんだか、いたたまれなくなった。
ナイトウォッチ「・・・でもさ。さっきのはすごかったね! ニューヒーローが助太刀とか! 」
ナイトウォッチ「コミックみた・・・い、痛ぁっ! さっき、撃たれたところがぁあっ!」
ちーちゃんが泣きそうな顔で怒った。
根須戸智是「馬鹿! 大人しくしてなさい!」
根須戸智是「今は逃げるほうに集中! 体力温存して!」
ナイトウォッチ「ご、ごめんなさい・・・」
ちーちゃんは一瞬僕を睨むと、僕に背を向けてウインドウに向きなおった。
根須戸智是「サポートAI。ルートを検索して。 連中の動きも、最新のものを逐次表示して」
ナイトウォッチ「あ、あの・・・」
根須戸智是「彼が世渡を襲ったおかげね」
根須戸智是「包囲網に抜けられそうな穴がある。 突破するよ」
ナイトウォッチ「ちーちゃん、怒ってる?」
根須戸智是「次の角まで走って。5秒で」
絶対怒ってる。
ナイトウォッチ「・・・はい」
〇大きい研究施設
その時、ナイトウォッチの様子を監視している者がいた。
〇屋上の隅
ゼニス日本支社の屋上に立つ黒い人影。
──NIGHT WATCHだ。
NIGHT WATCH「・・・・・・」
彼の左目のカメラが甲高い音と共に回転し、街を逃げ回るナイトウォッチの姿を見張り続けていた。
〇荒廃したホテル
僕らはなんとか、基地に逃げこんだ。
〇地下倉庫
コスチュームを脱いだ僕の上半身は、湿布と絆創膏まみれになっていた。
久常紫雲「応急処置OK。 打撲も肋骨のヒビも3日で完治予定」
久常紫雲「さすが500万の医療マイクロマシン。 ねー?」
久常紫雲「・・・ちーちゃん?」
沈黙。ちーちゃんは現れない。
久常紫雲「だから、本当ごめんって。 そんなに怒らないでよ・・・」
・・・怒ってないよ
消沈した様子のちーちゃんが現れた。
根須戸智是「しゅーちゃんには、怒ってない」
久常紫雲「・・・?」
根須戸智是「自分の幼稚さに、腹が立つの。 だからさっきのは八つ当たり」
根須戸智是「・・・ごめんね」
久常紫雲「ちーちゃんが幼稚なら、僕なんて」
根須戸智是「しゅーちゃん。真面目な話。聞いて」
久常紫雲「・・・はい」
根須戸智是「ヒーロー活動。もう、やめよう」
久常紫雲「えっ! なんで? 」
久常紫雲「・・・僕らでゼニスに正義の鉄槌をくだすんじゃ・・・」
ちーちゃんは泣きそうだった。
根須戸智是「どうでもいいの、そんなこと! 死ぬかもしれない!」
根須戸智是「しゅーちゃんが! 絶対、それは嫌なのっ!」
久常紫雲「ちーちゃん・・・」
根須戸智是「私、馬鹿だった。 絶対そんなことにはならないって」
根須戸智是「思いこんでた。自信があった。 自信があった。でも・・・違ってた」
根須戸智是「今日、あれからずっと身体の震えが、止まらないの・・・」
ちーちゃんは唇をぎゅっとかみしめて、自分で自分の身体を抱きしめた。
根須戸智是「しゅーちゃんが、死んじゃったら。 いなくなったらどうしようって」
根須戸智是「頭の中がぐるぐるぐるぐるして・・・」
そこにはいつもの強気なちーちゃんはいなくて、今にも壊れそうだった。
久常紫雲「でも生きて帰れた・・・じゃない?」
根須戸智是「運がよかっただけよ・・・」
僕は震え続けるちーちゃんに手を伸ばした。
・・・でも僕の手は、ちーちゃんのの身体をすりぬける。
・・・いつも忘れる。
ちーちゃんはここにはいないんだ。
ちーちゃんは寂しげに微笑んで、僕の手に自分の手を重ねた。
根須戸智是「しゅーちゃんが生きていてくれなくちゃ。 全部、何の意味もないの」
根須戸智是「全部、しゅーちゃんに会うためだから」
久常紫雲「・・・会いに行くよ? ニュージーランドまで」
久常紫雲「たぶん貯金、空になるけど」
ちーちゃんが曖昧に微笑んだ。
根須戸智是「ほんと。しゅーちゃんは可愛いなぁ」
久常紫雲「・・・? どういうこと?」
根須戸智是「・・・・・・」
ちーちゃんは、曖昧な笑みのままだ。
そのとき、ピコンと通知音がした。
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