第4話 夢ならば醒めないで(脚本)
〇キラキラ
???「エリカ、眠ってしまったのか・・・?」
優しい声が聞こえる。
その声の主は、私の頬を優しく撫でた。
エリカ(きっとバンね・・・)
エリカ(こんなに、優しくて大きな手・・・ バン以外にありえないわ)
エリカ(──これは夢ね。 だって、バンは今頃お屋敷だもの・・・)
エリカ(ああ、幸せな夢・・・ どうか醒めないで・・・・・・)
エリカ「好きよ、バン──」
私は頬に添えられた手をそっと握った。
〇城の客室
エリカ「好きよ、バン──大好き」
???「・・・俺はバンではない」
エリカ「・・・ロイド・・・様・・・・・・?」
ロイド「あ、ああ、ロイドだ・・・・・・」
ロイド「あっと・・・・・・手を、離して──」
エリカ「・・・」
エリカ「きゃぁぁぁぁあーっ!!」
ドンッ!
気付けば、目の前のロイド様の胸を押し返していた。
ロイド様はそのままベッドの下に頭を打ち付ける。
ロイド「いっ・・・」
エリカ「あ・・・ごめんなさい・・・・・・」
エリカ「じゃなくて! 夜中に女性の部屋に入るなんて、いくら王子だからって・・・」
ロイド「ち、違う! 別にエリカの寝込みを襲おうと思った訳じゃない!」
エリカ「ね、ね、寝込みを襲うですって!?」
ロイド「違うっ! 俺は、ただエリカに話をしに・・・」
エリカ「ノックもなしに部屋に入るなんて!」
ロイド「ノックはしたさ!」
ロイド「だが、返事がなくて──」
ロイド「パーティーでは少し飲み過ぎていたようだったから、もしかしたらと・・・」
エリカ「じゃあ手は!? あの頬に触れた手は何だったのよっ!?」
ロイド「涙の痕をぬぐってやろうと思っただけだ!」
エリカ「・・・」
ロイド「・・・無礼は詫びる」
エリカ「私も勘違いして、叫んだりなんてしてごめんなさい・・・・・・」
ロイド「いや、いい。それより──」
ロイド「お前はあの執事の──」
バンッ!
突然の大きな音に、私とロイド様は顔を見合わせた。
???「ご無事ですかっ!?」
〇城の客室
エリカ「バ、バンっ!?」
バン「ロイド様・・・」
バン「ああ、私は何てことを・・・・・・」
バン「お嬢様の叫び声が聞こえたので、つい・・・」
ロイド「ふっ」
ロイド「エリカ、良かったな」
ロイド様は立ち上がると、そのまま部屋を出ていこうとする。
バン「ロイド様、お待ちください! 出ていくべきは私です!」
ロイド「今はお前がアイツの傍にいてやれ、優秀な執事サン」
ロイド様はバンの肩をポンと叩くと、
そのまま部屋を出ていった。
エリカ「バン、どうしてここに?」
バン「お嬢様、大変申し訳ありませんでした」
バン「まさかロイド様がいらっしゃるとは思わず、」
バン「主の邪魔をするなど、あってはならぬ行為。エリカ様の執事失格でございます・・・」
エリカ「そんなことないわ! だって私、バンが来てくれて嬉しかったもの!」
エリカ「バンはお屋敷に帰ったとばかり思っていたの。ロイド様は、そんな私を心配してくださっただけなの!」
バン「ロイド様はとてもお優しい方なのですね。私も嬉しいです」
エリカ「違う・・・違うのよバン。私は──」
バン「お嬢様、まだそんなことをおっしゃられるんですね」
エリカ「だって、私は貴方が・・・」
バン「お嬢様、はっきり言わなければ分からないのですか!?」
バン「お嬢様が選ぶべき伴侶は王子です。 私ではありません」
エリカ(そんなことは分かってる・・・ 分かってる、けど・・・・・・)
エリカ「仕方ないじゃない! 貴方が好きなんだもの!」
バン「お嬢様っ!」
エリカ「貴方が好きなの」
バン「やめてください!」
エリカ「貴方がいない未来なんて考えられない!」
バン「いい加減にしてください!」
エリカ「貴方さえ側に居てくれれば、私は──」
チュッ
エリカ「バン・・・・・・?」
バン「私の気も知らないで、よくそんなことが言えたものです」
エリカ「どういうこと・・・・・・?」
バン「エリカ様を、お慕いしておりました。 ・・・何年も前から」
エリカ「嘘・・・・・・」
エリカ「だってバン、そんな素振り全く見せなかったじゃない・・・」
バン「ですが、私は執事。ただの使用人にすぎません」
バン「私はお嬢様に恋心を打ち明けられる立場ではないのです。 エリカ様だって、本当は分かっていらっしゃるのでしょう?」
エリカ「ねえ、バン・・・」
バン「何でしょう?」
私はバンの腕を引き寄せた。
チュッ
エリカ「今だけでいいから、夢を見せて欲しいの」
エリカ「今夜だけは、貴方のプリンセスでいさせて」
バン「しかし・・・・・・」
エリカ「今夜だけでいいの。 明日になったら、王子たちと向き合うわ」
エリカ「だから・・・」
チュッ
3度目のキスは、温かくて、優しくて、
悲しくて、切なかった。
エリカ「バン・・・・・・」
その夜、バンは私の涙が止まるまで、ずっと優しく抱き締めてくれた。
エリカ(好き。大好き)
エリカ(このまま、夜が明けなければいいのに・・・)
せ、切ない……! 叶わない恋、せめて両思いでよかったと思うべきなのか、それとも思いあっているから切ないのか……。このまま夜が明けなければと思う気持ち、とてもよくわかります!