第十五話 心(脚本)
〇溶岩池のある洞窟
魔王様「私の可愛い部下をよくもやってくれたね」
魔王様「ガブリエルは裏切りか? やはり人間と魔物は相容れないようだ」
ガブリエル騎士団長「・・・」
魔王様「まあ、そんなことはどうでもよい」
魔王様「ヤコブ、だったか」
ヤコブ隊長「何だ」
魔王様「お前の強さはかねがね聞いている ガブリエルもそちらに行った以上 私はお前と戦いたくない」
魔王様「──だから交渉だ アルルをこちらに寄越せ」
アルル姫「・・・」
ヤコブ隊長「断る」
魔王様「なぜだ?」
魔王様「アルルは見た目はもはや魔物 じきに心も取り込まれるだろう」
魔王様「それに、アルルをこちらに渡せば この魔界との入り口を封鎖し──」
魔王様「──魔界は人間界に干渉しないと 約束しよう」
ヤコブ隊長「・・・それでも、断る」
魔王様「それがお前の心か? 一度はこちらに渡そうとしたくせに」
魔王様「人間どもは実に愚かだ」
魔王様「感情とかいう訳の分からないもので すぐに意見を変えやがる」
魔王様「何にも流されずに 貫き通すことができない」
魔王様「だから人間は弱いのよ」
ヤコブ隊長「・・・だが」
ヤコブ隊長「それは強さでもあると思う」
魔王様「何?」
ヤコブ隊長「何かを守るために 変えなければならないこともある」
ヤコブ隊長「それでも守りたいと思うものを 守ることが強さだ」
アルル姫「ヤコブ・・・」
ヤコブ隊長「安心しろ、アルル お前のことは、俺が守る」
アルル姫「こんな、魔物の姿でも・・・?」
ヤコブ隊長「当たり前だ。お前は、私の妻だろう」
アルル姫「ヤコブ・・・あたしは・・・」
ルーラ(女騎士)「ねえアレク、 アルルちゃんを人間に戻すには──」
アレク(庭師)「兄貴、前にもやったんだろ! どうにかアルルの魔物の力を封印して──」
ガブリエル騎士団長「悪いが、それはできない」
ガブリエル騎士団長「封印の力は、 その人に対して一度しか使えない」
ガブリエル騎士団長「他に、アルル姫を人間に戻す方法は──」
アレク(庭師)「・・・人間との、交わりを持つこと」
ルーラ(女騎士)「ヤコブ! アルルちゃんを元に戻すために今──」
アレク(庭師)「な、やめろ! 破廉恥だ!」
ルーラ(女騎士)「そんなこと言ってる場合!?」
ルーラ(女騎士)「やるのよ、ヤコブ!! アルルちゃんが人間だって証明するの!」
アレク(庭師)「・・・大丈夫だ、 俺らは見ない・・・から・・・」
ヤコブ隊長「な、バカなことを!」
アルル姫「ヤコブ・・・」
アルル姫「いいよ、私のことはもう・・・」
アルル姫「魔物は魔界にいるべき 私は魔物になるんだもの。だから・・・」
魔王様「アルルをこちらに渡すのだ、 愚かな人間ども」
アルル姫「今までありがとう、ヤコブ」
ヤコブ隊長「・・・アルルっ!」
アルル姫「ヤコブ?」
ヤコブ隊長「好きだ! だから・・・最後にこれだけ、許してくれ」
ヤコブ隊長「唇を、こちらに──」
アルル姫「ヤコブ・・・」
アルル姫「私も、好き・・・」
アレク(庭師)「何だ、これ・・・」
〇幻想空間
アルル姫(何だろう、なんだかものすごく・・・)
アルル姫(身体が熱い・・・ キスって、こんなに──)
アルル姫(切ないって、悲しいって こういう感情だったんだ)
アルル姫(こんな感情も、魔物になったら 私、忘れちゃうんだろうなぁ・・・)
アルル姫(ありがとう、ヤコブ・・・ 私の愛しい、旦那さん・・・)
〇黒
アルル姫(あれ、私・・・何も感じない)
アルル姫(完全に魔物になっちゃったのかな そうか、そうだよね・・・)
ヤコブ隊長「アルル!」
アルル姫(ヤコブの声・・・ 本当に優しいなぁ)
アルル姫(こんな魔物の私の名を 呼んでくれるなんて・・・ね・・・)
ヤコブ隊長「しっかりしろ、アルル!」
アルル姫(あれ・・・)
〇溶岩池のある洞窟
ヤコブ隊長「アルル! アルル・・・」
ヤコブ隊長「アルル・・・」
アルル姫「あれ、私・・・」
アルル姫「あれ・・・手が・・・」
ヤコブ隊長「人間だ、アルル」
ヤコブ隊長「アルルは人間で・・・私の大切な妻だ」
ルーラ(女騎士)「でも、何で・・・?」
ガブリエル騎士団長「交わるというのは、 身体の深い場所でつながりあうこと」
ガブリエル騎士団長「魔物の場合は意味通り体の交わりのみだ しかし──」
ヤコブ隊長「人間の場合は 心と心のつながり――というわけか」
アルル姫「ヤコブ・・・ヤコブ!」
ヤコブ隊長「や、やめろ・・・苦しいだろう」
アルル姫「やだ! もっとぎゅってする!」
ヤコブ隊長「・・・そうか」
〇溶岩池のある洞窟
魔王様「くそう・・・」
ヤコブ隊長「待て、魔王」
魔王様「何だ?」
ヤコブ隊長「貴様は取引をしようと言ったな」
魔王様「アルルが人間に戻ってしまった今、 もう、する気はなくなったがな」
ヤコブ隊長「なら、私から提案する」
ヤコブ隊長「魔物をこちらの世界に寄越すな。 その代わり──」
ヤコブ隊長「魔界からこちらに来たいときは、 我がブレーヴ騎士団を通せ」
ヤコブ隊長「そうすれば、人間界への流入を審査する」
魔王様「アルルは人間になったのだ 私はもう人間界に関わる気はない」
ヤコブ隊長「だが・・・ 娘に、会いたくなるときもあるだろう」
魔王様「そんなこと──」
ヤコブ隊長「貴様がわざわざここまで来たのだって、 娘を取り返したいと思ったからだろう?」
魔王様「・・・」
ヤコブ隊長「それから、ドラゴンについては こちらの世界での生活を許可する」
ヤコブ隊長「その身は、我々が保証しよう」
魔王様「・・・貴様の狙いはそちらか」
ヤコブ隊長「どうだかな」
アルル姫「あ、あの!」
アルル姫「お母さん、なんですよね」
アルル姫「・・・生んでくれて、ありがとう」
魔王様「何だと?」
アルル姫「だって、 私がこの世界に生まれなかったら──」
アルル姫「ヤコブと、 ──みんなと出会えなかったから!」
魔王様「・・・」
アルル姫「魔物は怖い。でも──」
アルル姫「家族だもの。あなただって」
魔王様「・・・そうだな。わが娘よ」
ヤコブ隊長「・・・帰るか、ブレーヴへ」
アルル姫「うん・・・」
秘めた恋を打ち明けるヤコブの表情を最後の最後に見せるなんて反則ですよー!ヤコブは怒った様な顔ばかりだったのでデレ顔にズキューン!となりました☺️
我が子を思う愛、兄弟愛、あらゆる愛のハッピーエンドが連鎖していくなんて私まで幸せのお裾分けをいただきました😊ごちそうさまです
ヤコブがっ!!✨ヤコブがデレてくれましたっ!!!!!!✨わーい!!!!わーい!!!!!!!✨🥰ありがとうございます💖🥰
魔物姿のアルルにもしっかりとキスするヤコブ…実はめっちゃベタ惚れじゃないですか・・・いつから・・・いつからヤコブは惹かれていたのか気になりますー!!!!!😭💖尊いです✨🥰
魔王様も娘思いで良かったです✨😆
エピローグも楽しみです✨
とてもドキドキする展開と演出で、セリフの一つ一つが心に沁み入ります🥰
ここまで言葉少ないヤコブさんだからこそ、その言葉の重みを感じされますね😊
そして、「人間との交わり」に破廉恥な想像をしてしまったことを深くお詫び申し上げます😂 そんなことを一瞬想像したためか、キスでの心の交わりのくだりでは猶更気持ちが洗われるようでした😊