蛇地獄

YO-SUKE

最終話 『蛇になった彼女』(脚本)

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〇オフィスビル前の道

〇オフィスのフロア
  窓からは夏の暑い日差しが差し込む。
  坂下はオフィスの机に向かい、真面目な顔をして書類を整理していた。
希美「良かったらどうぞ」
  先輩社員の希美(のぞみ)が、坂下の机に冷たい麦茶を置いた。
坂下道雄「ありがとうございます! 後で頂きます!」
希美「・・・坂下君って真面目だよね」
坂下道雄「え? そうですか?」
希美「周り見てみなさいよ。 みんな適度に手を抜いてるじゃない」
坂下道雄「はあ・・・」
希美「まあ私はそういうところ嫌いじゃないけどね」
  そう言って希美は席に戻った。
  ──今の会社に入社して一ケ月
  希美さんの淹れてくれるお茶はいつも美味しくて、俺は密かな楽しみにしている

〇渋谷のスクランブル交差点
木村「ったく、今日は異常に暑いな・・・って、お前は妙に涼しそうな顔してるけど」
坂下道雄「いえ、それなりに暑いです」
木村「なら、ちょっと涼んでいくか」
坂下道雄「いえ、でもオフィスに戻らないと」
木村「いいからいいから。 これも仕事のうちなんだよ」
  そう言って、無邪気な顔で笑う木村先輩も、なんだかんだ後輩想いだ

〇シックなカフェ
木村「どうだ? 仕事は慣れたか?」
坂下道雄「はい」
木村「仕事仕事で、プライベートおろそかにするなよ」
木村「俺みたいになるからな」
坂下道雄「わかりました」
木村「バカ。そこは一回否定するとこだ」
坂下道雄「すみません」
木村「ったく・・・変に生真面目な奴だよね。 お前、ほんとに昔、プーだったのかよ」
坂下道雄「俺、昔はダメな奴だったんですけど、半年前に生まれ変わったんです」
木村「・・・女がらみか?」
坂下道雄「そう・・・かもしれません」
木村「ふん。まあいいや。 それより今夜、部署の飲み会来いよ」
坂下道雄「いや、でも夜は──」
木村「同期の希美に頼まれてんだよ、お前を必ず連れてこいって」
坂下道雄「希美さん?」

〇大衆居酒屋
坂下道雄「・・・・・・」
  大勢の社員たちが酒を飲んで騒ぐ中、坂下は隅の方で居心地悪そうにしている。
希美「坂下くんって、お酒ダメなんだっけ?」
坂下道雄「いや、好きです」
希美「その割には退屈そうだけど」
坂下道雄「そ、そんなことないです。楽しんでます!」
希美「フフフ。坂下くんって、彼女いないのよね?」
坂下道雄「え? な、なんでですか?」
希美「前に木村くんに聞いた。 坂下くん顔もいいし、モテそうなのにねー」
坂下道雄「・・・すみません」
希美「なんで謝るのよ」
坂下道雄「え。いや、なんかいい歳なのに」
希美「でもこれって、私にとってチャンス到来ってことよね?」
坂下道雄「え?」
希美「年上は嫌い?」
坂下道雄「いや、好きとか嫌いとか、そういうのは・・・ないです」
希美「ふーん」

〇タクシーの後部座席
  タクシーの後部座席で、泥酔した希美は坂下の肩に寄り掛かっていた。
坂下道雄「あ、あのっ!  希美さんって、家こっちのほうでしたか?」
希美「いいからいいから」
坂下道雄「でも──」
希美「先輩が後輩を送るのが普通でしょ?  変な気を遣わないの」
坂下道雄「・・・・・・」
希美「なによ。文句あるの?」
坂下道雄「文句はないんですが、帰る前に寄りたいところあるんです」
希美「寄りたいところ?」

〇中規模マンション
  布のかかった木箱を抱えて、坂下はタクシーから降りた。
坂下道雄「ありがとうございました。 それではまた会社で」
  タクシーの中の希美に声をかけると、彼女は黙ってタクシーから降りた。
坂下道雄「え?」
希美「ふーん。ここが坂下くんのアパートか」

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