タクシードライバー3 ~狙われたあいつ~

資源三世

読切(脚本)

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〇タクシーの後部座席
ラジオの音声「以上、交通情報でした。続きましては明日の天気です──」
(・∀・ )「お客さん、このまま行くと検問だってよ? どうする?」
怪しい客「いいよ、別に。急いでないから」
  長らくタクシーの運転手をやっていると、おかしな客を乗せることなんて珍しいことでもない
  座席にゲロ吐いたり、漏らしたりなんかから、警官を名乗る反社なんてものまで。本当にピンからキリまでだ
  中でも今回のお客は、特に変わっているようだ
(・∀・ )「本当にいいの? 捕まったら出るのに何年かかるか分からないよ?」
怪しい客「なんで検問が年単位なんだよ」
(・∀・ )「え? お客さん、逃走犯でしょ。ムショに入ったら10年は出てこれないよ?」
怪しい客「ちげーよ!」
(・∀・ )「うんうん。犯人はみんなそう言うんだよね」
怪しい客「無実だって同じこと言うわ!」
(・∀・ )「えー? でも、一般人がわざわざそんな怪しい恰好しないよ?」
怪しい客「俺、有名人だからさ。こうでもしないとすぐバレるんだよ」
(・∀・ )「指名手配?」
怪しい客「そこから離れてくれる?」
怪しい客「あのさ、俺は悪人どころか、むしろその逆」
怪しい客「『正義の味方』なんだよね」

〇タクシーの後部座席
(・∀・ )「あー、そっちだったか」
怪しい客「意外に素直に受け入れるじゃん」
(・∀・ )「あれでしょ、黒い街宣車を乗り回して、爆音で思想垂れ流してる団体。いやー、まだいたんだ」
怪しい客「ちげーよ。怪しいからって、俺と犯罪を結びつけないでもらえる?」
怪しい客「俺はむしろ犯罪者の天敵。私人逮捕系の有名配信者だよ」
怪しい客「ちなみに私人逮捕ってのは、一般人が現行犯逮捕するってことな。逮捕される側じゃないから」
(・∀・ )「刑事訴訟法213条でしょ。知ってるよ」
怪しい客(こいつに常識的な対応されると、なんかむかつく)
(・∀・ )「正義に陶酔してやりたい放題やって、いつか限度を忘れた行為を繰り返した末に、最後は自分が捕まるんだよね。常識だよね」
怪しい客「そんな常識ねぇよ!」
怪しい客「俺はそんなヘマしねぇ。これからも、悪人を捕まえて、世の中を良くするんだよ」
怪しい客「つーかさ、このタクシーも臭うんだよね」
(・∀・ )「ちゃんとファブリーズしたよ?」
怪しい客「そうじゃねぇよ。悪党の臭いだよ」
怪しい客「正義の味方を続けてると、悪事に敏感になってきてさ、悪党はもう臭いで分かるんだよね」
怪しい客「このタクシーに乗ったのも、悪党の臭いがぷんぷんしたからなんだよ。あんた、何か悪いことしてんじゃねぇの?」

〇タクシーの後部座席
怪しい客「あー、臭い臭い。悪事の臭いがプンプンするぜ」
(・∀・ )「悪事だけ? 昨日、お客が漏らしたうんこは臭ってない? なら、いいや」
怪しい客「よくねぇよ! そいつ、どこで漏らした?」
(・∀・ )「聞かない方がいいと思うよ? お客さんの座ってるところだから」
怪しい客「全部、言ってるじゃねぇか!」
(・∀・ )「いやー、根が正直なもので」
怪しい客「正直じゃなくて、非常識だろ」
怪しい客「あー、くそ。やっぱろくでもねぇ会社だと、社員もダメだな」
(・∀・ )「うちの会社、知ってるの?」
怪しい客「あぁ、有名だぜ。客を年齢や性別、子連れか反社かどうかで区別しないって声明だして大炎上してるからな」
(・∀・ )「え? お客さんって子連れに厳しい人? やだー、ひくわー」
怪しい客「そっちじぇねぇよ、反社に厳しい人だよ!」
(・∀・ )「あー、そっち系の人ね」
怪しい客「普通だろ、これが」
(・∀・ )「それで所属は中国? それとも香港? まさか、欧州?」
怪しい客「ヤクザと争ってるマフィアじゃねぇよ!」
(・∀・ )「隠さなくても大丈夫だって。うちはどこの所属だろうと区別なく、警察まで送り届けるから」
怪しい客「速攻で裏切ってるじゃねぇか」
(・∀・ )「なにしろ、前社長自ら豚箱に行ったし」
怪しい客「社長、捕まってるのかよ」
(・∀・ )「いやー、前社長が裏稼業とズブだって、うっかり警察に漏らしたら、まさか翌日には捕まるなんてねー」
怪しい客「お前が原因じゃねぇか」
(・∀・ )「僕も悪を倒したから、正義の味方名乗っていい?」
怪しい客「お前はただ口を滑らせただけだろ」
怪しい客「なんだよ、この不条理な会話は」
(・∀・ )「じゃあ、ラジオを聴こうか。この会話より、ずっと有意義だよ」
怪しい客「お前が言うなよ」
(・∀・ )「さあ、もうすぐ検問の渋滞だ。閉ざされた車内に二人、無言になって、延々とラジオを聞き続けるぞ」
怪しい客「すげー気まずいわ! 新手の拷問か?」
(・∀・ )「ちょっと黙っててよ。今、天気予報が面白いところなんだから」
怪しい客「天気予報のどこに見せ場があんだよ!」
(・∀・ )「明日の天気に決まってるじゃん」
怪しい客「急なマジレスやめてくんない?」
怪しい客「な、なんだ?」

〇タクシーの後部座席
(・∀・ )「煽り運転だね」
怪しい客「おい、かなり詰められてるぞ。大丈夫なのか?」
(・∀・ )「よし、急ブレーキだ。後ろの車がブレーキかけてぶつかるか、避けられずにぶつかるか。一世一代の大博打だ」
怪しい客「どっちに転んでも俺が一番、被害食いそうなんだけど?」
(・∀・ )「大丈夫、車載カメラで衝撃の瞬間は撮ってるから。お客さん、動画でバズりたいんでしょ?」
怪しい客「こういうバズり方はしたくねぇよ!」
(・∀・ )「じゃあ、このまま検問の渋滞に突っ込んで、どちらが先にブレーキをかけるかのチキンレースと洒落こもうか」
怪しい客「なんで、そんなウキウキしてるんだよ! 裏道とかないのかよ?」
(・∀・ )「やれやれ、仕方ないなぁ。しっかり捕まってな」
怪しい客「まいたか?」
Σ(・∀・ )「狭路へ入るコーナリングに、初見でついてきただと?!」
(・∀・ )「こっちはサイドミラー壊れたっていうのに。ちくしょーめ」
怪しい客「曲がり切れてなかったのかよ」
怪しい客「パトカーまでついてきたぞ」
(・∀・ )「検問の前で急に進路変えるなんて、怪しいもんね」
怪しい客「やったのお前だろ。どうすんだよ、これ」
(・∀・ )「『タクシーVS煽り運転VSパトカー 時速40kmの戦い』 生き残るのは誰だ?」
怪しい客「思ったより安全運転なんだな」
(・∀・ )「一車線だから追い抜かれることはないよ」
怪しい客「逃げ切れる速度でもないけどな」
怪しい客「なんとかしろよ。捕まったらどうすんだよ」
(・∀・ )「私人逮捕系から、本人逮捕系の配信者に鞍替えできるね。今日はムショから生配信でーすって、誰もやったことないよ」
怪しい客「出来ねぇだけだよ」
(・∀・ )「でも、逮捕されるにはあの煽り運転が邪魔だね。片輪走行でやり過ごしてみようか」
怪しい客「やんなくていいから、普通に逃げろ!」
(・∀・ )「お客さん、出来ないって思ってるでしょ? 大丈夫、5回に1回は成功してるから」
怪しい客「なんで、その成功率で成功する気満々なんだよ」
(・∀・ )「今までに15回挑戦して、今は10連続失敗中なんだよ。そろそろ確率の収束がくると思わない?」
怪しい客「確率の計算違うだろ! 収束する確率がないだろ!」
(・∀・ )「それじゃあ、いつも通り、お客さんが後ろの車に飛び移って制圧の案でいこうか。全く目立ちたがり屋さんめ」
怪しい客「やったことねぇよ! つーか、出来ねぇよ!」
(σ・∀・)σ「いつも、私人逮捕してるって言ってたじゃん」
怪しい客「私人逮捕系は、アクション映画みたいなことしねぇよ! 変なイメージで見るなよ」
(・∀・ )「じゃあ、今まで何やってきたんだよ」
怪しい客「なんでキレられるんだよ」
怪しい客「ぶつけてきたぞ」
(・∀・ )「お客さん、そろそろ警察署だよー。お金用意しておいてね」
怪しい客「なんで落ち着いてんの?!」
怪しい客「うわぁぁぁーーー!」

〇警察署の入口
(・∀・ )「いやー、まさか煽ってたのが、逃走犯だったとはね」
(・∀・ )「逃げるのに邪魔だから煽ってたんだってさ」
怪しい客「煽る相手を間違えたな、あいつ」
(・∀・ )「それでお客さんは、なんで逮捕されてるの?」
怪しい客「結構、強引な私人逮捕をしてたのが問題になって、逮捕状がでてたんだとさ」
怪しい客「まさか、本当に自分逮捕系の配信者になるとはな」
(・∀・ )「ムショからの生配信待ってるよー」

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