5 絶縁(脚本)
〇マンションの共用廊下
俺が教習所に通いながら仕事を熟して数ヶ月が経った。部長に週に2日の休みを希望したら猛反対されたが、教習所に
行きたい旨を伝えて何とか了承を得た。休み時は兎に角勉強に励み、何度も資料を読み直し、やっとの思いで教習所を卒業して、
本番の試験も無事合格した。
木島明日香「本当におめでとう御座います!絢斗さん、これで好きな所に自分で行ける様に成ったんですよね!」
月影絢斗「本当、自分でも吃驚だよ!まさか一発合格出来るだなんて!」
月影絢斗「俺の事も有るけど、明日香ちゃんも三年生に進学おめでとう!」
木島明日香「有難う御座います!絶対卒業して見せますね!」
運転免許獲得で俺達は興奮が抑えられなかった。これからどうしようか話して居る中、俺達の元に足音が聞こえて来た。
木島母「明日香!やっと見つけたわ!」
木島明日香「え!?お父さん?お母さん!?」
月影絢斗「え?お父さん?お母さん!?」
木島明日香「ちょっと!今まで何処に行ってたの!?」
木島母「そんな事はどうでも良いわよ!」
木島明日香「ひぃ!!」
木島父「聞いたぞ明日香。お前、借金を返し終えたんだってな?」
木島明日香「そ、そうだけど・・・」
木島父「そうなのか!やっぱり噂は本当だったんだな!それなら早速相談したい事が有る!明日香、今直ぐ金を用意してくれ!」
木島明日香「は、はぁ!?また借金したの!?」
木島父「安心しろ!ほんの1000万円程度だから!」
木島明日香「な、何よそれ!!?あの後何処で何してるかと思えば、また遊び呆けてたの!?」
木島父「何を言っている!!逃げるにしても金が必要だったんだ!!お前は俺達の娘で、家族なら助け合いが当たり前だろう!!」
木島明日香「ふ、ふざけないでよ!お父さん達の借金って5億でしょ!?そもそも学生のバイトでそんな事出来る訳無いでしょ!!」
木島母「だったらどうやって返済したのよ!!風俗とか、キャバクラにでも行った訳!?」
月影絢斗「この子はそんな事してませんよ」
木島父「何だお前は?」
月影絢斗「5億の借金を建て替えたのは俺ですよ」
木島母「な、何ですって!?」
月影絢斗「俺が5億の借金建て替えた後、明日香ちゃんは行く所が無いから俺の家に住まわせてるんです」
木島父「成る程な。だが見ず知らずのお前が未成年を家に上げる。これは世間体から見て誘拐と思われてもおかしく無いか?」
木島母「そうよ!見るからに年の差が有るし貴方達は異性同士でしょ!?変な事でもしてるなら、今直ぐ警察を呼ぶわよ!」
木島母「私達は、明日香の親なのよ!!」
月影絢斗「・・・お二方、何を意味の無い事を言ってるんですか?」
木島父「意味が無い?どう言う事だ!?」
月影絢斗「あぁだこうだ言ってますが、貴方達が何しても無駄だって言ってるんです。だって俺達・・・」
月影絢斗「先日結婚しましたから」
木島母「は、はぁ!?」
木島父「それはどう言う事だ!?態々好きでも無い男と世間体の為に結婚したと言うのか!?」
月影絢斗「世間体が何ですか?借金を返したのも、俺が明日香ちゃんと同棲したのも、もう随分前ですよ。同じ家で寝食共にして、」
月影絢斗「お互い同じ境遇で惹かれ合う所も有って、気付いたら両思いに成ってました。確かに世間体の事も有りますけど、」
月影絢斗「先日明日香ちゃんが18歳に成ったのを機に夫婦に成りました」
木島母「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!何時の間に18に成ったの!?」
木島父「ま、待て!確かに今の時代、18歳で成人と成るのは本当だが、そんな事は関係無い!結婚と借金は別問題だ!」
木島母「そ、そうよね!明日香!私達は家族よ!その男が5億返せたって言うなら、1000万も簡単でしょ!?だから!!」
木島明日香「もう知らないわよ!!」
木島母「明日香・・・!?」
木島明日香「家族だから助け合う?そんなの誰が決めたの?あたしだってお父さん達の為にバイトとか頑張ったよ!それが正しいって思ったよ!!」
木島明日香「ニ人はあたしに何をしてくれたの!?あたしに家事全部丸投げしてロクに仕事もせずに遊び呆けて、自分達が何も出来なく成ったら」
木島明日香「何もかも捨てて逃げ出して!自分達が大人だって言うなら、責任の一つや二つ、取って見せてよ!!あたしの誕生日も、」
木島明日香「何勝手に忘れてるのよ!!」
木島母「明日香・・・」
木島明日香「あたしは絢斗さんと過ごして行く内に絢斗さんの内面や、絢斗さんの事知って結婚したの!今のあたしに取って、絢斗さんと一緒に」
木島明日香「生きる事が何よりの幸せなの!これ以上あたしに関わらないで!!」
木島父「分からないのか明日香!お前を育てる為にどれだけの金が要ると思ってるんだ!あれだけの額はどう考えても払いきれない!」
月影絢斗「だったら、最初から子供を生むなんて事しなければ良いじゃ無いですか」
木島母「ちょ!貴方!何様のつもりで言ってるのよ!!」
月影絢斗「明日香ちゃんの言ってた事聞いて無いんですか?貴方達は、やった後の責任が取れるから、子供作ったり借金したり」
月影絢斗「出来るんですよね?世間体がどうとか言ってますが、それ等の責任取れない貴方達の方が、世間から見て恥ずかしい事だと」
月影絢斗「俺は思います。そもそも親だって言うなら、本当に責任取って下さいよ」
木島父「・・・・・・」
月影絢斗「明日香ちゃんの気持ちは本物です。これ以上騒ぐなら警察とか弁護士呼びます。何より、貴方方の借金を返済したのは俺ですので、」
月影絢斗「明日香ちゃんの教育費等から差し引いて、切り良く1億〜2億辺り、俺に返してくれるって見て良いですか?」
木島父「じょ、冗談じゃ無い!誰がそんな事するか!」
木島母「あぁもう!折角此処まで来たってのに!これじゃ台無しじゃ無い!覚えてなさいよ!!」
月影絢斗「・・・何だ・・・所詮は只の根性無しか・・・」
木島明日香「絢斗さん、御免なさい・・・まさかあたしの両親が此処に来るだなんて・・・」
月影絢斗「本当吃驚だよね。人生何が起こるか分かったもんじゃ無いね!」
月影絢斗「でも、あんな酷い奴でも明日香ちゃんの親でしょ?明日香ちゃんはこれで良かったの?」
木島明日香「・・・あたし、絢斗さんと一緒に過ごす内に、両親に対する気持ちとか、蟠りとか、何時の間にか無くなってました」
木島明日香「だからあたし、もう自分の親に未練は有りません。あたしに取って一番大事なのは、絢斗さんですから!」
月影絢斗「あはは!改めて言われると何か照れるな!」
木島明日香「最後に、お父さんとお母さんに、ずっと溜め込んで来た物を吐き出せたので、あたしは満足です。絢斗さん、これからも、」
木島明日香「宜しくお願いします!」
月影絢斗「うん。こちらこそ!」
明日香ちゃんの両親との揉め事が終わり、俺達は平穏を取り戻した。あの後、明日香ちゃんの両親は逃げるのに限界が来て、
借金取りや警察に捕まり、監獄の中で自分達の行いを悔やみながら生活してると、風の噂で聞いたのだった。