指先に魔法はいらない

星月 光

chapter08 玻璃の欠片(前編)(脚本)

指先に魔法はいらない

星月 光

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〇森の中の小屋
アストリッド「一応、基礎知識は習得してるようだね」
アストリッド「いくらダイン家でも 誤った知識を与えることはしなかったか」
ピオノノ・ダイン「・・・そうですか」
サフィ「どうしたんですか?」
ピオノノ・ダイン「感謝すべきかな・・・って」
ピオノノ・ダイン「・・・父や、みんなに」
アストリッド「好きにすれば?」
アストリッド「じゃあ次は──」
ジョージ・ミラー(島民)「魔王様!」
マーサ・ミラー(島民)「わたしたち、町の修復してるんですけど」
マーサ・ミラー(島民)「あの人たち、邪魔ばっかりして 言うこと聞いてくれないんです」
アストリッド「知ったことじゃない」
アストリッド「魔術を使うのに重要なのは──」
マーサ・ミラー(島民)「魔王様~!」
アストリッド「邪魔するなら帰ってくれない?」
ジョージ・ミラー(島民)「どうか力をお貸しください!」
アストリッド「この際だから言っとくけど」
アストリッド「困ったらすぐ泣きついてくるの やめてくんないかな」
アストリッド「別に暇を持て余してるわけじゃない」
ピオノノ・ダイン「師匠・・・!」
アストリッド「魔物ならともかく あの程度の小物、自分たちで御しなよ」
マーサ・ミラー(島民)「魔王様にはわからないんです!」
マーサ・ミラー(島民)「無力なわたしたちの気持ちなんて!」
ジョージ・ミラー(島民)「おい、よせ!」
ジョージ・ミラー(島民)「申し訳ありません!」
アストリッド「・・・チッ」
ピオノノ・ダイン「師匠・・・」
アストリッド「そこまで言うなら行ってやってもいい」
アストリッド「ただし 今から言うものを今日中に用意しろ」
アストリッド「行くよ、ピオ」
アストリッド「得体の知れないスペルロイドに 助けを求めなきゃいけない弱者の気持ち」
アストリッド「せいぜい汲んでやろうじゃない?」
サフィ「アストリッド!」
アストリッド「・・・なに」
サフィ「さっき教えてくれたこと」
サフィ「ちょっと難しかったから もっかい覚え直したくて」
サフィ「地図とペン、借りてもいいですか?」
アストリッド「・・・どうぞ」
ジョージ・ミラー(島民)「あの、なにをご用意すれば?」
アストリッド「ああ、それは──」

〇島の家
「師匠!」
ピオノノ・ダイン「さっきの、どうして・・・」
アストリッド「あいにく、慈善家じゃないんでね」
アストリッド「いいように使われるのはごめんだよ」
ピオノノ・ダイン「違います!」
ピオノノ・ダイン「そうじゃなくて・・・」
ピオノノ・ダイン「さっき、スペルロイドって・・・」
ピオノノ・ダイン「師匠もスペルロイドなのですか?」
アストリッド「さあ?」

〇雪山
アストリッド「母親はわたしを人間だと言ったけど」
アストリッド「父親はスペルロイドと言った」
アストリッド「ふつうに考えれば 母親の発言のほうが信憑性が高いけど」
アストリッド「錯乱してたから、いまいち信用できないな」

〇島の家
アストリッド「ま、どうでもいいけどね」
アストリッド「自分の肉体をもたらしたものが 1組の男女だろうが培養槽だろうが」
アストリッド「さほど変わりはないし」
ピオノノ・ダイン「そう・・・でしょうか」
アストリッド「おまえもくだらないこと考えてないで 魔術の1つでも──」
アストリッド「ああ、いたいた」
アストリッド「あいつら、たいしたことはできないけど」
アストリッド「すぐ調子に乗るから たまには痛めつけてやらないとね」
ピオノノ・ダイン「あっ、師匠!」

〇おしゃれな居間
サフィ「えーっと」
サフィ「ピオの適性は風で」
サフィ「光と闇は神様の力」
サフィ「適性は後から変えられなくって」
サフィ「変えられたとしても 光と闇はダメなんだっけ」
サフィ「・・・なんでだろ?」
サフィ「難しいなぁ」
サフィ「ちょっと休憩しよっかな」

〇島の家
「おい」
アストリッド「おまえらがなにをしようが 別にどうでもいいけど」
アストリッド「こっちに迷惑かけないでくれる?」
アストリッド「家なり道なり さっさと直しなよ」
ブノワ(ならず者)「あんたがぶっ放した魔法で 壊れたんじゃねーか!」
アストリッド「わたしが魔物を倒さなきゃ 被害はもっと大きくなってたよ」
アストリッド「おまえらも死んでたかもね?」
ロメオ(ならず者)「その前におめえの魔法で 殺されそうになったけどな」
ブノワ(ならず者)「・・・ん?」
ロメオ(ならず者)「こないだのガキじゃねーか」
ブノワ(ならず者)「てめえじゃ戦えねえから 魔王様に守ってもらってんのか?」
ピオノノ・ダイン「なっ・・・違う!」
ブノワ(ならず者)「あの青い髪のガキの前で いいかっこしたかったんだろうが」
ロメオ(ならず者)「残念だったなあ?」
ロメオ(ならず者)「てめえ、やろうってのか!?」
ピオノノ・ダイン「もう、おまえたちに遅れは取らない!」
ブノワ(ならず者)「おもしれえ!」
ブノワ(ならず者)「今度こそぶっ殺してやるよ!」
アストリッド「・・・・・・」

〇おしゃれな居間
サフィ「気分転換しよっと」
サフィ「うーん」
サフィ「ロンサールとミラノが同盟で・・・」
サフィ「だからワーズワースと ベルクラインが・・・えっと」
サフィ「わかんなくなってきちゃった」
サフィ「アストリッドもピオもすごいなあ」
サフィ「あたしも頑張らなくちゃ・・・」
サフィ「・・・・・・」

〇田舎の病院の病室
???「サフィレット」
???「また病室を抜け出そうとしたんだって?」
???「お母さんにあまり心配かけるなよ」
???「サフィだってお母さんが心配だもん」
???「お母さん、料理も掃除も苦手だから」
???「サフィがやってあげないと」
???「心配いらないさ お母さんは大人なんだから」
???「サフィレットは治すことだけ考え・・・」
???「先生は」
???「お母さんの料理食べたことないから そんなことが言えるんだよ」
???「あんなの食べたら お母さんまで病気になっちゃうかも」
???「・・・意外だな お母さん、優秀な研究者なのに」
???「サフィ」
???「お母さん、来てくれたの?」
???「これ、渡そうと思って」
???「ありがとう!」
???「お母さん、ご飯食べてる?」
???「心配いらないわ お手伝いさんを雇ったから」
???「ごめんなさい もう行かないと」
???「先生の言うこと聞いていい子にしてるのよ」
???「・・・はーい」
???「インタリオ先生、娘をお願いします」
???「おまかせください」
???「忙しいのに来てくれたんだ」
???「サフィレットのことが心配なんだよ」
???「今日はその本を読んで おとなしくしてなさい」
???「はーい」

〇島の家
ロメオ(ならず者)「くっそー!」
ブノワ(ならず者)「なかなかやるじゃねえか」
ピオノノ・ダイン「わかったら、心を入れ替えて・・・」
アストリッド「じゃ、殺そうか」
ピオノノ・ダイン「えっ!?」
アストリッド「なんの役にも立たないどころか 人の足を引っ張ってお荷物になる」
アストリッド「そんなの、生かしといてもしょうがないし」
アストリッド「今までの奴らみたいに 海に沈めてやろうか?」
アストリッド「それとも、光魔術で塵すら残さず・・・」
ブノワ(ならず者)「町の修復します!」
アストリッド「無理しなくていいよ」
アストリッド「やりたくないことをやらせるのは こっちも心苦しいからね」
ブノワ(ならず者)「いやあ、町を直したくて仕方ねえよ!」
ブノワ(ならず者)「な、兄弟!」
ロメオ(ならず者)「おっ、おう!」
ロメオ(ならず者)「誠心誠意、修復させていただきます!」
アストリッド「そう?」
アストリッド「じゃ、せいぜい働きなよ」
「ヘイ!」
マーサ・ミラー(島民)「魔王様、ありがとう」
ジョージ・ミラー(島民)「おかげで助かりました」
アストリッド「あれ、用意したんだろうね」
ジョージ・ミラー(島民)「はい、こちらに」
アストリッド「よし」
マーサ・ミラー(島民)「魔王様!」
マーサ・ミラー(島民)「さっきはひどいこと言ってごめんなさい」
アストリッド「謝罪の必要はないよ」
マーサ・ミラー(島民)「でも・・・」
アストリッド「それより、あいつらを好きなだけ使えば?」
マーサ・ミラー(島民)「・・・はい!」
ピオノノ・ダイン「あっ」

〇空
「師匠!」

〇島の家
ピオノノ・ダイン「なぜ釣り竿を?」
アストリッド「おまえ用だよ」
アストリッド「魔術を使うのに重要なのは?」
ピオノノ・ダイン「魔力・・・ですか」
アストリッド「それは大前提」
アストリッド「精神力、平常心、想像力だ」
アストリッド「おまえ、いつもごちゃごちゃ いらないこと考えてるようだし」
アストリッド「精神面を鍛えさせようと思ったけど」
アストリッド「さっきのを見て確信に変わったよ」
アストリッド「バカどもの安い挑発に乗っちゃったね?」
ピオノノ・ダイン「うぅっ」
ピオノノ・ダイン「この前のことを思い出して ・・・つい」
アストリッド「乗るなら乗るでいいけど 冷静さは保たないとね」
アストリッド「というわけで 今日からこれで精神力を鍛えろ」
アストリッド「ついでに集中力もね」
アストリッド「仮に魔術を習得できても」
アストリッド「裁判で揺さぶりをかけられて 動揺したら意味ないからね」
ピオノノ・ダイン「・・・はい」
ピオノノ・ダイン「頑張ります!」
アストリッド「ついでに魚も釣れればいいね」
アストリッド「サフィに渡せば 夕飯が豪華になるんじゃない?」
ピオノノ・ダイン「・・・そうですね」

〇田舎の病院の病室
???「サフィレット、調子はどうだ?」
???「ね、先生」
???「海、見たことある?」
???「あるよ」
???「昔、ミラノへ研修に行ったときにな」
???「初めて見たときは驚いたよ」
???「ずっとベルクラインに住んでいて 海なんか見たことがなかったから」
???「友人たちにはずいぶん笑われたっけな」
???「本に出てきたの」
???「青い海、白い砂浜、波の音」
???「サフィも行ってみたいなあ」
???「・・・そういえば」
???「本を枕の下に入れて寝ると その夢が見られるらしい」
???「ほんと!?」
???「やってみる!」

〇黒背景
???「おまじないみたいなものだぞ」
???「いいの」
???「海の夢、見られたらいいな」

〇おしゃれな居間
サフィ「今の・・・夢?」
サフィ「・・・あの女の子 サフィレットって呼ばれてた」
サフィ「・・・夢じゃなくて あたしの記憶・・・?」
サフィ「なんであたし、この島に来たのかな」
サフィ「海・・・」

〇堤防
ピオノノ・ダイン「・・・今だっ!」
ピオノノ・ダイン「・・・エサだけ取られて逃げられた」
ピオノノ・ダイン「もう1回!」
ピオノノ・ダイン「・・・・・・」
ピオノノ・ダイン「これ・・・ ほんとに効果あるのかな」
ピオノノ・ダイン「・・・いや」
ピオノノ・ダイン「師匠がああ言ったんだ きっと意味はあるはず」
ピオノノ・ダイン「集中、集中・・・」

〇薄暗い谷底

〇研究所の中枢
フローレス・リング「サフィリーンをどこに廃棄した」
Dr.インタリオ「・・・・・・」
フローレス・リング「答えろ、インタリオ!」
Dr.インタリオ「・・・海だ」
Dr.インタリオ「あの子は海が好きだったから」
Dr.インタリオ「ベルクラインからは追放され ダイン公からの報酬も尽きた」
Dr.インタリオ「フローレス・・・ こんなことはもうやめよう」
Dr.インタリオ「もうサフィリーンを造ることはできない」
Dr.インタリオ「サフィを静かに眠らせてやろう」
フローレス・リング「・・・まだだ」
フローレス・リング「サフィリーンはすべての個体に マイクロチップを埋めてある」
フローレス・リング「No.1からNo.12の生体反応は消えた」
フローレス・リング「だが、No.13の生体反応があった」
フローレス・リング「場所はまだ特定できていないが」
フローレス・リング「サントエレンに流れ着いたかもしれない」
Dr.インタリオ「サントエレン・・・ ワーズワースの離島の?」
フローレス・リング「行くぞ、インタリオ」
フローレス・リング「あの子の14歳の誕生日を祝うんだ」
フローレス・リング「・・・今度こそ」
Dr.インタリオ「・・・サフィ・・・」

次のエピソード:chapter09 玻璃の欠片(後編)

コメント

  • アストリッドさんの合理主義セリフ、ほんま好きです……🫠✨
    と言うか、あんな可愛いサフィちゃんがまさかの量産型タイプっ……?!( ゚д゚)
    おぉ……ハラハラします……!

  • アストリッドさん“らしさ”が存分に窺える冒頭でしたね✨ それにしても、ならず者たちの安定の小物っぷりが…😂
    そして、サフィちゃんの“正体”に関する重要なシーンが…😲💦 シーラ王女のみならず、サフィちゃんの関係者までもがサントエレンに向かう展開、この先を想像できずにドキドキします😊

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