鈴木は人気配信者を目指し最強の錬金術師と契約する

司(つかさ)

9話(脚本)

鈴木は人気配信者を目指し最強の錬金術師と契約する

司(つかさ)

今すぐ読む

鈴木は人気配信者を目指し最強の錬金術師と契約する
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇昔ながらの一軒家
  それから約10分後
  三人は無事大吾の家の前まで到着していた
鈴木「・・・・・・家まで何とか来れましたね」
大吾「二人が作った薬のおかげだ」
大吾「どうやら気配が消せるってのは本当みたいだな」
大吾「俺は・・・昔から隠れるのが下手でな」
大吾「つい色々と出張っちまうんだ。余計な事に首を突っ込んでは『大人しくしろ』ってよく怒鳴られたもんさ」
大吾「だから、助かった」
鈴木「それは良かったです」
パンドラ「まだ油断するには早いぞお前たち」
パンドラ「鈴木、薬のストックはあるのか?」
鈴木「はい、まだ何回かは使えます」
パンドラ「付近の魔力の気配が徐々に強くなっておる」
パンドラ「帰りの分も合わせて温存しておくんじゃ」
鈴木「わかりました」
大吾「それならさっさと済まそう」
鈴木「はい。早く娘さんを助けないと」
  大吾が玄関の扉に手をかけ鍵を取り出す
  しかし、扉に鍵は掛かっていなかった

〇広い玄関(絵画無し)
大吾「香織、今帰ったぞ!」
  三人は家の中に入り、中の様子を伺う
  家の中は静かで物音一つしない
大吾「香織の靴がない」
鈴木「え? 靴がないって」
大吾「アイツの靴は二足あるんだが、一足なくなってる」
鈴木「まさか・・・・・・香織ちゃん、ここには」
大吾「──俺は2階の香織の部屋に向かう」
大吾「君達はとりあえず1階を探してくれ」
鈴木「分かりました」
  三人はアイコンタクトをして別れていく

〇古めかしい和室
鈴木「パンドラさん、香織ちゃん居ました?」
パンドラ「いや、見つからんな」
鈴木「そうですか・・・・・・」
パンドラ「鈴木・・・・・・ここにはかすかだが、魔力の名残がある」
鈴木「それってここに魔物が来たって事ですか!?」
パンドラ「恐らく・・・・・・な」
鈴木「そんな・・・・・・」
パンドラ「大吾には言うな。混乱しかねん」
鈴木「・・・・・・わかりました」
パンドラ「それと、こんなものが机の下に落ちていた」
鈴木「? なんですかそれ」
鈴木「!?」
鈴木「すぐに大吾さんを呼んできます!」
  鈴木はそれを見て血相を変え、すぐに2階に走った

〇古めかしい和室
  大吾がものの数秒で階段から降りて来る
大吾「見せてくれ」
  大吾はパンドラから紙を渡されると食い入るようにそれを見つめた
鈴木「『お父さん。お友達が来たので学校に行ってきます』」
鈴木「『夜は遅くならないと思うので、何かごはんも買ってくるね』」
鈴木「・・・・・・それって、香織ちゃんが書いたものですよね」
大吾「ああ、間違いない」
大吾「コイツは香織の書いた字だ」
鈴木「じゃあ今香織ちゃんは、学校に?」
大吾「今何時だと思ってる? もう10時を過ぎてる。帰って来てなきゃおかしいだろ!」
鈴木「あ・・・・・・あの、すみません」
パンドラ「まぁ落ち着け、少なくともその紙を残す余裕はあったという事じゃろ」
パンドラ「であれば友達が来ていたのは事実」
パンドラ「学校に行ったのも事実のはずじゃ」
鈴木「・・・・・・・・・・・・」
鈴木(でも魔力の名残があったなら、ただ友達と出かけたっていうのは違和感がある気がする)
大吾「学校はここから10分だ」
大吾「すぐに行こう。時間が惜しい」
  大吾が二人を先導し扉に手をかける
パンドラ「大吾よ。お前の娘じゃが・・・最近何かおかしい所はなかったか」
大吾「最近? 特に変わりはなかったはずだ」
大吾「それがどうした?」
パンドラ「そうか、いやそれならばいい」
  パンドラは何かを考え込んでいる様子で、大吾の後に続いた

〇学校の校舎
  三人は10分も経たない内に小学校に到着していた
大吾「鈴木君、一旦手を放して大丈夫だ」
鈴木「あ、はい。周りは・・・・・・誰もいないみたいですね」
大吾「まぁ夜の学校だからな。普通はそうだろ」
大吾「普通は、な」
鈴木「ここ、広い小学校ですね」
大吾「まぁこの辺りじゃ一番大きい小学校だ」
鈴木「香織ちゃん、お友達と学校にってどんな用事だったんでしょう?」
大吾「忘れ物か、呼び出しか、それとも遊びに来たのか」
大吾「どちらにしろ、まだ帰って来てないのはおかしい」
大吾「いや、今はそもそもこの街自体がおかしいがな」
女の子「おじさん達、そこで何してるの?」
  三人の背後からふいに声が聞こえた
大吾「この子は・・・・・・」
大吾「いつからそこに」
女の子「さっきから居たよ。でも誰も気づかないから声をかけたの」
パンドラ「小娘よ・・・・・・ワシはおじさんではないぞ」
鈴木「それはそうでしょ!」
鈴木「全体的に男性率が高いからそう言ったんですよ」
パンドラ「であれば、おじさんとお姉さんと言え」
女の子「えー面倒くさいなー」
大吾「お・ま・え・ら・・・・・・」
大吾「ちょっと静かにしてろ! 話が聞けんだろうが」
鈴木「ひぃ・・・すいません。続けて大丈夫です」
女の子「なんだか楽しそうだね。でも・・・・・・」
女の子「そんなに大声でしゃべってると怖い人たちが来ちゃうかもよ」
大吾「怖い?・・・お嬢ちゃん、それは一体」
女の子「──先生が待ってるのっ。一緒に来て」
  女の子が大吾の手を掴み校舎の中に連れて行こうとする
  しかし大吾はその手を離した
大吾「待つんだ。こんな所に居ちゃ危ない」
大吾「君は俺達と一緒に避難しよう」
女の子「香織ちゃんのお父さんでしょ。私、授業参観で見たことあるよ」
大吾「えっ・・・・・・」
女の子「香織ちゃんなら中にまだいるよ」
大吾「お嬢ちゃんは同級生の? 香織を連れ出したのはお嬢ちゃんなのかい」
  女の子は校舎の中に足を踏み入れる
女の子「付いてきて」
  そしてそのまま廊下を走っていった
大吾「おいちょっと、勝手に行くんじゃない!」
  大吾もその後を追う
  鈴木とパンドラも二人の様子見て、互いに目を合わせるとその後を追いかけた

〇学校の廊下
大吾「ここは、香織の教室?」
女の子「そうだよ」
女の子「さぁ入って。先生もいるから」
  女の子は大吾の返事も聞かずに教室の扉を開けた

〇教室
  教室の中央には女性教師が立っていた
女の子「先生、連れて来たよ」
女教師「あらありがとう。ご苦労様」
大吾「先生、今外は大変な事になってる」
大吾「先生は香織を保護してくれたんだろ。それなら一緒に」
女教師「──保護、ですか」
女教師「そうですね。私はあなた方を保護するためにここにいます」
大吾「ん?・・・・・・これからの保護は俺が」
女教師「私が・・・保護しないといけないんです」
女教師「保護・・・・・・保護・・・・・・」
女教師「ほごほごほごほごほごほごほごほごほご」
大吾「おい・・・・・・先生、あんた」
  女教師は呪文のように
  同じ言葉を何度も繰り返している
  見かねた大吾が女教師の肩を掴んだ
  ・・・・・・その瞬間だった
大吾「なっ・・・・・・に?」
  この部屋を案内した女の子が走ったままの勢いで大吾にぶつかる
  手には包丁を持っていた
女の子「ほごほごほごほごほごほごほごほごほご」
女の子「保護、しなきゃいけなんだよ」
女の子「だって、先生が言ってるんだもん」
大吾「くっ・・・・・・う」
鈴木「大吾さんっ!」
  大吾がその場から崩れ落ちる
  教室の入り口付近に立っていた鈴木とパンドラは大吾に駆け寄ろうとするが
  それは制止される
女教師「まずは、一人保護」
女教師「先生、皆さんの事を信じてますよ」
鈴木「なっ・・・・・・えっ?」
  ロッカーの中、机の下、ベランダ
  教師や生徒らしき人間が十数人、二人の周りを取り囲む
パンドラ「こやつら全員敵か」
鈴木「まずい、早く薬をっ!」
  鈴木は急いで薬を飲もうとするが
  その隙を与えないように周りの人間が二人に襲い掛かる
パンドラ「うわっ!?」
鈴木「パンドラさん!!」
  鈴木の真横にいたパンドラが複数人に身体を掴まれる
パンドラ「鈴木、早く薬を飲むんじゃ!」
  鈴木は返事をするより先に薬を口に入れる
  そしてその瞬間、彼の気配がなくなった

〇教室
鈴木「・・・・・・・・・・・・」
女教師「あの男は、どこに行ったの?」
女の子「急に消えたみたい。さっきまでここにいたのに」
女教師「使えない子ね」
女教師「まぁいいわ。大事なのはこの子だから」
パンドラ「お前ら・・・・・・ただの人間ではないな」
パンドラ「誰の命令で動いてる?」
女教師「あなたには関係ないわ」
女教師「だってパンドラさん。あなたはもう終わりだから」
パンドラ「くっ・・・・・・」
パンドラ「小娘風情が言いおって」
鈴木(どうしよう)
鈴木(早く大吾さんとパンドラさんを助けないと・・・・・・)
鈴木(でもこの人数相手に僕に何が出来るんだ・・・・・・)
鈴木(これはゲームじゃない・・・現実なんだ)
鈴木(・・・そうだ! ここに一輝さんを呼んで・・・・・・)
鈴木(・・・・・・・・・・・・)
鈴木(駄目だっ。避難所までここから10分はかかる)
鈴木(その間に二人がどうなるかわからないじゃないか)
鈴木(・・・・・・無理だ。こんなの僕には無理だって)
鈴木(ゲームキャラクターみたいに格好よく戦うなんて出来ないよ・・・・・・)
パンドラ「鈴木、ワシの思考を共有するんじゃ!!」
鈴木(え?)
パンドラ「ワシを見つけられたお前なら、この言葉の意味がわかる筈じゃ」
鈴木(・・・・・・・・・・・・・・・・・・)
女教師「この女の口を塞いで!」
女教師「早く!」
  女教師の取り巻きがパンドラの口を抑える
鈴木(ありがとう。パンドラさん)
鈴木(僕に力を貸してください)
  鈴木はそう願いを込めてもう一本薬を飲み干した

〇教室
  鈴木の意識がパンドラの中に溶け込んでいく
パンドラ(まったく・・・・・・)
パンドラ(鈴木。お前の事じゃからうろたえて、ろくな考えも浮かんでなかったんじゃろ)
パンドラ(おかげで、ワシはこの有り様じゃ)
パンドラ(だが・・・・・・今のお前は気配を探られる事はない)
パンドラ(それにワシの思考も共有しておる)
パンドラ(だから大丈夫じゃ。お前は良くやっている)
パンドラ(いいか・・・・・・アイツらを倒すなんて事は考えんでいい)
パンドラ(ワシの右腕の裾の中に薬が隠してある)
パンドラ(奴らに気付かれない内にそれを取るんじゃ)
パンドラ(後はその薬を、ワシの近くの取り巻きにかけろ)
パンドラ(そうすれば、後はワシがなんとかする)
パンドラ(・・・・・・鈴木よ。お前なら出来る)
パンドラ(お前が居たから千花を救う事が出来たんじゃ)
パンドラ(その事実はお前を確実に成長させている)
パンドラ(だから、頼んだぞ)

〇教室
  鈴木の意識が徐々に戻って来る
鈴木(・・・・・・・・・・・・)
鈴木(ありがとう。パンドラさん)
鈴木(・・・・・・よし)
  鈴木に迷いはなかった
  彼は、パンドラにゆっくり近づくと
  言われた通りに右腕の袖口から薬を取り出し、中身をパンドラを抑えていた取り巻き達に振り掛ける
  その瞬間取り巻き達の時が止まったように、身体が硬直した
  それを見たパンドラが身体をひねるようにもぞもぞと動き出し、取り巻き達を蹴り飛ばす
女教師「なっ!?」
女教師「どうしたの、あなた達!」
  パンドラに蹴り飛ばされた人間は、全員先ほどのポーズのまま動かない
  それはまるで石のような無機物に近い様子だった
パンドラ「ワシが無抵抗だと思って油断したな」
女教師「この子たちに何をしたの?」
パンドラ「お前に話してやる義理はない」
パンドラ「ワシは急いでるんじゃ」
  そう言ってパンドラは鈴木が使った薬と同じ物を再度服から取り出し
  女教師へ振り掛けた
女教師「なっ・・・・・・からだ・・・・・・が」
  女教師の体が硬直し動かなくなる
女の子「お姉ちゃん・・・先生になにをしたの?」
  教室の隅で様子を見ていた女の子が、顔を引きつらせた様子でパンドラに話しかける
パンドラ「そうか、お前もまだ残っていたか」
パンドラ「大吾を刺したんじゃ。覚悟は出来てるんじゃろうな」
  パンドラが薬を手にじりじりと女の子に詰め寄っていく
パンドラ「ワシは相手が誰でも容赦はせん」
  女の子は唇を噛みしめ、パンドラを睨んだ後刃物を捨てる
  そして教室を飛び出して行った
  その様子を見て、パンドラは大きく息を吐く
パンドラ「鈴木・・・・・・大吾を連れて早くここから離れるぞ」
鈴木「パンドラさん大丈夫ですか?」
パンドラ「ワシは大丈夫じゃ。それより大吾の手当てを優先しろ」
鈴木「わかりました」
  鈴木は自分の服の一部を破ると、それを布替わりにして、大吾が出血している患部を抑える
鈴木「大吾さん、少し痛むかもしれないですが早くここを離れましょう」
大吾「すまない、ありがとう」
  鈴木は、片膝を付いて粗く息をしていた大吾に肩を貸し歩き出した

次のエピソード:10話

成分キーワード

ページTOPへ