6.5話 魂の形(脚本)
〇荒野の城壁
『シオン砦』
戦車(指揮官)「”異教徒”を”最後の砦”まで追い詰めたぞ!」
戦車(指揮官)「戦車部隊、全軍前え!」
戦車(指揮官)「射撃用意!」
戦車(指揮官)「──撃てっ!!」
〇坑道
久我婆娑羅(傭兵時代)(クソっ、敵は戦車部隊まで投入してきた)
久我婆娑羅(傭兵時代)(完全に負け戦。 脱出を急がなければ)
今迄、傭兵として数々の戦場を渡り歩き
依頼主から与えられる任務をこなしてきた
しかし今回だけはいつもと違った
〇荒れた競技場
中央アジア地域──『シュピリスタン』
シュピリア族の姫「どうかお願いです」
シュピリア族の姫「我々シュピリア人にお力を貸してください」
久我婆娑羅(傭兵時代)「・・・」
シュピリア族の姫「”神話”によると我々の先祖は遥か遠い昔、」
シュピリア族の姫「地球とは異なる世界から”追放”され」
シュピリア族の姫「この土地に辿りつき、建国しました」
シュピリア族の姫「しかし建国した後に、ずっと周辺の大国に迫害を受けて」
シュピリア族の姫「今ではついに滅ぼされようとしています」
シュピリア族の姫「なのでどうか・・・」
シュピリア族の姫「伝説の傭兵『バサラ』殿のお力を貸してほしいのです」
久我婆娑羅(傭兵時代)「・・・」
久我婆娑羅(傭兵時代)「・・・断る」
シュピリア族の姫「何故ですか?」
シュピリア族の姫「我らは貧しい小国なれど」
シュピリア族の姫「きちんと報酬はお支払い致します」
久我婆娑羅(傭兵時代)「報酬の問題じゃない」
久我婆娑羅(傭兵時代)「冷静に分析した結果」
久我婆娑羅(傭兵時代)「いくら俺が力を貸そうが、シュピリスタンは周辺国に圧倒的に蹂躙される」
久我婆娑羅(傭兵時代)「そのくらい国力に差がある」
久我婆娑羅(傭兵時代)「なので引き受ける事はできない」
久我婆娑羅(傭兵時代)「無駄死にはしたくないからな」
シュピリア族の姫「そうですか・・・残念です」
シュピリア族の姫「ですが・・・」
シュピリア族の姫「貴方はやってくれるのでしょう?」
久我婆娑羅(傭兵時代)「はぁ!?」
久我婆娑羅(傭兵時代)「さっき話をちゃんと聞いていたか!?」
シュピリア族の姫「はい勿論」
久我婆娑羅(傭兵時代)「だったら何故──」
シュピリア族の姫「貴方の”魂”を視たら」
シュピリア族の姫「我々に力を貸してくれる事がわかります」
久我婆娑羅(傭兵時代)「そ、そんな訳ない!」
久我婆娑羅(傭兵時代)「わけがわからない・・・」
シュピリア族の姫「信じないのでしたら、我々シュピリア人の”力”を直接お見せしましょう」
そういうと、この女は俺の手を掴んだ
すると──
〇キラキラ
ここは・・・
シュピリア族の姫「”異界”です」
異界!?
シュピリア族の姫「他の言い方をするならば」
シュピリア族の姫「現実世界の”裏側””別次元”」
シュピリア族の姫「そしてシュピリア人は元々自らの霊魂を異界へと飛ばすことができ」
シュピリア族の姫「それによって精霊や神々と交流し、現実世界に彼らの言葉を届けるのが役目」
シュピリア族の姫「いわゆる、神官や巫女の仕事を担う民族だったのです」
それじゃあ今俺は
お前によって魂を異界へと飛ばされたのか!?
シュピリア族の姫「はい」
シュピリア族の姫「触れ合う事で感覚を共有することも可能ですから」
シュピリア族の姫「そして貴方をこの世界へと誘った理由は」
シュピリア族の姫「この世界では他人の”魂のあり方”を知ることができるからです」
どういうことだ?
シュピリア族の姫「ご覧なさい」
バサラ(魂)「何なんだこの姿は!?」
シュピリア族の姫「やはりそうなのですね」
シュピリア族の姫「魂は嘘をつけない」
シュピリア族の姫「歩んだ人生によって形作られ」
シュピリア族の姫「理想の魂の形になっていく」
バサラ(魂)「だとしたら魂が汚れた悪人なんかは醜悪な姿になるのか?」
シュピリア族の姫「その通りです」
シュピリア族の姫「そして生者の魂を喰らう存在になるのです」
バサラ(魂)「・・・」
バサラ(魂)「もうダメだ、ついて行けない」
バサラ(魂)「話がトンデモすぎる・・・」
シュピリア族の姫「要するに生前の行いによって、人は精霊になるか邪悪な存在になるということです」
シュピリア族の姫「ですから我々シュピリア人は魂で他人を判断して信頼するかどうか決めているのです」
バサラ(魂)「成る程、」
バサラ(魂)「俺は勝手にアンタという”嘘発見機”にかけられたわけだ」
シュピリア族の姫「ふふふ・・・」
シュピリア族の姫「貴方は信頼に値します、」
シュピリア族の姫「そして我々シュピリア人の言い伝えでは」
シュピリア族の姫「龍の魂を持つ者は、弱気を助け強気を挫く勇者である故に──」
シュピリア族の姫「我々を助けてくれる存在であると・・・」
バサラ(魂)「・・・」
バサラ(魂)「あーもうわかった!」
バサラ(魂)「ここまでされたらオカルトでもなんでも信じる!」
バサラ(魂)「それに本心で俺は!」
バサラ(魂)「アンタらが一方的に蹂躙されるのが胸糞悪くて見てられない!」
バサラ(魂)「協力しよう!」
シュピリア族の姫「ありがとう」
シュピリア族の姫「さすが龍の魂を持つ勇者様・・・ 感謝します」
〇坑道
久我婆娑羅(傭兵時代)「クソっ・・・!、」
久我婆娑羅(傭兵時代)「何が龍の魂を持つ勇者だ!」
久我婆娑羅(傭兵時代)「結局大勢の仲間を巻き込んで失い」
久我婆娑羅(傭兵時代)「シュピリア人達も守れなかった!」
〇城壁
久我婆娑羅(傭兵時代)「おい! しっかりしろ!」
久我婆娑羅(傭兵時代)「死ぬな!」
シュピリア族の姫「・・・ぐふ」
シュピリア族の姫「あぁ・・・」
シュピリア族の姫「私達は敗北したのですね?」
久我婆娑羅(傭兵時代)「まだだ! 負けてない!」
シュピリア族の姫「もういいんです・・・」
シュピリア族の姫「貴方は・・・龍の魂の勇者は、十分に戦って私達を守ってくれました」
久我婆娑羅(傭兵時代)「これのどこがだ!」
久我婆娑羅(傭兵時代)「俺はお前らを守る任務を達成できてない!」
シュピリア族の姫「・・・ならばあの子供を──」
久我婆娑羅(傭兵時代)「子供?」
???「ウエエエエン!!」
久我婆娑羅(傭兵時代)「赤ん坊・・・!」
久我婆娑羅(傭兵時代)「今助ける!」
久我婆娑羅(傭兵時代)「よしよし、もう大丈夫だからな」
シュピリア族の姫「・・・」
シュピリア族の姫「あぁ・・・この赤子の魂は・・・ 花が沢山咲いて視える」
シュピリア族の姫「ということは・・・この子さえ生き延びれば・・・」
シュピリア族の姫「シュピリアの民は・・・終わらない・・・」
シュピリア族の姫「・・・」
久我婆娑羅(傭兵時代)「すまない・・・」
久我婆娑羅(傭兵時代)「なんとしてもこの赤ん坊は助けてやる!」
〇坑道
???「ばぶばぶ♪」
こうして俺は赤子と共に砦の地下通路を抜けて戦場を脱出した
〇シックなバー
田中正「くぅーー・・・! 泣けますね、その話」
田中正「その後、 助けた赤ん坊はどうしたんですか?」
久我ローズ(店長)「”シオン”と名付けて今ではアタシの娘よ」
久我ローズ(店長)「しかもこうしてオカマで店長をしてるのは」
久我ローズ(店長)「アタシが父親と母親の両方をするため・・・」
田中正「なんと・・・!」
田中正「感動しました!」
田中正「僕も”四人の娘”を抱えている父親として貴方を尊敬します!」
久我ローズ(店長)「まぁ四人も!」
久我ローズ(店長)「見た目に反して結構お盛んなのね」
田中正「あっ、いやその・・・」
田中正「どちらかというと妻の方が積極的で・・・」
田中正「ウチは女性が”かなり強い”ですから」
「・・・」
田中正「あ、あの・・・良かったら 娘達の写真見ます?」
久我ローズ(店長)「ええ是非」
〇おしゃれなリビングダイニング
まず一人目が次女のルコウ
真面目な子で、この子がしっかりしてくれてるお陰でだいぶ助かっています
続いて次女のダリア
本当は姉の事が大好きなのに、素直になれない天邪鬼な性格の困った子です
最後に末の娘のラン。
この子は純粋で可愛いい、家族のアイドルです
〇シックなバー
久我ローズ(店長)「あら? 長女はどうしたの?」
田中正「あ、いやその・・・」
田中正「まぁこの子なんですが・・・」
〇月夜
長女のダリア、
姉妹の中で一番のポンコツで問題児
田中ダリア「はっ・・・?」
で、ですが! 彼女も僕の中で一番可愛くて大切な娘なんです!
田中ダリア「ふふふ♪」
〇シックなバー
久我ローズ(店長)「娘さん全員ドレスが好きそうね」
久我ローズ(店長)「ウチの娘と気が合いそうだから是非友達になって欲しいわ」
田中正「いいですね♪」
田中正「今度はウチの娘に、おたくのシオンちゃんを紹介してみます」
久我ローズ(店長)「あっ、いらっしゃ~い」
久我ローズ(店長)「──って、ちょっ、アンタ!」
三浦マリン「はぁーい♪ 来たわよ―♪」
田中正「店長、お知り合いですか?」
久我ローズ(店長)「まぁね、」
久我ローズ(店長)「昔傭兵してた時のライバルよ」
久我ローズ(店長)「それがまさか近所で飲み屋を経営してるとわ思わなかったけど・・・」
三浦マリン「もぉ~それは昔の話でしょ」
三浦マリン「私からしたら、アンタがアタシと同じオカマになって店を経営してることが信じられないわ」
久我ローズ(店長)「ま、要するに──」
三浦マリン「アタシ達──」
「色々あったって事ね!」
三浦マリン「ところで何のお話してたの?」
久我ローズ(店長)「お互い子持ちだから、娘の話をしてたのよ」
三浦マリン「まぁ! だったらアタシも混ぜてちょうだい!」
三浦マリン「最近、ウチに若い子が入店してね」
三浦マリン「タケオちゃんって言うんだけど」
三浦マリン「もぉープリティ可愛いのよぉ♪」
三浦マリン「てか可愛すぎてすぐにウチの店の看板娘ならぬ看板息子よぉー♪」
三浦マリン「最近、アンタのお店に通ってるみたいね」
久我ローズ(店長)「あぁ、あの子ね」
久我ローズ(店長)「シオンのお客さん兼友達になってくれてるわ」
田中正「なんか良いですね」
田中正「もしも全員の子供がここに居たらなんだか盛り上がりそうです」
「確かに!」
〇シックなバー
シオン「──」
田中ダリア「──♪」
タケオ「──」
父親達は自分達の娘(息子)が、
集まって楽しむ姿を想像して会話が弾んだ
そして、娘達がこんなふうに何時までも暮らせる平和な世の中になることを願った。
終わり
場末のスナックかと思っていたら、元傭兵さんたちの第2の人生の楽園だった!
しかもれこんさんの作品の娘(1人はムスコ…?)たちの競演にニヤニヤしました。
今リアル世界が戦争真っ只中なので、早くこんな光景になれば良いなと思いました。