父きたる(脚本)
〇おしゃれなリビング
父「お前が全然訪ねてこないからもう私の方から来ちゃったよ」
父「旅はどうなったんだ」
ケンタ「いや正直選考に残ってないから3話を上げる意味がない」
父「メタいことをあんまりはっきり言うな」
ケンタ「そもそも元が5分尺のコントだから本来完結済みというか」
父「読み切りが評価されて連載に発展するケースだってあるじゃないか」
ケンタ「発展しなかったんだよ」
ケンタ「主人公として俺の魅力が足りなかった」
父「まず持ちネタの流用でなんとかしようと思う方がどうかしてる」
父「と、親らしく教育的なことを言ったところで」
父「父が来た!」
ケンタ「どうもはじめまして」
ケンタ「本当にケンタウロスだったんだね」
父「うん」
父「視点によってはただの茶色いズボンのおじさんに見えるかもしれないが本当にケンタウロスだ」
ケンタ「ということはシャツだけ着て下はまる出し・・・」
父「あんまり追及してはいけない」
ケンタ「下に馬ついてるのも大変なんだね」
父「1階が飲食店のマンションみたいに言うな」
父「しかしお前もいろいろ大変だったろう」
ケンタ「まあね」
父「今まで力になれなくてすまなかった」
ケンタ「母さんとはなんで別れたの」
父「うーん」
父「ウ──」
ケンタ「「ウマが合わなかった」はナシで」
父「・・・」
父「じゃじゃ馬すぎた」
ケンタ「なるほど」
父「教習所で知り合ったときは子猫ちゃんだと思ったのになあ」
ケンタ「そういう話はいいよ」
ケンタ「え教習所?乗る・・・乗れるの?」
父「一般道なら自分で走った方が速いけどな」
父「そんなことよりケンタ」
ケンタ「!」
父「私を訪ねて来たということは、何か悩みがあるのだろう」
ケンタ「父さん・・・」
ケンタ(まあ訪ねて来たのは父さんの方だけど)
父「馬は悩むことで成長する、次のステージへ進めるようになる」
父「大きくなったな、息子よ」
ケンタ「父さん!」
ケンタ(俺たちのことをどちらかというと馬側で認識してるんだな・・・)
父「母さんには外してもらってるんだし、牡どうしの話をしようじゃないか」
ケンタ「うん・・・」
ケンタ「ぶっちゃけさあ、」
ケンタ「タップノベルって伸びるかなあ」
父「え」
ケンタ「いろんなサイト、いろんな形式で創ってきた上で総括して、ここはいい場所だなと思ってるんだ」
父「あ、ああ」
ケンタ「ゲームの表現に近いから圧倒的に書きやすいだけじゃなく、視聴者の反応がいい」
ケンタ「意識が高いんだろうな、ゴミみたいな2話にさえリアクション来たもん」
ケンタ「昔のニコニコ動画くらい熱量を秘めてるかもしれない」
父「懐かしいな」
ケンタ「やりがいは断トツあるのよ」
ケンタ「ただここで頑張って跳ねたとして、先へ広がる未来はあるのか・・・」
ケンタ「なかなかそのイメージが描けない」
父「息子よ、それは違うぞ」
ケンタ「えっ」
父「未来とは、あるとかないとかではない」
父「自分で作るものなのだ」
ケンタ「つまり・・・」
ケンタ「今はまだ、な──」
父「私も若い頃は悩んだ」
父「なぜケンタウロスは弓の名手なのか」
ケンタ「ん?」
父「だって馬の長所は機動力じゃん」
父「でも弓は1本ごとにじっくり構えて撃つ武器」
父「もう相性最悪!せめてクロスボウであれよ」
ケンタ「う、うん」
父「しかし自分自身から逃げることはできない」
父「私は弓の名手になり、プロの流鏑馬の人になった」
ケンタ「おお、すごい」
ケンタ「・・・流鏑馬で飯食えるの」
父「ギャラでにんじんをもらったりするからな、食えるっちゃ食える」
ケンタ(それは食えるうちに入るのだろうか)
父「上げ馬神事が問題視されたりしてたし、今度立候補してみてもいいな」
ケンタ「あの、素朴な疑問」
ケンタ「ケンタウロスって普通に驚かれない?」
父「ああ、身体の前に馬の首の模型をつけるんだよ」
父「それで普通に馬に乗ってる人に見える」
ケンタ「人の乗る位置が前すぎるのでは・・・」
父「まあそんな訳で、お前も自分の生きる道を見つけるんだ」
父「覆面バンドに素顔で混ざるとか、逆にジョッキーになって周囲を混乱させるとか、可能性はいろいろある」
ケンタ「なるほど」
父「早く一人前になれよ」
父「どっちがより真の馬に近づけるか、競争だ」
ケンタ「・・・」
エントリーもしてないレースのパドックに入れられてしまった