エピソード24『最期の一撃』(脚本)
〇荒廃したセンター街
【2034年、モンガル『ホビロン』。『泉 緋色』】
何体の敵キメラを、『パープル・クローンズ』を倒しただろう。
・・・皆が地に倒れていた。銃で撃たれ、刀に裁かれ、子供たちが死んでいく。
隣町のおじちゃん『ブラック・ダド』は、『ホーム・ホルダー』の軍隊へ指示を出し、自身も何百、何千というキメラと戦っていた。
足元に鳥キメラ『スバリナ』が落ちていた。その体は、寒さのせいか小刻みに震えている。
緋色「大丈夫か? 『スバリナ』」
スバリナ「『スバリナ』、シニタクナイ」
緋色「大丈夫だ! 俺が必ず助ける! もう少しでこいつら全員、全て打ち倒すから!」
スバリナ「『スバリナ』ユメガアッタ。バカダケド、マダヤリタイコトガアッタ」
バカみたいに笑う俺の前で、彼女は言った。
スバリナ「『スバリナ』、『スバリナ』ハ、バカダケド、ネガイガアッタ」
スバリナ「・・・アカチャンガ、ホシカッタ。バカダケド、ソレガユメダッタ」
言葉にならない。
無力で馬鹿な俺の中から、それは色濃く、ふつふつと湧いてきた。
〇空
朝焼けの空を雷《いかづち》 が割いた。
身体を、黒と金の光が覆っていく。高い空から、ソレは聞こえた。
【コノ世界デ1番強イ想イヲ感ジマシタ】
体中にチカラが満ちる。無限に、底知れない感情が、心の奥から噴き出してくる。
【ソレハ『憎シミ』ノ想イ。コノ『王留《オール》 』ヲ呼ビ出ス程ノ想イ】
ドス黒い感情が言葉と成って漏れていく。
緋色「・・・殺してやる。一片も残さず、消えてしまえ!!」
左手に宿った黒金の太刀を振るう。『イノリキメラ』を、『パープル・クローンズ』を、目に映る全ての『イキモノ』を滅する為に。
〇荒廃したセンター街
【2034年、モンガル『ホビロン』。『飼葉 タタミ』】
金色に輝く先生を前に幾千の命が空へ帰った。恐ろしいチカラ、それは全世界の誰もが知りえない、未知の『暴力』だった。
それは『フォーチュン』配下のキメラだけで無く、『ホーム・ホルダー』の人たちも巨大兵器も無差別に壊し、全てを滅ぼしていく。
けれど、
『フォーチュン』は倒れても斬られても、潰されても焼き溶かされても、その身を泡《あぶく》 のように復元させた。
楽々「『タタミ』! こ、こいつ、無限に再生する! 『イノリ』と、キメラと、全てと同化して、何度も何度も再生するよっ!」
『楽々』が顔を引きつらせ、悲鳴を上げる。
その前方で、ありったけの泡《あぶく》 の中から這いだし、仮面を拾い『ソレ』は再生した。
歯車フォーチュン「・・・・・・当然だよ」
幾つもの生き物と混ざり混然となった形で『ソレ』が地を歩む。
歯車フォーチュン「私の身体は『万能細胞マイティ』で出来ている。 私は、無限に再生し、取り込み、その全てと同化できるのだから」
歯車フォーチュン「・・・その恐ろしい『ヒーロー』も、この身に取り込んでやろう」
『ぶっち』! ダメっ!
巨大猫キメラの『ぶっち』が先生を突き飛ばし、代わりに取り込まれていく。
『ぶっち』は、苦悶の表情を見せながら、生きたまま溶かされ『フォーチュンの中』へ入っていった。
歯車フォーチュン「あれ? ゴミでも取り込んだかな? お腹がとても居心地悪い♪」
先生の黒金の武装は消えている。その身に多くの『黒い斑点』を残し、先生は地に膝を付けた。
────無我夢中で先生を引きずる。
『フォーチュン』から遠ざけ、その傷だらけマダラ模様の体を揺すった。先生は、その瞳から光を消し去っていた。
タタミ「先生! 先生が負けたら! 誰がリーダーの、『みれい』の、みんなの仇を取れるの! 諦めないで! 先生!」
タタミ「・・・・・・・・・」
わたしは、その口を自身の唇で塞いだ。その弱り切った黒い体を抱き留める。
先生にヒトの強さを伝えたかった。
愛するこの想いを届けたかった。
優しさの強さを思い出してほしかった!
タタミ「先生が、・・・・・・大好き」
深く深く、その唇を絡ませる。
わたしは人が人を愛する意味を初めて知った。
きっと、この瞬間がそうなんだと思った。
楽々「『タタミ』! 『緋色副隊長』にこれを!」
『楽々』が飛び散った『フォーチュン』の欠片から、『赤い宝・紅狗フリーシー』を拾って来る。
コージ「『タタミさん』! これも!」
転びそうになりながら、『コージ』が『青い宝・蒼猫ファジー』を持ってくる。
わたしは2つの神器を受け取り愛する先生に手渡した。
本当に最後の賭け、『化け物クリエイターズ』の命《すべて》 を賭ける。
タタミ「先生! 『リーダー』が最後に言っていた三種の神器の本当のチカラ、それはきっと、こういう事だと思うの」
タタミ「・・・青い宝『ファジーの弓』に、赤い宝『フリーシーの剣』をつがえ」
タタミ「黒い宝『ブロウの籠手』で射る。 ・・・出来た! きっと、これが『三種の神器の本当の姿』!」
集められたかのように、わたしたち『家族』がその身を寄せ合う。
弓を持たせた先生、その黒く染まった右手に生き残ったキメラの皆が、『楽々』と『コージ』も、その手を添える。
〇空
歯車フォーチュン「薄汚い小娘どもめ。私が全てを、お前たち全てを喰らってやろう。 ありがたく思うがいいよ。一片残さず噛み砕いて、あ・げ・る」
『フォーチュン』の大鎌を『人魔《じんま》 』が盾で受け止める。
『フォーチュン配下のキメラ』その顎を剣で切り裂く。
彼は闘いながら経験を積んでいた。
刃こぼれを起こした大剣と、鋼の盾、その身全てを賭して、わたしたちを守ってくれた。
・・・3つの神器から声が聞こえる。
【──私たちは全ての元に成るモノ。全ての元を断つモノ】
【──《どうか、この、世界中の化け物を救って!》】
【――誰よりも、世界中の誰よりも優しい『緋色』。アナタに、全てを裁くチカラを!】
緋色「みんな!」
楽々「あいよ! 副隊長♪」
タタミ「行こう、先生!!」
その右腕に自身の手を重ねる。全ての愛を手のひらに託した。
タタミ「未来の子供たちの、希望の為に!」
わたしたちは皆で、ファジーの弓『蒼弓ラ・ピュセル』を引き絞る。
途方も無く膨れ上がった『フォーチュン』の、その小さな仮面を狙い、光り輝く神器の先に在る、希望と未来を信じた。
〇空
神器の煌めきと共に、世界が『鈍色(にびいろ)』に染まっていく。
赤い陽さえも呑み込み全てが錆びた色へと代わっていった。
3種の神器が、わたしたち『ジャンク』以外の、全ての『時間と空間を固定』する。
タタミ「いわれもなく散っていった世界中の子供たち! わたしたち『ジャンク』にチカラを貸してッ!」
解き放った矢は光となった。
『歯車フォーチュン』の額を貫き、地平に咲く陽《あか》を目指して飛び立った。
𝓽𝓸 𝓫𝓮 𝓬𝓸𝓷𝓽𝓲𝓷𝓾𝓮𝓭
(´;ω;`)
(´;ω;`)
(´;▽;`)
こんな(素晴らしい話)、涙無しで読めるかいっ!!!スバリナちゃんの台詞の所から、もうずっと泣いとったわ!!!自分とも色々と重なるんだよ、あの思いと台詞が。
犬モカを読んでるからこそ、こみ上げてくる想いもあるし……ななかくん、ズルいよ。・゚・(ノД`)・゚・。
あ、あと気になった点が……ぶっちを止めた台詞の主、誤植かな?意図的だったらゴメンね;