鈴木は人気配信者を目指し最強の錬金術師と契約する

司(つかさ)

8話(脚本)

鈴木は人気配信者を目指し最強の錬金術師と契約する

司(つかさ)

今すぐ読む

鈴木は人気配信者を目指し最強の錬金術師と契約する
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇整頓された部屋
  鈴木とパンドラが住んでいる新しいアパート
  鈴木は一人、難しい顔をしながら電話をしていた
鈴木「うーん。数字が伸びないなぁー」
千花「新しい薬は何か試したの?」
鈴木「パンドラさんに相談しつつ色々と試しては見てるんだけど」
鈴木「魔力が必要な薬だから、一日に作れる数には限界があるし」
鈴木「視聴者にも『合成』やら『エフェクト』やら最近は飽きてきたって色々批判されるしで」
鈴木「どうすればいいんだろう・・・・・・」
  鈴木のチャンネルは無事1万登録者は達成したものの
  千花の動画以降再生数、登録者数共に伸び悩む状況が続いていた
千花「まぁ、あの時は私がいたからね・・・」
千花「あんたはホラあれじゃない、友達いないじゃない」
鈴木「ちょっと姉さんっ! それ酷くない?」
千花「酷いも何も事実なんだからいいでしょ別に今更」
鈴木「古傷がえぐられるぅ・・・・・・」
千花「あんたもいい大人なんだから、パンドラちゃんとイチャイチャするのもいいけど」
千花「それを仕事にするならちゃんと考えないと駄目よ」
鈴木「イチャイチャとか怖い事言うのやめてよ!」
鈴木「イチャイチャどころか毎日怒らせないようヒヤヒヤしてるんだから・・・・・・」
千花「あはは、なんとなく想像できるわそれ」
鈴木「笑い事じゃないんだって。姉さんの事があって、もっと僕をこき使うようになったんだからさ」
千花「それで物凄い薬が作れるならいいじゃない」
千花「パンドラちゃんだって生活の事があるもの。きっとあんたをいじめたいわけじゃないと思うよ」
鈴木「でも怖いんだよぉ」
千花「まだそんな泣き言言って・・・はぁ、先が思いやられるわ」
鈴木「それよりさ、そっちの方はどうなの?」
鈴木「柊さんとあれから仲直りは出来た?」
千花「まぁ・・・・・・私の方はいいじゃない」
鈴木「そうやって自分に都合の悪いことは誤魔化してさぁ〜。パンドラさんだって心配してるよ」
鈴木「『柊は鈴木より錬金術の見込みがあるかもしれん』とかなんとか」
千花「なにそれ。でもパンドラちゃんなら言いそうね」
千花「正直・・・そんな簡単に上手くはいかないよ」
鈴木「そっか」
千花「でも同じ職場には居るし、ちゃんと話はしなきゃって思ってる」
鈴木「うん」
千花「だからあんたもさこれから・・・・・・」
千花「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
鈴木「ん? あれ姉さん?」
鈴木(画面はまだ通話中表示になってる・・・でも声が)
千花「ちょっと急になに!? ねぇ! ちょ──」
千花「・・・・・・・・・・・・・・・」
鈴木「姉さん? どうかしたの、ねぇ!」
  その瞬間電話は切れた
  鈴木は急な状況に違和感を感じつつも、姉に簡単なメッセージだけを送り
  その場でそれ以上何かをすることはなかった

〇整頓された部屋
鈴木「姉さんメッセージへの返信ないけど大丈夫かな・・・・・・」
鈴木「パンドラさんも今日は遅いし」
鈴木「はぁ・・・・・・」
  時計は16時半過ぎを指していた
  パンドラは一人2時間以上前に買い物に出かけていた
鈴木(新作のお菓子を買うとか言ってたから、見つからないのかな)
鈴木「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
  しかしパンドラは電話に出なかった
鈴木(うーん、何かあったのかな)
鈴木(パンドラさん。最近は薬の研究だけじゃなくて僕のゲームもよく遊んでるし、お菓子もゲームに合うからってよく買いに行くもんなぁ)
鈴木(うーん・・・・・・)
  その瞬間、鈴木はある事を思い出した
鈴木「そうだ」
鈴木「そろそろご飯になるし、これ使ってみよう」
  鈴木が取り出したのは青い薬の入った瓶だった
鈴木「確か・・・『飲むことで契約を結んだ相手の状況が確認出来る』薬にしたんだっけ」
鈴木(緊急時にと思って作った薬だけど、使うのは始めてだな)
鈴木「とりあえず飲んでみよう」
鈴木「うわっ」
  薬を飲んだ瞬間のはじけるような衝撃の後
  だんだんと、鈴木の意識は薄くなっていく
  それは今まで体験したことない頭を別の意識が塗り替えていくような感覚だった

〇ビルの裏
少女「うえーん、怖いよう」
パンドラ「ちっ」
パンドラ「早く、ワシの後ろに隠れるんじゃ!」
パンドラ「お前! 一体どこの手の者じゃ」
パンドラ「なぜワシを襲う。誰の命令じゃ」
怪物「あー、あーっ」
パンドラ「くそっ・・・・・・言葉が通じんか」
パンドラ「とはいえこの状況では・・・・・・」
怪物「あーっ!!」
  怪物がパンドラに飛びかかる。パンドラは怪物の攻撃を身体を反らし間一髪でかわした
少女「パパーー! ママーー!」
パンドラ「ええい、泣くでない」
パンドラ「泣いたからと言って何も変わらん」
  その瞬間パンドラは気づいた
  自分の意識が誰かに観察されている事に
  そしてそれを観察できる対象はこの世に一人しかいない事にも
パンドラ(鈴木、緊急事態じゃ! 何故だかわからんが魔物がこの街に出現した)
パンドラ(なるべく時間は稼ぐが、この状況はマズい)
パンドラ(とにかく、家にある薬をなるべく集めここまで来るんじゃ!)
怪物「うー、あー!!」
少女「ひぃ!?」
パンドラ「大丈夫じゃ、ワシが何とかする」
パンドラ「なんせワシは天才で最強の錬金術師じゃからな」
少女「れんきん・・・・・・じゅつ」
パンドラ「カッコイイじゃろ?」
怪物「ううぅ・・・・・・あー!!」
  怪物が大きな唸り声をあげてパンドラの方に突進してくる
  その瞬間鈴木が見ていたパンドラの意識はテレビを消したようにぷっつりと暗闇になった

〇ビルの裏通り
  日が沈んでいき、街は段々と明るさを失っていく
鈴木(パンドラさんが居たのは、たぶん2丁目の裏路地だ)
鈴木(もう5分もかからないで到着する)
鈴木(でもなんで、こんな事に・・・・・・それに、魔物って言ってたよな)
鈴木(パンドラさんにもし何かあったら・・・・・・僕も、死ぬのか?)
鈴木(いやいや、今はそんな事考えてる場合じゃない)
パンドラ「鈴木、前じゃ!」
  鈴木の目の前には先ほどの視界で共有した怪物が立っていた
鈴木(本物の・・・・・・怪物・・・・・・)
  あまりに現実離れした光景に鈴木は動く事が出来ない
怪物「うあー!!」
鈴木(こんなの・・・・・・どうすれば)
パンドラ「ええい、ここまで来たのに使えん奴じゃ」
  鈴木の隣にはいつの間にかパンドラが立っていた
  パンドラは鈴木の手提げバッグから薬を漁り取り出す
鈴木「え? ちょっと!?」
  無理やり薬を飲まされた鈴木の心臓が一度大きく波打つ
  その手をパンドラが掴んだ
鈴木「パンドラさ」
パンドラ「──大声を出すでない」
パンドラ「お前とワシで作った『気配を消す薬』じゃ」
パンドラ「飲んでいる対象だけでなく身体的な接触があれば、その者も気配を消すことが出来る」
  鈴木は真正面に居る怪物の方を見た
  怪物はキョロキョロと首を動かし、こちらには目線があっていない
パンドラ「そういう事じゃ」
パンドラ「だがこの薬は一人より二人、二人より三人の気配を消した方が効果時間が短くなる」
  鈴木は視線をパンドラの方に移す
  パンドラの左手にはさらに小さな手が捕まっていた
少女「ひっく・・・・・・ひっ・・・」
パンドラ「まずは安全な場所に行くことが先決じゃ」
パンドラ「鈴木、案内しろ」
鈴木「わかりました。でもパンドラさんっ」
鈴木「左肩から、血が・・・大丈夫なんですか?」
パンドラ「こんな物少しかすっただけじゃ。大した事ない」
鈴木「でもっ・・・・・・」
パンドラ「いいか鈴木、歩きながらでいい。よく聞け」
パンドラ「ここはもう安全な場所ではない。あの魔物はおそらくワシの世界にいた奴らじゃ」
パンドラ「この世界の人間は武装などしておらん。ましてや魔力があるわけでもない」
パンドラ「であればどうなると思う? この国の平和が無くなってしまうかもしれん」
鈴木「そんな! そんな事って・・・・・・」
パンドラ「まだわからん。だが一つ言える事がある」
鈴木「・・・・・・・・・・・・」
パンドラ「ワシらは錬金術師じゃ。魔物に対抗する力がある」
鈴木「パンドラさん・・・・・・」
パンドラ「まずは情報を探り、魔物が出てきた原因を突き止めるぞ」
パンドラ「鈴木・・・・・・ここは正念場だ」
鈴木「パンドラさん。僕は・・・・・・まだ全部飲み込めてません」
鈴木「僕にも・・・・・・何か出来る事はあるんでしょうか」
パンドラ「胸を張れ、鈴木」
パンドラ「大丈夫じゃ、ここには最強のワシがい・・・・・・」
鈴木「パンドラさん!?」
  パンドラその場に倒れこむ
  鈴木はすぐにパンドラを抱きかかえ、少女の手を引を引いた
  そして夜の街、安全な場所を探し駆けていった

〇学校の体育館
大吾「えー、こちら○○小第二体育館」
大吾「緊急事態だ。至急応援頼む」
大吾「ちっ、反応なしか」
一輝「こっちもダメです」
大吾「まさか本部もやられちまってるなんて事はないよな」
一輝「どうでしょう。でも・・・・・・」
一輝「どちらにしろ、ここにずっととどまるわけにも行きませんね」
大吾「ああ、今夜は仕方ないな」
  二人の刑事が体育館で話をしている
  そこは刑事によって住民の避難が促され、一時的に安全が確保された空間だった
鈴木「刑事さんすいません。いきなり押し掛けて来たりして」
大吾「何言ってんだ。急にあんたらが来た時こそ驚いたがここは避難所だ」
大吾「少なくとも普通の人間なら追い返す事はしねぇよ」
大吾「それに・・・・・・」
一輝「子ども・・・・・・まだどれだけ街に残ってるんでしょう」
鈴木「僕たちがたまたま連れてこれたのは、さっきの子だけでした」
鈴木「逃げながらだと、どうしても周りを見てる余裕がなくて」
大吾「そうか、まぁしょうがない」
大吾「それよりあんた。あれはあんたの彼女かい?」
  刑事が指さしたのは、段ボールの上の毛布に寝かされたパンドラだった
大吾「怪我は軽いようで何よりだったが、ここじゃあまり見ない格好だな」
鈴木「それは・・・・・・ちょっと事情がありまして」
大吾「事情・・・・・・ねぇ」
大吾「あんたまさかこの状況について何か知ってるなんて事は」
一輝「──大吾さん、今はやめた方が」
  声を大きくした大吾の様子を、大勢の人が見ていた
  中には泣き叫んでいる子どももちらほらといる
一輝「皆さん不安なんです。まずは不安を取り除かないと」
大吾「・・・・・・まぁそうだな」
大吾「あんた『鈴木』君と言ったか」
大吾「後で話をしたい。3時間後に俺の所へ来てくれ」
鈴木「・・・・・・わかりました」
  鈴木はそう答え一礼すると、パンドラの傍に移動し床に腰を下ろす
鈴木「はぁ・・・・・・」
鈴木(何がどうして・・・こうなったんだよ)
鈴木(パンドラさん。早く起きてくれないかな)
鈴木(魔物が出る世界は・・・・・・ゲームだったら楽しいのに)
  鈴木はうずくまりながら、一人考え込んでいた

〇学校の体育館
大吾「なるほど・・・・・・その薬のおかげでここまで来れたと」
鈴木「はい。この薬さえあれば安全に」
大吾「──君は俺達を馬鹿にしてるのか?」
大吾「そんな薬、見たことも聞いたこともない」
大吾「そもそも、そんな物を使ったと言ってる時点で鈴木君」
大吾「君がこの事態に何か関わってるんじゃないかって、疑わざる負えない」
大吾「・・・・・・そうだろ?」
鈴木「・・・・・・・・・・・・」
一輝「大吾さん言いたい事は分かりますが、不安にさせてどうするんですか?」
一輝「確かに彼は怪しいかもしれない。あと、あの子『パンドラ』さんって言うんですよね」
一輝「二人が子どもを連れてここまで来れたのは事実じゃないですか」
一輝「調査は一旦置いておいて、その薬や二人についてもっと前向きに話を聞くのが大事だと思います」
大吾「一輝・・・だがコイツらは明らかに怪しい」
大吾「状況が分からない今、市民を守れるのは俺達しかいないんだぞ」
大吾「リスクはとれない。警戒して事には当たるべきだろ」
一輝「それは・・・・・・そうですが」
パンドラ「つまりお前たちはワシらが犯人だと疑っておると、そういう事か」
パンドラ「まったく迷惑な話じゃな」
鈴木「パンドラさん!?」
パンドラ「五月蠅いのう鈴木。頭に響くじゃろうが」
大吾「あんた・・・・・・気が付いたのか?」
パンドラ「あぁ、やっとな」
パンドラ「それよりお前たちはなんじゃ」
大吾「お前たちとはまたご挨拶だな」
鈴木「パンドラさん。この人たちは・・・・・・悪人を捕まえたり、調査したりする人たちです」
一輝「鈴木君から聞かせてもらいました」
一輝「パンドラさんの国に伝わってる薬を使ってここまで逃げてきたと」
一輝「それは一体どういう物なんですか?」
パンドラ「なるほどな」
パンドラ「ワシも状況が全て呑み込めているわけではないが、余計な争いは避けたい」
パンドラ「鈴木、こいつらは信用に値する存在なんじゃな」
鈴木「はい。刑事さんたちは僕たちを守ってくれてます」
鈴木「僕も何か力になれればって、そう思ってるんです」
パンドラ「わかった」
  パンドラは一呼吸入れた後、鈴木そして刑事達に語り始めた

〇学校の体育館
大吾「・・・・・・そうか」
大吾「にわかには、信じられねぇ話だな」
鈴木「えぇ確かに。魔物と言われても・・・」
大吾「だがあれは、この世の物とは思えなかったのも確かだ」
パンドラ「魔物は本来、魔王もしくは魔王の手の者が使役する存在じゃ」
パンドラ「それがこの世界に顕現したとしか考えられん。何故かはわからんがな」
大吾「あんたがその世界の住人だからそれを知ってると」
一輝「・・・・・・・・・・・・」
大吾「まぁいい。とりあえずはだ」
大吾「なら俺たちはどうすればいい? アイツらはいつ消える? 対処方法は?」
大吾「情けない話だが本部と連絡が取れない以上、ここで油を売ってるわけにはいかない」
大吾「連絡を取れる手段を探して、応援を呼ぶ必要がある」
パンドラ「・・・・・・この世界にどんな武器があるかワシは知らんが」
パンドラ「魔物の力の源は魔力じゃ、魔物を使役している存在が魔力を送っておる」
パンドラ「その者の魔力がなくなれば無力化出来るじゃろう」
大吾「つまりその親玉を倒せば、アイツらは居なくなると」
パンドラ「そうじゃ。魔物自体は一時的に対処出来るかもしれんが根本的な解決にはならん」
大吾「そうか・・・・・・」
大吾「パンドラさん。あんたは魔物ってやつが今どのくらいこの街に居ると考えてる」
パンドラ「少なくとも100・・・・・・いや200かそれ以上はいるだろう」
パンドラ「ある程度魔力が強ければワシでも感知できる。先ほどと比べかなり魔力の波が濃くなっておる」
パンドラ「恐らく魔物を使役する者が近くにいるか、魔物自体数も増えているな」
大吾「となれば、余裕はないか」
一輝「大吾さんあの・・・・・・」
大吾「どうした一輝? 面食らうのは分かるがお前にも手伝って・・・・・・」
一輝「まずは大吾さん。ご自宅へ行ってください」
大吾「おまっ・・・・・・一輝!」
一輝「本部へ連絡を取る手段を探していたら、間に合わないかもしれない」
大吾「それは・・・・・・だが、まずは避難した人たちの」
一輝「──ここの安全は俺が確保します」
一輝「大吾さんだって今の話を聞いて分かったんでしょ」
一輝「一刻を争う状況じゃないですか!」
大吾「お前いつから俺にそんな口をっ!」
  大吾が一輝に近づきその襟元を掴む
鈴木「ちょっと二人とも!? やめてください!」
  一触即発しかねない状況に、慌てて鈴木が割って入った

〇学校の体育館
鈴木「娘さんが・・・・・・そんな」
一輝「ええ。緊急事態だったので慌ててすぐ、街中に居る人の避難誘導を行ったんですが」
一輝「あの時は・・・ひと仕事終わった帰りで」
一輝「大吾さんの娘さんは、まだ家に居る筈です」
大吾「俺だけが特別なわけじゃねぇ! ここにいる人全てが肉親の心配はしてるだろ」
大吾「それなのにお前はこの期に及んでなんだ! 俺を馬鹿にしてるのか!!」
一輝「馬鹿になんかしてません」
一輝「だって大吾さんは娘さんのために今まで頑張って来たんじゃないですか」
一輝「パンドラさんの話を聞いたでしょ? ここは今常識が通じる場所じゃない」
一輝「それなら一刻も早く娘さんを助けるべきです」
大吾「しかし・・・・・・」
鈴木「僕とパンドラさんが一緒なら何とか出来るかもしれません」
大吾「あんた急に何言って」
鈴木「・・・・・・僕は、薬を自分のために使ってきました」
鈴木「自分のチャンネルを大きくするため、派手な薬を使って楽しい事が出来ればって」
鈴木「でも今は違う。目の前に薬を必要としてる人が沢山いるんです」
鈴木「なら僕が、僕とパンドラさんが力にならないといけないと思います」
パンドラ「ふっ・・・・・・」
大吾「そんな得体の知れない薬を使う事なんて出来るか」
大吾「それに君は俺たちとは違う」
大吾「危険な目に合わせる事なんて出来るわけないだろ!」
一輝「それなら大吾さん、あなたが守ればいいんです」
大吾「・・・・・・なんだと?」
一輝「鈴木君とパンドラさん。二人はこちらでは対処できない敵を避けてここまで来たんです」
一輝「その薬があれば安全に娘さんを助け出せるかもしれない」
一輝「だから万が一何かあったら、大吾さんあなたが守るんです」
  大吾が鈴木とパンドラを見る
  鈴木は大きく頷いている
  パンドラは腕を組み、見開いた目で視線を送り返した
大吾「・・・・・・わかった」
大吾「一輝すまない。ここは頼んだ」
大吾「すぐに戻って来る」
一輝「大丈夫です。任せてください」
鈴木「一輝さん。この薬を使って下さい」
一輝「これは?」
鈴木「僕とパンドラさんがここに来る前に使っていたものです」
鈴木「飲んだ人の気配を消す事が出来ます。身体の接触がある人も全員気配が消せます」
一輝「なるほど、ありがとう。何かあったら使わせてもらうよ」
鈴木「ただ気配を消す対象が多すぎるとあまり効果は持たないかもしれません」
鈴木「それを使ったら逃げるなり、隠れるなりしてその場を離れてくださいね」
一輝「わかったよ」
大吾「よし、時間が惜しいすぐに出発するぞ」
鈴木「はい、よろしくお願いします」
パンドラ「お前たち、油断するでないぞ」
大吾「ったく、誰に言ってやがる」
大吾「俺もお前らも、必ず無事に帰してやる」
  三人が目を合わせて一度頷く
  そして、夜の街を駆けていった
  何が起こるか分からない今ままでの街とは違う暗闇の中で
  三人の救出作成が始まった

次のエピソード:9話

成分キーワード

ページTOPへ