解決編(脚本)
〇学校の廊下
私たちは職員室を抜け、話を続けた。
未申恵梨香「ど、どうしたの!?いきなり抜けたりして」
石川遥花「犯人、ほぼ確定で分かったよ...」
田中心愛「え!?マジ!?誰!?」
石川遥花「結論から言うと、犯人は...」
石川遥花「渡辺くん!」
田中心愛「え、やっぱそうなの」
石川遥花「ではなく!」
石川遥花「龍堂くんだ!!」
田中心愛「り、龍堂くん!?」
辰巳青砥「なんでいきなり龍堂が出てきた!?」
石川遥花「証拠がいくつかあるんだ」
石川遥花「まずは本人も交えて話がしたいんだけど...確かあの人部活やってるよね?」
辰巳青砥「ああ、今から部室行くか!?」
〇学校の部室
龍堂の部室へ向かった一同。
龍堂篇「何、あの下着泥棒の犯人が分かったのか!?」
石川遥花「そんなところだね」
龍堂篇「どうせ犯人渡辺だろあれ?」
石川遥花「まあまあ...まずは聞いてほしい」
石川遥花「今までのことをまとめると、プール後の着替えのときに下着がなくなったことが判明している」
石川遥花「着替えの前に教室に恵梨香ちゃんが鍵をかけたことは私も見ていたし、他何人も見てるんだ」
石川遥花「しかしプールから帰ってきた時点で教室の鍵は開いていて、下着はなくなっていた」
石川遥花「だから犯人は鍵を借りて開けるかピッキングをして盗まなければならない」
石川遥花「でも鍵穴にピッキングの跡は見られなかったから、鍵で開けたことが予想できる」
石川遥花「それでさっき職員室に向かって事実確認をしたら、犯人は鍵を取りに行って、その後閉めずに返していることが分かったんだ」
石川遥花「鍵を取ったのは中肉中背で黒髪の男子生徒、」
石川遥花「取りに行ったのは10時 戻したのは10時25分... ということが判明」
石川遥花「で戌亥くん、渡辺くんが戻ってきたのはいつだった?」
戌亥颯真「確か授業が終わる少し前、」
戌亥颯真「プールを上がって髷村の話が始まる直前に...」
戌亥颯真「まさか!?」
石川遥花「そう、髷村先生の長話が終わってシャワーを浴び、校舎に戻ったのは10時30分頃」
石川遥花「だけど職員室の先生は25分に鍵を返しに来たと言っていた」
石川遥花「プールから教室まで行くのに約3分、それに加えて今日髷村先生の話長かったし、シャワーの時間も考えると、」
田中心愛「渡辺くんが鍵を戻すことは不可能、ということか...」
石川遥花「そういうこと、だから渡辺くんは犯人ではないんだよ」
戌亥颯真「...なるほどそういうことだったのか」
戌亥颯真「...ロン、ごめんな疑って」
辰巳青砥「俺もごめん...」
渡辺ロン「おう、分かってくれればいいさ!」
龍堂篇「待てよ!プール中にトイレに行ってた渡辺がやってないとなると誰になるんだよ!」
渡辺ロン(え...?何でトイレの件を...?)
石川遥花「それはだね... 渡辺くんが犯人でないとすると、残る候補は2つに絞れる」
石川遥花「一つは他のクラスの人の犯行という可能性」
石川遥花「でもそれはあり得ないということが分かった」
石川遥花「だよね、明美ちゃん?」
丑寅明美「いえす!その話については確認済みだー!」
丑寅明美「私も他のクラスの人が犯人ではないかと疑って、みんなが職員室行ってる間に他のクラスの人にも3時間目のこと確認してきたんだよ」
丑寅明美「そしたら全クラス3時間目はトイレや保健室で抜けていた人はいなかったらしい!」
丑寅明美「だから他のクラスの人の犯行という可能性は極めて低い!」
石川遥花「そこでだ、他のクラスの人もやってないとなるとこのクラスの人の犯行、それもただ一人に絞れる」
石川遥花「それはプールの授業にいなかった人... 恵梨香ちゃん、誰だったっけ?」
未申恵梨香「今日のプールの授業にいなかったのは3人、一人は入院中の六道さん、」
未申恵梨香「そしてもう2人は保健室に行っていた龍堂くんと大原くんだよ」
石川遥花「病気で入院中の六道さんがわざわざ学校に来てこんなことをする可能性は低い」
石川遥花「しかも鍵を取りに来たのは男子生徒だったらしいし、女子の六道さんは違うだろう」
石川遥花「そして大原くんはこの前階段から落ちて大怪我をし、今は松葉杖らしいじゃないか!」
石川遥花「さっき職員室に聞き込みに行ったときに松葉杖の人が来たとは言っていなかったので、大原くんではないだろう」
石川遥花「とすると、保健室に行っていてその後戻ってきた龍堂君、」
石川遥花「犯人はあんただ!」
龍堂篇「いや...ちょっと待てよ!俺は気分が悪くて4時間目の直前まで寝てたんだよ!」
未申恵梨香「あー、確かに4時間目始まる直前に戻ってきたかも」
龍堂篇「だろ!?」
すると、部室の奥の方で寝ていた人物が起きて話に入ってきた。
大原リタ「あれ...?龍堂くんもう治ったとか言って3限途中の10時前に授業戻ってなかったっけ?」
石川遥花「...え!?」
龍堂篇「大原!?なぜそこにいる!?」
大原リタ「いやそりゃこの部活の部員だしいつもいるでしょ、今さら何を言うの!?」
龍堂篇「...」
石川遥花「しかも一つ気になったのは、何で渡辺くんがプール中にトイレに行ったことを知ってるの?」
龍堂篇「...」
龍堂篇「あー、もうこれは言い訳できねえな」
龍堂篇「俺が...やりましたよ」
〇学校の廊下
渡辺ロンがトイレに行ったときまで遡る...
龍堂篇「ふう...そろそろプールの授業終わる頃だし教室にいるか」
龍堂篇「...あれ?鍵がかかってる。何故!?」
龍堂篇「まいっか、こんなときのためにピッキングセットを持ち歩いてるんだなぁ」
ガチャガチャ...
龍堂篇「あれ、難しいなぁ...」
龍堂篇「仕方ない、職員室の鍵を拝借させていただきますか」
数分後...
龍堂篇「よし、鍵も借りたし残りの時間は席でゲームでもするか!」
龍堂篇「あれ...これは女子の着替え!?」
龍堂篇「そうか、水泳のときはこの教室女子の更衣室になるんだった!」
龍堂篇「てことは...田中さんの、下着も!?」
龍堂篇「いやいや何を考えてるんだ俺!?変態じゃないか!しかも100パーバレておしまいだろ!」
龍堂篇「でも...ちょっとくらいなら」
「あー!漏れる漏れる!」
龍堂篇「うわ、誰か廊下を走ってる」
龍堂篇「あれは...渡辺ロン?プール中にトイレか?」
龍堂篇「あいつは学年でも有名な大泥棒...」
龍堂篇「そうだ、ここで俺が下着を盗んだとしても誰もが大泥棒のアイツを疑うはず、」
龍堂篇「アイツは停学になって俺は田中さんの下着を入手...一石二鳥じゃないか、俺って天才!?」
龍堂篇「よし、さっさと盗って鍵を返すとするか!」
〇学校の部室
龍堂篇「これが...事の顛末です」
龍堂篇「二人とも、本当にすみませんでした」
田中心愛「...」
渡辺ロン「...」
龍堂篇「田中さん、下着はお返しします」
田中心愛「...」
田中心愛「...いるかボケェ!!!」
田中心愛「誰かに触られた下着なんてもう使いたくねーわ!」
田中心愛「お前、どうせ盗んだ後自分の欲を満たすために使うつもりだったんだろ?」
田中心愛「そもそも人の下着盗むなんて度を越えた変態だし、その罪を渡辺くんになすり付けようとしたとか人として終わってる!」
田中心愛「お前は人間のクズだ!」
田中心愛「私は謝られても許さないから、謝りたいなら渡辺くんに謝ってくれ」
龍堂篇「渡辺くん、濡れ衣を着せようとして本当にすみませんでした」
渡辺ロン「万引き窃盗を繰り返してる俺にも非はある、だが女性の下着を盗むような変態行為は決してしないぞ」
渡辺ロン「人が苦しみと屈辱を抱くような盗みはしない、それが俺のモットーさ!」
渡辺ロン「それだけは...覚えておいてくれ!」
渡辺ロン「そして、この事件の一番の被害者は田中さんだ」
渡辺ロン「その田中さんが許さないと言っているのだから、俺も許すことはできないよ!」
〇教室
数日後...
石川遥花「おはよー」
田中心愛「おはよー名探偵!」
石川遥花「その呼び方恥ずかしいよ!」
田中心愛「だってあの推理すごかったじゃん、あの場にいた人、遥花ちゃん以外みんな渡辺くんを疑ってたよ」
石川遥花「いやー、ただ偶然気付いただけだよ!そんでもって、ちょっと渡辺くんが可哀想に見えてたし」
石川遥花「...にしてもあの下着泥棒、停学になって随分経ったけど来てないよね」
下着泥棒の龍堂は結局先生にもバレて1週間の停学処分を言い渡されていた。
田中心愛「ああ、あのパンツマンは転校したらしいよ!」
田中心愛「まあ来たとしても学校中で白い目で見られることは目に見えてるしねー、」
田中心愛「ざまあみやがれー!ってところだね」
石川遥花「そりゃそっかw」
石川遥花「にしてもパンツマンってwすごいあだ名付けるね」
石川遥花「あれ、机の中に何か入ってる・・・」
予告状
今日の昼休み、貴女のスクールバッグの中のチョコを頂きに参上する!
渡辺ロン
石川遥花「またかよあいつw」
田中心愛「えー、またあの怪盗??」
石川遥花「今日こそはお菓子死守するぞ!」
渡辺くんはあの事件で思いっきり窃盗を自白してしまったので、もう吹っ切れたのかあらかじめ予告するようになっていたのだ。
その堂々とした態度や鮮やかな盗み方から、心愛ちゃんは怪盗というあだ名をつけていた。
田中心愛「あー遥花ちゃん・・・ もしかしてあの怪盗のこと好きなの?」
石川遥花「い、いやそんなことないよ!」
石川遥花「でもあいつ・・・パンツマンの部室行ったとき、ちょっとカッコいいこと言ってたじゃん」
石川遥花「人が一生涯苦しみを抱えるような盗みはしない、それが俺のモットーさ!ってね」
田中心愛「確かにあれはかっこよかった!」
田中心愛「しかもその後、私が許さないと言っているのだから俺も許すことはできないよ、って言ってたのもね」
石川遥花「確かにあの言葉も惚れるねぇ・・・!」
石川遥花「ところで、そういう心愛ちゃんはどうなんだい?さっきから興奮気味に話してるけど!」
田中心愛「いやぁ、あの言葉には心を盗まれたけど、うちは恋愛対象外かなぁ...窃盗常習犯だし!」
石川遥花「そこも含めて彼の魅力じゃないか〜」
田中心愛「わぁお、めっちゃ好きじゃん!」
田中心愛「うちは遥花ちゃんの恋を応援するぞ〜!」
石川遥花「ちょっと!勝手に恋にしないで!」
渡辺ロン「よ、石川さんと田中さん、俺の席に座って何を話してるんだい?」
石川遥花「うわ!?渡辺!?びっくりした!」
渡辺ロン「なんか化け物が現れたような反応だねぇ!」
石川遥花「あー!そういえば私の机に予告状入れただろ!」
石川遥花「今日こそはお菓子盗らせないからな!!」
渡辺ロン「さあ、俺の鮮やかな盗術を回避できるのかな?」
私たちは、大泥棒もとい怪盗紳士に心を盗まれてしまったのであった。
Fin.