第10話 勇者の始まり④(脚本)
〇謁見の間
ルーク「目障りなんだよ、魔物の分際で姉ちゃんの周りをチョロチョロと!」
ビンス「どちらかというと、つきまとわれているのは我なのだがな!」
ルーク「くっ」
〇武骨な扉
ライラ「うーん、やっぱりビンスくんがあの姿じゃ、締まらないなあ」
カニーラ「ど、どうすればいいっすか!?」
カニーラ「あんな戦い、割って入れないっす!」
ライラ「っていうか、ルーくんがここにいるのに、カニーラの本体はどうしたの?」
カニーラ「ごめんなさい! ルークさんを見失っていたっす!」
カニーラ「それをライラさんに伝えようと思っていたんすけど、バタバタして忘れてたっす!」
カニーラ「ごめんなさいっす!!」
ライラ「まあ、起きちゃったものはしょうがないけど、どうしようかな」
ライラ「ルーくんも聖剣も、封印するわけにはいかないし・・・」
〇謁見の間
ルーク「ハアッ!」
ビンス「ぐっ・・・」
〇武骨な扉
ライラ「アルママは、この戦いを止められそう?」
アルママ「その前に、魔王のビン詰めにまだ頭が追いついていないのだけど・・・」
ライラ「そうそう、アルママに解いてほしいのがあの封印なの」
アルママ「いえ・・・あれは無理ね」
アルママ「封印が強力すぎる」
ライラ「そこを何とか!」
アルママ「そもそも魔王を封印したなら、英雄になれるわよ?」
アルママ「なぜ封印を解く必要があるのか、わからないわ」
ライラ「私は、英雄になることに興味がないもの」
ライラ「それよりも、ルーくんが立派な勇者になるためには、ちゃんとした魔王を倒さなきゃ」
ライラ「ビン詰め魔王だと、あんまりでしょ?」
アルママ「それは、わからなくもないけれど・・・」
ライラ「あの姿じゃなければ、別に今、最終決戦を迎えても構わないんだけど・・・」
カニーラ「え、いいんすか!?」
ライラ「でも、封印が解けないなら、戦いをやめさせなきゃ」
ライラ「魔王だとわからない状態で倒しても、意味ないし!」
ライラ「かといって、あの二人、戦いをやめる気もなさそうだし・・・困ったなあ・・・」
〇洋館の廊下
???「どうも、こんばんはー」
〇武骨な扉
「誰!?」
???「魔物レンタルサービスですー」
???「集金に来ましたー」
〇謁見の間
ビンス「ぬ! お主、カミロか!?」
カミロ「そうだよー」
カミロ「何で、僕の名前を知って──」
カミロ「あれー? もしかして、ヴィンス様?」
カミロ「こんなところで、何しているのー?」
ルーク「余所見をしているとは、余裕だな!」
カミロ「効かないよ」
ルーク「くっ!」
カミロ「ヴィンス様が行方不明って聞いて、皆探して──」
カミロ「はないけど、心配・・・」
カミロ「もしてないかな」
ビンス「お主、もはや何がいいたいのだ・・・?」
カミロ「ごめん、ごめん」
カミロ「とりあえず、魔王城に帰るー?」
ビンス「ああ、頼む!」
ビンス「ウマちゃんも、来るのだ!」
カミロ「じゃあ、飛ぶよー」
〇武骨な扉
ライラ「まずい!」
ライラ「行くよ、ウマちゃん!」
ウマ「ウマッ!」
アルママ「ど、どうしたの!?」
ロゼたん「きゃっきゃっ」
アルママ「ロゼッタが浮いた!?」
アルママ「ちょっと、どこへ行くの!?」
〇謁見の間
ルーク「待て、魔物め!」
ライラ「ルーくん!」
ライラ「その人はもと聖女さんだから、きっと心強い仲間になってくれるわ」
ライラ「じゃあ、私を迎えにきてね」
〇謁見の間
ルーク「姉ちゃん!?」
ルーク「くそ、消えた!」
勇者は、姉を魔物に連れさられた。
〇武骨な扉
アルママ「ロゼッタ・・・」
カニーラ「転移魔法っすね・・・」
カニーラ「まさか、こんなことになるなんて・・・」
ルーク「カミーラ、説明してくれる?」
ルーク「姉ちゃんが何をしていたのか、全部!」
カニーラ「ひえっ」
〇黒
〇謁見の間
教皇「ん・・・」
イーさん「やっと起きたか、教皇さんよ」
教皇「ああ、イーサンか、久しいね」
イーさん「ずいぶん派手にやられたみたいだな」
教皇「歳のわりに、はしゃぎすぎたのは認めるよ」
イーさん「だから昔、聖騎士をやめるときに忠告しただろう」
イーさん「勇者を無理やり増やしても、余計な犠牲が増えるだけ」
イーさん「いつか、しっぺ返しを喰らうと」
教皇「ああ、そんなこともあったね」
教皇「高潔な君は、偽勇者の任務のあと、すぐに聖騎士をやめてしまったね」
イーさん「子どもを巻きこむやり方は、好きじゃない」
イーさん「まあ、当の巻きこまれた子どもは逞しく育ったようだが・・・」
教皇「その責任をとるために、彼らに同行しているのかい?」
イーさん「今回も遅れちまったし、何の役にも立ててないがな」
イーさん「それでも、ついて行くつもりだ」
教皇「じゃあ、ちょうどいい」
教皇「アルマを頼むよ」
教皇「勇者と一緒に行くようだから」
イーさん「ったく、相変わらず俺をいいように使いやがって」
イーさん「お前さんこそ、責任はとれるのか?」
教皇「責任? 何のだい?」
イーさん「何のって・・・勇者の存在を使って、さんざん国民を騙していただろ!?」
教皇「ああ、それはもちろん──」
教皇「とらないよ」
イーさん「は!?」
教皇「だって、今までの悪事がバレたら、」
教皇「勇者ルークを認めるという彼女との約束が果たせないだろう?」
イーさん「お前さんなあ・・・」
教皇「まあ、勇者たちには手違いだったと教会から謝罪するし、迷惑料も払おう」
教皇「誠意は見せるさ」
イーさん「お前さん、絶対いつか地獄に堕ちるぞ」
教皇「ははっ」
教皇「それくらいの覚悟がなければ、教皇なんてやっていられないよ」
教皇「それに、聖女を捨てたお前には、いわれたくないな」
〇武骨な扉
「『合体!』」
ルーク「──それで、俺が心配だった姉ちゃんと、ずっと旅をしていたってわけ?」
カニーラ(ビンスさんのことは、何とか誤魔化せたみたいっすね・・・)
カニーラ「そうっす!」
ルーク「まあ、姉ちゃんがパーティーメンバーを集めようとしていることは、」
ルーク「何となくわかっていたけど・・・」
ルーク「それにしても、分身とはいえずっと姉ちゃんと一緒だったなんて、羨ましいね」
ルーク「ねえ、カニーラ」
カニーラ「カ、カニ鍋だけは、勘弁してほしいっす」
ルーク「とにかく、魔物に攫われた姉ちゃんを早く助けないと」
イーさん(話を聞いた感じだと、自分からついていったようだけどな・・・)
アルママ「わたしも一緒に行くわ!」
アルママ「娘が心配だもの」
〇闇の要塞
魔王城
〇要塞の回廊
イーノク「はあ・・・ヴィンセントのやつ、生きているのか・・・?」
イーノク「ならば、どこへ──」
イーノク「いたたっ・・・」
イーノク「何なんだ、このビン! ・・・ん?」
イーノク「まさか、ヴィンセント・・・様!」
〇謁見の間
教皇「勇者よ、ちょっと聖剣を出してくれるかい?」
ルーク「え? はい──」
教皇「少し借りるよ」
教皇「しまった、うっかり闇の中に落としてしまった」
イーさん「いや、今のわざとだろ!?」
教皇「すまないね。代わりに、これをあげよう」
イーさん(それは・・・本物の聖剣・・・!)
教皇「前の聖剣より、強力だと思うよ」
イーさん(そりゃ、偽物なんかとは比べものにならないだろうよ)
ルーク「ふーん」
ルーク「じゃあ、ありがたく使わせてもらいます」
勇者の聖剣がパワーアップした!
ルーク「さて、目指すは魔王城!」
ルーク「姉ちゃんをあの魔物から救出し──」
ルーク「魔王を倒す!」
教皇の開き直りに笑いました😂
それにしてもライラの行動力は凄いですね。どこに行くか確かでない空間転移に自ら入っていくなんて、ルークのためなら何でもしちゃうライラ、最初からぶれませんねー🤣
アイディアに溢れ、色々と捻りの効いた作品ですね。まだまだ旅は長そうですが。赤ちゃんとの冒険旅も、サイドストーリーとして見てみたいです!!
さて「いわくー」の方も見せて頂きました。
恐ろしい話の多い中で数少ないハッピーエンドなので、完成が待ち遠しいですね。限られた素材で縛りの多い話を作るのも大変そうで、皆さん工夫されて流石です。頑張って下さい。私はクリスマス企画をもう1本書きたいなと思ってますww
ルーくん、本物の勇者になれて良かった!教皇様のふてぶてしさも嫌いじゃないです。
魔王とウマちゃんがおっこちてくるスチルは笑いましたwww