第三話「耽美霊。だよ」(脚本)
〇城の救護室
魔法使い「異常なし・・・」
「──ケメン」
魔法使い「えっ!?」
〇城の廊下
魔法使い「・・・」
魔法使い「気のせい──」
「──メン」
魔法使い「!?」
魔法使い「・・・」
魔法使い「何者ッ!」
魔法使い「ひゃっ」
〇城の廊下
???「イケメン──」
〇立派な洋館
〇洋館の廊下
ネコニキ「医者はいないのかよ!?」
ルック「パンツも買えぬ財政難ゆえ・・・」
ミオ「尋問官さん!」
ガムテ「医者ではないのだがな・・・」
〇黒
〇地下室への扉
「メス!」
「余はオスだが?」
「汗!拭いて!」
「ごめんあそばせ?」
「パンツで拭くんじゃねぇ──!!」
〇黒
〇英国風の部屋
ネコニキ「う、嘘だろ・・・」
ヤタラ「いやー、残念ですわぁ」
ヤタラ「ってことで、わたくしが女王ね!」
ガムテ「すまない」
ガムテ「さすがに蘇生はな・・・」
ミオ「尋問官さん、ご自分を責めないで?」
ミオ「その重荷、私も背負います」
ガムテ「えっ」
ミオ「あなたには、私が──」
ガムテ「・・・うん」
ルック「うーむ」
ネコニキ「なんてこった」
ネコニキ「耽美のアルテは12人揃わないと──」
ルック「ネコどの」
ネコニキ「ん?」
ルック「お兄様、本当に死んでるのかな?」
ネコニキ「え?」
ルック「すももの匂いがする」
ネコニキ「あぁ、それはまぁ」
ルック「死んだ人間というのは──」
ルック「もっと違うニオイがするものだ」
ネコニキ「なんだ坊主」
ネコニキ「知ったようなクチを」
ルック「『死硝病』だよ」
ネコニキ「え?」
ルック「ネコどのは知らんのか?」
〇中東の街
死硝病(ししょうびょう)
人体の細胞がガラス質に変質して──
やがては、死に至る奇病
〇墓地
8年ほど前かな
いくつかの国で死硝病は蔓延して──
カガ王国もそのうちの一つだった
〇ヨーロッパの街並み
未だにメカニズムは解明されていないが
死硝病は──
18歳以上の者しか罹患しなくてな
余も含めて──
子供は無事だったけれど
その代わり
〇岩山
カガ王国では
すべての大人が罹患し──
『全滅』したんだ
文字通り
〇英国風の部屋
ルック「皆が皆、親を亡くしたからな」
ルック「その際に──」
ルック「たくさん、間近で『みた』のだ」
ネコニキ「そう・・・だったのか」
ネコニキ「8年前・・・」
ネコニキ「そういやぁ」
ネコニキ「ササメをアルテに迎え入れた時も──」
ネコニキ「アイツ、そんなこと言ってたな」
〇大樹の下
〇英国風の部屋
ネコニキ「・・・」
ルック「ゆえに──」
ルック「すももの匂いには、違和感で」
ネコニキ「ああ、その匂いは──」
ネコニキ「耽美香。だよ」
ルック「タンビコウ?」
ネコニキ「耽美のアルテには──」
ネコニキ「12人の耽美使いがいてな」
ネコニキ「それそれが固有の『香』を纏っているんだ」
ネコニキ「ほらっ」
ルック「へぇ〜」
〇白
壱ノ香 ── 林檎 (りんご)
『耽美稲荷』 一雨 (ヒトアメ)
現況 : 狩猟中
参ノ香 ── 李(すもも)
『耽美の夜』 三雨 (ササメ)
現況 : シグナルロスト
〇英国風の部屋
ルック「シグナルロスト?」
ルック「『死亡』ではない。ということ?」
ネコニキ「ん?」
ネコニキ「そう・・・だな」
ネコニキ「どういうこった?」
〇黒
〇日本庭園
カマクラ幕府
本拠『オークラ』
〇屋敷の大広間
ナオトラ「うふふふっ──」
水晶ビジョン
ナオトラ「ふふぅ〜」
ナオトラ「ァァ──」
〇畳敷きの大広間
東郷「ねぇねぇ、セゴどん」
西郷「もす?」
東郷「上様、ニヤニヤしてるね」
西郷「もす」
東郷「エッチなヤツ見てるのかな?」
西郷「もっすぅ」
〇屋敷の大広間
ナオトラ「ふふん」
ナオトラ「わっちのチカラ、思い知ったか」
〇城の廊下
三雨 (ササメ)「イケメンッ!?」
〇屋敷の大広間
ナオトラ「ざまぁないのう、ダーリン」
ナオトラ「ふふっ」
つもり「ちわー」
ナオトラ「来たか、雑賀衆」
つもり「お初に。将軍様」
雑賀衆(弾丸郵便屋さん)
つもり「レターショットのご依頼で?」
ナオトラ「うむ、一通頼みたい」
つもり「ん〜?」
つもり「これって・・・」
ナオトラ「なんじゃ、文句あるんかえ?」
つもり「本来──」
つもり「『こういう用途』には」
つもり「使って欲しくないんですがね」
ナオトラ「堪忍せい」
ナオトラ「恋のため・・・じゃ」
つもり「恋のため・・・」
つもり「じゃー、仕方ない」
〇黒
〇立派な洋館
「いやぁ〜」
「恐れ入ったよ」
〇謁見の間
ネコニキ「ほんとーに」
ネコニキ「さすが、現代最強の耽美使い」
ネコニキ「感心感心っ」
三雨 (ササメ)「しとる場合かぁッ──!!」
特級耽美怨霊・三雨
ヤタラ「まっ!?」
ヤタラ「パンツ破れた!」
ヤタラ「心霊現象で破れたッ!」
三雨 (ササメ)「テメーのは」
三雨 (ササメ)「ケツ圧だろ」
ミオ「正解」
三雨 (ササメ)「・・・」
三雨 (ササメ)「ふぐっ」
三雨 (ササメ)「あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ッ──!!」
ルック「お兄様、お見事!」
三雨 (ササメ)「?」
ルック「幽霊になっても男の娘──」
ルック「これがプロ耽美なのですね!」
三雨 (ササメ)「あ゛?」
ネコニキ「そうそう、それが言いたかった!」
三雨 (ササメ)「・・・むっかつくぅ」
ネコニキ「それで、ササメよ」
ネコニキ「何でこうなった?」
三雨 (ササメ)「こっちが聞きてぇよ・・・」
ミオ「バンビ」
タツモト「ちょ、姉さん・・・」
タツモト「バンビって呼ばないでよ」
ミオ「あなた見ていたでしょ?」
ミオ「説明して」
タツモト「・・・はいはい」
〇謁見の間
あの時、僕は──
姉さんに言われて仕方なく
ディナー(イケメン)の給仕を
〇謁見の間
三雨 (ササメ)「もう・・・」
三雨 (ササメ)「我慢できねぇッ──!」
三雨 (ササメ)「オードブルなんぞすっとばす」
三雨 (ササメ)「ポワソンをよこせ」
タツモト「はいはい」
タツモト「どうぞ・・・」
イケメン「ユア・マジェスティ」
『塩顔イケメンのポワレ』
淡白ながら奥深く──
薄味ゆえに染み渡る
イケメンが持つ素材の旨み
三雨 (ササメ)「ふぅん」
三雨 (ササメ)「・・・」
三雨 (ササメ)「スケベな──」
三雨 (ササメ)「羽根飾りじゃん」
イケメン「そんな・・・」
イケメン「光栄です」
三雨 (ササメ)「来い」
三雨 (ササメ)「お前を──」
三雨 (ササメ)「味わわせろ」
イケメン(すももの匂いがするぅ)
〇要塞の廊下
なんか『はじまり』そうだったので
僕はその場から逃走しました──
タツモト「やだやだっ」
タツモト「あー、サイアク」
タツモト「・・・」
タツモト「何が、耽美な男の娘だよ!」
タツモト「殿下だって──」
タツモト「当たり前のように女装して!」
タツモト「・・・気持ち悪い」
「あぁッ──!?」
「誰かッ!誰か早くッ──!!」
タツモト「えっ!?」
タツモト「なんだよもう!」
〇貴族の応接間
タツモト「どうしたんですかっ──」
タツモト「んんッ!?」
その時
僕の目に映っていたのは
なんというか・・・
〇謁見の間
三雨 (ササメ)「あぁ〜」
三雨 (ササメ)「よく・・・言われます」
三雨 (ササメ)「『耽美だね』って」
三雨 (ササメ)「イケメンにいじめられると・・・!」
三雨 (ササメ)「俺さんの、玉のような肌がね」
三雨 (ササメ)「うっすらと色を帯びてきて──」
ルック「オトナじゃん・・・」
マロニエに
おしべとおしべ
シャンゼリゼ
タツモト「人の話聞いてましたか?」
タツモト「危篤状態で色っぽいわけないでしょ」
タツモト「少なくとも、僕の目から見たら──」
〇黒
↑ こんな感じで──
〇謁見の間
タツモト「すごく・・・」
タツモト「ブサイクでした」
三雨 (ササメ)「俺、そんなんじゃねーからッ!」
三雨 (ササメ)「キトクでも美人だからッ──!!」
三雨 (ササメ)「ふぐぅ・・・」
ルック「お兄様」
ルック「よしよし」
超耽美・なでなで
三雨 (ササメ)「・・・」
三雨 (ササメ)「もっと」
ネコニキ「んん?」
ネコニキ「アナフィラキシーショック?」
ネコニキ「原因物質は・・・イケメン?」
ルック「ハチに刺されてなるやつだな?」
ヤタラ「ふぅーん」
ヤタラ「イケメンに『サ』されて──」
「・・・」
「まっ────」
タツモト「やめてくださいよ、気持ち悪い!」
タツモト「はぁ〜」
タツモト「それに関しては、イケメンさんが──」
タツモト「ひっかかることを言ってました」
〇貴族の応接間
タツモト「えっと・・・」
タツモト「これがいわゆる──」
タツモト「『腹上死』ってやつですかね?」
イケメン「いえ、それが・・・」
イケメン「触れただけなんです」
タツモト「え?」
イケメン「手が少し触れた・・・だけ」
タツモト「んん?」
〇謁見の間
〇謁見の間
三雨 (ササメ)「おいでっおいでっ」
イケメン「失礼します・・・」
手と手が触れた瞬間──
イケメン「うわっ!」
イケメン「なんだ、いま──」
イケメン「あぁっ!?」
〇謁見の間
ネコニキ「・・・」
ネコニキ「やはり魔法か」
ガムテ「でしょうね」
ネコニキ「魔法使いの姉ちゃん」
ネコニキ「どういう魔法かわかるか?」
ネコニキ「こいつを解く方法がわかれば──」
ガムテ「ん・・・」
ガムテ「魔法の種類は」
ガムテ「『魔性』の数だけ存在するから──」
ルック「魔性?」
ガムテ「あぁ」
〇白
『魔性』とは──
魔法の型のことだ
例えるなら、『楽器』のようなもの
これは先天的に備わっているもので
魔性を持って生まれなければ
そもそも魔法は使えない
私の場合は──
『梱包の魔性』
すなわち、発動する魔法は──
ガムテ「梱包のパワー!」
対象をダンボールで梱包し、拘束する
封印系の魔法だ
ササメ殿にかけられた魔法は──
正直──
検討もつかない
だが、非常に強力な魔性なのは確かだ
〇立派な洋館
「まっ!?」
「パンツ破れたッ!」
「魔性で破れたッ!」
「ケツ圧です」
〇洋館のバルコニー
ネコニキ「どうしたもんかな」
ネコニキ「だが、まぁ」
ネコニキ「死んではいない・・・か」
「ネコニキさん」
ガムテ「耽美使いは──」
ガムテ「ササメ殿の他にもいるのですよね?」
ネコニキ「ん?まあ、いるけど」
ネコニキ「なんでだ?」
ガムテ「後ほど、折り入って話があります」
ガムテ「他力本願で恥ずかしい話ですが──」
ガムテ「耽美使い。 あなた方の戦力が必要になる」
ネコニキ「賢者の石だな?」
ガムテ「あっ」
ネコニキ「無粋で、すまねぇ」
ネコニキ「立ち聞きしたってわけじゃねえが──」
ネコニキ「耳に入ってよ」
ガムテ「では、知っておられる・・・と?」
ネコニキ「あぁ」
ネコニキ「俺らにとっても──」
ネコニキ「因縁しかないからな」
ガムテ「・・・」
ガムテ「ササメ殿は」
ガムテ「あの状態で戦えますか?」
ネコニキ「んんん・・・」
〇謁見の間
ネコニキ達の心配をよそに──
当の本人は
三雨 (ササメ)「バナナの」
三雨 (ササメ)「先っぽ」
三雨 (ササメ)「かじりたぁーい!」
割と呑気だった
〇黒
〇日本庭園
ナオトラ「ふふんっ」
ナオトラ「いまゆくぞ、ダーリン」
ナオトラ「東郷、西郷!」
ナオトラ「準備せいっ!」
東郷「御意ぃ〜」
西郷「もーす」
つもり「配達場所・・・」
つもり「確認」
つもり「よしっ」
つもり「弾丸のパワー」
〇山の展望台(鍵無し)
〇立派な洋館
「ア゛ア゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛──!!」
「複雑に゛破け゛て゛る゛ッ──!!」
〇謁見の間
ヤタラ「ハ゛ン゛ツ゛」
タツモト「しょうがないなぁ」
タツモト「ここをこう縫って──」
タツモト「どうぞ」
ヤタラ「わぁーい!」
ヤタラ「さっそく穿きますわよ」
〇黒
〇謁見の間
ヤタラ「・・・?」
ヤタラ「ゥゥッ──」
ミオ「え・・・」
ミオ「そんな・・・」
ミオ「ヤダ・・・なんで・・・」
ミオ「なんでよぉッ──!!」
〇立派な洋館
〇黒
物語の圧倒時な魅力と、ストーリー本筋を見失いかけるほどのシーン描写とワードの強さが✨ これは唯一無二の魅力ですね😊
『塩顔イケメンのポワレ』で色々と想像を掻き立てられ、「マロニエに おしべとおしべ シャンゼリゼ」にただただ感動してしまいました😭 圧巻です🙌
そんな、パンツの破ける女王様が!?ここで脱落なんてことはないと思いたい…!!
…ところでいきなり挿入された一句で笑ってしまいました😂おしべとおしべ、耽美ですね…
色々、重要な設定が出ていたはずなのですが…… パンツの圧が強すぎて😇😇😇 毎度ブレない世界観に圧倒されます。笑
あとレターショットというのはあの子ですかね?