権三郎の悩み(脚本)
〇屋敷の大広間
権三郎は周りから人を完全に下げさせて、じいこと土倉弥兵衛に相談をしていた。
土倉弥兵衛一秀「若様、相談とは何でしょうか」
池田権三郎政隆「私が相談したいのは、....... 誰にも言わないと約束してくれるか?」
土倉弥兵衛一秀「約束いたしましょう。相談に乗ることがこの老ぼれに唯一若様のために出来ることですから」
池田権三郎政隆「ありがとう。実はとある侍女に恋をしてしまったようなのだ。昨日少し顔を見ただけなのだが、それから気になって仕方がない」
池田権三郎政隆「恐らくそれが恋心というものなのだろう。しかし私にはすでに、婚約者がいる。どうすればいいのだ?」
土倉弥兵衛一秀「若様、それはたしかに問題ですね。若様は婚約者様の家に無個入する必要がありますので、その御方とご結婚は不可能です」
池田権三郎政隆「わかっている。別に側室でも良い」
土倉弥兵衛一秀「でしたら、あまり望ましいわけではありませぬが、侍女として連れ、婚約者様との間に無事におこが生まれた後に側室とすることです」
土倉弥兵衛一秀「それが一番良い方法でしょうが、殿の許可が必要です」
池田権三郎政隆「父上の許可を得るのはできると思うか?」
土倉弥兵衛一秀「難しいでしょうね。それどころか若様が思いを寄せているものを排除する可能性もあります。殿は、若様に女を知ってほしくないので」
池田権三郎政隆「そうか、どうすれば良い?」
土倉弥兵衛一秀「若様、殿には言わずに、何も行動を起こさないべきです。また、誰にも言うべきではありません。誰が殿に密告するかはわかりません」
池田権三郎政隆「しかし、私は、別に側室でもよいから一緒に居たいのだが」
土倉弥兵衛一秀「諦められるのが一番楽でしょう。本当に、一生を共に過ごし、今まで共にいた仲間や、自分の家臣、家族を捨てるのならば駆け落ちも」
土倉弥兵衛一秀「しかしそれはおすすめできません。若様は全て今までお持ちであったものを失いますし、追手が差し向けられるでしょう」
土倉弥兵衛一秀「命危険があることもあり得るので、絶対に行うべきではありません。じいは若様がそのような事をいたしたら、切腹してでも止めます」
池田権三郎政隆「爺に切腹はしてほしくないからやめておこう。ではどうするのが良い?」
土倉弥兵衛一秀「何もできる事はありませぬ。ただ待つのが寛容でしょう。若様をお助けできず申し訳ございませぬ」
池田権三郎政隆「いや、かなり無茶を言っているのはわかっている。自分でも欲深いと思う。すまぬな」
土倉弥兵衛一秀「いえ、若様のお役に立つことがじいの喜びですので。あと一つ、兼田三郎殿には言わないように。殿が知ることになりましょう」
池田権三郎政隆「わかった」
土倉弥兵衛一秀「殿は末っ子であらせられる若様のことを溺愛しておいでです。常にご心配されていますので何かあったら女が罰せられるでしょう」
池田権三郎政隆「わかった。忠告感謝する」
土倉弥兵衛一秀「いえ、じいができる唯一のことですから。じいは若様を応援していますが、婿養子の話を壊すようなことはしないでくださいね」
池田権三郎政隆「わかっている、じいありがとう」
土倉弥兵衛一秀「どういたしまして」
そして、土倉弥兵衛と、権三郎は外に出て,兼田三郎を呼び戻した。