第八話 沼底に澱(よど)む歪(いびつ)(脚本)
〇森の中の沼
樋上 雄司「何を⋯言ってるんだ? ネイキッド⋯」
樋上 雄司「ママが襲われたのが 有難い⋯だと?」
ネイキッド・N・ヌーディック「ええ。彼女は図らずも 我々双方の救い船になった」
樋上 雄司「どういうことだよ!?」
ネイキッド・N・ヌーディック「襲われる前後の先生の行動は 不自然な点が多かった」
ネイキッド・N・ヌーディック「2階にいたのに 1階のトイレを使ったり、」
ネイキッド・N・ヌーディック「わざわざ隣の部屋の鍵を 開けていったり──」
ネイキッド・N・ヌーディック「なぜこんな行動を とったと思いますか?」
樋上 雄司「ママのお節介なんて、 いつものことだろ?」
ネイキッド・N・ヌーディック「そう、彼女なりの気遣いでしょう」
ネイキッド・N・ヌーディック「貴方に対しての──」
樋上 雄司「なん⋯だと?」
ネイキッド・N・ヌーディック「休憩時間のアリバイを確認したとき、」
ネイキッド・N・ヌーディック「現場の真下にいた先生の 証言には違和感がありました」
ネイキッド・N・ヌーディック「何も『聞かなかった』」
ネイキッド・N・ヌーディック「そう言ったんです」
ネイキッド・N・ヌーディック「普通『聞こえなかった』と 言いませんか?」
ネイキッド・N・ヌーディック「実際には2階の床の軋み音が 聞こえていて、」
ネイキッド・N・ヌーディック「部屋の位置から、誰が犯人か 気づいてしまったのでは?」
ネイキッド・N・ヌーディック「1階に向かったのは 外部犯に襲われたフリをするため」
ネイキッド・N・ヌーディック「隣の部屋の鍵を開けたのは、」
ネイキッド・N・ヌーディック「犯人が立ち寄ったであろう 物置に、皆を向かわせないため」
ネイキッド・N・ヌーディック「目を覚ました後、しきりに 2階の様子を気にしていたというのも、」
ネイキッド・N・ヌーディック「物置で何か見つからなかったか、 心配してのことでしょう」
樋上 雄司「じ⋯自作自演で 冷凍室に入っただと?」
樋上 雄司「冷凍室は内側からは開かない! 自殺行為だ!」
ネイキッド・N・ヌーディック「だから服を扉に挟んだのでしょう」
ネイキッド・N・ヌーディック「一刻も早く 見つけてもらうために」
樋上 雄司「どうかしてるぜ、ママもお前も⋯」
樋上 雄司「何の証拠もなく人を犯人に 仕立て上げるなんて⋯」
ネイキッド・N・ヌーディック「⋯ ⋯」
〇豪華な部屋
大原 満枝「私の気持ちはあの子に 伝わったはずよ!」
大原 満枝「あの子はこれ以上 罪を重ねないわ!」
大原 満枝「後は警察が来るのを 待ちましょう?」
大原 満枝「お願いよ、探偵ちゃん── 今あの子を⋯」
大原 満枝「あの子を、あなたが 追及するのはやめて──!!」
ネイキッド・N・ヌーディック「⋯」
ネイキッド・N・ヌーディック「私には、 人を裁く権利はありません」
ネイキッド・N・ヌーディック「それでも──」
ネイキッド・N・ヌーディック「真相を明らかにする責任が、 私にはあります」
大原 満枝「そんな── ネイキッちゃんに⋯」
大原 満枝「あなたに何の責任があるの!? 一人で背負い込まないで!」
大原 満枝「一緒に育ってきた家族を 暴くだなんて⋯!」
大原 満枝「そんな⋯」
ネイキッド・N・ヌーディック「⋯ ⋯」
ネイキッド・N・ヌーディック「ごめんなさい──」
〇森の中の沼
ネイキッド・N・ヌーディック「⋯」
ネイキッド・N・ヌーディック「『火の用心』というメッセージは──」
ネイキッド・N・ヌーディック「『屋敷に火を放つ』という 警告だったのではないですか?」
ネイキッド・N・ヌーディック「物置に残した、貴方の指紋つきの 手袋を燃やすために⋯」
樋上 雄司「昨晩のうちに 燃やしたかったんだがな」
樋上 雄司「あの『売女』が皆で 寝るなんて言い出さなければ⋯」
ネイキッド・N・ヌーディック「佐江川さんを殺した動機は、 彼と静永さんの⋯」
ネイキッド・N・ヌーディック「その──」
樋上 雄司「浮気かって?」
樋上 雄司「付き合う前から分かってたさ、 あいつがアバズレだなんて」
樋上 雄司「寂しさを埋めてくれるなら 誰だっていいんだろ」
樋上 雄司「俺を産みやがった あのクソ女と同じで──」
〇古いアパート
〇安アパートの台所
ゆうじ「母さん、見て!」
母「⋯へぇ」
母「で?」
ゆうじ「え⋯」
兄「自慢だろ、ウッゼェ!」
母「なんて嫌な子!」
母「小1なんてね、 満点で当たり前なのよ!」
母「隼人は?」
母「まぁ!72点? 頑張ったのね〜🎵」
ゆうじ「⋯」
〇古いアパートの部屋
ゆうじ「⋯」
ゆうじ「なんでお兄ちゃんばっかり⋯」
父「あぁ!?」
父「自分のガキでもないテメェを 養ってやってンだ!」
父「有り難く思えや!!」
ゆうじ「え⋯俺、父さんの子じゃ──?」
そのとき悟った
この家に俺の居場所なんかないと
だから──
〇マンションの共用廊下
母「あなた──!!」
兄「父ちゃぁぁ──!!」
警官1「君が、やったのか?」
警官1「なぜこんなことを⋯」
警察1「君、」
警察1「お兄さんに比べて、随分と薄着だね?」
ゆうじ「あ、暑くて⋯」
警察1「ちょっとごめんよ」
警官1「こ⋯これは!!」
警官1「ガリガリじゃないか! しかもこの無数のアザは⋯」
警察1「怒らないから、何があったか 教えてくれるかい?」
ゆうじ「お⋯父さんに⋯ 首を絞められたんです⋯」
ゆうじ「気づいたら⋯ カ⋯カッターで⋯」
兄「パチこくなよ! 父ちゃんは 手は出さなかっただろ!」
母「そうよ! 自分でそんな痣作って!」
母「餌もわざと残してたのね!?」
警察1「詳しい話は署で聞きます」
母「ま、待ってよ! 全部アイツの嘘なの!」
兄「母ちゃ──ん!」
生家を捨てた俺は、
〇実家の居間
『ヒラソル』に身を置き、
せつな「んまんま🎵」
ゆうじ「おい、せつな! 人の飯を盗るな!」
はるか「わ、わたしは おなか空いてないから」
ゆうじ「お前はちったぁ食え!」
ゆうじ「ほれ!」
ゆうじ「お前、日本語ヘタなんだって?」
ホルヘ「Mamãe 殺した 男の言葉 いらん」
ゆうじ「逃げんなよ!」
ゆうじ「そいつと会ったとき 武器になるだろ!」
ゆうじ「覚えろよ! 俺が教えてやるから!」
ホルヘ「⋯そうだな」
自分の力で
居場所を作り上げた
なのに──
いつき「はい、せっちゃん あ〜げる!」
せつな「わーい!」
せつな「って、これトマトぢゃん!」
いつき「残したら、かわいそうぢゃん?」
せつな「わかったよもう!」
いつき「ホルちゃーん! ブラジル語おせーて?」
ホルヘ「ポルトガル語だ」
ホルヘ「日本人には、いらないだろ」
いつき「え〜? だってもっと ホルちゃんと仲良くなりてぇもん!」
ホルヘ「そ、そうか。ならば⋯」
後から来たあいつに
横取りされた
いつき「ゆーじ、あ〜そ〜ぼ🎵」
ゆうじ「遊ばねぇ」
いつき「じゃ、話そ?」
ゆうじ「だれがお前なんかと!」
いつき「ぶぇ~ん」
まお「こら!」
まお「よしよし」
なんで皆、
あんな適当な阿呆を選ぶんだ?
俺はこんなにも努力して、
頑張っているのに⋯
〇アパートの中庭
そして卒園直前の春──
佐江川 一輝「雄司、里親決まったって? おめでとう!」
樋上 雄司「この年で見つかるなんてな」
樋上 雄司「悪いな、俺だけ親持ちなんて⋯」
佐江川 一輝「何言ってんの! せっかくのご縁、大切にしなよ!」
佐江川 一輝「オレはいいのよ、ほら、」
佐江川 一輝「パパンもママンも 心の中でご健在だから」
やっと手に入れた普通すら、
あいつに小馬鹿にされた
〇築地市場
その後も
どんなに離れても、
大原 満枝「📞漁師さんなんて、立派じゃない!」
樋上 雄司「養父さんの跡を継いだだけだよ」
樋上 雄司「⋯そういや一輝は? そろそろ就活か?」
樋上 雄司「ほら、今年は厳しいって ニュースで見たからさ」
大原 満枝「それが、もう決まったんですって! サークルの先輩繋がりで」
樋上 雄司「そういうのは上手いよな、あいつ」
あいつは常に上から
見下してきた
大原 満枝「後は一生のパートナーが 見つかれば安心なんだけどね」
樋上 雄司「モテんだから、すぐだろ?」
大原 満枝「誰とでも仲良くなっちゃうから トラブってばかりなのよ⋯」
樋上 雄司「へぇ?」
〇大衆居酒屋
いつだって──
樋上 雄司「わざわざ来なくてよかったのに」
佐江川 一輝「初カノだろ? ちゃんと祝わせてよ」
佐江川 一輝「それに電話じゃ はぐらかされたからね」
佐江川 一輝「今日こそ聞かせてもらうよ! お春のどこに惚れたのか!」
樋上 雄司「言ってもお前にゃ分からんさ」
佐江川 一輝「いや~、お春と飲んだり 寝たりしてみたのよ?」
佐江川 一輝「でもほんと分かんなくてさ~ 彼女のどこが良かったの?」
樋上 雄司「⋯は?」
佐江川 一輝「やっぱアッチの相性? オレはいまいちだったけど⋯」
〇壁
いつだって、あいつが
俺の『居場所』を台無しにする
〇森の中の沼
樋上 雄司「アイツは俺の縄張りを 荒らしやがった!」
樋上 雄司「十分すぎるほど 持っていたクセに──!!」
ネイキッド・N・ヌーディック「⋯」
ネイキッド・N・ヌーディック「帰ったら自首してください」
ネイキッド・N・ヌーディック「皆さんには黙っておくので⋯」
樋上 雄司「どんだけおめでたいんだ、お前は」
樋上 雄司「ま、でなきゃ、単独丸裸で 犯人暴かねぇわな」
樋上 雄司「おまけに、こんな『おあつらえ 向きな場所』までノコノコと」
ネイキッド・N・ヌーディック「落ち着いてください まだ、やり直せます!」
樋上 雄司「やり直す? ショーは始まったばかりだぜ?」
ネイキッド・N・ヌーディック「ショー⋯?」
ネイキッド・N・ヌーディック「あの怪文書も⋯樋上さんが?」
樋上 雄司「流石のお前でも、 全ての謎は解けなかったようだな?」
樋上 雄司「冥土の土産に教えてやるよ」
樋上 雄司「お前はいくつか 勘違いをしている」
樋上 雄司「まず、一輝を呼び出した口実は 余興練習じゃない」
樋上 雄司「『俺の気持ちを教えてやる』 っつったんだ」
樋上 雄司「嬉しそうに頬染めて 縛られやがって⋯」
樋上 雄司「積年の思いを 体に刻み込んでやったよ」
ネイキッド・N・ヌーディック「⋯」
樋上 雄司「春花をお前の事務所に 行くよう仕向けたのも俺だ」
樋上 雄司「わざとあいつと距離を置き、 浮気バレしたかもと焦らせた」
樋上 雄司「あいつは保身のため、」
樋上 雄司「事情に疎いお前を 味方につけようとしたワケだ!」
ネイキッド・N・ヌーディック「⋯本気で、皆殺しを 考えていたんですか?」
ネイキッド・N・ヌーディック「確かに佐江川さんの行動は 浅はかで人道に反するものでした⋯」
ネイキッド・N・ヌーディック「でもだからと言って、 こんなことをして何になるんですか!!」
ネイキッド・N・ヌーディック「貴方を思う皆や、ご養親の気持ちを 踏みにじってまで⋯」
樋上 雄司「そんなもの はなからどうでもよかった」
樋上 雄司「俺の心のグラスは、とうの昔に 割れちまってたんだから、」
樋上 雄司「愛なんて注ぐだけ 無駄だったな」
ネイキッド・N・ヌーディック「樋上さん⋯」
樋上 雄司「同情はいらん もう乾きはない」
樋上 雄司「『あいつ』が救いの道を 示してくれたからな」
ネイキッド・N・ヌーディック「『あいつ』?」
樋上 雄司「これが最後のヒントだ」
樋上 雄司「『着膨れた道化師』は俺じゃない」
樋上 雄司「真打ち登場の前に 前座は退場しなきゃな!」
ネイキッド・N・ヌーディック「待っ⋯! 何を⋯!?」
樋上 雄司「うわぁ──────ッ!!! 何をするんだネイキッド!!」
ネイキッド・N・ヌーディック「ひ、樋上さん!?」
ネイキッド・N・ヌーディック「つ⋯掴まってください! 早くッ!!」
ネイキッド・N・ヌーディック「ぐッ⋯」
樋上 雄司「よせネイキッド!! なんでこんなこと⋯!」
樋上 雄司「や、やめるんだ! ネイキッ──────!!!!」
「がボ⋯ッ────」
ネイキッド・N・ヌーディック「樋上⋯さん──?」
〇水の中
落ちていく──
奈落の底へ⋯
これでいいんだ⋯
もう上を見上げずに済む
『あいつ』の言う通り、
さっさと降りればよかったんだ
こんなくだらない階段
どん底生まれの俺が
どうあがこうと
手は届かないのだから──
落ちてやるよ
地獄まで
お前らを道連れに──
樋上の言うことが全て事実だとすれば、やりきれません…、
ママも手を出す予定だったのかな😔
もし真犯人によって樋上を操るだけに話が作られたものだとしたらネイキッドは相当やっかいな相手と対峙することになりますね。何せ自分で手を下さずに周りを動かす知恵者。証拠集めも全部揃えないと見えない事件なのでしょうから🤔
ほらー!やっぱりー!心配が現実にー!マッパで一人はダメだったらー!!😂😂😂
樋上さん、このまま退場にはならないで欲しいんですが……。そして、黒幕がいる?
雄司くん、これは辛いですね…
誰とでも仲良くなれて何でも手にしちゃうイツキのような存在、嫉妬してしまいますよね。
雄司くんは失うもの何もないですからね。
今回も面白かったです😆
彼が誰と手を組んでいるのか気になる謎が続きますね!