エクスカリパー

黒山安人

その剣、本物?(脚本)

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黒山安人

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〇闘技場
  鍛練場で、木剣がぶつかる音がこだまする。
リチャード「そこぉ!脇が甘い!」
ビッグス「がはあ!」
  リチャードの振り終わりを、もう一人が背後から狙う!
ウェッジ「もらったぁ!」
リチャード「ふん!」
  リチャードはもう振り返って、ウェッジの打ち込みを木剣で受けた。
ウェッジ「反応早すぎ・・・ぐえー!」
  哀れにもウェッジは胴を払われた。
リチャード「2人とも踏み込みが遅い!相手に気迫で負けているから思い切りに欠けるんだ!」
リチャード「そんなことでは勝てるものも勝てんぞ!」
  ビッグスとウェッジは苦笑いしながら頭をかいた。
  その時、鍛練場で鍛練終了のラッパが響く。

〇兵舎
  帰り支度をするリチャードに、同僚騎士のトーマスが話しかける。
トーマス「よおリチャード、これから一杯どうだ?」
  リチャードは快諾し、2人は酒場に向かう。

〇怪しげな酒場
トーマス「最近後輩たちの指導にも熱が入ってきてるじゃねえか」
リチャード「ああ、騎士として剣を握った以上、国王陛下のために命を懸けねばならん」
リチャード「その自覚を一日でも早く持ってもらいたいからな」
トーマス「熱血なところは親父さん譲りか・・・」
トーマス「でも、あの親父さんですら騎士団長はおろか上級騎士にもなれなかったな・・・」
リチャード「トーマス、下級貴族出身でも騎士団長になった者がいなかったわけではない」
リチャード「武勲を立て、陛下に貢献すれば、きっと俺たちにもその道は開けると俺は信じている」
トーマス「相変わらず真っすぐで単純なヤツだな・・・そう言えば、あの噂を聞いたか?」
リチャード「何のことだ?」
トーマス「流浪の骨董商がエクスカリバーを売ってるって噂だ」
リチャード「は?」
  エクスカリバーと言えば、言わずと知れた伝説の魔剣。
リチャード「冗談だろ?いくら何でも。実在するかも分からない伝説の剣だぞ?」
リチャード「あったとしても、魔宮の奥深くの宝箱から出てくるとか、そういう次元の代物だぞ?」
トーマス「ああ、もし仮にエクスカリバーと銘打って売ってる話が本当だとして、間違いなく偽物だろうな」
トーマス「まあお前単純だからセールストーク次第では買ってしまいそうだよな」
リチャード「俺はそこまでバカじゃねえぞ」
トーマス「はっはっは、冗談だって!」
  そんな冗談を言い合っている内にも、夜は更けてきた。

〇洋館の一室
  ~リチャード邸~
アンナ「リチャード様、お帰りなさいませ。本日はトーマス様もご一緒なのですね」
リチャード「ああ、少し遅くなってしまったからな」
リチャード「トーマスには泊まっていってもらう。部屋を準備しておいてくれ」
  メイドのアンナはペコリと頭を下げ、早速仕事に取り掛かる。
  その時である。
ジョン「おーい、兄さ~ん!」
  どこか間抜けな声がリチャードを呼ぶ。
リチャード「ジョンじゃないか。どうした、そんなに慌てて」
ジョン「兄さん聞いてよ、今日骨董商からすごいものを手に入れたんだ!」
リチャード(嫌な予感しかしねえ・・・)
  リチャードは隣でニヤニヤしているトーマスにも気付いている。
  しかし、ジョンはKYであった。
ジョン「なんか各地を旅しながら骨董商をしてるって人がね、あの伝説の剣、エクスカリバーを仕入れてたんだ!」
  リチャードは頭を抱え、トーマスは笑いをこらえている。
  これで明日は笑いもの確定だ。
  しかし、それでもジョンは空気を読まない。
ジョン「でね、その骨董商が僕にエクスカリバーを売ってくれたんだ!」
ジョン「見てよ兄さん!これさえあれば、兄さんは無敵だよ!騎士団長も夢じゃないよ!」
リチャード「お、おう・・・そうか、俺のためを思ってくれたんだな。兄さんは嬉しいぞ・・・」
  その時、トーマスがリチャードの肩にポンと手を置いた。
トーマス「リチャード・・・家族思いn・・ブフッ、の、いい弟さんじゃ・・・クク・・・ねえか」
  笑いをこらえながら言わると実にイラっとくるものだ。
リチャード「はあ・・・それで?いくらで買ったんだ?」
ジョン「うん!5000万フォンドだよ!」
リチャード「は?」
  これは騎士としての報酬や領地の収入など、全部込みの収入の5年分ほどだ。
  リチャードは青ざめて絶句した。
  しかし、ジョンはこの程度で空気を読む男ではない。

〇洋館の一室
ジョン「ほら兄さん、ちょっと奮発しちゃったけど、兄さんのために買ってきたんだよ!」
ジョン「早くエクスカリバーを握って見せてよ!」
  ちょっと奮発して買ってきた。しかもリチャードの金で。
トーマス(こいつのナチュラルに地雷を踏みぬく才能、侮れんな・・・)
  トーマスが変なところに感心しているうちに、ジョンが古びた布に包まれた剣を持ってきた。
  呆然としつつ布をはごうとしたリチャードだが、トーマスが異変に気付く・・・!
トーマス「おい待てリチャード・・・これは・・・!ちょっと貸してくれ!」
  トーマスは剣を受け取る。
トーマス「見ろ!ここに書かれた文字を・・・」
トーマス「E、x、c、a、l、i、p、u、r・・・」
トーマス「エクスカリ「パ」ー・・・」
トーマス「エクスカリパーだってよおおおお!!!!」
  ついにこらえきれずにトーマスが爆笑する!
トーマス「これはひでえ!パチモン掴まされるにしても、こんな間抜けな話があるかよお!ぶわーっはっはっは!」
ジョン「ええ!?そ、そんな!あ、本当だ!エクスカリパーって書いてある!」
  リチャードは膝から崩れ落ちた・・・
リチャード(え?よりによってこんなふざけたパチモンに?5年分の収入が?)
トーマス「ほらリチャード、ボーっとしてないで、早く剣を抜いて見せてくれよ!」
  トーマスは布をはいで、剣をリチャードに渡した。
トーマス「さあ、いよいよ抜刀だ!伝説の剣、エクス、ブフォッ・・・カリ「パ」ーーー!!」
リチャード(このままトーマスを切り捨てるのもアリかな)
  物騒なことを考えながら、リチャードは剣を抜いた。
  その時、リチャードとトーマスは息を呑んだ。
リチャード「こ、これは・・・」
  2人とも一流の剣士だ。
  一目で、エクスカリパーがただのふざけたパチモンではないことを見抜いた。
トーマス「異様な空気を放っている・・・」
トーマス「5000万に見合うかは分からんが・・・そんじょそこらの武器屋で買えるような代物でもない」
リチャード「仮にもエクスカリバーを謳って売りつけたんだ。安物では騙せないだろうからな。ふむ・・・」
  リチャードは泣きそうな顔をしているジョンに言った。
リチャード「ジョン、そんな顔をするな。これは意外と悪くないかもしれん」
ジョン「え?本当!?」
リチャード「ああ、有難く使わせてもらおう」
ジョン「やったー!!」
リチャード「ただな、ジョン・・・」
  リチャードはジョンの両肩を剛力で掴んだ。
リチャード「次から俺の金で勝手に高額なモノを買うな。分かったな?」
ジョン「ひ・・・はいぃ・・・」
  しかしリチャードはまだ知らなかった。
  エクスカリパーとの出会いが数奇な運命をもたらすことを・・・
  次回「やっぱりガラクタじゃねえか!」お楽しみに!

次のエピソード:やっぱりガラクタじゃねえか!

コメント

  • エクスカリパー。
    確か売値が二束三文にもならない奴でしたね……(遠い目
    えっ、続きめっちゃ気になりますね!🤣
    トーマスと一緒に「ブフォw」ってなってました!
    ジョン……兄さんのお金からそんな……🤣

  • 一旦エクスカリパーで笑わせて実は名剣なんて、中々面白い出だしですね‼
    引きは十分だと思います。
    次の展開が気になります!!

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