贄の間(脚本)
〇黒背景
昨夜、普通に眠りに就いたはずの私は、夢の中で目が覚めた・・・。
〇旅館の和室
私「・・・・・・」
私「!?」
私「ここは?・・・どこ?・・・」
薄暗い八畳間の和室。
部屋の中央には四角い机があり、部屋の奥には掛け軸がある。
見知らぬ場所に私が戸惑っていると、突然、障子が開いた。
稔(みのる)「お姉ちゃーーーん!!!!!!」
障子を開けて飛び込んできたのは、いとこの稔(みのる)だった。
私「稔(みのる)!? あなた、どうしてここに?」
稔(みのる)は走って来た勢いのまま私に飛び付いた。
稔(みのる)「怖いのがいるよぉーーー!!!!!!」
私「何が怖いの? 怖いのはどこにいるの?」
稔(みのる)「そこぉーーー!!!!!!」
稔(みのる)は先程、自分が走って来た方向を指差した。
障子は閉まっていた。
稔(みのる)は障子を開けっ放しにしていたはずなのに・・・。
私「稔(みのる)!もっと部屋の真ん中に行こう?」
この空間そのものを不気味に思った私は、しがみつく稔(みのる)と一緒に障子から離れた。
私「稔(みのる)のパパとママは?」
稔(みのる)「わかんないーーー!!!!!!」
泣き喚く稔(みのる)を落ち着かせようと、私は稔(みのる)の頭を撫でた。
その時───。
〇黒背景
〇旅館の和室
障子越しに、何かが這い擦るような音がした。
さらに障子には、まるで影絵のように”それ”の影が浮かび上がっている。
”それ”は、人の形を成さない、異形の姿。
”それ”は床を這っているのに、私達よりも身体がもっと大きい。
障子越しなのに、”それ”と目が合う。
”それ”が、私達を狙っているのだと感じた。
私は蛇に睨まれたかのように動けなくなり、さっきまで泣いていた稔(みのる)も硬直している。
”それ”は、この部屋に入れる場所を探して動き回っていた。
隙を見せれば、”それ”は障子を開けて入ってくる気がした。
絶体絶命だった、その時──。
???「お姉ちゃん!!」
いつの間に部屋に居たのか、見知らぬ子供が掛け軸の前に置いてあった御経を手に取って私に差し出した。
???「これを使って!!」
「これを使って」と言われても、御経なんて読めるはずがなく、短い御経も知らなかったので唱えることもできなかった。
私「・・・そうだ!」
咄嗟に私は、蛇腹折りの御経を広げて稔(みのる)の身体に巻き付けた。
私「あなたも!!」
???「えっ!?」
有無を言わさず、私は御経を見知らぬ子供にも巻き付けた。
稔(みのる)と見知らぬ子供の分で御経の長さが終わってしまい、私は二人を両腕で庇うように抱き締めて強く目を閉じた。
〇黒
お願いします。
どうか、この子達だけでもお助けください。
私はどうなっても構いません。
だから、この子達だけでも・・・。
予期せぬ轟音と震動。
障子が壊れて、”それ”が和室に入って来た。
自分の悲鳴さえ聴こえない中、私は意識を失った・・・。
〇旅館の和室
稔(みのる)の泣き声で、私は意識を取り戻した。
私「・・・ハッ」
私「稔(みのる)! 大丈夫!?」
荒れた和室の中、切り裂かれた御経の上で稔(みのる)が一人で泣いていた。
私「・・・あの子は?」
泣きながら稔(みのる)は、首を横に振った。
私「あ・・・」
そして私は、赤い絵の具をぶち撒けたような惨状を見てしまった。
私「あああ!・・・」
私は察した。
あの子を、”あれ”から守れなかったことを。
私「ごめんね・・・」
何も出来なかった。
私はどうすれば良かったのだろう。
夢の中なのに後悔ばかりが渦巻いて、私は目の前が真っ暗になった・・・。
〇黒
・・・・・・
〇女の子の部屋
- このエピソードを読むには
会員登録/ログインが必要です! - 会員登録する(無料)
「悪夢」は、ホラージャンルの作品でしたが、とても興味深かったです。物語は中学生の頃に見た悪夢の内容を元にしているそうで、現実と夢の境界が曖昧になっている描写が緊張感を高めていました。主人公が見知らぬ子供を助けるために奮闘する姿には感動しました。また、夢の中の出来事が現実にも影響を与える展開は、不思議でありながらも怖さを感じました。作品全体を通して、緊迫感のある雰囲気がとてもよく表現されていました。ホラー好きな私にとって、この作品はとても魅力的でした。
途中からずっとゾクゾクしっ放しでした😨
夢のお話、たまたま知った死産のいとこ、そして後書きの件、それらが組み合わさると一層ズシリとキます😱
寝る前に読んではいけないお話でしたね😭