〇商店街
久遠 陽菜（くおん ひな）「いた！ 止めなきゃ！」
玲仁（れいじ）・神狐「我に任せよ！」
久遠 陽菜（くおん ひな）「やったぁ！ 玲仁！」
玲仁（れいじ）・神狐「いや‥まだじゃ！」
久遠 陽菜（くおん ひな）「え？」
青柳 当麻（あおやぎ とうま）「うわぁ！」
久遠 陽菜（くおん ひな）「めちゃくちゃ怒ってない？」
玲仁（れいじ）・神狐「ふむ‥どうしたものか」
青柳 当麻（あおやぎ とうま）「う～ん‥あれはどう見ても、元々野菜、だよね？」
久遠 陽菜（くおん ひな）「‥うん、人参と大根と‥紫芋？」
久遠 陽菜（くおん ひな）「玲仁！ このまま足止めお願い！」
玲仁（れいじ）・神狐「うむ！」
青柳 当麻（あおやぎ とうま）「久遠さん、まずは作戦を練ろう」
青柳 当麻（あおやぎ とうま）「さっきの攻撃で、野菜の一部が残った状態だと、凶暴化して復活した」
青柳 当麻（あおやぎ とうま）「と、いうことは‥」
青柳 当麻（あおやぎ とうま）「粉々にすれば‥いけるかな？」
青柳 当麻（あおやぎ とうま）「よし！ 試してみよう！」
久遠 陽菜（くおん ひな）「何を？」
青柳 当麻（あおやぎ とうま）「名付けて、干し野菜作戦!!」
久遠 陽菜（くおん ひな）「ほ、干し野菜？」
青柳 当麻（あおやぎ とうま）「干し野菜を作る要領で、あの妖怪を乾燥させる！」
青柳 当麻（あおやぎ とうま）「パリッパリになったところを、木っ端微塵にするんだ！」
久遠 陽菜（くおん ひな）「あ、なるほど！」
久遠 陽菜（くおん ひな）「やってみよう！」
青柳 当麻（あおやぎ とうま）「俺が装置で妖怪の動きを止めてみるから、久遠さんは火の攻撃を！」
青柳 当麻（あおやぎ とうま）「玲仁様の風の攻撃と合わせて、熱風で乾燥させる！」
久遠 陽菜（くおん ひな）「わかった！ りょ～かい!!」
久遠 陽菜（くおん ひな）（春菜‥！ お願い！）
　　オッケー！ 陽菜♪
久遠 陽菜（くおん ひな）「じゃあ私、玲仁に加勢するね！ 装置、よろしく！」
青柳 当麻（あおやぎ とうま）「うわあ、久遠さん。 なんかカッコいい～」
青柳 当麻（あおやぎ とうま）「よし！ 装置‥効いてくれよ～!!」
久遠 陽菜（くおん ひな）「動きが止まった！」
久遠 陽菜（くおん ひな）「よおーし！ 玲仁は風の攻撃！ 私は火の攻撃！」
玲仁（れいじ）・神狐「承知した！」
玲仁（れいじ）・神狐「では、ゆくぞ！」
久遠 陽菜（くおん ひな）「はい！」
玲仁（れいじ）・神狐「結界を張った。これで結界内の妖怪は一網打尽じゃ」
久遠 陽菜（くおん ひな）「うん、いい感じ♪」
久遠 陽菜（くおん ひな）「最後の仕上げ～！」
久遠 陽菜（くおん ひな）「やった！ 作戦通り！」
玲仁（れいじ）・神狐「これは、陽菜が考えたのか？」
久遠 陽菜（くおん ひな）「ううん、青柳くんだよ！」
玲仁（れいじ）・神狐「‥そうか」
青柳 当麻（あおやぎ とうま）「上手くいったみたいだね！」
玲仁（れいじ）・神狐「青柳‥」
玲仁（れいじ）・神狐「その‥陽菜の家では、大人げない態度をとって‥すまぬ」
青柳 当麻（あおやぎ とうま）「いいいや！ 俺、全っ然！ 気にしてませんから！」
玲仁（れいじ）・神狐「‥‥ふっ」
玲仁（れいじ）・神狐（青柳‥根本まで善良なやつじゃな）
「蛾夷（がい）!!　　キモキモ!!」
蛾夷（がい）「きぃぃぃ!!」
蛾夷（がい）「せっかく緋紗様からチカラをいただいて野菜から仲間を作ったのに!!」
蛾夷（がい）「なぁんで、お前らは邪魔ばっかりするんじゃ～!!」
蛾夷（がい）「チッ!!」
青柳 当麻（あおやぎ とうま）「あ!!」
玲仁（れいじ）・神狐「蛾夷!!」
久遠 陽菜（くおん ひな）（キモキモ、生きてたんだ‥）
青柳 当麻（あおやぎ とうま）「追いかけよう！」
久遠 陽菜（くおん ひな）「あ！ う、うん！」

〇神社の石段
久遠 陽菜（くおん ひな）「ここって‥玲仁の神社！」

〇古びた神社
久遠 陽菜（くおん ひな）「キモキモ待ちなさ──」
「緋紗!!　　　　　　佐恵!!」
緋紗（ひさ）・九尾の狐「うるさい。大声を出すな」
緋紗（ひさ）・九尾の狐「随分と久方ぶりじゃのお、玲仁」
緋紗（ひさ）・九尾の狐「わらわを封印し、自らが社の管理者になった気分はどうじゃ？」
玲仁（れいじ）・神狐「・・・」
緋紗（ひさ）・九尾の狐「どうじゃと訊いておるのじゃ!!」
玲仁（れいじ）・神狐「・・・」
緋紗（ひさ）・九尾の狐「ダンマリか‥ふん」
緋紗（ひさ）・九尾の狐「まぁ‥そんなことより」
緋紗（ひさ）・九尾の狐「佐恵、キズナ石を」
蘇芳 佐恵（すおう さえ）「はい、緋紗様」
緋紗（ひさ）・九尾の狐「これなぁ、わらわは触れることが叶わぬのじゃ‥」
緋紗（ひさ）・九尾の狐「せっかく管理者のみに与えられるキズナ石を手に入れたと思うたのに」
緋紗（ひさ）・九尾の狐「触れられぬなら、持っていても意味がない」
緋紗（ひさ）・九尾の狐「お前らに、返そう」
久遠 陽菜（くおん ひな）「え!!!!」
久遠 陽菜（くおん ひな）「ほ、ホント!?」
緋紗（ひさ）・九尾の狐「ふふ」
緋紗（ひさ）・九尾の狐「‥と、思うておったけど、やめじゃ」
久遠 陽菜（くおん ひな）「はぁ!?」
緋紗（ひさ）・九尾の狐「『邪念骨』がのぉ、わらわに言うのじゃ」
緋紗（ひさ）・九尾の狐「邪の思念を集めて吸収すれば、キズナ石に触れられる、とな」
緋紗（ひさ）・九尾の狐「だから、お前らの前で、佐恵を亡き者にする」
久遠 陽菜（くおん ひな）「なに考えてんの!?」
玲仁（れいじ）・神狐「緋紗！ そのようなことをしても──」

〇空

〇古びた神社
久遠 陽菜（くおん ひな）「な、なんか急に空の感じが‥」
緋紗（ひさ）・九尾の狐「佐恵を手にかければ、お前らがわらわに憎しみの念を抱くであろう？」
緋紗（ひさ）・九尾の狐「大切なものであれば、その念はより強くなるじゃろう？」
緋紗（ひさ）・九尾の狐「手っ取り早く邪念を集めるには、これしかあるまい！」
緋紗（ひさ）・九尾の狐「邪念を集め、キズナ石を手にし」
緋紗（ひさ）・九尾の狐「わらわが社の管理者に成り代わるのじゃ！」
緋紗（ひさ）・九尾の狐「あーっはっはっは!!」
緋紗（ひさ）・九尾の狐「そこで黙って見ておれ」
久遠 陽菜（くおん ひな）「佐恵!!」

〇古びた神社

〇古びた神社
久遠 陽菜（くおん ひな）（良かった！ 結界、間に合った！）
緋紗（ひさ）・九尾の狐「しくじったか！」
玲仁（れいじ）・神狐「青柳、先ほどの妖怪にしたように緋紗の動きを止めてくれ」
青柳 当麻（あおやぎ とうま）「はい‥！」
玲仁（れいじ）・神狐「陽菜、『翠霊斬』で浄化し、『邪念骨』を表に出せるか!?」
久遠 陽菜（くおん ひな）「やってみる！」
青柳 当麻（あおやぎ とうま）（あ、あれ？ さっきの周波数じゃ効かない!?）
玲仁（れいじ）・神狐「緋紗！ 人を殺めてはならぬ！」
久遠 陽菜（くおん ひな）（青柳くんの装置‥効いてないみたい？）
玲仁（れいじ）・神狐「『邪念骨』の言うことなんぞ──」
緋紗（ひさ）・九尾の狐「うるさいわ!!」
玲仁（れいじ）・神狐「止めろ!! 緋紗！」
緋紗（ひさ）・九尾の狐「お前はわらわに勝てぬ！ くらえ！」
緋紗（ひさ）・九尾の狐「ふっ‥やるな」
緋紗（ひさ）・九尾の狐「玲仁よ、おぬし羨ましいのじゃろう？」
緋紗（ひさ）・九尾の狐「強くなった、わらわ‥‥が──」
緋紗（ひさ）・九尾の狐「う゛う゛!! なんじゃ！ この音は!!」
緋紗（ひさ）・九尾の狐「あ゛あ゛～～～～!!」
青柳 当麻（あおやぎ とうま）（やった、効いた！）
久遠 陽菜（くおん ひな）（今だ!!）
久遠 陽菜（くおん ひな）「禊舞踊（みそぎぶよう）！」
青柳 当麻（あおやぎ とうま）（わ～久遠さん、舞を踊ってるみたいだ）
緋紗（ひさ）・九尾の狐「この‥音──今すぐ、止めろー!!」
久遠 陽菜（くおん ひな）「佐恵!!」
久遠 陽菜（くおん ひな）「佐恵！ ねえ佐恵!! 大丈夫!?」
蘇芳 佐恵（すおう さえ）「‥‥陽‥菜？」
久遠 陽菜（くおん ひな）「佐恵！」
久遠 陽菜（くおん ひな）「青柳くん！ ごめん！ 佐恵を安全な場所にお願い！」
青柳 当麻（あおやぎ とうま）「任せて！」
緋紗（ひさ）・九尾の狐「あ‥あああ──」
玲仁（れいじ）・神狐「陽菜、よくやった」
久遠 陽菜（くおん ひな）「うん！」
玲仁（れいじ）・神狐「だが‥気をつけよ！ 『邪念骨』が出てくるぞ」
久遠 陽菜（くおん ひな）「わかった！」
久遠 陽菜（くおん ひな）（あれが‥『邪念骨』）
玲仁（れいじ）・神狐「出たな‥」
邪念骨「ぐ‥がが‥もっとチカラを！」
邪念骨「憎しみを!!」
久遠 陽菜（くおん ひな）「玲仁!!」
玲仁（れいじ）・神狐「大丈夫じゃ、大したことはない」
玲仁（れいじ）・神狐「陽菜！」
久遠 陽菜（くおん ひな）「大丈夫！」
久遠 陽菜（くおん ひな）「玲仁、『邪念骨』には青柳くんの装置が効かないみたいだから」
久遠 陽菜（くおん ひな）「私が『邪念骨』を止めてみる！」
久遠 陽菜（くおん ひな）「玲仁！ 今！」
玲仁（れいじ）・神狐「うむ!!」

〇古びた神社
久遠 陽菜（くおん ひな）「倒した―!!」
久遠 陽菜（くおん ひな）「玲仁、なぁに？ それ」
玲仁（れいじ）・神狐「『邪念骨』の核じゃ」
久遠 陽菜（くおん ひな）「ええ!? す、すぐ破壊しなきゃ！」
玲仁（れいじ）・神狐「いや、それはならぬ」
久遠 陽菜（くおん ひな）「なんで？」
玲仁（れいじ）・神狐「壊して破片でも残ると」
玲仁（れいじ）・神狐「それが核となり邪念を集め『邪念骨』が復活する」
久遠 陽菜（くおん ひな）「そうなんだ‥」
玲仁（れいじ）・神狐「この核は天上で封印する」
蛾夷（がい）「緋紗様～！ 緋紗様～！」
蛾夷（がい）「緋紗様ぁぁぁ」
玲仁（れいじ）・神狐「緋紗‥緋紗！」
緋紗（ひさ）「‥‥んん」
緋紗（ひさ）「‥‥玲仁」
緋紗（ひさ）「‥‥すまなかった」
緋紗（ひさ）「ありがとう」
緋紗（ひさ）「おぬしなら、わらわを助け出してくれると思うておった」
玲仁（れいじ）・神狐「緋紗、この後‥天上に──」
緋紗（ひさ）「わかっておる」
緋紗（ひさ）「わらわの心の弱さが引き起こしたことじゃ」
緋紗（ひさ）「どんな罰でも受けようぞ」
蛾夷（がい）「緋紗様‥」
緋紗（ひさ）「玲仁‥蛾夷は見逃してくれないだろうか」
緋紗（ひさ）「こやつは、わらわの言うことしか聞かぬ」
緋紗（ひさ）「もう悪さはしない」
玲仁（れいじ）・神狐「ん‥んん～」
蛾夷（がい）「ワシ！ 緋紗様と一緒にいたい！」
緋紗（ひさ）「‥ふっ まったく‥仕方のないやつじゃのお」
緋紗（ひさ）「‥‥好きにしろ」
蛾夷（がい）「緋紗様、ありがとうございます～」
玲仁（れいじ）・神狐「‥‥陽菜」
久遠 陽菜（くおん ひな）「ん？」
玲仁（れいじ）・神狐「我は緋紗を天上に連れていかねばならぬ」
玲仁（れいじ）・神狐「緋紗はもちろん、我にも何らかの沙汰が下るやもしれぬ」
玲仁（れいじ）・神狐「して、この地を空けることになる」
玲仁（れいじ）・神狐「いつ、この地に戻ってこれるかどうかも、わからぬ」
玲仁（れいじ）・神狐「だから、陽菜」
玲仁（れいじ）・神狐「我についてきてほしい」
玲仁（れいじ）・神狐「陽菜と共に永遠を歩みたい」
玲仁（れいじ）・神狐「愛している」
玲仁（れいじ）・神狐「この気持ちは変わらぬ」
玲仁（れいじ）・神狐「我の妻になってくれぬだろうか？」
久遠 陽菜（くおん ひな）「‥‥玲仁、私──」