5 最強のトラブルメーカー(脚本)
〇オフィスのフロア
翌日。
釘宮詩織「拓也さん、教えてくれませんか?」
一条拓也「え?何を?」
釘宮詩織「何って、昨日拓也さん、何かを思い付いて帰っちゃったじゃ無いですか。あの後何してたんですか?」
一条拓也「まぁ、色々と調べ事。個人的に欲しい物とか調べ終えたから、後は時間が来るの待つだけ」
釘宮詩織「いやいや、具体的に何してたんですか?」
一条拓也「何、大した事じゃ無いさ。それはそうと・・・」
仕事場に来て、俺はとある違和感に気付いた。
一条拓也「小島先輩、居ないな」
釘宮詩織「そう言えば、居ませんね。通りで静かだと思った」
一条拓也「珍しい事も有るもんだな。何時も朝一に必ずと言って良い程居たのに」
釘宮詩織「拓也さん、小島先輩が居ないと困る事有ります?」
一条拓也「いや、寧ろ居て貰ったら困る」
釘宮詩織「まぁ、そうですよね」
部長「二人共お早う」
釘宮詩織「あ、お早う御座います部長!」
一条拓也「お早う御座います」
部長「あれ?今日は小島君は来て無いのかい?」
一条拓也「はい。何か来て無いっぽいんです」
部長「遅刻か病気か?珍しい事も有る物だな」
釘宮詩織「部長、あの人が居て困りますか?」
部長「いや、寧ろ逆だよ。今日は仕事がやり易く成りそうだよ。只、小島君に伝えたい事が有ってだな」
一条拓也「伝えたい事?」
部長「あぁ、でも肝心の本人が居ないからな」
何がともあれ、俺達は何時もの様に仕事に取り組むのだった。小島先輩が居ないと凄く落ち着き、やりたい事を無心でやれるのが
何だか心地良かった。だけど、もう直ぐ昼時に成ると言う時に、事件は起こった。
部長「はい!夏目ゲームス、シナリオ担当です・・・はい・・・はい・・・」
部長「え、えぇ!!?そ、そんな事が!?」
一条拓也「ん?部長どうしたんだ?」
一条拓也「・・・・・・?」
一条拓也「はい、夏目ゲームス、シナリオ担当ですが何か・・・・・・」
一条拓也「えぇ!?その話本当ですか!?」
一条拓也「え、えぇ!?何でこんなに電話が!?」
釘宮詩織「はい・・・はい・・・えぇ!?小島先輩が飛び込み営業!?契約しなかったら飛び降りるって・・・彼そんな事してたんですか!?」
部長「も、申し訳有りません!詳細は追って伝えますので!分かり次第報告致します!」
部長「小島君・・・一体何処で何を・・・」
一条拓也「部長!これは一体!?」
部長「うむ、私にもサッパリ分からん。一体何が小島君をそうさせたのか・・・」
小島聡「皆さんお早う御座います!」
部長「あぁ!小島君!これは一体どう言う事だ!?君は一体何をしていたのだ!?」
小島聡「何って、飛び込み営業ですよ。俺が作ったシナリオが没に成ったのがどうしても納得出来なくて、だから大手企業に」
小島聡「俺の案を見て貰って正式に商品化して盛らう様に契約結んだんですよ」
部長「な、何をそんな勝手な事を!君が勝手な行動をしてくれた為にさっきまでクレーム対応に追われていたのだぞ!?」
小島聡「それもこれも名誉挽回の為ですよ!これを見て下さい!これだけの戦績を収めたのですから、文句の付け所は無いでしょう!」
小島先輩は俺達に契約書を見せたが、そこに書いて有った内容は。
一条拓也「ぶ、部長、これは・・・」
部長「な、何だこの契約内容は・・・我々が無償で相手を手助けする事に成ってる・・・」
小島聡「人助けも立派な仕事ですよ!さぁて!今日遅れた分を取り返さないと!!」
一条拓也「あの、部長、俺、あの人にめっちゃ言いたい事が有るんですが・・・」
部長「うん、どうやらその様だな。此処は私に任せてくれないかな?」
一条拓也「・・・分かりました・・・」
小島聡「さぁて!今日も確りやるぞぉ!!」
部長「小島君。君に話したい事が有る」
小島聡「どうしました部長?いよいよ俺も昇進ですか!?」
部長「まぁ良く聞きたまえ。これまでの君の仕事振りを、上層部に包み隠さず報告させて貰った」
小島聡「えぇ!?俺の活躍を上層部に報告したんですか!?やっぱ俺って頼りに成るから、ボーナスとか幾らくれるかなぁ!!」
部長「君の仕事に対する勤務態度の悪さ。ミスをしても批判ばかり。チームメイトに対する悪態。君の自己判断。その他にも君の愚行を」
部長「上に報告した。その結果、小島君は近日中に解雇処分との事だ」
小島聡「そうですか!やっぱ何事にもやる気を持って・・・って・・・」
小島聡「は、はぁ!?解雇処分!?待って下さいよ!!俺はこの部署のエースですよ!?何で解雇されなきゃいけないんですか!?」
部長「何でも何も!全ては君が撒いた種だろう!君が自分のミスを自分で訂正しないから、他の者への仕事が増えて大変で、」
部長「君に至っては仕事の効率が非常に悪い!一条君の成果もまるで自分の物の様に騒いでたとの報告も受けている!」
小島聡「え、えぇ・・・だってあれは・・・俺が教えたからこそ出来た物で・・・」
部長「閃光の少女は一条君が自力で作った物だ!本人は君の力を一切借りて無いと言っている!!」
小島聡「う、嘘だろ!?おい一条!俺が居なかったら、閃光の少女は完成しなかったよな」
一条拓也「・・・・・・」
小島聡「おい!何か言えよ!!」
部長「これまでの事と合わさり、今日の君の愚行。判断材料は全て揃った。小島君、君の解雇は決定事項だ!分かったな!!」
小島聡「そんな・・・そんなぁ・・・!!!」
やる気こそ有ったけど、自分のミスは自分で直せず、何でも自分が正しいと思っていた小島先輩はとうとうクビに成った。
本当に大事な事に気付けないまま、小島先輩は俺達の前から居なく成るのだった。
〇オフィスのフロア
その後、俺達は小島先輩が独断で行った契約先に詳細説明や、契約の打ち消し。小島先輩の蛮行に対する謝罪をして、
何とか事なきを得た。
部長「あぁ、やっと全部片付いた」
一条拓也「ほ、本当ですよ・・・こんな馬鹿な真似出来る人の根性が知りたい・・・」
釘宮詩織「み、皆さん大丈夫ですか?お茶持って来ました」
部長「あ、有難う釘宮君!」
釘宮詩織「部長、小島さんが一階で納得行かないとかクビ反対とか大騒ぎしてて、警備員さんにつまみ出されてたんですが、」
釘宮詩織「止めなくて正解ですよね?」
部長「じょ、冗談じゃ無い!これ以上彼に仕事を任せたら何を仕出かすか分かった物じゃ無い!」
釘宮詩織「そうですよね・・・あんな人が居たらもう持ちませんよ・・・」
一条拓也「寧ろ、何で今までクビに成らなかったのかが本当不思議なんだけど・・・」
部長「全くだ・・・私もまだまだ人を見る目が無いな」
何がともあれ、一息ついた俺達は仕事を再開する。小島さんがこれから居ないと成ると、もう安堵以外の言葉が思い付かず、
寧ろ喜びすら感じた。
釘宮詩織「あ、拓也さん。ちょっと良いですか?」
一条拓也「ん?どうした?」
釘宮詩織「幸一君の手術当日に何かやるんですよね?だから昨日何かやろうとして」
一条拓也「あぁ、やるよ。でも何やるかは秘密だ」
釘宮詩織「え〜、教えて下さいよ」
一条拓也「まぁそんな顔するなって。そんなに気に成るなら、当日お見舞いに行くか?」
釘宮詩織「あぁ、それなら・・・行きます」
一条拓也「分かった。でも俺はやる事が有るから、当日は一人で行って貰うけど」
釘宮詩織「分かりました。何やるかちゃんと教えて下さいね」