4 踏み出す勇気(脚本)
〇オフィスのフロア
部長「各々良くやってくれた!後は上からの報告を待っててくれたまえ」
小島聡「期待してますよ!次のゲームは俺の案が採用されるって!」
釘宮詩織「嫌だなぁ・・・只待つ事しか出来ないなんて・・・」
部長「一条君、君はずっと釘宮さんのアシストをしてたんだってね?」
一条拓也「申し訳有りません。まだ次の案が思い付かなくて」
部長「まぁ、閃光の少女が完成して一条君も疲れてるだろう。無理をする方が良く無い」
一条拓也「すみません・・・」
部長「いや、人間は永続的に働く事がそもそも出来ない。非いる事は無い。では、行って来るよ」
シナリオ提出日当日。俺達は各々のシナリオを部長に提出して結果を待つだけだった。これで小島先輩の案が採用されたら
俺の此処での役目は全て終わる。
小島聡「人間が永続的に働けない?部長、やれば出来るって事知らないのか?」
一条拓也「先輩、もう気付いて下さいよ。無闇に突っ走ってたら、見える筈の物が見えなく成りますよ?」
小島聡「お前まで何言ってるんだ?貢献活動はやればやる程良いに決まってるだろ?」
小島聡「そもそも、俺が他の皆より沢山貢献したからこそ、この部署は成り立ってる訳で、沢山やってるからこそ、俺にも経験が」
小島聡「詰める訳だ。やっぱり俺がシナリオ部のエースなんだよ!」
釘宮詩織「小島先輩、それで先輩は何を見て来たんですか?」
小島聡「そりゃ勿論!俺が貢献して皆が喜んで!俺が頑張ったから上も俺を認めてくれてる!人間は頑張れば頑張る程強く成れるからな!」
釘宮詩織「そうですか・・・私色々考えて見ましたが、小島先輩の事好きに成れそうに有りません・・・」
各々の思惑が有りながらも、俺達は結果を待ち続けた。暫くして、漸く部長が戻って来た。
部長「皆、待たせたね」
小島聡「部長!お待ちしてました!」
釘宮詩織「部長、どう成りましたか?」
小島聡「やっぱ俺の案ですよね!?俺は本当に素晴らしいアイディアを採用しました!戦車や戦闘機、果ては巨大ロボも取り入れて」
小島聡「見ました!万人受け間違い無しでしょ!!」
部長「まぁ皆落ち着きたまえ。皆結果が気に成るだろう。もう発表しても良いかな?」
釘宮詩織「あ、お願いします・・・」
小島聡「結果なんて聞かずとも、選ばれたのは俺ですよね!!」
部長「あぁ、発表する。次のゲームに採用するシナリオは・・・」
部長「釘宮君のシナリオに決まった!」
小島聡「そうですよね〜!やっぱ俺以外のシナリオなんて駄作ですよね〜・・・って・・・」
小島聡「ぶ、部長!今何て言いました!!?」
部長「聞こえなかったのか?次のシナリオは釘宮君のシナリオを採用する事に決まった」
小島聡「そ、そんな馬鹿な!?こいつは此処に来てからまだ日が浅いじゃ無いですか!!」
釘宮詩織「部長、私が言うのも難ですが、今回作ったシナリオは一条さんからも助言して貰ってやっと良い感じに成ったんです!」
釘宮詩織「本当に私で良いんですか!?」
部長「安心したまえ。上の人達は皆満場一致で納得してくれたよ。シスターをやる少女達が魔法を覚えて悪霊と戦う。魔法だけに囚われず、」
部長「剣、槍、弓矢等の武器の採用。物語が進むに連れて仲間と共に成長するストーリー。どれもこれも上からの評価が高かった」
部長「この作品の開発指揮は、是非釘宮君に依頼したいとの事だ」
釘宮詩織「・・・・・・!?」
小島聡「な、納得出来ません!何故こんな奴のシナリオが採用で俺が没なんですか!?今回俺が書いたのは俺の持てる全てを注ぎ込んだ」
小島聡「シナリオですよ!!一体何故!?」
部長「全く、小島君。やる気が有るのは多いに結構だが、肝心の所は相変わらずだな」
小島聡「え?」
部長「君のシナリオは私も見せて貰った。普段の生活では縁の無いマシンを動かせるのは確かに魅力的だ。だけどな、ストーリーの面では」
部長「主人公が独り善がりで、明らかに設定に無理が有る物が多数見受けられた。主人公が一方的に相手を蹂躙する」
部長「読んでて詰まらなかったよ」
小島聡「つ、詰まらない!?」
部長「釘宮君、サポートを受けていたとは言え、良く此処までの物を作ってくれた。これからが大変だが、今後の活躍、期待してるよ」
釘宮詩織「・・・!はい・・・はい!!」
努力の末、次のシナリオは釘宮さんの物が採用される事と成り、俺達は賭けに勝利し、彼女はこれから、開発指揮者として
頑張る事と成った。
小島聡「こんなの・・・認めて溜まるかぁ・・・!!!」
〇病院の廊下
釘宮さんが書いたシナリオが正式採用される事が決まった後の夕方。俺は釘宮さんと共に姉の居る病院に来ていた。
釘宮詩織「一条さん!本当に有難う御座いました!私が作ったエクソシスターズがまさかゲームとして作成されるなんて!」
一条拓也「一番頑張ったのは釘宮さんだよ。俺はちょっと力貸しただけだし」
釘宮詩織「それでも、一条さんが助けてくれなかったら小島先輩に勝てませんでした!今度お礼させて下さい!」
一条拓也「そっか、楽しみにしてるよ」
「嫌だぁぁぁぁ!!!」
釘宮詩織「ん?子供の声?」
一条拓也「今の声・・・まさか!!」
釘宮詩織「え?一条さん!?どうしたんですか!?」
突然子供の悲鳴が聞こえて、俺は思わずその方向へと走り出した。
〇田舎の病院の病室
中野幸一「やっぱり嫌だよ!手術なんてやりたく無いよ!!」
女医「幸一君!手術が怖い気持ちは先生も良く分かるよ!でも、手術をやらなかったら幸一君が死んじゃうんだよ!!」
中野幸一「でも手術しても死んじゃうならやりたく無いよ!!手術しなきゃいけないなら産まれて来なければ良かった!!」
女医「幸一君・・・そんな事・・・」
一条拓也「すみません!此処に幸一君居ませんか!?」
中野幸一「あ!お兄ちゃん!?どうして此処に!?」
一条拓也「聞き覚えの有る声がしたから何か有ったのかと思って・・・幸一君、大丈夫?」
中野幸一「お兄ちゃん・・・やっぱり僕手術なんてやりたく無いよ!!死んじゃうかも知れないならやりたく無いよ!!」
一条拓也「手術・・・そう言えば幸一君の手術って・・・今週だったよな・・・忙しくて忘れてた・・・」
中野幸一「もう嫌だ!!明日なんて来なければ良いのに!!ハデスに会いたいよ!!」
一条拓也「・・・・・・あの、先生、手術の成功率って、そんなに低いんですか?」
女医「いえ、決して低く有りません。必ずと言って良い程成功します。ですが、それでも肝心の幸一君が勇気を持てなくて」
一条拓也「・・・そうですか・・・幸一君、俺君と会えなく成るのは淋しいよ。手術すれば、病院から出られるんだよ?」
中野幸一「嫌だ・・・嫌だよ!!こんな事に成るなら、ハデスに人類を滅ぼして貰った方が良かった!!」
女医「幸一君!そんな事言う物じゃ無いわよ!!」
中野幸一「ひぃ!!」
一条拓也「先生、余り怒らないで上げて下さい」
女医「あ、御免なさい、つい・・・」
一条拓也「幸一君、先ずは一度落ち着こう。手術の日までまだ時間は有るから、それまで出来る事をやろう」
中野幸一「出来る事って?」
一条拓也「そうだな・・・幸一君がやりたいと思う事、此処に行きたいって思う事。先ずはそこから初めて見ると良いかな」
一条拓也「もしそれがやりたいって成ったら、お兄ちゃんに教えてくれるかな?」
中野幸一「・・・うん、やって見る」
一条拓也「良し!それなら、やりたい事や行きたい所、じっくり考えて見ようか!」
中野幸一「うん!やりたい事とか見つけたら言うね!」
一条拓也「あぁ、約束だ!」
幸一君を落ち着かせて、彼は自分のベッドに戻って行った。
女医「す、すみません・・・本当なら、私が幸一君を落ち着かせないといけなかったのに・・・」
一条拓也「まぁ、仕方が無いです。あの子はまだ産まれたばかりで、怖いと思う物が多過ぎる。どうにかして上げたいのは山々ですが・・・」
女医「そ、そうですよね・・・」
一条拓也「手術当日まで、俺も何か出来ないか考えて見ます。何か有ったら話して頂けませんか?」
女医「・・・!分かりました!その時に成ったら是非!」
釘宮詩織「・・・・・・」
〇田舎の病院の病室
幸一君が手術に怯えてる光景を見て何とかその場を収めた俺は、釘宮さんと共に姉に会いに来ていた。
一条拓也「姉さん、その後調子はどう?」
一条愛美「こっちは何とも無いわ。時折お腹の中を蹴られる事が有るけど」
一条拓也「この分だと元気な子が産まれそうだね」
一条愛美「えぇ!所で、そちらの方は?」
釘宮詩織「あ、紹介が遅れましたね。拓也さんと同じシナリオ作成をやってます。釘宮詩織です」
一条愛美「詩織ちゃんって言うのね!同じ所で働いてるのは分かったけど、拓也に何か変な事されて無い?」
一条拓也「ちょっと姉さん!俺何も悪い事して無いからね?」
一条愛美「冗談よ冗談!あんたにそんな度胸無いものね!」
一条拓也「全く勘弁してよ・・・」
釘宮詩織「大丈夫ですよ愛美さん。寧ろ私の方が拓也さんに助けられてます」
一条愛美「そっかそっか!流石私の弟!」
一条拓也「うん、ちゃんとやってるから・・・」
姉さんに揶揄われながらも、俺達は他愛も無い会話を楽しむ。俺はその中で、今日姉さんに会う前の出来事を話す事にした。
一条愛美「ふぅん・・・これから手術を控えてる子供が、手術を怖がってるってね」
一条拓也「そうなんだよ。凄く泣きじゃくれてたから何とかして上げたくて」
一条愛美「でも難しいわね。拓也、その子何か言って無かった?」
一条拓也「何か?そう言えば・・・ハデスに会いたいとかどうとか・・・」
釘宮詩織「拓也さん、ハデスって確か、心アドベンチャーの登場人物ですよね?それなら、ゲームとか持って行って上げれば・・・」
一条拓也「無理だ。自殺者を出したって事も有って、ゲームは全て廃棄処分されて、何処の店でも販売中止に成ってる」
釘宮詩織「あぁ!そうですよね!それなら、ネットで動画を見せたりとか!」
一条拓也「それも思い付いたけど、何か違うんだよね・・・」
釘宮詩織「そ、そうですか・・・」
一条愛美「私はそのハデスってのがどんなのか分からないけど、もしそれが子供に勇気を与えるなら、確かに会わせて上げたいわね」
一条拓也「本当そうだよ。あんな大騒動起こして、悪党らしく無い悪党も子供の支えに成れるんだ」
一条拓也「それなら俺がいっそ・・・俺が・・・?」
釘宮詩織「ん?拓也さん?どうしました?」
一条拓也「・・・・・・」
一条拓也「そうだ俺だよ!!」
釘宮詩織「は、はぁ??」
一条愛美「ちょっと拓也、何一人で盛り上がってるのよ?」
一条拓也「はははは!!何でこんな簡単な事思い付かなかったんだ!?小学生でも分かる事なのに!!」
釘宮詩織「あ、あの先輩、私達にも説明して・・・」
一条拓也「そうと決まれば、早速状況を整理して行動開始だ!!」
釘宮詩織「あぁちょっと、拓也さん!?」
一条愛美「・・・何だか良く分からないけど、詩織ちゃん、あの馬鹿、拓也の事を宜しくね。私はもう直ぐ、この子の事で手一杯だから」
釘宮詩織「・・・!はい!!」
皆と話してる内に、俺の中で有るアイディアが思い付き、俺は立ち止まる事が出来ずに真っ直ぐ家に帰り、明日また仕事に
打ち込むのだった。