夏目ゲームスの仕事人

夏目心 KOKORONATSUME

3 それぞれの作品作り(脚本)

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夏目心 KOKORONATSUME

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〇オフィスのフロア
  釘宮さんが内の部署に入ってから一週間が経った。失敗する事も有るが、少しずつ仕事を着実に覚えて行ってるので、
  俺も教育係としてやる事をやって居た。
小島聡「良ぉし!今日も一日頑張るか!!」
釘宮詩織「小島さん、少し良いですか?」
小島聡「あれ?どうしたんだい詩織ちゃん!」
釘宮詩織「さっき小島さんから貰った書類、此処の数字の桁が明らかにおかしいんですが、見直しして頂きたいんです」
小島聡「はぁ!?そんな事有る訳無いだろ!!俺は正しく入力したぞ!!」
釘宮詩織「えぇ・・・ですが、確認は確りして置かないと、後で痛手に成りますよ?」
小島聡「お前の目が節穴なんだ!間違ってると思うなら自分で良く見てみろ!俺は間違える筈なんて無い!そもそも、俺は山の様な仕事を」
小島聡「熟さないと行けないんだ!こんな事で時間を無駄にするな!!」
釘宮詩織「あぁ、分かりました・・・」
小島聡「全く、俺が何時間違えるんだ?良かったな詩織ちゃん。俺のお蔭で自分の間違いに気付けたんだからな!」
釘宮詩織「一条さん、ちょっとご相談したい事が」
一条拓也「おう、どうした?」
釘宮詩織「これ、小島さんが作って私が提出しようとした書類なんですが、此処の数字、どう見てもおかしくて・・・」
一条拓也「小島先輩が?ちょっと見せて」
一条拓也「あぁ、思いっ切り間違えてるわ」
釘宮詩織「あぁ!やっぱり!?」
一条拓也「これは俺が何とかするから、釘宮さんは自分の仕事に戻って」
釘宮詩織「・・・!はい!!」
一条拓也「小島先輩のミスには慣れたが、いい加減自覚して欲しいな」
  お互いに助け合う事はとても大事な事なのは分かるが、何時までも自分のミスに気付けないのも困り物だ。小島先輩に言っても
  聞いてくれないと言う事実が目に見えながらも、俺は書類を書き直して部長の元へと向かった。
一条拓也「部長、提出予定の書類、出来上がりました」
部長「おぉ、一条君。君が持って来てくれたのか」
一条拓也「一応、小島先輩が釘宮さんに預けたんですが、修正は俺の方で勝手に」
部長「そ、そうか・・・小島君、またミスに気付かなかったのか・・・」
一条拓也「正直、あれで良くクビに成らなかったのかが疑問なんですが・・・」
部長「あ、あぁ、正直彼に付いて見直した方が良いかも知れんな・・・」
一条拓也「あの、部長、ちょっと聞きたい事が有るんですが・・・」
部長「ん?どうしたんだい?」
一条拓也「これ仕事とは関係無いんですが、ちょっと気に成る事が有りまして・・・」
一条拓也「夏目ゲームスに以前、結城雁之助って名前の人、居ませんでしたか?」
部長「ゆ、結城雁之助だって!?急にどうしたんだい!?」
一条拓也「この前姉のお見舞いに行った時、姉が入院している病院で、結城雁之助のゲームのファンの子供が居て、個人的に仲良く」
一条拓也「成ったんですよ。一時期注目されてた心アドベンチャーって、確か出版したのは夏目ゲームスですよね?」
部長「・・・今と成っては黒歴史だな。確かに心アドベンチャーは夏目ゲームスの物で、結城雁之助はこの会社のトップエースだった」
部長「だが、結城雁之助は誰とも殆ど話した人が居らず、同じ職場でも、彼の事を知る人は殆ど居なかった」
一条拓也「そうですか・・・俺は彼の事、純粋な人だと思います」
部長「どう言う事だね?」
一条拓也「心アドベンチャーが多くの自殺者をだしたのは事実です。俺も最近あれの中身を調べて見たんですが、環境問題、戦争問題、」
一条拓也「権力乱用とか、今でも解決出来て無い問題を俺達に打ち付けてた。戦争行為を増長させたり、森を無理矢理作ったりする所を見てたら」
一条拓也「結城雁之助は、人類に対して愛想尽かしてたのかも知れません。知って欲しかったってのは本当だと思いますが」
部長「確かに・・・心アドベンチャーには我々が本当に解決するべき問題が沢山有った。実はな、私もあれをやった事が有るんだよ」
一条拓也「え!そうだったんですか!?」
部長「最初は私も、あの世界の虜に成って居たよ。ゲームを進めるに連れて、人間がやって来た愚行の数々。あれの悪役は、」
部長「本当に地球を救おうと人間を排除していたのだ。ラスボスのハデスに真実を突き付けられた時は、私も頭が真っ白に成った」
部長「彼等を倒した事は間違いだったのでは無いか。我々はこのままで本当に良いのかと」
一条拓也「・・・部長、ハデスは倒しましたか?」
部長「倒したさ。だけどその瞬間、これまでのボス達の事と相まって、私は心の底から後悔の念に支配されて、本気で自殺しようかと」
部長「考えた程だった。だけど私は生きる事にした。私にも、やりたい事とやるべき事が有ったからな・・・」
一条拓也「・・・・・・」
小島聡「部長!次の仕事有りますか・・・って、どうしたんです?そんな湿気た顔して?」
一条拓也「あ、いえ、その・・・前に此処に居た結城雁之助の話を部長としてまして」
小島聡「結城雁之助!?あのゲームで沢山自殺者を出したって奴の事!?本当あれは許せない話だよな!!罪の無い人を沢山」
小島聡「死なせやがって!!飛んだ大悪党だぜ!!あんな奴の作ったゲームなんて忘れましょうよ!!無闇に人を死なせるゲームなんて、」
小島聡「ゲームじゃ有りませんよ!!」
部長「そ、そうかも知れないが、彼は純粋と言うか・・・」
小島聡「悪党に持たせる花なんて有りませんよ!あんな精神異常者、皆の前で死刑に成っちまえば良かったのに!!」
小島聡「それはそうと!こっちの仕事終わらせましたから、次の仕事下さい!!」
部長「わ、分かった・・・確認はさせて貰うから、次はこれを頼む」
小島聡「有難う御座います!良ぉしやるぞ!!おい一条!ボーっとして無いで手を動かせ!時間は待っちゃくれないからな!!」
一条拓也「小島先輩、結城雁之助の事まるで分かって無いですね・・・」
部長「言いたい事は分かる。だけどな一条君。結城雁之助の時もそうだが、真実を伝えようとする者は常に僅かしか居ない」
部長「それが幾ら本当に正しくても、大多数の人にはそれが理解されない。ハデスの仲間が言う様に、皆自分が大事なんだよ」
一条拓也「そう聞くと、何だか虚しいですね・・・」
部長「だが、あのゲームをやったからこそ、世界に対する見方を変えた者達が居る事も、また事実だよ」
  各々思う所は有る物の、俺達は自分に出来る事をやるだけだった。

〇オフィスのフロア
  昼休憩終わり。俺が作成した閃光の少女の売上は順調との報告を受け、俺達は大喜びだが、油断しても居られず、此処から
  次の企画を考案する事と成った。
小島聡「閃光の少女の売上が今の時点で50万!良くやったぞ一条!それもこれも全部俺の教えが有ってこそだ!!」
小島聡「この調子でガッポガッポ稼ぐぞ!!」
釘宮詩織「一条さん、改めて確認ですが、本当に彼の助けでこう成ったんですか?」
一条拓也「ありのままを話すが、あの人の力は一切借りて無いから・・・」
小島聡「おい!何をヒソヒソと話してる!?」
一条拓也「いえ、何でも無いです。その節はどうも」
小島聡「うん!それで良い!これなら俺の昇進も確定だな!!」
釘宮詩織「あ〜駄目だこの人・・・明らかに自分だけの成果だと思ってる・・・」
  何がともあれ、俺達は次はどんなゲームを開発しようかと話し合う。俺は俺で閃光の少女を作ってやり切った感がまだ消えて無く、
  次の案はまだ決って無かったが、少しでもやれる事をやるのだった。
小島聡「やっぱ今の時代は刺激を求める者も多いよな!やっぱ鉄板ネタのヒーローにするのが良いよな!!」
一条拓也「念の為聞きますが、どんなヒーロー物にするか決めてます?」
小島聡「そうだな・・・とにかくやり応えが有って爽快なアクションは欲しいな!!それこそ、超能力とかスーパーパワーとか!!」
一条拓也「成る程・・・」
小島聡「なぁ一条。確か閃光の少女には、パワードスーツとか言う強化システムが有ったよな?俺が作るシナリオでそれ採用しないか?」
一条拓也「はい。確かに、1ステージごとのボスを倒すと解禁されるシステムですが、俺としては閃光の少女と差別化したいから、」
一条拓也「乗り物とかどうです?」
小島聡「成る程・・・確かに人が着込むより、戦車や戦闘機の方が強いよな・・・」
小島聡「戦車や戦闘機か・・・これ等の物が使えたら爽快だろうな!良し!次のヒーロー作品は戦車や戦闘機を採用しよう!!」
  小島先輩がヒーロー物を作りたいと意気込む中、釘宮さんも口を開いた。
釘宮詩織「あの、私も此処に来てから、どんなストーリー作ろうか考えてて、まだ途中ですが作り掛けの資料持って来たんですけど、」
釘宮詩織「見て貰えます?」
小島聡「ん?詩織ちゃんもアイディア持って来てたのか。なら見せてくれるか?」
釘宮詩織「分かりました。本当まだ作り掛けなんで、自信は無いですが」
小島聡「ふむふむ・・・普段は教会でシスターをやってる少女達が、悪霊と戦い街を守る為に魔法を覚える・・・」
小島聡「何だこれ?ウケるのか?」
釘宮詩織「うぅ、やっぱ素人がこんなの作っても良い事無いですよね?」
小島聡「全く持ってそうだ!女の子が魔法を覚えて悪霊と戦う?明らかに幼稚園向けじゃ無いか!似た様な物はそこ等にゴロゴロ」
小島聡「転がってる!」
釘宮詩織「・・・やっぱ駄目ですよね?」
小島聡「あぁ!これは一から勉強し直した方が良い!何より刺激が足らん!」
一条拓也「小島先輩、言い過ぎですよ」
小島聡「何だ一条!こんな物の何処が良いんだ!?どっからどう見ても俺の方が良いに決まってるだろ!!」
一条拓也「先輩、まだやり掛けなのに決め付けるのは良く無いし、釘宮さんに失礼ですよ?」
釘宮詩織「一条さん・・・」
一条拓也「今の俺には良い案は出せませんが、シスターの女の子が悪霊退治の為に魔法覚える。成長物と捉えたら凄く良い案じゃ無いですか?」
小島聡「成長物?そんなの今更ウケるか?俺は最初に言ったよな?今の時代は刺激が足りないと!何より、結城雁之助見たいな悪い奴を」
小島聡「自分でボコれる!こんな素晴らしい話は無いだろう!!」
一条拓也「・・・それ、本当にウケます?」
小島聡「当たり前だ!何より、約8年もシナリオ作成に携わった俺が言うんだから間違い無い!!」
一条拓也「成る程・・・シナリオ作成提出日は明後日。小島先輩、一つ俺から提案が有ります」
小島聡「何だ?」
一条拓也「これから小島先輩の書くシナリオと、釘宮さんが書くシナリオ。どっちの出来が良いか、上に直接決めて貰うのはどうでしょう?」
釘宮詩織「えぇ!一条さん、何を言って!?」
一条拓也「どの道次の開発に使われるシナリオは一つだけですし、採用されなくても何かしらの形で応用は効きます。上からこのシナリオが」
一条拓也「良いと決められた方の勝ちって事でどうです?」
小島聡「一条・・・この俺にシナリオの出来で勝負しようとは良い度胸だな!今こそ俺の本当の実力を見せてやろうじゃ無いか!」
一条拓也「但しハンデとして、俺は釘宮さんの手伝いをさせて頂きます。もし小島先輩が勝てたら、何でも言う事聞きますよ?」
小島聡「言ったな一条?なら俺が勝ったら詩織ちゃんの教育係は俺にやらせて貰い、一条にはこの職場を出てって貰おう!」
一条拓也「はい。じゃあそれで」
小島聡「まぁ!どの道俺の勝ちは確定してるけどな!素人集団なんて軽く捻ってやる!詩織ちゃん!こんな奴追い出して、俺が仕事について」
小島聡「確り教えて上げるよ!!」
釘宮詩織「い、一条さん・・・私の所為で・・・」
一条拓也「まぁ気にするなって。どんなストーリー作りたいか、後でゆっくり聞かせて」
釘宮詩織「で、ですが、もし私の案が採用されなかったら・・・」
一条拓也「残念だけどそう成るな」
釘宮詩織「一条さん・・・」
一条拓也「この事は部長に話して置くから、先ずはやって見よう。やらずに決めるのは良く無い」
釘宮詩織「は、はい・・・」
  成り行きとは言え小島先輩とシナリオ作成で勝負する事と成った俺達。負けたら俺は職場を辞める事に成るが、やれる事を
  やるだけだった。その後、この話は部長にも伝えて、部長が凄く苦い顔をしたのは言うまでも無く、俺は今日、釘宮さんを
  飲みに誘うのだった。

〇大衆居酒屋(物無し)
  それから今日の分の仕事が終わり、俺は釘宮さんと共に近所の居酒屋に来ていた。今日も変わらず小島さんから残業して行けと
  苦言を言われたが、それ等は全て無視させて頂いた。
一条拓也「釘宮さん、今日は俺から奢らせて貰うよ・・・って、大丈夫?」
釘宮詩織「これが大丈夫に見えますか?一条さん、勢い任せとは言えあんな約束して、本当に大丈夫なんですか?」
一条拓也「そうだね。全然大丈夫じゃ無いな」
釘宮詩織「えぇ!?そこは嘘でも良いから大丈夫って答えて下さいよ!!」
一条拓也「まぁ、確かにそうだけど、此処で慌てても良い事無いし、そんな力んでたら出来る事も出来ないよ」
釘宮詩織「は、はぁ・・・」
女性店員「いらっしゃいませ!お二人様ですか?」
一条拓也「あ、はい。二人です」
女性店員「畏まりました!それではお席へとご案内させて頂きます!」
女性店員「それでは、ご注文がお決まりに成りましたら、お呼び下さい!」
一条拓也「さて、何食おうかな・・・」
釘宮詩織「一条さん、本当に大丈夫なんですか?」
一条拓也「釘宮さん、心配してくれるのは良いけど、固く成り過ぎない方が良いよ。今此処で慌てても良い事なんて無い」
釘宮詩織「・・・・・・」
一条拓也「釘宮さんも腹減ってるでしょ?早く選びなよ」
釘宮詩織「あ、はい・・・」
  俺達は各々注文する品を決めて、店員さんに頼んで後は待つだけだった。
一条拓也「さて、本題だけど、釘宮さんの書いたシナリオ、改めて聞かせてくれる?」
釘宮詩織「あ、そうですね。昼間にも見て貰った通り、教会でシスターやってる女の子達が魔法を覚えて悪霊と戦う感じにしたくて」
一条拓也「成る程ね・・・主役側は何人にするつもり?」
釘宮詩織「一応、四人にしようと思ってて」
一条拓也「そっか・・・バトル系なら、後は武器だな。どんな武器使わせるか決めてる?」
釘宮詩織「武器ですか・・・まだ決めて無いですね・・・」
一条拓也「分かった。そしたら、時代背景とか設定してるならそれで決めちゃおうか」
釘宮詩織「・・・分かりました!後でもう一度シナリオ見せますね!」
  その後、俺達は食事を済ませた後に釘宮さんのシナリオを読み返して、何をどんな風にするか良く話し合い、作品作りへと
  取り掛かるのだった。

次のエピソード:4 踏み出す勇気

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