蛇地獄

YO-SUKE

第8話 『蛇の眼』(脚本)

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〇綺麗な一人部屋
  モリーを抱きしめて俯く七瀬の後ろで、坂下と遥香は気まずそうに立ち尽くしていた。
「・・・・・・」
坂下道雄「七瀬。もういいだろ?」
片岡七瀬「・・・・・・」
遥香「本当にごめんなさい。 私がピアスを落としたりするから」
坂下道雄「遥香ちゃんだって、こんなに謝ってるじゃないか」
片岡七瀬「もう少しで死ぬとこだったのよ」
片岡七瀬「何で人のせいみたいに言うわけ? 道雄の管理の問題じゃない」
坂下道雄「ピアスを飲み込んだくらいで──」
片岡七瀬「さっきの様子見てたでしょ!? あんなに苦しそうにしてた!」
坂下道雄「それは・・・」
片岡七瀬「道雄のせいなんだよ?  ろくに掃除もしないから! 」
片岡七瀬「モリーの近くに変なものを置いたりするから!」
坂下道雄「・・・・・・」
片岡七瀬「私は、仕事もしないあなたにお金渡してここに住まわせてる」
片岡七瀬「モリーの世話くらいしっかりやってよ」
坂下道雄「・・・・・・」
遥香「七瀬さん。悪いのは私です。 坂下さんのせいじゃありません」
坂下道雄「いいよ、遥香ちゃん」
遥香「でも──」
坂下道雄「いいんだって」
  そう言って坂下は部屋を出ていった。
遥香「坂下さん・・・!」
片岡七瀬「遥香ちゃんも出てって」
遥香「今のは、さすがに坂下さんも傷ついたと思います」
片岡七瀬「・・・・・・」
遥香「失礼します」

〇通学路
坂下道雄「なんか・・・ごめんね」
遥香「悪いのは、私です」
坂下道雄「・・・・・・」
遥香「だけど、いくらなんでも、あんな言い方はないです」
坂下道雄「モリーのことになると、周りが見えなくなるんだ」
遥香「でも程度の問題があるじゃないですか」
坂下道雄「たまに感情的になるんだよ」
遥香「坂下さん。なんで七瀬さんを庇うんですか?」
遥香「昨日は七瀬さんのこと、怖いって言ってたのに」
坂下道雄「・・・うん。怖いよ。 でも、一応俺、彼氏だからさ」
遥香「・・・・・・」
坂下道雄「どうしたの?」
遥香「怖いのに、一緒にいるの・・・変です」
坂下道雄「・・・・・・」
遥香「私、坂下さんと七瀬さんは合わないと思います」
遥香「私のほうが坂下さんのこと──」
坂下道雄「遥香ちゃん?」
遥香「・・・なんでもありません」
坂下道雄「・・・・・・」

〇綺麗な一人部屋
  坂下たちが出ていったあと、七瀬は放心状態で床の一点を見つめていた。
片岡七瀬「・・・・・・」
  その右手が絨毯に触れると、おもむろに毛をむしりとった。
  そうして七瀬は、ひとり黙々と絨毯の毛をむしり続けた。

〇ネオン街

〇大衆居酒屋
山岡「なんだよー。結局お前のモテ自慢かよ」
坂下道雄「俺は真剣なんだって」
山岡「だってそれ、遥香ちゃん、お前に気があるのミエミエじゃん」
坂下道雄「それはまあ」
山岡「なら乗り換えればいいじゃねえか」
坂下道雄「簡単に言うな。仕事も金もない」
山岡「いい機会だから働けよ。 仕事なら俺が紹介してやるから」
坂下道雄「仕事かぁ、だりいなぁ」
山岡「あ、ただし代わりと言っちゃなんだが、七瀬ちゃんは俺がもらっちゃうからな」
坂下道雄「はあ? 本気かよ」
山岡「ああ。七瀬ちゃんかわいいし」
坂下道雄「あいつの異常さを散々愚痴ってきただろ?  普通じゃないんだぞ」
山岡「大丈夫。全部ひっくるめて愛せる」
坂下道雄「ゲスかよ」
山岡「ハハ、お前にそれを言われる日が来るとは思わなかった」
坂下道雄「ふん」
山岡「俺が七瀬ちゃんに連絡とっても恨みっこなしだぞ?」
坂下道雄「あー、もう。好きにしろ」

〇ペットショップの店内

〇店の休憩室
  控室で遥香が支度していると、そこに七瀬が入ってきた。
片岡七瀬「遥香ちゃん! こないだはごめーん!」
遥香「え・・・あ、私のほうこそ」
片岡七瀬「あの後ねー、モリーはなんともなかったの。 ハハハ」
遥香「そう・・・でしたか」
片岡七瀬「でさ、今度改めてお礼させてくれないかな? 」
片岡七瀬「遥香ちゃんが好きなもの奢る!」
遥香「いや、あの」
片岡七瀬「ね! いいでしょ!?」
遥香「それは・・・まあ・・・」

〇通学路
  七瀬はニコニコとスマホを眺めながら帰路についた。
  写真フォルダの中には遥香とのツーショットがいくつも並んでいる。
片岡七瀬「かわいいなぁ、遥香ちゃん・・・食べちゃいたいくらい」
  七瀬がクスリと微笑んだとき、スマホにメッセージが届いた。
片岡七瀬「・・・山岡さん?」

〇シックなバー
片岡七瀬「びっくりしました。急に連絡来るから」
山岡「たまたま近くで飲んでてさ」
片岡七瀬「そうだったんですね」
山岡「坂下にも連絡しといた。 もうすぐここに来るはずだから」
片岡七瀬「・・・はい」
山岡「それより、色々大変だったみたいだね」
片岡七瀬「え?」
山岡「モリーちゃんのこと。坂下から話は聞いたよ」

〇シックなバー
  七瀬と山岡は、お酒を飲みながら坂下やモリーの話をして盛り上がった。
  何度かグラスを空にして、七瀬の頬も次第に赤く火照(ほて)っていく。

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