2 病院での出会い(脚本)
〇病院の待合室
一条拓也「御免下さい」
女医「はいこんにちは!」
一条拓也「本日、お見舞いに来させて頂きました、一条愛美の弟の拓也です」
女医「弟様ですね!分かりました!ではこちらの紙に記入をお願いします!」
一条拓也「分かりました。直ぐやります」
面会受付の手続きを済ませて、俺は姉の居る部屋へと足を運ぶのだった。
〇田舎の病院の病室
一条拓也「姉さん、只今」
一条愛美「拓也お疲れ〜!仕事どんな感じ?」
一条拓也「まぁ、何とかやってる。明後日には俺が作ったゲーム販売されるから」
一条愛美「そっかそっか!あたしがまだ子供だったら遊べたんだけどね」
一条拓也「大丈夫だよ。そこまで贅沢は言わないから」
姉さんの居る病室に来て俺達は現状報告をお互いにする。俺の方は明後日にゲームが発売される事。姉さんの出産予定日は
約1ヶ月後との事を。
一条拓也「どっちが産まれるのか分かってるの?」
一条愛美「それは産まれるまで言わないわ」
一条拓也「だよね!俺も本当楽しみだからさ!分かったら教えてよ?」
一条愛美「分かってるわよ。でもこの子が産まれたら、拓也もおじさんか。この前までまだ小学生や幼稚園児だったのに」
一条拓也「本当だよ。姉さんも頑張ってよね?俺おじさんに成るの楽しみだから」
一条愛美「分かってるわ!あたしが一番確りしないとだから」
一条拓也「そうだよね・・・っと、もうこんな時間か。姉さん。また来るよ」
一条愛美「えぇ!身体には気を付けてよ?」
一条拓也「分かってるって!また何か有ったら言ってよ?」
〇病院の廊下
一条拓也「姉さん、元気そうで良かった・・・どんな子が産まれるのかな・・・・・・ん?」
一条拓也「ん?これは・・・」
病院の廊下を歩いていたら、道端に子供が描いた様な絵が落ちていた。そこに描かれて居たのは、何だか何処かで見た事が
有る様な人物の絵だった。
一条拓也「何だこれ?何処かで見た様な・・・」
中野幸一「あ!お兄ちゃん!僕の絵見つけてくれてたんだ!!」
一条拓也「え?これ君が描いたの?」
中野幸一「うん!部屋に戻る時に落としちゃって!」
一条拓也「そうだったんだ。それなら、これ返すね」
俺の近くに寄って来たのは車椅子に乗った少年だった。俺が拾った絵はこの子の物だとの事で俺は迷わず絵を返却した。
一条拓也「その絵、君が描いたんだね」
中野幸一「そうだよ」
一条拓也「ちょっと聞きたいんだけどさ、その絵、何のキャラクターなの?お兄ちゃん何処かで見た事有ったんだけど、思い出せなくて」
中野幸一「お兄ちゃん知らないの?心アドベンチャーのラスボスの、大魔王ハデスだよ!」
一条拓也「心アドベンチャー・・・大魔王ハデス・・・あぁ!!」
漸く思い出した。この子が描いた絵のキャラは嘗て、沢山の人達から圧倒的な人気を獲得し、大きな混乱を招いた心アドベンチャーの
ラスボスのハデスだった。ゲームの中身は温暖化を止める為に人類抹殺を企てた魔王軍を倒す物で、人の欲や闘争心と言った物が
作中で取り上げられており、余りの現実的な事実を突き付けられたプレイヤーの中には自殺者を出す程で有り、政府の命令で
ゲームその物は全面的に廃棄と成った。
一条拓也「マジか・・・君、やった事有るの?」
中野幸一「うん!ハデスって格好良いんだよ!温暖化や戦争を止める為に色んな悪い人達と戦って!地球を綺麗な星に戻す為に」
中野幸一「頑張ってるんだ!!」
一条拓也「そ、そうなんだね・・・(こんな風に見てくれる人、実際居るんだな。)」
中野幸一「お兄ちゃんは心アドベンチャー好き?」
一条拓也「そうだな・・・名前は聞いた事有るけど、お兄ちゃんはネットで見た事有る程度で、実際はやった事無いな」
中野幸一「そっか・・・ママがこのゲームは危ないって言うから捨てちゃったんだ。ハデスと暗黒四天王は悪い奴じゃ無いのに」
中野幸一「もし持ってたら、一緒に遊べてたのにね」
一条拓也「うん。確かに残念だね。所で、君はどうして此処に居るの?入院だとは思うけど」
中野幸一「僕ね・・・後二週間したら心臓の手術やるんだ。凄く怖いし、失敗したら死んじゃうかもって話も聞いてて・・・」
中野幸一「死んじゃうかも知れないならやりたく無いなぁって凄く思うよ。死んだらハデスに会えなく成っちゃうもん・・・」
一条拓也「マジか・・・それは辛いな・・・」
女医「あぁ!幸一君やっと見つけた!もう遅い時間だから、早くお部屋に戻りましょう!」
中野幸一「あ!御免なさい先生!ねぇ、手術ってやっぱりやらないと駄目なの!?」
女医「大丈夫よ!手術が無事に終われば、またお友達と一緒に沢山遊べるわよ!」
中野幸一「で、でも・・・もし失敗したら・・・」
女医「大丈夫!此処のお医者さんは一人前の人達ばかりだから!今日はもうゆっくり休みましょう!」
中野幸一「は、はい・・・」
一条拓也「あ、すみません、少し時間良いですか?」
女医「あ、はい、でも本当少しだけですよ?」
一条拓也「あぁ、有難う御座います!」
一条拓也「君、幸一君って言うんだね?俺は拓也って言うんだ。もし良かったら、また会いに来て良いかな?」
中野幸一「え?また来てくれるの!?」
一条拓也「あぁ、必ず・・・」
中野幸一「有難う!待ってるね!!」
一条拓也「・・・生きられるなら、生きたいよな・・・」