クードクラース

イトウアユム

第15話「尊厳死」(脚本)

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〇黒背景
レイナ(私は、殺されるの? カネミツに・・・ あんなに憎まれて・・・)
レイナ(いやだ。そんなの絶対嫌だ! ・・・怖い)
  信頼していた兼光の裏切り。
  レイナは心身共に深く傷つき、
  全てを憎しみの色で染める。
  そして真っ赤に染まった正義の女王は、
  その憎しみを静に向けるのだった。

〇川沿いの公園
綾瀬静「レイナ・・・何があった?」
  静の問いかけを無視してレイナは
  血走った目でましろに問いかける。
レイナ「ねえ、ましろ。あたしと一緒に ストレイシープを全員殺さない?」
黛ましろ「え?」
レイナ「気付いたの。ストレイシープは この世にあってはならない悪なのよ」
レイナ「悪魔の力で蘇った邪悪な魂。そんな死人があたし達生者を脅かしてはいけないのよ!」
  鬼気迫る様子で呪詛を吐くレイナの様子にましろは困惑する。
黛ましろ(なんかさっきと・・・様子が違う・・・)
綾瀬静(レイナらしくない・・・ とりあえず落ち着かせないと)
綾瀬静「レイナ、落ち着け・・・」
レイナ「近づかないでっ! あんたもカネミツと同じくせに!」
  落ち着かせようと伸ばした静の手を
  レイナは強く払いのける。
綾瀬静「っ・・・!」
黛ましろ(あっ! ・・・静の手が)
  レイナの長い爪が静の手をひっかき、
  うっすらと血の筋を引いた。
レイナ「ストレイシープなんて信じられない! あんたも騙されてるのよ」
レイナ「まし・・・」
  ギュイーン!
  チェンソーの唸りと、
  何か重いものが落ちる音は同時だった。
レイナ「・・・なに、これ・・・うそ・・・」
レイナ「あああぁ!」
  刹那、綺麗に手入れされた手首が
  地面に転がっていた。
  レイナの手首の無い腕から噴き出る鮮血はましろの頬に降りかかる。
  それを見つめるましろの瞳の奥には
  怒りの色が渦巻いている。
綾瀬静「ましろ・・・お前・・・」
  さすがに静もこの惨状を目の当たりにして声が出ない。
綾瀬静(自分からカードを渡したり、 会話を交わしたりしてたから・・・ レイナには心を開いていたと思っていたが)
黛ましろ「あなたに悪の定義があるように 私にも悪の定義があるんだよ」
黛ましろ「――静を傷つける人は悪。 生きるに値しない」
レイナ(なんなの・・・この子・・・)
  ましろに得体の知れない恐怖を感じた
  レイナはその場から逃げ出そうとする。
黛ましろ「――例え、私に色々教えてくれた人でもね」
  そう言うとましろは微笑み、
  レイナの頭上にチェンソーを振り上げた。
来栖兼光「――法王発動! (オープン・ヒエロファント)」
黛ましろ「がはっ!」
  ましろの心臓を太い杭が突き破る。
  背後から撃ち込まれたのだ。
綾瀬静「ましろっ!」
  血を吐き、地面に膝をつくましろ。
来栖兼光「なにボーッとしてんの! 落ちた手を拾ってくっつけなさいよ!」
レイナ「カネミツ・・・」
来栖兼光「喧嘩はとりあえず中断! 今はましろちゃんを倒す事が先決よ!」
レイナ「・・・い、言われなくてもわかってるわ!」
  慌てて手首を切断面に当てると
  すぐにもくっつく・・・
  これはまだ2人の絆がある
  何よりの証拠だった。
レイナ(カネミツ・・・この絆が憎しみか、 怒りか・・・わからないけど、 あたしのやる事はただ一つ)
  先ほどと違い、狂気の淵から冷静さを取り戻したレイナの瞳には強い光が宿る。
レイナ「あたしは勘違いしていたわ。 ましろ、あんたこそ・・・悪ね」
レイナ「そしてその悪を・・・」
レイナ「滅ぼすのが正義の女のあたしよ!」
レイナ「――法王発動! (オープン・ヒエロファント)」
  レイナは呼び出した杭で
  ましろを壁に貼り付ける。
  激しく壁に打ち付けられたましろの手からチェンソ―が投げ出された。
  ましろは咄嗟にカードを召喚する。
黛ましろ「――吊るされた男発動 (オープン・ハングドマン)」
  召喚された縄は、
  杭に巻き付いてそれを引き抜く。
  更に追い打ちを掛けるように、レイナは
  杭を召喚し、今度は手に持ち振り上げた。
レイナ「そっちばかりに気を取られてるんじゃ ないわよ!」
黛ましろ「塔召喚!(サモン・タワー)!」
  ましろは杭をチェンソーで受け止める。
  そんな殺意をむき出しにした激しい2人の戦いを兼光はぼんやりと眺めていた。
  ――その足元に小さなカードの『効果』が
  迫っているのに気付かずに。
来栖兼光「・・・いたっ!」
  不意に感じる足首にチクリとした痛み。
来栖兼光(なに・・・蛇?)
綾瀬静「――それは女帝のカードの効果」
綾瀬静「毒蛇召喚・・・ クレオパトラの伝説をなぞらえたんだろう」
  敵に屈することを拒み毒蛇に胸を
  噛ませ自殺したと伝えられている
  女王クレオパトラ。
  しかし一説によれば、彼女の活躍を
  良く思わない一派に毒蛇という道具を
  使って処刑されたという説もある。
綾瀬静「――すまないな、兼光。俺もましろに 死んで欲しくない気持ちは同じなんだ」
来栖兼光「あ・・・かはっ・・・ああ・・・」
来栖兼光(これは・・・罠カードだわ・・・ 即死レベルの)
  全身が痺れ、呼吸も出来なくなり、
  兼光は地面に倒れ込む。
  致死レベルの神経毒は即座に効果を表し、じわじわとカネミツを犯していた。
レイナ「カネミツっ!」
  レイナは力いっぱいましろを蹴り飛ばし、悲鳴を上げるカネミツに走り寄る。
黛ましろ「っ! ・・・まだまだ」
  ましろは立ち上がり、
  レイナに挑もうとするが。
綾瀬静「――行かなくていい・・・ 最期は2人に任せてやれ」
綾瀬静「――もう、終わりだから」

〇川沿いの公園
レイナ「しっかりして・・・カネミツ!」
  苦しげに息を吐くカネミツを
  ゆすりながらレイナは叫ぶ。
  その表情は今にも泣き出しそうだ。
来栖兼光「・・・らしくない・・・顔ね、 アタシが憎いんじゃ・・・なかったの?」
レイナ「憎いわよ! 今だって怒ってるわ!」
レイナ「でも、あんたがそんなんじゃ、 あたし・・・」
レイナ(あたしは・・・悲しかったんだ)
レイナ(そしてあんたがあたしから離れていくのが怖かった・・・そうか・・・)
レイナ(あたしの感じていた恐怖は 死の恐怖じゃなくて・・・)
レイナ(信頼していたあんたを 失うっていう恐怖だったんだ)
来栖兼光「レイナ・・・契約を・・・ 解除するわ・・・」
レイナ「何言ってんの? ・・・・・・」
来栖兼光「アタシは・・・助からない・・・ でもアンタは違う・・・」
  兼光の脳裏に蘇るのは、鉄の処女から
  這い出てきた血まみれのレイナを目の
  当たりにしたあの瞬間。
来栖兼光(あの時、レイナに抱いていた不満が ・・・全て消えちゃった)
来栖兼光(残ったのは・・・ 死んで欲しくないって感情だけだった)
来栖兼光(ふふ、裏切った後に気付くなんて アタシったら・・・本当馬鹿・・・)
来栖兼光(だからアタシはせめて・・・ レイナを・・・)
来栖兼光「アンタは・・・ここからもゲームからも 逃げて・・・最後まで・・・生き・・・て」
レイナ「カネミツ・・・」

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