第16話「人体実験」(脚本)
〇黒背景
レイナと兼光の壮絶な死から
数日が過ぎたある日──
〇綺麗なダイニング
セルベール「はい、招待状だわぅ」
セルベール「セーシローから預かってきたんだわぅ~ 『ストレイシープに渡してくれ』って」
黛ましろ「・・・消えた」
綾瀬静「招待状か・・・ 一体どういうつもりだ」
綾瀬静「生きているストレイシープは、 俺と蓮と青紫郎、それと新見圭介って ヤツの4人しかいないってのに」
黛ましろ「・・・青紫郎さんは、いつの間にか スケープゴートと契約してるね」
黛ましろ「世界のカードだ。 他のスケープゴートは・・・」
黛ましろ「――やっぱり、消えてる」
ある日を境に残りの契約していないスケープゴートが忽然とアプリから消えたのだ。
綾瀬静「・・・この招待には その辺りの答えがあるのかもな」
〇荒廃した遊園地
黛ましろ「・・・わあ。 私、遊園地に来たの初めてだ」
綾瀬静「おいおい、潰れた遊園地をお前の 初めての遊園地にカウントするな」
指定された場所は数年前に閉園された
遊園地だった。
黛ましろ「静と一緒の初めてはなんでも嬉しいよ」
嬉しそうに微笑むましろ。
しかしスマホを見ると
その表情が一変する。
黛ましろ「――静、アプリを見て」
消えていたカード達。
それが遊園地の中に表示されていたのだ。
綾瀬静(青紫郎が所有してるって事か?)
綾瀬静(しかし、それならカードと一緒に 持ち主の名前も表示されるだろうが・・・)
新見圭介「――お前達も来たのか」
生き残ったストレイシープの一人、
新見圭介だ。
綾瀬静「ああ。お前は・・・一人か?」
新見圭介「・・・俺の契約者のあみは、 3日前から・・・連絡が取れない」
綾瀬静「連絡が取れない? どういうことだ?」
新見圭介「わからねえ・・・俺が生きているから 死んではいないと思うが・・・」
設楽架純「あっれー? もしかしてぇ、 俺達が一番最後? メンゴメンゴ~☆」
海崎蓮「綾瀬さん、アプリを見ましたか?」
蓮は開口一番、静に問いかけた。
綾瀬静「ああ・・・残りのカードが、 全てこの遊園地に集約されているな」
海崎蓮「・・・でも所有者がいないってことは」
海崎蓮「・・・スケープゴートはまだ、 死んでいないって事ですよね」
その時だ。
篠宮青紫郎「ようこそ、同士の諸君」
スピーカーから青紫郎の声が流れた。
篠宮青紫郎「ゲームもクライマックスに 差し迫ってきたからね」
篠宮青紫郎「なるべく早めに決着をつけたいなと 思ってパーティーを企画したんだ」
篠宮青紫郎「でもただ殺しあうだけじゃ 面白くないだろう?」
篠宮青紫郎「だから宝探しをしよう」
新見圭介「・・・宝探しだと?」
篠宮青紫郎「ああ、この遊園地のいたるところに 宝物を設置したんだ」
綾瀬静「なるほど・・・ 宝がスケープゴートってわけか」
篠宮青紫郎「その通り。でもそう簡単に宝物は あげられない。――おいで」
青紫郎の声に、
鳥かごを持った男が現れる。
大きな鳥かごには布が掛かっていて
中をうかがい知ることは出来ない。
篠宮青紫郎「彼はね、僕のスケープゴートで 君達を追いかける鬼の役だよ」
アプリでは『世界』と表示されている、
端正な顔立ちと笑顔が印象的な長身の男。
???「――久しぶりだね、ましろお姉ちゃん」
聞き覚えの無い低い大人の男性の声。
しかしましろはその口調に覚えがあり
・・・思わずその名前を零す。
黛ましろ「亜里寿、なの・・・?」
青紫郎のスケープゴート。
それは亜里寿だった。
しかし彼はましろの知っている
亜里寿では無かった。
彼は・・・
明らかに10歳近く成長していたのだ。
天使の様な微笑みを湛える顔はすっかり
大人び、体は細いながらしっかりとした
体格の男性へと変貌を遂げていた。
綾瀬静(亜里寿君は・・・ スケープゴートだったのか?)
陸男が殺され、
愛良が行方不明になった翌日。
亜里寿もまた病院から忽然と消えていた。
綾瀬静(・・・愛良は亜里寿を連れて逃げていた ものとばかりと思っていたが)
小早川亜里寿「びっくりした? 青紫郎さんに お願いしたんだ、大人になりたいって」
小早川亜里寿「そしたら愚者のカードで叶えてくれたんだ」
黛ましろ「でも、具体的にイメージできない願いは 叶えられないって・・・」
綾瀬静「骨格や両親の遺伝子情報から医学的根拠に基づいて、彼の『成人した姿』を具体的に推測したんだろう」
綾瀬静「――腐っても、青紫郎は医者だからな」
新見圭介「・・・なあ、綾瀬」
圭介が不意に静に話しかける。
その声は震えていた。
新見圭介「アプリの、あいつのアバターに・・・ 重なって・・・」
新見圭介「あみのカードの『悪魔』が 表示されてるんだ・・・」
新見圭介「あみはカードになってるってことか?」
新見圭介「でもあみは・・・ 生きてるはずなのに・・・」
小早川亜里寿「ああ、コレのこと?」
亜里寿は手にしていた鳥かごを掲げた。
小早川亜里寿「青紫郎さんがくれたんだ、 僕のペットにって」
小早川亜里寿「でも、欲しいならあげるよ」
鳥かごは宙を舞い、地面に落ちる。
その衝撃で扉が開き、中から何かが
・・・転がり飛び出す。
黛ましろ「・・・!」
見守っていた一同は息を飲む。
飛び出したモノはあみの首だった。
そして──
あみ「・・・痛、い、イタイよォ・・・ ユルシテ・・・許。して・・・」
その首は・・・まだ生きていた。
篠宮青紫郎「契約したスケープゴートは基本不死身だが 肉体の損傷次第では死に至る」
篠宮青紫郎「――だから、 どの程度までだったら不死の効果がある のか、ちょっと実験をしてたんだ」
綾瀬静「・・・実験?」
篠宮青紫郎「そうだよ。四肢を潰したり、 腸を引きずり出したり・・・」
篠宮青紫郎「でも、肉体よりも先に ココロが壊れちゃったみたい」
篠宮青紫郎「だから、処分するつもりで首を切ったんだ」
篠宮青紫郎「そしたら・・・首だけでも生きてる! 悪魔の力って素晴らしいね!」
篠宮青紫郎「あ! あみちゃんの体はきちんと 園内に配置しておいたよ」
篠宮青紫郎「くっつけば元に戻るんじゃないかなぁ」
篠宮青紫郎「公私共にパートナーである 恋人の体を探す・・・」
篠宮青紫郎「あはは、まさしく新見君にとっての 宝物探しだ!」
新見圭介「アアアアアアアァッツ!」
怒り、哀しみ、恐怖。
全ての感情が入り乱れた絶叫が
遊園地に木霊する。
そして圭介は壊れたオルゴールの様に
呟き続ける恋人の首を抱きしめると、
その場にへたり込んだ。
〇荒廃した遊園地
静達は園内を進んでゆく。
重苦しい雰囲気の中、蓮が口を開いた。
海崎蓮「・・・綾瀬さん、 ここでは手を組みませんか?」
海崎蓮「互いにカード集めに干渉しない、 でも青紫郎を殺すには助け合う・・・」
海崎蓮「貴方にもメリットがある提案だと 思うんですが」
綾瀬静「・・・ましろはどう思う?」
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