エピソード11(脚本)
〇貴族の応接間
ルノ・ヴァレン・リスターナ&お嬢様「入りなさい」
「失礼いたします」
ロンハン「お嬢様、本日よりあの人間が‥」
ロンハン「アドルフがスイーツ作りを開始いたしました」
ルノ・ヴァレン・リスターナ&お嬢様「そう‥」
ルノ・ヴァレン・リスターナ&お嬢様「案内された部屋に自分のお店があった時の反応はどうだったのかしら」
ロンハン「大変驚いていました。それに、涙も流してしました」
ルノ・ヴァレン・リスターナ&お嬢様「‥泣くほど嬉しかったのかしら? まぁこれでスイーツ作りに集中できそうね」
ロンハン「はい。きっと素晴らしい働きをすることでしょう」
ロンハン「そこでお嬢様にご提案なのですが、さらにスイーツ作りに集中させるために」
ロンハン「ある許可をいただきたいのです」
ルノ・ヴァレン・リスターナ&お嬢様「‥許可‥?」
ロンハン「‥あの部屋の厨房に限り発動する、火と水の魔法の使用許可をいただきたいのです」
ルノ・ヴァレン・リスターナ&お嬢様「・・・そういうことね‥。いいわ、使用を認めましょう」
ロンハン「ありがとうございます。これでアドルフのスイーツ作りの質も上がりましょう」
ルノ・ヴァレン・リスターナ&お嬢様「ロンハン‥あなた‥。偉くアドルフに親切にしているけれど‥」
ルノ・ヴァレン・リスターナ&お嬢様「何か気に入るところでもあったのかしら?」
ロンハン「いえ、私が親切にしているのは、全てお嬢様のためでございます」
ロンハン「あの人間に対して多少の興味はありますが、巡らす程度のことでございます」
ルノ・ヴァレン・リスターナ&お嬢様「そう‥。話はこれで終わりかしら?」
ロンハン「はい」
ルノ・ヴァレン・リスターナ&お嬢様「ではもう行きなさい。私はこれから【1の扉】に行くから用があるならそこに来なさい」
ロンハン「今回のコレクションは今までで一番の出来かと思えるほど、とても素晴らしい作品でした」
ルノ・ヴァレン・リスターナ&お嬢様「フフ‥。私もとても気に入っているわ」
ロンハン「それでは私はこれで失礼いたします」
ロンハン「アドルフに魔法使用許可の件と、使用方法を教えなければならないので」
ルノ・ヴァレン・リスターナ&お嬢様「ええ。」
ロンハンはお嬢様に一礼して、部屋を退室した。
〇広い厨房
アドルフ「とりあえず材料を整理して使うものだけ出しておこう」
アドルフ(そう言えば‥お嬢様が買い込んだスイーツって‥どうしたんだろう‥)
「・・フ・さん」
アドルフ(食べたのかな‥。結構な量だったけど、女性は甘いものは別腹って言うし、まさか‥全部食べたとか‥)
「・ルフ・・さん」
アドルフ「っ!?ロンハンさん!?」
ロンハン「何か考え事でもしていたのですか?反応がしばしなかったので」
アドルフ「ああ、別に大したことじゃないので‥はは‥」
ロンハン「そうですか。ところで、火と水の魔法使用許可の件ですが‥」
アドルフ「!?もう話をされたんですか!?」
アドルフ「そ、それで‥お嬢様はなんと‥?」
ロンハン「認めると言っていただけました。これで魔法が使用できます」
アドルフ「ぇ!!本当ですか!?ありがとうございます!!」
アドルフ「これで、火と水は確保できます」
ロンハン「さっそくですが、火と水の魔法使用方法について学んでいただきます」
アドルフ「僕に魔法なんて、果たして使えるのか‥」
ロンハン「問題ありませんよ。直ぐに使用できるようになります」
アドルフ「はぁ‥」
ロンハン「では、先ずは火の魔法から始めていきます」
アドルフ「は、はい!」
ロンハン「頭の中で、火が燃えているイメージをしてください」
アドルフ「火が‥燃えている‥イメージ‥」
ロンハン「それができたら、次に火を出したい場所を見て固定します」
アドルフ「火を‥出したい場所‥ 厨房の‥ここら辺かな‥」
ロンハン「そして【火よ】」
ロンハン「と、発言し、このように使用します」
アドルフ「なるほど!!」
アドルフ「【火よ】‥」
アドルフ「できた!!」
ロンハン「成功のようですね。私は言葉を発せずとも使用できますが、アドルフさんは難しいでしょうから今の方法で試用してください」
アドルフ「はい!!ありがとうございます!」
ロンハン「あとは、水の魔法ですね。要領は先程の火の魔法と同じです」
ロンハン「水のイメージ➡出したい場所の固定➡発言 です。さぁ、やってみましょう」
アドルフ「はい!」
アドルフ「水のイメージ‥水の玉が浮いてるイメージ‥」
アドルフ「次は出したい場所‥そうだなあ‥。 厨房の洗い場がいいかな‥」
アドルフ「【水よ】」
アドルフ「!?できた!!」
ロンハン「ふむ。問題なく使用できそうですね」
アドルフ「はい!重ねてありがとうございます! これで、スムーズにスイーツ作りができます!」
ロンハン「なによりです。ここまでお膳立てしているのですから‥くれぐれも‥」
ロンハン「お嬢様を失望させないでください」
アドルフ「・・・はい‥」
ロンハン「宜しい。では、私はこれで失礼します」
ロンハン「例の時刻になる少し前に、またこちらに顔を出しますので」
ロンハン「それまでに、お嬢様にお出しするスイーツを作っておいてください」
アドルフ「わかりました」
ロンハン「では」
アドルフ(‥‥失敗はできない‥)
アドルフ(顔がないロンハンさんだけど、言葉の端々に圧を感じたし‥)
アドルフ(ああいう一見物腰柔らかい人ほど怒らせると怖いんだよな~‥)
アドルフ(・・・)
アドルフ(でも‥果たして僕にできるだろうか‥)
アドルフ(日常を非日常たらしめたあの人のために‥)
アドルフ(‥僕の心は‥今も心ここにあらずだ‥)
アドルフ(服従の刻印もいつ発動するのか怖いし‥。お嬢様の顔色を伺いながらの生活を強いられるストレスも正直ある‥)
アドルフ(いや‥!!弱気になってどうするアドルフ!!)
アドルフ(お前には【叶えたい夢】があるだろっ!!)
アドルフ「っ!?夢!?」
アドルフ「そうだ‥今の今まで‥何でこんな大事なことを忘れていたんだ‥」
アドルフ「・・・うぅ・・・くっ・・・」
アドルフ「‥【スイーツグランプリ優勝】‥」
3年に1度開催される大会、【スイーツグランプリ】。
アドルフは出場資格を得ていた‥。
しかしここは‥【闇夜の世界】。