たとえ星となっても

たかぎりょう

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〇書斎
水原沙也「確かお父さん、ピアノの教本持ってるって言ってたよなー」
水原沙也「ん、日記?」
  パラパラとページを捲っていると何かが落ちる
水原沙也「何だろう?」
水原沙也(多忙となり、依頼されていた作業ができなくなりました)
水原沙也(約束を守れずに申し訳ない)
水原沙也「何の話?」

〇一軒家

〇おしゃれなリビングダイニング
水原真里「ライブ?」
水原沙也「メジャーデビュー前の最後のライブだから絶対に行きたいんだ」
水原真里「アイビーカラーだっけ」
水原真里「東京のどこでやるの?」
水原沙也「渋谷」
水原真里「渋谷か」

〇宮益坂
  29年前
女「あなたはピアスをしている?」
榎田真里(旧姓)「え?」
榎田真里(旧姓)「してますけど・・・?」
女「死ね!」
  襲いかかる女
榎田真里(旧姓)「キャー!」
???「おい、何してるんだ!」
水原由幸「大丈夫か!?」
榎田真里(旧姓)「は、はい」
水原由幸「さてはお前、渋谷に出るっていう噂の耳かじり女だな!?」
女「え? え?」
  キョロキョロする女
男A「なんだお前?」
男B「関係ない奴は引っ込んでろ」
水原由幸「俺は渋谷金王丸(こんのうまる)だ」
水原由幸「渋谷で悪さをする輩は俺が成敗する!」
男B「なんだこいつ」
男A「しらけたから行こうぜ」
水原由幸「ハッ、ハッ、ハッ」
水原由幸「おととい来やがれ!」
榎田真里(旧姓)「あの・・・」
水原由幸「うむ」
榎田真里(旧姓)「ありがとうございました」
水原由幸「男として当然のことをしたまで」
水原由幸「礼には及ばん」
榎田真里(旧姓)「はあ・・・」
榎田真里(旧姓)「ところで、渋谷金王丸って何ですか?」
水原由幸「えっ、知らない?」
榎田真里(旧姓)「アニメか何か?」
水原由幸「いや、すぐそこの金王八幡宮に木像があるんだ」
水原由幸「今度一緒に見に行かないか?」
榎田真里(旧姓)「え、でも・・・」
水原由幸「いやいや、拙者、決して怪しい者ではござらぬ!」
榎田真里(旧姓)(いやいや、思いっきり怪しいから・・・)

〇おしゃれなリビングダイニング
水原沙也「出会った時から変な奴だったかー」
水原真里「そうね」
水原沙也「でも、ようやくお母さんがお父さんのことをコンちゃんって呼んでた理由がわかったよ」
水原真里「あ、これ、恥ずかしいからって内緒だったんだ」
水原真里「お父さんに怒られちゃう」
水原沙也「そういえば、結婚のお披露目パーティーも確か渋谷だったよね?」
水原真里「よく覚えてるね」
水原真里「当時はふたりともお金がなかったから、親しい人たちだけ呼んでパーティーをしたんだけどね」

〇古いアパートの部屋
  25年前
榎田真里(旧姓)「パーティーまであとひと月ね」
水原由幸「そうだな」
水原由幸「サプライズを用意してるから楽しみにしてて」
榎田真里(旧姓)「それ、言っちゃいけないやつじゃないの?」
水原由幸「いや、知っててもサプラーイズだから大丈夫」
榎田真里(旧姓)「何それ」

〇おしゃれなリビングダイニング
水原真里「とても自信満々だったくせに、当日何もなかったのよ」
水原沙也「そうなの?」
水原真里「あまりにも何も起きないからパーティーが終わる頃に聞いたのよ、サプライズは?って」
水原沙也「うん」
水原真里「そしたらお父さん」
水原真里「サプライズすると言って何もないのがサプラーイズなのだー」
水原真里「だって」
水原沙也(あー、そういうことか)
水原真里「さすがに私もあの時ばかりは結婚やめようかと少し思ったわ」
水原沙也「でも結婚はやめなかったし、今でもお父さんのことを愛してるんだよね?」
水原真里「いや、もう愛とかじゃ」
水原沙也「お母さん、まだ見かけ若いから再婚しようと思えばいくらでもできるのに、そんな素振り全くないもんね」
水原真里「えっと、そんな事より渋谷よ、渋谷」
水原沙也「あ、はぐらかした」
水原真里「渋谷は人が多いし、都会に慣れてない沙也をひとりで行かせるのは無理だなー」
水原沙也「どうしても今回のライブだけは行きたいの!」
水原真里「気持ちはわかるけど・・・」
水原沙也「じゃあさ、お母さんも一緒に行こうよ」
水原沙也「コンちゃんとの思い出もたくさんあることだし」

〇渋谷駅前
  数か月後

〇渋谷の雑踏
水原沙也「ひえー、テレビで何度も見てたけど・・・」
水原真里「すごい人の数でしょ?」
水原沙也「これ、みんなゾンビだったら逃げられないね」
水原真里「感想が独特・・・」

〇道玄坂
水原沙也「わー、はじめて見るお店ばかりだ」
水原真里「この景色、懐かしいわ」
水原沙也「ライブ終わったらどこかに寄ろうよ」
水原真里「いいけど、そんな事より、ちゃんと会場に着けるの?」
水原沙也「大丈夫、スマホが案内してくれてるから」

〇ライブハウスの入口(看板の文字入り)
水原真里「え、ここなの!?」
水原沙也「そうみたい」
水原沙也「どうしたの驚いちゃって」

〇クラブ
  だって、結婚披露パーティーをしたドクタージーカンズのすぐ隣じゃない

〇ライブハウスの入口(看板の文字入り)
水原沙也「へえー、そうなんだー」

〇ライブハウスのステージ
佐竹惇「アイビーカラーです」
佐竹惇「今日はよろしくお願いします!」

〇黒背景
水原沙也「曲知らないから退屈じゃない?」
水原真里「そんな事ないよ」
水原真里「私くらいの年代にも響く曲ばかりで、すごく楽しいわ」

〇ライブハウスのステージ
佐竹惇「次に歌う曲は、5年前に交通事故で亡くなってしまった、ある男性の日記を元に作りました」
佐竹惇「その男性は、25年前にこの会場の隣のドクタージーカンズで最愛の女性と結婚パーティーを開きました」
佐竹惇「そこで彼は、ミュージシャンのお友達にその日のために作ってもらった曲を歌うつもりでした」
佐竹惇「でもそれは、お友達が忙しくなってしまい叶いませんでした」

〇黒背景
水原真里「えっ!?」

〇ライブハウスのステージ
佐竹惇「この曲は、その代わりにといってはなんですが、その男性の日記を読んで彼と奥さんをイメージしながら書かせて頂きました」
佐竹惇「ぜひ皆さんにとっての大切な人を想いながら聴いてくれたら嬉しいです」
佐竹惇「オルゴール」
  さびたネジを回しながら
  昔のこと思い出そう
  小さな箱の中踊っていた
  二人の軌跡を思いかえそう
  今夜二人の薬指に
  約束を誓い合おう
  もう一度結び直そう
  たとえ星となる日がきても
  僕が眠る隣で笑っていてね
  二人のオルゴール鳴らしながら
  ありがとうごめんねも
  ただいまおかえりも
  いつも通りをこれからも
  過ごしていこう
  ありがとうおやすみ
  今日も幸せだったよ
  そう言って眠りに落ちる
  二人をいつまでも

〇黒背景
水原真里「やりやがったな、沙也」
水原沙也「これがホントのサプラーイズ!だよね」
水原真里「もう、ほんとにやめてよ」
水原沙也「銀婚式おめでとう。お母さん」

〇ライブハウスのステージ
  そして・・・
  お父さん

コメント

  • 歌のところで、じーん…となりました。
    時を経て贈られたラブソングって、すごくロマンティックですね。
    隣にお父さんがいれば、お母さんももっと幸せだったと思いますが、それはそれです。

  • わぉ、ステキだ。カッコイイぜ。キャラ全員がキラキラして、唄が沁みるぜ、ワイルドだろぅ、ワイルドだぜぃ。

  • 家族の愛に心がジーンとするお話ですね🥲
    途中で「わかる!推しのライブは行きたい!!」と最後のオチを全く予想できなかった自分の浅はかな感想が恥ずかしいです🤦‍♀️笑

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