読切(脚本)
〇渋谷のスクランブル交差点
並木には、イルミネーションが輝き、クリスマスソングが聴こえてくる。みんなはウキウキしだした。
〇明るいリビング
那奈「クリスマスはどうする!」
シャーロット「国へ帰るの!家族、親戚が集まってHappy Holidayをすごすの!」
シャーロット「新しい新しい年が来た瞬間、みんなでHappy New Yearと叫ぶの!」
シャーロットはアメリカ生まれで、日本に来て、日本文化を学んでいる、笑顔が素敵なお友達。
〇沖合(穴あり)
シャーロットとクリスマスを楽しもうと思っていた那奈は当てがはずれた。
〇豪華なクルーザー
クリスマスイブは恋人とロマンチックに過ごすイメージがある。今年の那奈には当てはまらない。
〇岩穴の出口
二十歳になってからは、クリスマスイブを素敵な思い出が残るようにしたいと思っていた。
〇森の中
思いを巡らした那奈は、初めて行った軽井沢を思い出した。
〇森の中
頬がちょっぴりひんやりする早春。カラ松林から漏れこぼれる陽射しに、これを木漏れ日というんだと感じた。
木漏れ日は、那奈を安らぎで包んだ。,
〇霧の立ち込める森
作家有島武郎が、恋人と縊死心中した終焉の地の石碑が、ここにある
。
〇火山の噴火
石碑に彫られている『凄いことをしやがったな』という言葉に那奈は、衝撃を受けた。
那奈は、その余韻を引きずりながら保養所に向かった。
カラ松林から漏れこぼれる陽射しと、コンクリートの谷間から差し込む陽光の違いを感じながら那奈は歩いていた。
〇テーブル席
保養所のレストランからは、庭が眺められる。
〇森の中
先には、深い森が続いている。
雪がふるクリスマスの時に訪れたら素敵だろうと那奈は思い描いた、
那奈「そうだ、クリスマスイブは軽井沢に行こう」
運よく保養所が予約できた
〇雪山
クリスマスイブの日、駅に着くと、軽井沢は、雪に包まれていた。
〇雪山の森の中
空は、鉛色、カラ松並木には雪が積もっている。風の音がヒューと聞こえ、カラ松に積もった雪がバサリと落ちた。
〇雪山の森の中
真っ白に蔽いつくされた雪景色が拡がっていた
〇雪山の森の中
保養所のロビーには、クリスマスツリーが飾られ、庭からつながる深い森には、しんしんとした静寂があった。
〇星
那奈は、シャーロットのことを思い浮かべた。
シャーロットは『平家物語』を読み、「生者必滅、会者定離はうき世の習にて候也」という文言に心が揺さぶられたそうだ。
『生ある者は必ず死に、出会った者は必ず別れるのがこの世の定めである』
『平家物語』には、この世の無常が綴られている。シャーロットの研究テーマだ。
〇教会内
ひとりぼっちの那奈に、『生者必滅、会者定離』の言葉が思いおこされ、シャーロットのことが浮かんだ。
〇大聖堂
シャーロットは、日曜日には教会に行っている。神との交わりによって、死の必然を生にエネルギーに変えている。
〇神社の石段
那奈には、『生者必死、会者定離』への覚悟はまとまらなかった。
〇空
翌日は、青空も覗くお天気。那奈は、駅に向かう途中、水たまりを見つけた。無性に水たまりに入りたくなった。
〇水たまり
那奈は、水たまりに、ポシャリ !!
〇朝日
水滴が飛び散り、那奈には、周りが明るくなった気がした。那奈に元気が出てきた。
〇雪山の森の中
那奈(雪が降って来たわ! 降る雪は、桜吹雪のよう !)
軽井沢の情景が目に浮かんできました
伝えようとしている風景、そして誰しもがある思い出の暖かさが伝わってきました。
生きているもの全て死ぬ、だからこそ今やるべきこと、生きてる間にしかできないことを。
なんだか読んでいる間は、とってもゆったりとした時が流れているように感じました。シャーロットもいつかクリスマスイブに素敵な思い出ができると思います。