蛇地獄

YO-SUKE

第6話 『遥香』(脚本)

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〇通学路
坂下道雄「なんか、ごめんね」
坂下道雄「せっかく来てもらったのに、ご飯の用意もできなくて」
遥香「いえ・・・私も押しかけてすみませんでした」
坂下道雄「七瀬が元気になったら、三人でご飯でも行こう」
遥香「・・・・・・」
坂下道雄「遥香ちゃん?」
遥香「あの・・・モリーちゃんのことなんですけど」
坂下道雄「?」
遥香「・・・いえ、なんでもありません。 今日はお邪魔しました!」
坂下道雄「・・・・・・」

〇綺麗な一人部屋
  七瀬はニコニコしながらモリーの前に解凍した餌のネズミを置いた。
片岡七瀬「いっぱい食べて大きくなるんだよ」

〇綺麗な一人部屋
  次の日の朝。
  坂下と七瀬は二人で朝食をとっていた。
片岡七瀬「昨日はごめんね」
坂下道雄「いいって。まだ疲れてんだよ」
片岡七瀬「・・・うん」
坂下道雄「遥香ちゃんも気にしてなかったよ」
片岡七瀬「そっか。良かった・・・」
坂下道雄「どうした? まだ何かあるのか?」
片岡七瀬「うん、あのさ・・・今夜から、実家に帰っていいかな?」
坂下道雄「え?」
片岡七瀬「お母さんから連絡あってね、なんかお父さんが入院しちゃうみたいで」
坂下道雄「え? 大丈夫なの?」
片岡七瀬「うん。盲腸らしい」
片岡七瀬「けど、お母さん心配性だし、一人だと不安になるから」
坂下道雄「わかった。 まあ七瀬も実家のほうが休めるだろうし」
片岡七瀬「モリーは連れて帰れないから、お世話お願いね」
坂下道雄「別に構わないけど──」
片岡七瀬「さっき遥香ちゃんにメールしたら、土日にモリーの様子見に来てくれるって」
坂下道雄「それは悪いだろ」
片岡七瀬「ううん。むしろ喜んでくれてたよ」
片岡七瀬「モリーだけじゃなく、道雄の餌もお願いって言ったら、了解しましたって」
坂下道雄「あのなぁ」
片岡七瀬「モリーのことよろしくね。 前みたいに逃げ出さないように見てて」
坂下道雄「ああ、わかった」

〇綺麗な一人部屋
  その日の夜、酒を飲みながらテレビを見ていると隣から不気味な猫の声が聞こえてきた。
  ニャアァァァオ!
坂下道雄「・・・隣の部屋か」

〇団地のベランダ
  坂下はベランダに出ると、手すりから顔を出して隣の部屋を覗いた。
坂下道雄「うわあぁ!」
  除いた瞬間、腕に黒猫を抱いた上野毛と目が合った。
上野毛信子「なんか用かい?」
坂下道雄「い、いや別に──」
上野毛信子「抱きしめていると温まるんだ」
坂下道雄「は、はあ・・・」
上野毛信子「その点、蛇は不便だよ」
坂下道雄「え?」
上野毛信子「変温動物だろ?  熱を外に求めるから、環境に左右されやすい」
坂下道雄「・・・・・・」
上野毛信子「飼い主が悪けりゃ、すぐに死んじまうってことだよ」
坂下道雄「あんたやっぱりモリーのことを──」
上野毛信子「いいのかい? ぼうっとしてて」
坂下道雄「?」
上野毛信子「さっきから窓開けっぱなしだろ。 死んじまうぞ」
坂下道雄「!」

〇綺麗な一人部屋
  部屋に戻った坂下が慌ててゲージを確認すると、元気に動き回る黒い蛇の姿があった。
坂下道雄「なんだよ。余計な心配させやがって」
  ガツン!
  安心した坂下はゲージを強く殴った。
  すると、黒い蛇はゲージの中を高速でぐるぐると回り始めた。
坂下道雄「!」
  驚いて後ずさり、尻餅をつく坂下。
  その顔をめがけて黒い蛇が飛び掛かった。
坂下道雄「うわぁぁぁぁ!!」
  坂下が咄嗟に避けると、地面に落ちた蛇は周囲を這いずり回る。
  坂下はなんとか追い回して蛇を捕まえると、乱暴にゲージの中に投げ込んだ。
  本棚から数冊の分厚い本を取り出すと、蓋代わりにゲージの上へ積み重ねた。
坂下道雄「な、なんなんだ、お前・・・!」

〇綺麗な一人部屋
  夜になり、坂下はベッドで横になったが、ゲージからカサカサと聞こえる奇妙な音が気になって寝付けなかった。
坂下道雄「・・・くそ。眠れねえ」
  イライラした坂下は、ベッドから起き上がり蛇のゲージに近寄った。
  ゲージを覗き込むと、薄暗い部屋の中で蛇の両目が黄色く不気味に光る。
坂下道雄「!」
  坂下は慌ててベッドに飛び込むと、頭から布団にくるまった。

〇綺麗な一人部屋
坂下道雄「くそ・・・結局、朝になっちまった」
  ゲージの中では相変わらず黒い蛇がカサカサと音をたてて這いずり回っている。
坂下道雄「あいつといたくないし、パチンコでも行くか・・・」

〇田舎駅の改札
  パチンコ屋からの帰り道、坂下は改札前で遥香と待ち合わせをした。
  しばらくすると、耳に可愛らしいハートのピアスをした遥香が駅から出てきた。
遥香「あ、駅まで来ていただかなくても大丈夫だったのに」
坂下道雄「ちょうど駅前でパチンコ・・・じゃなくてカフェにいたからさ」
遥香「なんか目の下にクマできてません?」
坂下道雄「ハハ。ちょっと寝不足でね」

〇綺麗な一人部屋
坂下道雄「いや~、なんか悪いね。 ご飯まで作ってもらっちゃったりして」
遥香「いえ、私も楽しくやってるんで」

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