第十三話 「夏の夜 遣らずの雨や 色分けぬ」(恋編)(脚本)
〇墓石
与謝野 恋(よさの れん)「心(こころ)・・・」
与謝野 恋(よさの れん)「ちゃんと伝えたよ・・・」
与謝野 恋(よさの れん)「────」
与謝野 恋(よさの れん)「預かってたもの」
与謝野 恋(よさの れん)「返すね・・・」
与謝野 恋(よさの れん)「雨・・・」
〇霊園の駐車場
与謝野 恋(よさの れん)(かからない・・・)
与謝野 恋(よさの れん)「もしかして燃料?」
与謝野 恋(よさの れん)「ハァ・・・、ガス欠か・・・」
与謝野 恋(よさの れん)「バイクにも・・・」
与謝野 恋(よさの れん)「嫌われちゃったかな・・・」
与謝野 恋(よさの れん)「────」
〇住宅地の坂道
与謝野 恋(よさの れん)(下り坂で良かった)
与謝野 恋(よさの れん)(あと少しでガソスタにつく・・・)
チャラ男「ねぇねぇ君、バイクどうしたの?」
与謝野 恋(よさの れん)「・・・」
チャラ男「俺が直してあげようか?」
与謝野 恋(よさの れん)「結構です・・・」
チャラ男「そんな怖い顔しないでよ」
与謝野 恋(よさの れん)「・・・」
チャラ男(声も可愛いじゃん・・・)
チャラ男「とりあえず俺の車に乗りなよ」
チャラ男「送ってあげるからさ」
与謝野 恋(よさの れん)「警察呼びますよ!」
チャラ男「いや・・・、まいったな・・・」
チャラ男「ははは・・・、また・・・」
与謝野 恋(よさの れん)「・・・何あれ」
〇ガソリンスタンド
与謝野 恋(よさの れん)「ハァ、ハァ・・・」
与謝野 恋(よさの れん)「やっと着いた──!」
チャラ男「いやぁ──、また会ったね」
チャラ男「これは運命かなぁー」
与謝野 恋(よさの れん)「・・・」
チャラ男「ねぇ、喉乾かない?」
チャラ男「濡れてるじゃん、 カバン持ってあげるよ、さぁ──」
与謝野 恋(よさの れん)「私に触らないで!」
チャラ男「いてぇな!何すんだ!」
チャラ男「ちょっとこいって!」
与謝野 恋(よさの れん)「いや!離して!」
「いらっしゃいませぇ────!!」
???「お客さん、どうしました──!?」
チャラ男「あん?店員は引っ込んでろよ」
チャラ男「俺は、この子と話してんだ」
与謝野 恋(よさの れん)「ふざけないで! ただナンパしてるだけでしょ!」
チャラ男「怒った顔も可愛いねぇ」
???「あ──、ナンパねナンパ・・・」
???「お客さんじゃないのね?」
チャラ男「当たり前だろ、今時セルフじゃない」
チャラ男「こんな、 リッターくそ高いガソスタくるかよ!」
???「こんな・・・?」
???「こんなだとぉ────!?」
チャラ男「イタタ・・・!腕痛いって!」
???「あいにくウチの店は ナンパ場所じゃないんで──」
???「お引き取りいただけますか?」
チャラ男「くそ!痛いから離せよ!ゴラァ!!」
???「・・・」
チャラ男「こ、こんなことしていいのか!」
チャラ男「俺のバックには 美咲鬼(ミサキ)の知り合いがいるんだぞ!」
???「・・・美咲鬼(ミサキ)? あの暴走族の?」
チャラ男「そ、そうだ!喧嘩上等の武闘派集団!!」
チャラ男「今更、謝ってもおせーぞ!」
???「くくく・・・」
チャラ男「え・・・!?」
???「あはははははは──!!」
???「面白い、いつでも来てもらってくれ」
チャラ男「な、なんだって?」
???「全員ガス欠にしてから 来るよう伝えるのを忘れるなよ!」
チャラ男「ふ、ふざけやがって・・・!!」
???「いや、ほんと大歓迎だわ!」
チャラ男「店もろとも、ぶっ壊してもらうからな!」
???「・・・おい、ガキ ハッタリかますなら相手見てモノ言えよ!?」
チャラ男「・・・お、覚えとけよ!しらねーからな!」
与謝野 恋(よさの れん)「あ、ありがとうございます」
???「いえいえ、とんでもない・・・ それよりバイクどうしました?」
与謝野 恋(よさの れん)「えへへ・・・、 ガソリンタンク空にしちゃって・・・」
???「バイク乗りあるあるですね、 レギュラーガソリン満タンで?」
与謝野 恋(よさの れん)「はい、お願いします」
???「かしこまりました──!!」
???「おや?お客さん、 びしょ濡れじゃないっすか!」
与謝野 恋(よさの れん)「────」
???「おーい!アケミ、 新品のタオル用意してくれ!」
りょうかーい!
???「事務所に嫁がいますので タオル使ってくださいね」
与謝野 恋(よさの れん)「え・・・、でも・・・」
???「心配しないでください」
???「もちろん無料ですから」
与謝野 恋(よさの れん)「あ、ありがとうございます」
〇ナースセンター
朱美 (あけみ)「あらら、風邪ひくわよ」
与謝野 恋(よさの れん)「ありがとうございます」
与謝野 恋(よさの れん)「あの・・・、さっき店員さんに 助けてもらったんですが」
与謝野 恋(よさの れん)「相手の人、暴走族の人みたいで・・・」
与謝野 恋(よさの れん)「大丈夫ですかね・・・?」
朱美 (あけみ)「へぇー、何ていうチーム名かしら?」
与謝野 恋(よさの れん)「美咲鬼(ミサキ)?とか 言ってましたけど・・・」
朱美 (あけみ)「ぷっ!ククク・・・!! 美咲鬼(みさき)ですって!」
与謝野 恋(よさの れん)「え、何が面白いんですか?」
朱美 (あけみ)「それなら大丈夫よー」
朱美 (あけみ)「だって、彼は──」
朱美 (あけみ)「初代、『美咲鬼』特攻隊長 ”地獄の流星よ”」
与謝野 恋(よさの れん)「ええっ!? えー!あの優しそうな人が暴走族!?」
権田原 流星「おいおい。元だろ、元をつけろアケミ」
権田原 朱美 (ごんだわら あけみ)「ふふ・・・、」
権田原 朱美 (ごんだわら あけみ)「あらあら・・・、 流美ちゃん起きちゃった」
権田原 流美(ごんだわら るみ)「おんぎゃー、おんぎゃー!」
「おむつパンパンだねー、 取り替えっこしましょうねー」
与謝野 恋(よさの れん)「可愛いい・・・」
権田原 流星「でしょ──、俺に似て可愛いですよね!」
権田原 流星「特に目なんかクリクリしてて ずっと見てられますよね!」
権田原 朱美 (ごんだわら あけみ)「はいはい・・・、それぐらいにして」
権田原 朱美 (ごんだわら あけみ)「ふふふ、 昔の流星からは想像がつかないわね」
権田原 流星「お、お客さん、 ガソリン満タンと──」
権田原 流星「汚れがひどい所だけですが ピカピカに磨いておきました!」
与謝野 恋(よさの れん)「は、はい!ありがとうございます」
権田原 流星「それにしても、いいバイクですね」
権田原 流星「同じバイクに乗ってた人に 随分、助けてもらってるんで」
権田原 流星「親近感わいて、 余計に親切になっちゃうんですよね!」
権田原 流星「先輩、今どうしてるかなぁ・・・」
権田原 朱美 (ごんだわら あけみ)「何、昔に浸ってんのよ!」
与謝野 恋(よさの れん)「────」
権田原 流星「お客さん、もう一度バイクを 見させてもらっていいですか?」
与謝野 恋(よさの れん)「どうぞどうぞ」
「やった!ありがとうございます!」
与謝野 恋(よさの れん)「いい旦那さんですね!」
権田原 朱美 (ごんだわら あけみ)「ふふふ・・・、ああ見えて 彼、昔は凄い浮気性だったのよ」
権田原 朱美 (ごんだわら あけみ)「何股も女性と付き合ってて」
権田原 朱美 (ごんだわら あけみ)「とんでもない適当な奴だったけど」
権田原 朱美 (ごんだわら あけみ)「フフッ・・・! それを隠さずにいてたわ!」
権田原 朱美 (ごんだわら あけみ)「流星の、そんな裏表ない性格に 惹かれて付き合ってたんだよね」
与謝野 恋(よさの れん)「・・・」
権田原 朱美 (ごんだわら あけみ)「当時の私達は性欲真っ盛りでさ」
権田原 朱美 (ごんだわら あけみ)「彼が高一、私が高三の時に妊娠しちゃって」
権田原 朱美 (ごんだわら あけみ)「私、捨てられるかなって思ってたけど」
権田原 朱美 (ごんだわら あけみ)「流星ったら直ぐに私のところに来て」
権田原 朱美 (ごんだわら あけみ)「『責任とるよ、結婚しよう!』」
権田原 朱美 (ごんだわら あけみ)「って言ってくれて嬉しかったのよ!」
権田原 朱美 (ごんだわら あけみ)「そりゃあ当然、親も反対した」
権田原 朱美 (ごんだわら あけみ)「札付きの不良と結婚するんだもん」
権田原 朱美 (ごんだわら あけみ)「でもね・・・、その後なんだかんだあって、私の実家がガソスタやってたから」
権田原 朱美 (ごんだわら あけみ)「『学校も辞めて子供の為に働かせてください!』って」
権田原 朱美 (ごんだわら あけみ)「ウチの親に土下座して頼み込んだの、 あのプライドが高い男が・・・」
権田原 朱美 (ごんだわら あけみ)「一週間以内に辞めるだろうと 思ってたみたいだけど」
権田原 朱美 (ごんだわら あけみ)「その日から真面目に働く 流星を見続けた両親が」
権田原 朱美 (ごんだわら あけみ)「根負けして、 とうとう結婚を許してくれたの」
与謝野 恋(よさの れん)「・・・」
権田原 朱美 (ごんだわら あけみ)「みんなから恐れられてた不良がさ ここまで真面目になるなんて」
権田原 朱美 (ごんだわら あけみ)「私でさえビックリしてんの」
与謝野 恋(よさの れん)「・・・」
権田原 朱美 (ごんだわら あけみ)「何でこんな話するの? って顔してるわね」
権田原 朱美 (ごんだわら あけみ)「──それは」
権田原 朱美 (ごんだわら あけみ)「あなたがすっごい、 悩んだ顔してるからよ」
権田原 朱美 (ごんだわら あけみ)「それもたぶん恋愛の話でしょうね」
与謝野 恋(よさの れん)「え、えっ!いや、あの、その・・・」
権田原 朱美 (ごんだわら あけみ)「隠さなくても大丈夫」
権田原 朱美 (ごんだわら あけみ)「あなたぐらいの年頃が悩んでいるのは」
権田原 朱美 (ごんだわら あけみ)「恋の話に決まってるもの」
権田原 朱美 (ごんだわら あけみ)「私が言いたいのはね」
権田原 朱美 (ごんだわら あけみ)「人って『変わる』って事」
与謝野 恋(よさの れん)「『変わる・・・』」
権田原 朱美 (ごんだわら あけみ)「そう・・・、 もし私が妊娠しなかったら」
権田原 朱美 (ごんだわら あけみ)「結婚することは、 なかったかもしれない」
権田原 朱美 (ごんだわら あけみ)「でもそんな事って、その時にならなきゃ 結局わからないのよね」
与謝野 恋(よさの れん)「────」
権田原 朱美 (ごんだわら あけみ)「だから、なんか嫌な事あったとしても」
権田原 朱美 (ごんだわら あけみ)「仕方がないことって思う様になって」
権田原 朱美 (ごんだわら あけみ)「突き詰めたら、 結局は悩んでも無駄って気づいた」
与謝野 恋(よさの れん)「────」
権田原 朱美 (ごんだわら あけみ)「あ?私のことバカな女と思った!?」
権田原 朱美 (ごんだわら あけみ)「高校も中退しちゃったしね」
権田原 朱美 (ごんだわら あけみ)「でもね・・・私・・・、」
権田原 朱美 (ごんだわら あけみ)「今、幸せなんだよ」
権田原 朱美 (ごんだわら あけみ)「はいはい・・・、ミルクの時間でちゅねー」
与謝野 恋(よさの れん)「────」
権田原 朱美 (ごんだわら あけみ)「ねぇ・・・」
権田原 朱美 (ごんだわら あけみ)「恋愛ってどうなるかわかんないよ」
権田原 朱美 (ごんだわら あけみ)「私も応援してあげる!」
権田原 朱美 (ごんだわら あけみ)「がんばれっ!」
権田原 朱美 (ごんだわら あけみ)「女子高生!!」
与謝野 恋(よさの れん)「は、はい・・・」
与謝野 恋(よさの れん)「────」
〇ガソリンスタンド
権田原 流星「雨も上がってる今がチャンスですね」
与謝野 恋(よさの れん)「タオルありがとうございました!」
権田原 流星「いえいえ、 こちらこそありがとうございました!」
権田原 流星「憧れのバイクをじっくり 見させてもらえ嬉しかったです!」
与謝野 恋(よさの れん)「奥様にも宜しくお伝えください」
権田原 流星「はい!」
権田原 流星「ありがとうございました────!」
権田原 流星「・・・」
権田原 朱美 (ごんだわら あけみ)「少しは元気出たかな?」
権田原 流星「ああ、アケミのおかげだろう」
権田原 流美(ごんだわら るみ)「あう──」
権田原 流星「流美ちゃんもそう思うか!」
権田原 流星「それ!お腹をぐりぐりぐり──!」
権田原 流美(ごんだわら るみ)「ダァ、ダァ!」
権田原 朱美 (ごんだわら あけみ)「ふふふ、親バカね」
権田原 流美(ごんだわら るみ)「ダァ!!」
〇道
〇黒背景
与謝野 恋(よさの れん)「そうだよね・・・」
与謝野 恋(よさの れん)「考えてたって何も変わらないよね」
与謝野 恋(よさの れん)(恋愛はどうなるか わからない・・・か・・・)
与謝野 恋(よさの れん)「よし!!」
もう一度
最初から
頑張ってみようかな──
名前が伏せられてたから誰かと思ったら、あの権田原先輩じゃないですか!このタイミングで恋ちゃんに会うなんて、まさに運命ですね😭
そして、この出会いによって、気力が湧いてきた恋ちゃん、このあと一咲とどのようなやり取りがあるのか楽しみです☺️
あー!あのときの!
姉を泣かせたあのロクデナシ男が生まれ変わって、今度は妹の助けとなったのですね…
山田先生といい、周囲の大人たちの魅力が滲み出てて本当に素敵です☺️
ガソスタのお兄さん……あのときの!😱😳✨️
なかなか尖った過去だなーと思ったら、こんな回収をされるとは……!
赤ちゃん子育てありがとうございます😊更正するほど可愛がってもらえて嬉しいです💕