不満だらけの体たち

星谷光洋改め、『天巫泰之』

体たちの不満を聞いてください(脚本)

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〇可愛らしい部屋
  体のみんながぶうぶう文句を言いはじめました。もちろん、心のなかで会話をしているのです。
  体たちはたくさん働くわりにはお礼を言われたこともないと言うのです。ぼくたち、頭と顔たちだって言い分がたくさんあるのです。
体「ぼくだって起きているあいだ、あちこち目を配って大変なんだぞ」
体「ぼくがきちんとみているから道をまちがえずに歩けるし、文字を書いたり、」
体「手でなにかをつかんだり、パソコンだってできるんだろ」
  赤く充血させた目が言い、
体「そうやそうなんやで! 口があるから食べたり飲んだりして生きていけるんや」
  とがらせた口も言いました。

〇可愛らしい部屋
体「そうよ、そうなのよ。耳があるから話ができて人ともコミニュケーションできるんじゃないの」
  耳をひくひくさせて耳が言いました。

〇可愛らしい部屋
体「君たち、私のことを忘れていないかい?」
  お尻がこそっと言いました。
体「わいがいるから、いらないものを外にだせるんでしょ。臭いし、いちばん辛い仕事をしているんだよ」
  口は舌をだしてお尻君をからかいました。まったく不満の多い体たちです。

〇可愛らしい部屋
体「おっと、君たち、私たちのことも忘れては困るな。皮膚や髪の毛、爪だって大事なものなんだよ」
体「私たちは体の中を守っているんだからね」
  髪は長い毛をなびかせて、さらりと言いました。

〇可愛らしい部屋
体「わいは骨でごわす。なんといっても骨が屋台骨でごわす。わいらがいなければ立ってさえおられんぞな」
  ボキボキ骨を鳴らして、言いました。

〇可愛らしい部屋
内蔵「ちよっと待ちなさいよ。忘れてない? 私たち内臓たちのこと。私たち、眠っているあいだもずっと働いているんだから」

〇可愛らしい部屋
  内臓たち以外のぼくたちは、もううんざりしてしまって、タヌキ寝入りをすることにしました。
  そうです、日頃は目立ちませんが、内臓のみんなもいたのです。内蔵たちはやたらとねちっこいのです。
  内臓たちはよほどストレスがたまっていたのでしょう。
  胃は刺激物の取りすぎだとか、心臓はもっと運動しなさいよなどと、不満話が終わりません。
  内臓さんたちお疲れさま。ぼくたちはおやすみします。

〇月夜
  fin

コメント

  • 実はそうなんですよね、体が一番文句も言わずに働いてくれているんです、自分ではなくて。感謝しないといけないですよね、分かってはいてもいつも体に無理をさせてしまう自分に反省です。

  • 楽しくテンポよく読むことができました。自分の体から「もっと自分たちを大切にしろ」と言われている気分になりました(笑)。多くの人に読んでほしい作品ですね。

  • 体を擬人化するという発想か斬新で面白かったです。確かに体は常に働いてくれていますよね。そのどれが欠けても困ります。体に感謝です。

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