第4話 『思わぬ再会』(脚本)
〇綺麗な一人部屋
深夜12時を過ぎたころ。
カサカサとビニールが擦れるような音がして、坂下は目を覚ました。
坂下道雄「・・・?」
ベッドから起き上がると、戸棚の方から再びガサガサと音が聞こえた。
坂下は音を立てないよう慎重に歩くと、戸棚の上を覗き込む。
そこには七瀬に気づかれないように、モリーの死骸を入れたビニール袋を隠してあった。
坂下は息を呑んで、ゆっくりとビニール袋に手を伸ばした、次の瞬間──
坂下道雄「うわあああああ!!」
〇綺麗な一人部屋
ハッと目を覚ます坂下。
隣を見ると、七瀬がスヤスヤと寝息をたてて気持ちよさそうに眠っている。
坂下道雄「・・・夢か」
坂下は起き上がると、戸棚の上からビニール袋を取り出して中身を確認した。
袋の中に入っているモリーの死骸には、特に変わった様子はない。
坂下道雄「あとでちゃんと処分しないとな・・・」
〇綺麗な一人部屋
片岡七瀬「道雄、今日の予定は?」
坂下道雄「別に。パチンコくらい?」
片岡七瀬「うーん」
坂下道雄「なんだよ、一応お金は稼いで──」
片岡七瀬「そうじゃなくて。 じゃあ出かけるってことだよね?」
坂下道雄「?」
片岡七瀬「やっぱり・・・隠しとこう」
七瀬は立ち上がると、化粧台からファンデーションを取り出して坂下の前に置いた。
片岡七瀬「首、これ使って。私のせいだ」
坂下道雄「?」
坂下が手鏡で首元を確認すると、首筋に何かに噛まれたような赤い痣が出来ていた。
坂下道雄「いつのまに・・・!?」
片岡七瀬「ごめん! 多分それ、私のキスマークだよね?」
坂下道雄「え、あっ──」
片岡七瀬「怒った?」
坂下道雄「いや、別に・・・」
片岡七瀬「良かった。じゃあ私はそろそろ行くね」
七瀬は立ち上がると、ゲージの前にしゃがみこんで黒い蛇に声をかけた。
片岡七瀬「モリー。行ってくるよ。 いい子にしてるんだよ」
黒い蛇「♪」
片岡七瀬「あー! もうカワイイやつ~」
蛇を眺めてはしゃぐ七瀬の姿に、坂下は顔をしかめた。
坂下道雄「モリー・・・じゃねえだろ」
〇マンションの共用廊下
坂下道雄「もしもし! いるんでしょ!?」
ビニール袋を抱えた坂下は、イライラしながらインターホンを連打した。
突然ドアが開くと、坂下の足元に黒猫が飛び出して来た。
坂下道雄「うわっ!」
上野毛信子「騒々しいね」
坂下道雄「あんただろ! これ! 」
坂下道雄「このビニール袋、ドアノブのところにかけただろ!?」
上野毛信子「・・・なんのために?」
坂下道雄「え」
上野毛信子「なんのためにあたしがそんなことするんだ」
坂下道雄「・・・・・・」
上野毛信子「その中に、何かまずいもんでも入ってるのかい?」
坂下道雄「いや、別に・・・」
上野毛信子「・・・・・・」
坂下道雄「そ、そうだ! 」
坂下道雄「じゃあなんで、昨日の夜、俺を見て笑ったんだ?」
上野毛信子「ああ、彼女と仲直りしたんだろ? 微笑ましいと思ったらダメかい?」
坂下道雄「それは──」
上野毛信子「せいぜいお楽しみよ。女は怖いから」
そう言って上野毛はドアを閉めると部屋に戻っていった。
坂下道雄「・・・・・・」
〇一軒家の庭
庭の隅に置かれたドラム缶から火が上がる。
坂下はその中にモリーの死骸が入ったビニール袋を投げ入れた。
坂下道雄「気味が悪いけど・・・これでさすがに大丈夫だよな・・・」
〇パチンコ店
おばあちゃん「兄ちゃん、ずいぶん突っ込むね~」
坂下道雄「・・・・・・」
おばあちゃん「昨日もこの台に3万くらい突っ込んでたものねぇ」
坂下道雄「・・・余計なお世話だよ」
おばあちゃん「ん? 何か言ったかい?」
坂下道雄「おばあちゃん、リーチ来てますよ」
おばあちゃん「お、激アツリーチだ!」
そのとき、坂下のスマホに七瀬からのメッセージが届いた。
今日、晩御飯外で食べない?
仕事で嫌なことあって
坂下はメッセージを確認すると、無視してパチンコに戻った。
〇商店街
パチンコ屋から出た坂下が再びスマホを見ると、友人の山岡からメッセージが届いていた。
こないだ話した合コンなう。
今からでも来い
坂下道雄「・・・・・・」
〇大衆居酒屋
坂下が居酒屋に到着すると、山岡を中心に男女数人が集まっていた。
坂下は店員にお酒を頼み、山岡たちの会話に混じった。
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