第9話 「俺は膝だ」(脚本)
〇整頓された部屋
マヨルガvsレッドザガス。
互いを知る者同士、激しいノーガードの
闘いが繰り広げられていた。
マヨルガ(ん?なぜ窓を開けた?)
レッドザガス「チクショー!!!!!」
マヨルガ「バックドラフトで 魔炎値を上げようとしたって訳か」
レッドザガス「チッ、気づいたか・・・」
マヨルガ「バカめ。魔界と地上の風は 全くの別モンだ」
レッドザガス「んなこたあ分かってるぜ」
レッドザガス「せっかく異次元に来たんだ。 色々試したくなっただけよ」
マヨルガ「ふん、そんな余裕など無えくせに」
マヨルガ「グフッ!! 空間を歪ませやがったか!」
レッドザガス「グヘヘッ!! スポットの力を拝借させてもらったぜ!!」
レッドザガス「もう一丁!!」
マヨルガ「そうはいくか!!」
マヨルガ「同じ手は食わないよ」
レッドザガス「なっ!ゆ、歪みを消しやがった!!」
マヨルガ「んなもん、聖水術をスポットに ぶち当てて、効力を弱めりゃ どうってこたあ・・・」
マヨルガ「うっ!!! お前も聖水術が使えるとは!!」
レッドザガス「俺様をみくびるな!!」
レッドザガス「己のウィークポイントは克服し、 敵の技を使えるように研究し、 鍛錬を重ねる!!!」
レッドザガス「それが俺の矜持だ!!」
マヨルガ「ケッ、悪魔が言うセリフかよ」
レッドザガス「ずいぶん、攻撃が弱くなって来たな! 同じ手は食わねえぜ!!」
レッドザガス「俺は魔脳知数が高いのさ。 あれは、第7兆8642回第六天魔卿主催の 魔脳知数昇段審査会で奨励賞・・・」
レッドザガス「ウグハァッッ!!!」
マヨルガ「お前は話が長い。 ハッキリ言って隙だらけだ」
レッドザガス「な、なるほど。 何か不穏な空間だと感じたのは、 これが原因か・・・」
レッドザガス「ならば俺もそのパワースポットを利用させて もらおう!!!」
マヨルガ「やべっ!!気付いちまったか!!」
─────第9話─────
〇ビルの裏
確かに私がこの歳までやってこれたのは、
サタデービルドのおかげだ。
ただ、
そのためにあらゆる犠牲を強いられた
〇山中のレストラン
店は復活できたものの、
〇レトロ喫茶
客のほとんどは、
悪魔のコーヒーに取り憑かれた客と
サタデービルドの連中しか居ない・・・
〇レストランの個室
店の奥にある席は、
「半永久予約席」と名付けられ
サタデービルドが「謀略を図る会議室」
として使われた。
〇山中のレストラン
ただの喫茶店が、
まるで異常に敷居の高いレストラン
のような緊張感と化し、
〇シックなカフェ
ふらっと立ち寄った客は、
〇レトロ喫茶
〇シックなカフェ
男性客「ま、ま、また今度来ます・・・」
その異様な空気を察知して、
帰ってしまう。
〇レストランの個室
総裁がやって来た時は、
〇レトロ喫茶
たまに、見覚えの無い客が入って来る。
おそらく公安や、総裁を狙う
一部の闇結社などだ。
〇レストランの個室
この場合、
影武者の私が総裁と入れ替わる。
そして計画が漏れないように
どうでもいい世間話に切り替える。
謎の男「今日は天気悪かったっすね」
マスター加賀「昼くらいに少し晴れ間が見えたけどね」
幹部A「まあ、雨降らないで良かったね!」
マスター加賀「だね!風邪引かないようにね!」
このくらいの役割ならまだ良い。
問題は・・・
〇シックなカフェ
闇結社のヒットマン.「サタンを独占すんな!!!」
闇結社の鉄砲玉に、
総裁と間違われ
手荒い脅しにあった事だ
〇黒背景
ヒットマン2「天誅!!」
ヒットマン3「タマ取ったろか!?」
闇結社が解体するまでの20年のうち、
命の危険に晒された数は13回!!
〇ゆるやかな坂道
「もう耐えられない!」と思った私は、
この街から飛び出そうとしたが・・・
会員B「こんな遅くにどちらへ行かれるのですか?」
マスター加賀「い、いや・・・」
会員A「ちょっとアジトまで来てもらいますか?」
サタデービルドのアジトに連れて行かれ、
〇手術室
GPS機能が搭載されたマイクロチップを
首に埋め込まれた。
〇カフェのレジ
それからというもの私は、
絶滅危惧種の野生動物のように
動向を監視され続けた。
〇スーパーの店内
妻と買い物をしている時も、
〇トラックのシート
旅行中も
〇葬儀場
そして、
妻が亡くなった時も・・・
〇諜報機関
どこで何をしているか
全て監視され続けた
〇狭い畳部屋
「影武者から降りて店を閉めたい」
と何度も懇願した
その結果・・・
総裁「加賀君、良いだろう。 本当に今までご苦労だったね・・・」
総裁がついに承諾してくれた。
〇手術室
サタデービルド医師「はい、終了でーす」
マスター加賀「え?全然痛くない!」
サタデービルド医師「医療も進歩してますからね」
自由を奪われていたマイクロチップも
簡単に取り出された。
〇川沿いの公園
これでやっと呪縛から解放された
・・・・・・と、思った矢先、
〇ゆるやかな坂道
何者かに襲撃された・・・
〇黒背景
あの箱を見知らぬ青年に
あげてしまった事が原因なのか?
マスター加賀「そんなに大事なら アジトの奥の奥にしまっとけ!」
それとも解放された私が
アンタッチャブルな話を
公に漏らしてしまうのを防ぐためか?
いずれにしろ・・・
自由を奪われ、
命さえも奪われかけた
60年はもう返って来ない・・・・・・
プラマイで考えたら大マイナスだ。
マスター加賀(サラリーマン続けときゃ良かった・・・)
ならば・・・・・・
最後に派手に散ってやるか・・・
〇おんぼろの民宿
その昔・・・・・・
総裁に習った魔術を駆使して・・・
〇電車の中
〇山の中
曾祖父さんは村人が襲って来た時、
曾祖母さんと森の中へ逃げた。
宗太「春子!あの奥の岩陰に隠れよう!!」
春子「うん!!」
〇薄暗い谷底
宗太「わ、わしら、見つかったら 生きて帰れんかもしれん」
春子「そ、そげな事・・・」
宗太「すまんのう・・・ 結婚していきなり こないな事なってもうて・・・」
春子「そんなん気にせんとって宗太さん・・ うちらは何も悪くないんやから」
宗太「春子・・・」
宗太の日記
「私と春子の胸に、今まで経験した事の無い
狂気とも言える興奮が込み上げて来た」
そして、うちら夫婦が結ばれた時、
閉じた瞼の奥底で全く同じ光景を
見たのであった。
それは、ついこないだ撮った春子との
記念撮影に写っていた悪魔のような人物が、
脳裏を過った事であった・・・
〇古めかしい和室
穴倉美江「どや?曾祖父ちゃんの日記は? えらい不気味な事書いてるやろ?」
〇電車の中
穴倉圭(つまり、曾祖父さんと曾祖母さんが 結ばれた時・・・・・・)
穴倉圭(どさくさに紛れてマヨルガさん達が 2人の火照った身体に一瞬、侵食した・・・)
穴倉圭(その微かな残り香が、 代々一族の血に流れている・・・)
穴倉圭(ただ・・・)
〇古めかしい和室
穴倉美江「圭の蒙古斑は、ほんまに独特やったなあ」
穴倉圭「え?そうだったっけ?」
穴倉剛斗「そうそう。 兄ちゃん、お前の尻見た時な、 ちょっとカッコええ思ってたわ」
穴倉美江「まあ・・・一族以外は見れんように 必死で隠したけどな・・・」
穴倉剛斗「母ちゃん。 そんな話は、もうええやないか・・・」
穴倉美江「すまん・・・」
〇電車の中
穴倉圭(初めて聞かされたよ・・・・・・)
穴倉圭(一族の中で俺だけ・・・)
蒙古斑の形が、
魔刻印だったなんて!!!!!
〇シンプルな玄関
そういえば・・・
家主さんには視えなかった
マヨルガさんが俺には視える・・・
しかし、
〇整頓された部屋
マヨルガさんと戦っている悪魔そのものは
俺には視えない・・・・・・
〇電車の中
穴倉圭(曾祖父と、曾祖母が宿らせた・・・)
穴倉圭(微かなマヨルガの魔力の残り香・・・)
隔世遺伝、いや隔隔世遺伝?
遺伝ていうのもまた違う・・・
そんな良いものじゃない・・・
穴倉圭(この身体に疼くマヨルガの魔力が 何かをきっかけに覚醒してしまったら・・・)
穴倉圭(何かおぞましい事が 起こってしまうかもしれない・・・)
穴倉圭(それは、まるで・・・)
穴倉圭(リミットを越えるほどの 激しいパフォーマンスにより・・・)
穴倉圭(爆弾を抱えている・・・・・・)
穴倉圭(「アスリートの膝」 みたいじゃないか!!??)
穴倉圭(はあ!? 俺はいったい何を言ってるんですか!!???)
〇二階建てアパート
〇シンプルな玄関
穴倉圭「ただいまーっと・・・」
〇整頓された部屋
マヨルガ「まだまだ!!そんなもんじゃ倒せないぞ! レッドザガス」
マヨルガ「な、なかなかやるじゃねえか・・・」
マヨルガ「すぐスピリチュアルパワーが切れちまう」
穴倉圭「ど、ど、ど、 どういう状態なのこれ!!??」
穴倉圭「お色直しして、素に戻って お色直しして、素に戻ってみたいな感じになってる!!」
マヨルガ「魔界で「猛毒」と呼ばれた私の 真骨頂を見せてやるぜ!!」
穴倉圭「マヨルガさん!!」
マヨルガ「あっ!穴倉!! おかえり!」
マヨルガ「穴倉、ちょっと頼みたい事がある!!」
穴倉圭「何すか?何でも聞きますよ!!」
マヨルガ「箱を探してくれ!!」
穴倉圭「箱!!?」
マヨルガ「私を解放した箱を 一刻も早くみつけてくれ!! さっきから探しても見つからないんだ!!」
穴倉圭(や、やべえ!! マスターの自宅に置いて来たままだ!!)
穴倉圭(ど、どうしよう・・・・・・)
マヨルガ「穴倉!!早くしろ!!」
穴倉圭「は、はい!!!」
マヨルガ「ちょ、あの野郎、どこ行くん・・」
〇豪華なリビングダイニング
マスター加賀(やっぱり怖くて出来なかった・・・・・)
マスター加賀(私は、なんて情けないんだ・・・・・・)
マスター加賀(ただ、このまま泣き寝入りするわけには いかない・・・)
マスター加賀(もう少し心の準備が出来てから 突撃するか・・・・・・)
マスター加賀(早くやらなければ捕まってしまう・・・)
マスター加賀(誰だ・・・・・・???)
〇マンションの共用廊下
穴倉圭「すいません!マスター!?穴倉です!! いらっしゃいませんかー!?」
〇豪華なリビングダイニング
マスター加賀「え!?穴倉さん!?」
〇玄関の外
マスター加賀「こんな時間にどうされました!?」
穴倉圭「マスター、すいません!」
穴倉圭「こちらにお邪魔させてもらった時に アンティークの箱をトイレに置いて来て しまって・・・」
マスター加賀「え? あの箱が何か必要な理由があるんですか?」
穴倉圭「詳しい事は後でお話しします!」
〇廃ビルのフロア
土橋刑事「こりゃ、酷えな・・・」
土橋刑事「血のかたまりで出来た アイスリンクみてえだ・・・」
猪谷巡査「警部。 ガイシャ達の情報が入りました」
土橋刑事「ほう」
猪谷巡査「ガイシャ達は、つい先日閉店した 美羅尾町8丁目の喫茶店の 常連客だったそうです」
土橋刑事「なるほど。 こないだ店主が襲われた店か」
猪谷巡査「はい。 今、四班が店主の自宅へ向かってます」
土橋刑事「おい、八代」
八代巡査「はい!」
土橋刑事「ついでにあの事件の時、事情聴取して シロだったサラリーマン・・・えーと・・・」
猪谷巡査「穴倉という人物ですか?」
土橋刑事「そうそう、穴倉だ」
土橋刑事「あいつの自宅前に張り込むよう伝えろ」
八代巡査「了解しました」
〇車内
マスター加賀「なるほど。 そうだったんですか・・・」
マスター加賀「あなたは魔気を 感じとれる方だったんですね」
穴倉圭「ええ、ほんのわずかですが・・・」
穴倉圭「その事を先日お伝えしようと 思ってたんです・・・」
マスター加賀「何かワクワクして来ましたよ」
マスター加賀「絶望していた老兵に 最後の灯火を 与えていただいた心持ちです」
穴倉圭「え?そ、それは・・・」
穴倉圭「何でですか?」
マスター加賀「・・・・・・・・・・・・・・・」
マスター加賀「詳しい事は後ほどご説明いたします」
穴倉圭「分かりました!」
マスター加賀(勘が良いのか悪いのか 分からない人だな・・・)
〇整頓された部屋
レッドザガス「パワーアップして来たぜー!!!」
マヨルガ「これじゃ、キ、キリが無え・・・・・・」
マヨルガ「お互いにみなぎって、ヘタって、 みなぎって、ヘタっての無限ループだ・・・」
〇地下室(血の跡あり)
幹部B「魔脳岩の反応が異常だ!!」
幹部A 浅岡「もしや・・・・・・?」
〇整頓された部屋
魔豪エグゾゲ「久しぶりだな!! 猛毒マヨルガよ!!」
マヨルガ「・・・エ、エグゾゲ・・・」
レッドザガス「お前を最も苦しめたエグゾゲ様だ!!」
レッドザガス「これでお前は、おしめえだ!!!」
─────第9話 「俺は膝だ」────
───────おわり──────
〇黒
──────つづく──────