第十一話 「夏の宵 身を知る雨や 消え惑う」(脚本)
〇電車の中
『初恋の人について話したいの』
古林 一咲(こばやし いっさ)(恋・・・)
古林 一咲(こばやし いっさ)「いったい何を知ってるんだ・・・」
〇海岸沿いの駅
古林 一咲(こばやし いっさ)(この駅は初めて降りるな)
〇田舎駅の改札
古林 一咲(こばやし いっさ)「いない・・・、外か?」
古林 一咲(こばやし いっさ)「あれは恋のバイク・・・!!」
古林 一咲(こばやし いっさ)「横にいるのは・・・恋か!?」
〇田舎町の駅舎
古林 一咲(こばやし いっさ)「恋・・・」
与謝野 恋(よさの れん)「一咲・・・」
古林 一咲(こばやし いっさ)「どうしたんだよ、 こんなとこ呼び出して・・・」
与謝野 恋(よさの れん)「・・・これ」
古林 一咲(こばやし いっさ)「えっ!?」
与謝野 恋(よさの れん)「黙って後ろに乗ってよ・・・」
古林 一咲(こばやし いっさ)「いや、それより話が・・・」
与謝野 恋(よさの れん)「一咲・・・」
与謝野 恋(よさの れん)「初恋の人を知りたいんでしょ・・・」
古林 一咲(こばやし いっさ)「・・・知ってるのか!?」
与謝野 恋(よさの れん)「・・・」
古林 一咲(こばやし いっさ)「わかった・・・乗るよ・・・」
〇開けた高速道路
〇川沿いの道
〇草原の道
与謝野 恋(よさの れん)「着いたよ・・・」
古林 一咲(こばやし いっさ)「ここは・・・!?」
与謝野 恋(よさの れん)「・・・」
与謝野 恋(よさの れん)「こっち・・・」
〇墓石
古林 一咲(こばやし いっさ)「恋!」
与謝野 恋(よさの れん)「・・・」
古林 一咲(こばやし いっさ)「おい、恋!!」
与謝野 恋(よさの れん)「・・・」
古林 一咲(こばやし いっさ)「恋!止まれって!!」
与謝野 恋(よさの れん)「ここだよ・・・」
古林 一咲(こばやし いっさ)「何がだよ・・・!?」
与謝野 恋(よさの れん)「心(こころ)が眠ってる場所」
古林 一咲(こばやし いっさ)「・・・は? こ、心(こころ)って誰だよ?」
古林 一咲(こばやし いっさ)「わけわかんねーよ!」
古林 一咲(こばやし いっさ)「俺は初恋の人を 知ってるっていうから・・・!?」
古林 一咲(こばやし いっさ)「知っているって・・・」
古林 一咲(こばやし いっさ)「知って・・・」
与謝野 恋(よさの れん)「・・・」
古林 一咲(こばやし いっさ)「・・・」
古林 一咲(こばやし いっさ)「嘘だろ・・・」
古林 一咲(こばやし いっさ)「恋・・・?」
古林 一咲(こばやし いっさ)「・・・恋」
古林 一咲(こばやし いっさ)「恋!なんとか言えよ!!」
与謝野 恋(よさの れん)「・・・ごめんなさい」
古林 一咲(こばやし いっさ)「なんだよ!ごめんなさいって!!」
古林 一咲(こばやし いっさ)「なぁ、」
与謝野 恋(よさの れん)「・・・」
古林 一咲(こばやし いっさ)「ああ、わかった」
古林 一咲(こばやし いっさ)「ドッキリなんだろ?」
古林 一咲(こばやし いっさ)「こんな手の込んだことして・・・」
与謝野 恋(よさの れん)「・・・ごめん」
古林 一咲(こばやし いっさ)「あぁ・・・」
古林 一咲(こばやし いっさ)「あぁっ!」
古林 一咲(こばやし いっさ)「あぁぁぁ────!!!!」
〇池のほとり
与謝野 恋(よさの れん)「一咲、大丈夫・・・?」
古林 一咲(こばやし いっさ)「ハァ・・・、ハァ・・・」
与謝野 恋(よさの れん)「────」
古林 一咲(こばやし いっさ)「夢じゃ・・・ないんだな・・・」
与謝野 恋(よさの れん)「・・・うん」
古林 一咲(こばやし いっさ)「────」
与謝野 恋(よさの れん)「・・・一咲」
与謝野 恋(よさの れん)「・・・あなたの初恋の人」
与謝野 恋(よさの れん)「・・・この人で間違いない?」
古林 一咲(こばやし いっさ)「ああ・・・」
古林 一咲(こばやし いっさ)「あ、ああ・・・あぁ・・・」
古林 一咲(こばやし いっさ)「間違い・・・ない・・・」
与謝野 恋(よさの れん)「────」
古林 一咲(こばやし いっさ)「恋・・・、俺が・・・」
古林 一咲(こばやし いっさ)「納得するように・・・」
古林 一咲(こばやし いっさ)「説明してくれないか・・・」
与謝野 恋(よさの れん)「────」
与謝野 恋(よさの れん)「・・・わかった」
与謝野 恋(よさの れん)「彼女の名前は・・・心(こころ)・・・」
与謝野 恋(よさの れん)「私の双子の姉よ・・・」
古林 一咲(こばやし いっさ)「ふ、双子の姉・・・」
古林 一咲(こばやし いっさ)「え!?ちょっと待って! 双子?恋と──?」
与謝野 恋(よさの れん)「そう・・・、 心(こころ)と私は双子の姉妹なの」
古林 一咲(こばやし いっさ)「まじか・・・」
与謝野 恋(よさの れん)「────」
与謝野 恋(よさの れん)「花火大会の数週間後」
与謝野 恋(よさの れん)「私達は家族旅行に出かけた」
与謝野 恋(よさの れん)「家族三人とても楽しい旅行だった・・・」
与謝野 恋(よさの れん)「でも・・・」
与謝野 恋(よさの れん)「・・・ハァ・・・ハァ」
与謝野 恋(よさの れん)「夜行バスに乗って帰宅中に・・・」
与謝野 恋(よさの れん)「運転士が居眠り事故を起こして・・・」
与謝野 恋(よさの れん)「ハァ、ハァ・・・」
与謝野 恋(よさの れん)「心(こころ)だけが」
与謝野 恋(よさの れん)「病院で死亡したの・・・」
与謝野 恋(よさの れん)「────」
古林 一咲(こばやし いっさ)「────」
与謝野 恋(よさの れん)「心(こころ)は、一咲のことを」
与謝野 恋(よさの れん)「マジメ君って呼んでいて」
与謝野 恋(よさの れん)「毎日のように 一咲のことばかり話してたんだよ・・・」
〇寮の部屋(ポスター無し)
与謝野 心(よさの こころ)「難しい・・・」
与謝野 恋(よさの れん)「え──!!うそ! 心(こころ)が勉強してるー!?」
与謝野 心(よさの こころ)「ヘへへ・・・、 いやー、金輝高校って意外に賢いじゃん?」
与謝野 心(よさの こころ)「受験のために少しでも やったほうがいいかなってさ・・・」
与謝野 恋(よさの れん)「そんなに花火大会で出会った マジメ君に会いたいの?」
与謝野 心(よさの こころ)「いや、前にも言ったろ!」
与謝野 心(よさの こころ)「アイツは不器用だけど いい奴なんだって!」
与謝野 心(よさの こころ)「見るからに弱そうなマジメ君がさ」
与謝野 心(よさの こころ)「花火大会で私のために」
与謝野 心(よさの こころ)「あの流星先輩を謝らせたんだぞ!」
与謝野 心(よさの こころ)「な!な! 超──、すごくね!?」
与謝野 恋(よさの れん)「いや、もう何回も聞いてるから」
与謝野 心(よさの こころ)「それでさ・・・ 金輝高校入るって言ってたから」
与謝野 心(よさの こころ)「私も頑張って 入ろうかなーってさ・・・」
与謝野 恋(よさの れん)「・・・いいと思うよ!」
与謝野 恋(よさの れん)「心(こころ)が選んだ人だもん!」
与謝野 恋(よさの れん)「きっと素敵な人に違いないよね」
与謝野 心(よさの こころ)「さすが双子!」
与謝野 心(よさの こころ)「性格は似てないけど」
与謝野 心(よさの こころ)「私の気持ちを、わかってくれてる!」
与謝野 心(よさの こころ)「それでさ──、そのマジメ君さ・・・」
与謝野 恋(よさの れん)「いや、もうお腹っぱいだって心(こころ)」
与謝野 心(よさの こころ)「いや、もうちょい聞けって・・・!」
与謝野 心(よさの こころ)「高校で出会って、お互い好きなら」
与謝野 心(よさの こころ)「付き合う約束もしてんの!!」
与謝野 恋(よさの れん)「あっそ・・・」
与謝野 心(よさの こころ)「マジメ君って変わってるんだぜ!」
与謝野 心(よさの こころ)「騙されてるのわかっても」
与謝野 心(よさの こころ)「待ち合わせに来てるんだ!!」
与謝野 恋(よさの れん)(これは話が長くなるな・・・)
与謝野 恋(よさの れん)(逃げよ──っと・・・)
与謝野 心(よさの こころ)「アイツ傷つくの慣れてるって 言ってるけどさ・・・」
与謝野 心(よさの こころ)「って?どこいった!?」
与謝野 心(よさの こころ)「ちょっと恋!まってよー!」
与謝野 心(よさの こころ)「ねぇ、もう少し」
与謝野 心(よさの こころ)「もう少しだけ聞いてよ──!」
〇池のほとり
与謝野 恋(よさの れん)「心(こころ)は毎日、 早く高校生になりたいって言ってた」
与謝野 恋(よさの れん)「どこにいくにもコレを持って」
古林 一咲(こばやし いっさ)「キーホルダー・・・」
与謝野 恋(よさの れん)「二人が出会った記念日に」
与謝野 恋(よさの れん)「屋台の人から無料で、 もらったキーホルダーを」
与謝野 恋(よさの れん)「”運命の星”だとかいって」
与謝野 恋(よさの れん)「大切な宝物って自慢してた」
古林 一咲(こばやし いっさ)「────」
古林 一咲(こばやし いっさ)「恋は最初から俺の事、知ってたのか?」
与謝野 恋(よさの れん)「ううん・・・、」
与謝野 恋(よさの れん)「心から話には 聞いてたけど顔も知らないし」
与謝野 恋(よさの れん)「本当に約束を守る人かも わからないから」
与謝野 恋(よさの れん)「会えるかどうか半信半疑だったの」
与謝野 恋(よさの れん)「でも一咲がみんなの前で」
与謝野 恋(よさの れん)「自己紹介した時・・・」
与謝野 恋(よさの れん)「心(こころ)が言ってた、 マジメ君だと思った」
古林 一咲(こばやし いっさ)「────」
与謝野 恋(よさの れん)「あの自己紹介で・・・」
与謝野 恋(よさの れん)「初恋の人を探してるって言った一咲に」
与謝野 恋(よさの れん)「私は腹が立ったの・・・」
与謝野 恋(よさの れん)「心(こころ)は、もういないのに・・・」
与謝野 恋(よさの れん)「身内を亡くした気持ちを」
与謝野 恋(よさの れん)「掘り返してることも知らず」
与謝野 恋(よさの れん)「馬鹿みたいに真剣に探してる姿に イライラしたから・・・」
古林 一咲(こばやし いっさ)「それで初めて会った時・・・」
古林 一咲(こばやし いっさ)「あんなに冷たい態度だったんだな・・・」
与謝野 恋(よさの れん)「・・・ごめん」
古林 一咲(こばやし いっさ)「────」
古林 一咲(こばやし いっさ)「・・・なんで気づいたら 言ってくれなかったんだ?」
与謝野 恋(よさの れん)「・・・」
与謝野 恋(よさの れん)「最初は心(こころ)を 晒しものにした一咲に対して」
与謝野 恋(よさの れん)「意地悪のつもりだった・・・」
与謝野 恋(よさの れん)「────」
与謝野 恋(よさの れん)「・・・でも」
古林 一咲(こばやし いっさ)「・・・うん」
与謝野 恋(よさの れん)「一緒に行動するようになって」
与謝野 恋(よさの れん)「どんどん一咲のことがわかって」
与謝野 恋(よさの れん)「本当のことを言えば」
与謝野 恋(よさの れん)「一咲が傷ついてしまうって思ったら」
与謝野 恋(よさの れん)「言い出せなくなったの・・・」
古林 一咲(こばやし いっさ)「────」
与謝野 恋(よさの れん)「・・・だって」
与謝野 恋(よさの れん)「・・・だって私!」
与謝野 恋(よさの れん)「一咲のことが──!」
古林 一咲(こばやし いっさ)「ま、待ってくれ──!」
古林 一咲(こばやし いっさ)「恋・・・待ってくれ・・・」
古林 一咲(こばやし いっさ)「もう頭が・・・」
古林 一咲(こばやし いっさ)「パンクしそうなんだ──」
与謝野 恋(よさの れん)「・・・」
古林 一咲(こばやし いっさ)「・・・俺、昔から馬鹿正直に生きてたから」
古林 一咲(こばやし いっさ)「・・・人に騙されるの慣れてるはずなんだ」
古林 一咲(こばやし いっさ)「・・・だけど」
古林 一咲(こばやし いっさ)「今回のコレはちょっと──」
古林 一咲(こばやし いっさ)「──しんどいや」
与謝野 恋(よさの れん)「────」
古林 一咲(こばやし いっさ)「────」
古林 一咲(こばやし いっさ)「恋・・・、」
古林 一咲(こばやし いっさ)「俺・・・、歩いて帰るから・・・」
与謝野 恋(よさの れん)「そんな・・・、駅まで一緒に・・・」
古林 一咲(こばやし いっさ)「頼む・・・」
古林 一咲(こばやし いっさ)「一人にさせてくれ・・・」
与謝野 恋(よさの れん)「・・・」
与謝野 恋(よさの れん)「・・・う」
与謝野 恋(よさの れん)「・・・うう」
〇田舎のバス停
古林 一咲(こばやし いっさ)「くそ!」
古林 一咲(こばやし いっさ)「くそ!くそ──!!」
古林 一咲(こばやし いっさ)「うぉぉぉ────────!!!!」
古林 一咲(こばやし いっさ)「────」
古林 一咲(こばやし いっさ)「なんでだよ・・・」
古林 一咲(こばやし いっさ)「まだ何も・・・」
古林 一咲(こばやし いっさ)「始まってもないのに・・・」
古林 一咲(こばやし いっさ)「なんでもう・・・」
「終わってるんだよ・・・」
ああぁ、何となく嫌な予感はしていたけど、これは悲しい真実😢
こんな残酷な真実を目の当たりにしたら、一途に探し続けていた一咲のような真面目な人間には受け入れ難いでしょうね😭やり場のない想いをどこに向ければ、、、
そして、心ちゃんを探し続けていた一咲と、一咲と再会するために勉強に励んでいた心ちゃんを見ていた恋ちゃんは余計に辛いはずですよね、、、
果たして、このあと、2人どうなるんだろうか😫
ちょっとは想像してましたが……これはつらい……😭😭😭
言い出せなくなってしまった気持ち、喪失感でいっぱいになる気持ち、どちらもわかって胸が痛いです。
悲しみに張り裂けそうなスチルが秀逸でした。
初恋の人と恋の関係性、こういうことだったんですね……。せっかく初恋の人がわかったのに、一咲、恋……二人とも立ち直ることができることを祈っています。