素敵な旅人

じゅんぴー

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〇簡素な一人部屋
  大学を卒業してやることもなくダラダラとバイトをしている僕のところにあるものが届いた
僕「ん・・・手紙?」
  差出人は僕も知らないトキと言う人物からだった。きちんとご丁寧に自分の住所まで達筆な字体で書いてある。
僕「拝啓 名前も知らないあなたへ 初めまして。トキと申します」

〇ハチ公前
  この手紙を読んでくださり、まずはありがとうございます。
  唐突ではありますが、私に今の渋谷の街を撮って見せてはくれないでしょうか?

〇SHIBUYA109
  理由はお会いできた時にお話できたらと考えております。決して急なご用件ではありませんので気長に待っております。 トキ

〇簡素な一人部屋
  僕は久々に心が躍った。そして、トキという人物にとって今の渋谷がどうして大事なのかが気になった。

〇渋谷の雑踏
僕「久々に来たな、、渋谷」
  僕は実に3年ぶりに渋谷に来た。
  好きなアーティストのCDを買うためにタワレコへ足を運んで以来だった。
僕「やっぱ人多いな、、、。 早速、写真撮るか」

〇SHIBUYA109
  パシャ。

〇高架下
  パシャ。

〇ハチ公前
  パシャ。

〇渋谷駅前
  パシャ。
  こうして写真を撮るために渋谷を散策していたら夕方になっていった。

〇渋谷の雑踏
僕「マジか、、、。 もうこんな時間かよ、、、」
  僕は明日、トキという人物に会いに行くことにした。

〇ホームの端
  翌日。手紙の住所を調べ、僕は片道三時間かけてトキに会いに来た。
僕「随分と遠いな、、、」

〇屋敷の門
僕「住所はここなんだけどな、、、。 本当にここであってるのか、、、?」
  そこへ一人の女性が声をかける。
トキ「すみません、私の家に何かご用でしょうか?」
僕「あぁ、、。その、失礼かもしれませんがトキさんでいらっしゃいますでしょうか?」
トキ「そうですけど、、、」

〇古いアパートの居間
トキ「そうでしたか!あなたに手紙が届いたのですね!」
僕「はい、それでここまで来ました」
トキ「そうですか、そうですか 本当にありがとうございます」

〇SHIBUYA109
  それから僕はトキさんに今の渋谷の写真を見せた。
僕「ここがマルキューという場所で、若者たち、特に女子高生が多く集まるスポットです」
トキ「へぇー、、。 いつも賑わってそうね」

〇高架下
僕「ここが渋谷の高架下と呼ばれる場所です。よくこの下とかにロケ撮影する車とかが止まってたりします、、!」
トキ「ここにいたら芸能人とかに会えるのかい?」

〇ハチ公前
僕「これは、、、」
トキ「さすがにハチ公だって知ってるよ」

〇渋谷駅前
僕「駅の写真なんですけど、これは、、、。 なんとなく撮っただけです、、、」
トキ「こんな大きいのね、渋谷の駅って!」

〇古いアパートの居間
トキ「本当にありがとう、、、」
僕「いえ、とんでもないです。 でも、トキさん。どうしてこんなことを?」
トキ「私ね、昔東京に住んでたことがあったの」
僕「そうなんですか?」
トキ「ええ、その時に住んでいたのはあなたが今住んでるアパートだった」
トキ「もう随分昔なんだけど私に旦那さんがいてね。二人でそこに住んでたの」
トキ「当時も変わらず、渋谷は人気だった。私たち二人もよく顔を出してたのよ。それで懐かしくなってね、、、」
トキ「今はこんな田舎に住んでるし、東京に行くのも年寄りにはきつい。だから私は届くかどうかもわからない手紙を出した」
トキ「そしたら、あなたが来てくれた、、、。 もう昔の面影はほとんど残ってないけど、それでも私にとって思い出の一つだから」
僕「なんかすごく感動します、こうして出会えたこと、、、」
トキ「うふふ、、そうね、これはどれくらいの確率で出会えたのかしらね」
僕「本当にその通りですね、、、」
  それからトキさんは、昔の渋谷の話をしてくれた。
  僕は、ただそれを聞いていた。

〇古いアパートの居間
  気がつけばもう空は赤く染まっていた。
トキ「久々にこんな若者と話せて幸せだよ」
僕「いえ、僕も楽しかったです 久々にワクワクしました」
トキ「またよかったら遊びにおいで」
僕「はい、次は色んな場所を撮ってきます」
トキ「楽しみにしてるよ」

〇簡素な一人部屋
  そして、僕はまた片道三時間かけて家に帰ってきた
僕「トキさん、いい人だったな、、、。 次はもっといい写真撮って見せてあげよう」

〇海水浴場
  あれから僕はアルバイトで稼いだお金でカメラを買い、写真を撮ってはトキさんに見せていた。

〇田園風景
  そして、いつの日か僕は風景写真にどんどんハマっていった。

〇湖畔
  次第に写真のスケールも撮る技術も上がっていき、トキさんからは「旅行してるみたいで楽しい」と言われた。
  僕は嬉しかった。

〇海沿いの街
  いつの日か僕は風景写真家として活動をしていた。
  ねえ、トキさん。
  僕はあなたにとって素敵な旅人になれたでしょうか。

〇ピラミッド
  この写真たちは天国のあなたに届いていますか。

コメント

  • 不思議な時間に鉢合わせしました。きれいな写真を
    一緒に見ていました。浦島太郎の気持ちを一瞬垣間見れたような気がしました。

  • とてもロマンチックなお話でした😌✨
    主人公が「何だこれ」と捨てていれば終わってしまっていたであろう物語が、彼の優しさではじまって行くのが印象的です😊

  • こういう出会い私もしてみたいと主人公がとても羨ましくなりました。素敵な出会いから始まった素敵な人生の旅、人との出会いってやっぱり大切ですね。

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