エピソード2(脚本)
〇西洋の街並み
ルノ・ヴァレン・リスターナ&お嬢様「さて‥【アドルフ洋菓子店】は何処かしら?」
ルノ・ヴァレン・リスターナは、町中を優雅に歩く‥歩く‥歩く‥。
そして歩き始めること幾分、焼菓子であろう甘い香りが辺りに立ち込みだした。
ルノ・ヴァレン・リスターナ&お嬢様「‥っ!?」
ルノ・ヴァレン・リスターナ&お嬢様「この香りは‥間違いないわ‥」
そしてついに発見する。
ルノ・ヴァレン・リスターナ&お嬢様「見つけたわ」
ルノ・ヴァレン・リスターナは【アドルフ洋菓子店】の扉を開いた。
アドルフ「!?」
アドルフ「いらっしゃいま‥」
アドルフ「っ!?」
私は思わず息をするのを忘れてしまった‥
あまりのその女性の美しさに‥
そして、白雪の如き透き通るような肌に映える真っ赤なドレスに‥
ルノ・ヴァレン・リスターナ&お嬢様「・・・?」
その美しい女性から怪訝な雰囲気が発せられていると感じたのか、アドルフは我に返りいつものように接客を始める。
アドルフ「すみません、閉店前なので、もう残りの商品しかありませんが‥良かったらどうぞ」
満面の笑みの店主の接客を無視するルノ・ヴァレン・リスターナ。
ルノ・ヴァレン・リスターナ&お嬢様(‥あの紅い食べ物がないわ‥)
ルノ・ヴァレン・リスターナ&お嬢様「‥まぁいいわ‥全ていただくとしましょう‥」
アドルフ「は?」
ルノ・ヴァレン・リスターナ&お嬢様「全て‥いただくわ」
アドルフ「・・・全て‥ですか?」
アドルフ「残りの商品といっても、これだけありますが‥大丈夫ですか?」
ルノ・ヴァレン・リスターナ&お嬢様「えぇ‥問題ないわ」
アドルフ「わかりました。では今袋詰めいたしますので、少しばかりお時間いただけますか?」
ルノ・ヴァレン・リスターナ&お嬢様「えぇ、構わないわ」
店主は手際よく商品を袋詰めにし、代金の計算をしている。
アドルフ「お待たせしました。全部で代金はこちらの額になります」
ルノ・ヴァレン・リスターナ&お嬢様「あなたはこの代金の中に含まれているのかしら?」
アドルフ「‥お客様‥?」
アドルフ「‥何を仰っているのか‥わからないのですが‥」
ルノ・ヴァレン・リスターナ&お嬢様「そのままの意味よ」
アドルフ「くっ!! ぁ‥ ‥ぁ‥ なっ‥!?」
アドルフ「・・・」
ルノ・ヴァレン・リスターナ&お嬢様「フフフ‥【全ていただく】と言ったじゃない‥ あなたも含めて‥ね‥」
ルノ・ヴァレン・リスターナ&お嬢様「さて、用も済んだことだし、帰るとしましょう‥」
ルノ・ヴァレン・リスターナ&お嬢様「【闇夜の世界】へ‥」
ルノ・ヴァレン・リスターナ&お嬢様「少しばかり楽しみねっ‥フフフ♡」
これが、私とアドルフの‥最初の出会いだった‥
〇貴族の応接間
ここは闇夜の世界‥。
人間の世界とは別の隔離された世界‥。
人間はそれを【異世界】と呼ぶ‥。
アドルフ「・・・」
アドルフ「・・・っ‥」
アドルフ「・・・」
アドルフ「‥うっ‥」
アドルフ「っ!?」
ルノ・ヴァレン・リスターナ&お嬢様「目が覚めたようね‥」
アドルフ「‥ここ‥は‥」
ルノ・ヴァレン・リスターナ&お嬢様「私の屋敷よ」
アドルフ「私は‥店に居たはず‥」
ルノ・ヴァレン・リスターナ&お嬢様「ああ‥私がここに連れてきたの」
アドルフ「貴方が‥‥私を‥? ‥‥どうして‥」
ルノ・ヴァレン・リスターナ&お嬢様「気に入ったからよ」
ルノ・ヴァレン・リスターナ&お嬢様「あなたの作るあの食べ物が」
アドルフ「・・・」
アドルフ「店に‥戻らなくてはっ!。明日の開店に向けて仕込みをしなけれ‥‥」
ルノ・ヴァレン・リスターナ&お嬢様「無理ね」
アドルフ「ぇ?」
ルノ・ヴァレン・リスターナ&お嬢様「あなたは今日からここに棲むの。そして私にあの甘美な食べ物を作るの。フフ‥」
アドルフ「何故です!?私を店に帰してくださいっ!!」
ルノ・ヴァレン・リスターナ&お嬢様「無理と言ったはずよ‥?」
ルノ・ヴァレン・リスターナ&お嬢様「ここはあなたの棲む世界とは異なる世界なの。帰る術(すべ)さへありはしないわ‥」
アドルフ「っ!? そんな!?」
アドルフ「なんてことだ‥」
アドルフ「ナターシャ‥‥」
ルノ・ヴァレン・リスターナ&お嬢様「あら‥想い人でもいたのかしら?」
ルノ・ヴァレン・リスターナ&お嬢様「残念だけど諦めなさいな」
ルノ・ヴァレン・リスターナ&お嬢様「そうだわ!!例の食べ物をいただくとしましょう!まぁ‥なんて綺麗なんでしょう!!」
ルノ・ヴァレン・リスターナ&お嬢様「さ、あなたも食べなさいな」
アドルフ「くっ!!」
アドルフはこの場から逃走しようとする。がしかし、見えない何かに身体を拘束され身動きが取れない。
アドルフ「ぐあ!!体がっ!!‥う‥動か‥ない‥!!」
ルノ・ヴァレン・リスターナ&お嬢様「無駄よ‥。あなたの体に【服従の刻印】を施したのだから」
ルノ・ヴァレン・リスターナ&お嬢様「私に不利益な状況になると刻印が反応して今のようなことがおきるの」
アドルフ「うぐぐっ‥!!」
ルノ・ヴァレン・リスターナ&お嬢様「人間如きでは、到底抗えないわ‥」
アドルフ「はぁっ‥はぁっ‥はぁっ‥」
ルノ・ヴァレン・リスターナは、アドルフのところへゆっくりと歩きだす。
ルノ・ヴァレン・リスターナ&お嬢様「もう一度だけ言うわ。あなたはこの屋敷に棲んで、私にあの甘美な食べ物を作るの」
アドルフ「いや‥ で‥す‥!!」
ルノ・ヴァレン・リスターナ&お嬢様「あら?驚いたわ‥私の力に抗うなんて‥」
ルノ・ヴァレン・リスターナ&お嬢様「でもね‥」
ルノ・ヴァレン・リスターナは刻印の力を強めた。
アドルフ「あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ!!!!!!!!」
刻印の効力なのか、反抗心が徐々に薄らいでくるのをアドルフは感じていた。
ルノ・ヴァレン・リスターナ&お嬢様「さぁて‥。もう一度だけ言うわ。あなたはこの屋敷に棲んで、私にあの甘美な食べ物を作るの‥いい?」
アドルフ「‥私‥は‥ ここに‥棲み‥貴方に【スイーツ】を‥お作り‥しま‥す」
ルノ・ヴァレン・リスターナ&お嬢様「ふぅん。【スイーツ】と言うのねこの食べ物」
ルノ・ヴァレン・リスターナ&お嬢様「それと、私のことをこれからは 【お嬢様】と、呼びなさい」
アドルフ「‥わかりました‥お嬢様‥」
ルノ・ヴァレン・リスターナ&お嬢様「あなた、名前は?」
アドルフ「【アドルフ】‥です」
ルノ・ヴァレン・リスターナ&お嬢様「まあ、知っていたけれど。 あなたのことは、そのまま【アドルフ】と呼ぶからそのつもりでね」
アドルフ「はい、お嬢様‥」
ルノ・ヴァレン・リスターナ&お嬢様「フフ。宜しい」
そして、私と彼の、屋敷での生活が始まる‥‥。